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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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海賊中尉ですが何か?

リドラニア公国がラトワニアに宣戦布告した。


ラトワニアの女王ナターシャは、夫を失い不安を抱えていた、そしてアレイク王国に助けを求め。その使者と対面である。 不安に王座を握る手に力が入っていた。そして……。

プロローグ




━━━━南大陸、ファレイナ公国。



大洞窟から、数日。山岳に囲まれた。堅牢で、重厚な城門を抜けて、

見事な馬体の漆黒の馬が、豪奢な馬車を引く、なだらかな舗装された坂道。



やがて開場された南門を抜けて、王城に向かう、公式な帰還とは言え。

こう固っ苦しいのは苦手なミザイナは、

現聖アレイク王国在任の大使をしている。実に三年振りの帰郷になのだが……、

勇壮な霊峰グラミスを右手に、通称桜花庭園と呼ばれる。美しい林道は、四季の花を、美しく愛でる。春は、ミザイナの好きな桜と呼ばれる。遥か昔あった、中央大陸の木々が、ピンクの可愛らし花を咲かせる。幼少のころ、木剣片手に通った道だ。思わず。懐かしげに、眼を細めた……。


━━━ミザイナの父アルタイト・アルタイルは、防衛の要パライラの街に拠点を置く。パライラ騎士団の長であり。現国王が兄と言う王族、公爵の娘━━姫と呼ばれるのだが……、ファレイナ王族は、生まれながらの剣士が多く。女性の騎士、剣士も珍しくない。ミザイナほど剣に愛された者は希と、囁かれる。が、本人は知らない━━、


ミザイナは国王どころか国民が認める。ファレイナ有数の剣士である。伯父である。国王直々の帰還命令……、嫌な、胸騒ぎを覚えて早々に帰還したのだが……、

「国王陛下、ただいま帰還致しました」古めかしい、歴史を感じさせる。王座の間━━━、


しかしと……眉をひそめていた。国の中枢である王座の間に、僅かな、兵士しかいないことに、違和感を感じたのだ。

いかに寛容な伯父とはいえ━━━。珍しいと言えた。

「急な帰還命……、済まぬなミザイナよ……、我が国は、現在戦中である!」

「なっ……」

驚くミザイナ、苦笑すら浮かべ。伯父である国王は、告げる。あまりのことに絶句した。



━━東大陸中部。遥か昔より神の住まわす国と呼ばれる。癒しの担い手、あまたの聖人を排出した。

美しき国━━ラトワニア神国………。


アレイク聖王国の建国の父、聖人アレイは、ラトワニアの生まれだと言われている。さらに建国の後ろ楯となった。当時のラトワニア神王は、後に、ラトワニアでも信望される。

大地の女神アレの神殿を、友好国アレイク……さらに聖人アレイに敬意を表して、建てた、


以来━━両国の友好関係は続いている。


ラトワニア神国の四方、東西南北の門に当たる場所には、古き神々の祖神が祭られている。


荘厳な神殿が、国を守る門となっているのだ━━。


その間の新しい大通りを守るように、八柱の神々の神殿がある。一年の暦を、それぞれ。12神の神殿で、受け持ち、様々な催事にあたる。


━━現ラトワニア神王崩御━━。


危篤と━━伝え聞く。僅か3日後に……、息をひきとる━━享年41であった……。若くして王妃となった。ナターシャ・アークは、元来の気弱さを垣間見せるが、姉のセシル・アークの夫、旧友イブロが、数百もの戦士を連れ、救援に来ると聞き、安堵を漏らす。

「ナターシャ王妃陛下、友国アレイクより報せがまいりました」

「聞きましょう…」

魔王ピアンザの魔手に、晒される何の国で、

あまり過度な期待は出来ない……が、旧友のオーラルがいる。僅かな期待を伺うも、不安からナターシャのほっそりした指先は、震え、王座を掴む手に力が入る。

「我が国は、友国ラトワニアの急報を聞き、我が国が誇る。二人の『オールラウンダー』を救援に向かわせる━━、主な兵数はカレイラ師団のみとなるが、許されよ━━」ザワリ……、驚きに場内が、ざわめいた、

「そうですか……、聖アレイク国王レゾン王に、感謝を伝えください」

使者に礼を述べ、久しぶりに魅せる。艶やかな、可憐な笑みに、使者は顔を紅葉させていた、おいとまをつげ出る間も走り出す勢いで、慌てる使者に、久しく忘れていた……、安堵の吐息が漏れでると、自然と城内は優しい笑いに、包まれた。



━━急遽カレイラ師団は、ラトワニア神国の救援に向かうべく、急ピッチで、準備が整えらた。


そんな忙しい中。カレイラ師団にあり、劇的な立場の変化を受けたのが……、


補佐官=アロ・ジムス少佐であろうか、かの人物、二階級特進と言う、離れ業をしたとすっかりカレイラ師団内で、一目置かれる存在となりつつある。補佐官とは現場の指揮権が与えられる師団内の役職で、中佐と同列に扱われる。



元々、細々した仕事を得意とするアロ・ジムスは、カレイラ師団内で、解らないことは、アロに聞けと言われていて。カレイラ准将の腹心と黙された。数日としないうちに。アロは有能な管理者としての才能を発揮。

軍部でははやくも経理の天才と噂がされたが、本人としては、遺憾であろう、


……青白い顔は、相も変わらずて、師団領内を生き生き這いずり回る姿は、徘徊するアンデットのようで、ちょっと怖い。


第1分隊━━、念願の増員、56名を超える大所帯になり、それぞれ小隊を任されることになったオーラル、クエナ、カール、ミラ、エルには特別に、補佐として、ジン・ゲルマン軍曹が配属された。


あいつは顔は怖いが、面倒見が良く、意外と子供好きだから、良い組み合わせだと、アロ補佐官の人事に友人を心配していたロート・ハレースそう呟いていた。彼はオーラル小隊に配属された。



━━━あれは半月前になるか……。


オーラル達が、帰還した翌日から。3日の休暇を遠征組はもらっていた。家で寝ていたオーラルを意外な人物が訪問した。「エレーナ大司教様!」酷く慌てる母を、優しく制止して、

「オーラルは居ますか?」


「部屋に………」

━━返事も早々に、大司教は、オーラルの部屋に入るなり、驚く、オーラルに抱き付いて、「ありがとうオーラル……あの子が………」

エレーナ母様の涙声で、カールの顔が浮かぶ、

ようやく話せたのか……、

子供のようにしゃくりあげ。泣きじゃくるエレーナ母様は、何度も……何度も…、感謝を言葉に、オーラルにすがる。

「良かった……」

事情通の母は、静かに涙を拭い、微笑んでいた。


━━休暇を終えたオーラル達は、新しい小隊を指揮下に、訓練を始めた。


のだが……、

大して訓練が積まれていない第1分隊に、命令が下ったのは。それから間もなくのこと━━。


秋の始まりを告げる。豊作を願う祭りが、準備される頃である。

『カレイラ師団は。3日後。ラトワニア神国の救援に向かう。』

軍人にとって命は絶対である。慌ただしく、準備に奔走することになったのである。

師団内では、アロ・ジムス補佐官の手腕で、たまたま食料の備蓄があり、遠征に必要な物質は、事足りた。足りないのは武具だった。これもオーラルの紹介で、知り合いの小間物屋を営む、職人に顔の広いオリバーさんの人力で、何とか間に合う算段である。



━━カレイラは、次々懸念が晴らされるアロの采配に、舌を巻いていた、師団内の経理をアロに任せる一方で、


━━オーラルを密かに呼び出して、ケレル殿下とカレイラとの会議を行っていた━━。

「オーラル、ドルガと言う海賊を知ってるかい?」ケレル殿下の問いに、素直に首を振る。

「黒衣の調べでは、ドルガには子供がいた。アル・センバードと言う名の海賊としてね。彼はリドラニア公女を助け、公女との間に子をなし。現在子は消息不明らしい……」

にこやかなケレル殿下の言いたいこと、狙いが解らないが、理由があるはずだ。

「ナターシャ王妃。いや女王陛下は、君と旧友と耳にしている。新しい部隊編成をカレイラとケイタ筆頭に任せ。君には、第1分隊を率いて、魔王の狙い、女王の暗殺の阻止。肥大した四人の大僧正に、楔を、撃ち込んで貰いたい」

ようやくケレル殿下の言いたいことがわかってきた。オーラルは静かに首肯した。


━━━国民に、出兵発表がされたのは、さらに数日後である。アロが本来、率いる分隊だが、補佐官の仕事が多忙で、本陣に残る事が決まった。よってクエナとオーラルの二人が、第1分隊を率いる副隊長に任命される。クエナなど………責任の重さに何かと困惑気味である。



急な出兵に、まだ部下の扱いに慣れない三人は、慌ただしく奔走していた。そんな小隊長を優しく見詰める。軍曹のロート・ハレース、何かと世話の掛かる。エルの面倒を見てるジン・ゲルマン達第1分隊の兵士達は、オーラルがいるから大丈夫だと、歴戦の戦士の面持ちであった。



━━2日後……。慌ただしくクエナ、オーラル率いる。先方第1分隊が出発した。カレイラ准将は見送りに出ていたが、一抹の不安を抱いていた。

「魔王の狙いが、別にあるのでは?」

危惧していた……、そして……、僅か数ヶ月で動き出した。世界情勢を熟考する。




急速に勢力拡大を狙う魔王軍は、北大陸に進軍した。一月とせず魔王軍の船団が、北大陸の西側。沖合いに停泊して、北大陸に上陸。直ちに陣営展開して、16部族を攻める準備を始めた。しかし魔王もまさか短期間の間に。16部族が統一され。パレストア帝国と比肩する大国となっていたとは予想外な出来事であった。レオール連合と名乗る一軍に奇襲を受け、先陣を期した先見部隊は壊滅させられてしまい。それから苦戦を強いられていた。



━━レオールの宰相となったレイナ・フォルトは、女性でありながらたぐいまれな手腕により、群雄割拠していた、16部族と16郡都をまとめあげ、構想から僅か半年で、レオール連合国の基礎を作り上げた鬼才である。後に分かるが、魔王軍が、いつ来るかまで予測していた節があった。



レオール連合は、王国制ではなく。16部族の長を議長とした元老院を設立していた。これが短期間に16部族をまとめあげた方法である。あくまでも形は、長達に認められたレイナ・フォルト嬢に、16部族の戦士を指揮する権限を与えたようだが、今では実質彼女がレオール連合のトップである。



━━戦前のアレイク王国参謀の見立てでは、パルストア帝国の圧勝と思われていた。このような事態を誰も予想だにしていなく。

現状魔王軍は、苦しい膠着状態が続いているという。

そこて詳しく状況を調べるため。ケレル殿下は黒衣に調べさせた。さらに内容をカレイラが参謀達に解析させた結果。その一因が、北大陸だけに生息する太陽の下で、動ける土竜が要因であると言うのだ。確かに我が国でも土竜を操るには、特殊な技術が必要である。船団では馬を用意せず人員のみ輸送した。しかし北大陸には馬はほとんどおらず移動は主に土竜を使う。しかし魔王軍に土竜を操るに技術もないから。移動は主に徒歩になったこと。

それよりも問題は、戦前にはいなかった人物。レオール連合の将軍を勤める男が、優秀だからとカレイラは考えた。

黒衣の報告書を見たが、かの将軍奇策の名手で、帝国の襲撃を何度も阻んでいるのは見事と言えた。それでもレオール連合が攻め滅ぼされるのも時間の問題であると考えていた。何せ魔王軍を率いる将は、常勝と二つ名で呼ばれた。魔王の六将が1人。ランバスタ将軍なのだからだ。



しかし……そんなカレイラの予想は、裏切られた。未だに膠着状態は続いており。魔王軍の進軍は一進一退である。あくまでも噂の類いだが……、黒衣が持ち帰った中に。件の将軍のことも含まれていて。どうやら異国の人物ではないかとのこと、まだ若いが、ことごとく魔王軍の先手を見通して、罠を張る絶妙な妙手を仕掛け。魔王軍を翻弄しているとのこと。この時期になるとケレル殿下も考えを変えていた。彼の国の将軍は歴然の名将のようだと、カレイラすら唸らせた。

「気になるのは、南大陸もか……」


東大陸と南大陸を繋ぐ航路は、謎の嵐で交易不可のままで、現在、土竜馬車の交易に頼っている。そのせいで南大陸では、塩不足が深刻であるとか、東大陸では、鉱石やラッカルの病が再び蔓延し始め。薬が不足していた。こまったことに謎の嵐はもう……、半年以上続いていることになる……。


━━その為、南大陸の小国では、塩処か、食糧が軒並み値上がり、貧困が深刻化していて、食料難で、何百人もの餓死者を出してしまったという。


ついに……小国ダーレンで、農民が蜂起した……、圧政していた、国王一族を惨殺。そのまま近隣の村、街を襲い、隣国に勢力を拡大、ファレイナ公国、国境まで迫る勢いであると……。

「ミザイナ嬢が、無事だと良いが…」

ケレル殿下、カレイラには、夢があった……、



ケイタ筆頭は、二人の夢に共感してくれた。数少ない協力者で、以前から魔導師が、隊列に加わればと、画策していた。

まだ世界中の国々を見ても、攻撃魔法の専門家、魔導師自体が少なく。独自のギルドを作ってるため、軍に引き抜くのは困難であった、カレイラは、宮廷魔導師筆頭のケイタ・イナバの協力を得て、試験的に、第1分隊に宮廷魔導師を編入させていた。


未だ……魔導師は、学園や、閉鎖的なギルド内で、惰性手にしか動かない、そんな魔導師達を軍に編入させ育てたら……、


一方で━━閉じ籠る性質の者が多い。魔導師達の意識を変えるため。ケイタ筆頭含め、有志の魔導師達は、ギルドの改革に着手している。困難であるのは承知していたが、ケイタは笑う。


━━━改革の一歩として、カレイラの理想とケイタの理念で、義理の娘エルを入隊させた。第1分隊の成果とは━━━、カレイラやケイタにとっても、小さな希望であったのだ………、


それが……、オーラルの活躍があったとは言え。エルが活躍したのは明白。

カレイラ師団に、魔導師部隊が編入される運びとなった、その為編成に多少時間が掛かっていた。実際に魔導師を部隊に入れて、実戦経験あるのは、第1分隊、アロ補佐官だけである。時間は無いが、此度の戦の結果は必ずや、ケレル殿下、レゾン陛下に良い報告が出来ると、確信していた。



━━━ラトワニア神国を一望出来る。

希望の丘━━、


病んだ眼差しの緑がかった美しい髪の女を、気遣わしく思いながら、長身の美丈夫は、右目の下に道化のような。星の刺青をした顔を眼下に向けていた。ドヴィア騎士団の到着を見ていたようだ。

「予定通りね……、噂では、カレイラが動くらしいわ」

どす黒い憎悪を、目に宿して、

「あのオーラルも……」

毒を含むような、暗い笑みを浮かべたていた。あの男オーラルは、自分に……瀕死の重症を負わせ、愛するギラムの片目を奪った、憎い男……、

既に、ラトワニアには、100以上の配下を配している。

「チャンスはいずれ来るわ。王妃……いいえナターシャ女王の暗殺を。あの男の目の前でね」

「わかってる……、あの男の目の前で、殺してやる」狂喜に、彩られた眼差しは、少女から甘さを奪い、顔に狂喜を孕む。

ギラムの不安を煽った……。

「二度と、お前を傷つけさせない……」

ギラムの呟きは、狂喜に、犯された少女に届くことはなかった……。



━━━ドヴィア騎士団到着から、5日後……。

聖アレイク王国が誇る。二人の『オールラウンダー』が1人率いる。第1分隊が到着した。


張りつめ緊迫した城内を、案内され、王座の間に、通されたオーラルとクエナは、荘厳で、厳粛な空気に包まれた王座の間に案内された。



光輝く一枚の絵画、精悍な顔の男と、美しい憂いを帯びた眼差しの女性が談笑していた……、噂に違わぬたおやかな笑みを、此方に向けて来て。思わず。クエナは息を飲み、緊張でガチガチになっていた。

オーラルにとって懐かしい顔である。

「女王陛下━━…」

やや上ずり、膝を着いたのクエナを尻目に、軽い感じで、

「久しぶりナターシャ、イブロ」

何の気兼ねなく、スタスタ女王陛下に近付くのである。いかな聖アレイク王国の『オールラウンダー』とて、あまりな暴挙。ゆえ呆気にとられる一同。

「あっ、オー君お久しぶりね♪」

そんな周りの事など気にした様子もなく。ぱっと顔を輝かせるナターシャ女王、

「よ~オーラル、ようやく芽が出たな」

いかにも武人で、礼儀作法に、煩いはずのイブロ騎士団長まで、嬉しそうに、出迎える。

「ちょ、ちょっとオーラル!?」慌てるクエナ、呆気にとられる宮廷の重鎮達、ようやく三人は気付き、気不味そうに見合い、(苦笑)し合う。

「じゃ、一応。聖アレイク王国。カレイラ師団第1分隊副隊長。オーラル・ハウチューデン中尉です。こちらは同僚の━━」

「くっ、クエナ・ガイロンです陛下」

生真面目なクエナに、好意的な眼差しを送り、

「クエナさんよく参戦くださいまして。我がラトワニア神国は、貴女を歓迎いたします。と同時に、皆さんこちらのオーラル・ハウチューデンは、私と姉セシル、こちらのイブロとは旧友ですの、懐かしく、公務を忘れてしまいました、許してくださいね」ナターシャ女王自らの謝辞に、各神殿の有力者は、成る程と納得した、

「へっ。陛下とあっあのイブロ騎士団長が、オーラルと旧友」

眼を白黒させ、戸惑うクエナに、イブロは同情的な眼差しを向けた、一方で、女王ナターシャが、悪戯ぽくクスクス笑いながら、

オーラルを通じて知り合った、皆を懐かしく思い出す。ふっと眼差しに陰りを宿したナターシャに、気遣わし気な視線をオーラルが見せ、ナターシャは嬉しく思い、目礼する。

「でも、良かったですわ、オーラルとイブロがいれば、暗殺者から守ってもらえますね♪」

女王の爆弾発言に、ザワリ……、辺りがざわめいた。

「既に、炙り出しは終わってるよナターシャ、今頃オーラルの部隊と制圧は終了している」

イブロの目配せに頷き、

「早と眠れ」

イブロの魔法を食らい。クエナが崩れ落ちた、

「何を……」

喋る前に、オーラルが、クエナを取り押さえ。顔に触れられるや、魔法が掻き消えて、見知らぬ小柄な男が、現れる。

さらにイブロは、魔法を放ち、数人を魔法で眠らせ、オーラルが、神殿の有力者だった者を、次々と拘束した。

「女王陛下━━これはいったい…」

ざわめく場内。

そこに足早に来たのは、

「オーラル、クエナは無事だ」

無事救出された、各神殿の有力者達を連れ、カール・シタインは片眼を瞑る。

甘い、マスクと自信に溢れた眼差しに、幾人かの美しい少女達は色めき立ち、熱い眼差しをカールに向けた。ドス。カールは九の字に、倒れ、苦痛にのたうち回る、

「カールの癖に……偉そう」

やや不機嫌のエルが、スタッフの尖った先端で、脇を突いたようだ、あれは痛い……同情的な、眼を向ける女の子達は、鋭い眼差しのエルに負けてタジログ。

「やれやれ……」

小さく嘆息するオーラルとイブロは、ほぼ同時にナイフを投げた、空中で、金属音がして弾かれた。

「ちっ、」

緑がかった髪の女が、舌打ちしながら、憎悪の眼差しで、辺りを平眼する。傍らには………、

長身の美しい顔立ちの剣士を伴い。悔しそうに唇を噛みしめ、オーラルを見付けるや、憎悪の眼を向けた、

「必ずお前を殺してやるオーラル・ハウチューデン!」

少女が呟く間に、各神殿の有力者達が、神に奇跡を祈り、神は答え、様々な奇跡を起こした、

「チッ逃げられたか……」

イブロの呟きに、静かにオーラルが頷いた。



━━一夜明けて。

改めて、クエナ・ガイロンを伴い。女王を交えて、執務室で報告をまとめる。

「助かったぜオーラル。流石にあれはヤバい」

荒事は得意なイブロだが、視覚魔法を苦手としていた。

無論ナターシャを狙う者が要ることはわかっていたので、ナターシャには常に防御系魔法で守られていたのだ、彼女は防御魔法に特化した魔法の使い手で、暗殺者も迂闊に、手を出せずにいたと聞いた。そこでオーラルは、事前に黒衣の長ノルカに、依頼していた、

「嫌よ!黒衣の長を呼び出して、何様のつもり……」

殺気漂う……剣呑なノルカに、肩を竦めながら、

「あんたの親父さん、好きに使ってくれと言ってたが?」

「なっ……」

絶句するノルカ、改めてラトワニア神国に巣くう、暗殺者達の炙り出しを依頼した、

「成る程……、ラトワニア神国の女王を守るためか……仕方ない…承知したわ」

諦めに似た顔で、立ち去ろうとするノルカ、にんまり悪戯ぽく笑いながら、

「ミラ先輩が、ノルカ姉ちゃん大好きだとさ」ドサドサ、窓枠を踏み外し堕ちる音がした……、

ノルカは、おでこの青アザを隠すため仕方なく、花売りに扮装する。

「あんにゃろ、いつかギャフンと言わせてやる」

静かに決意するノルカ、だがチョピリ天然のノルカに可能かは、別の話。


━━ノルカ達、黒衣の手引きを受けて、イブロは内密に、オーラルの指示を受諾、配下の一部を、

イブロが来る数日前から、待機させていたのである。


かくして━━第1分隊少尉、クエナ・ガイロンさえも捕らわれていた、が、無事に救出された……、


自分の不甲斐なさに、落ち込んでるクエナ、一方で━━黒衣の村で、見違えたのが、カールだろう。それと………、カールの魔法の先生として、振る舞うエルかな……、不機嫌そうに、女の子に囲まれるカールを睨む。随分明るくなり、みんなと打ち解けたように見える。「ほら隊長、口を拭いて」

「ん……」

クリームの付いた顔を出すと、副官のジン・ゲルマンが、世話を焼く。凶顔のためいささか、子供受けに難があるジンだが、動物や子供好きと言う一面もある。が、凶顔の為…泣かれるか、親に人さらいと間違われることもしばしば、物怖じしないエルを猫可愛がりしてるが、まあ~大丈夫だろう……、

「相変わらずの策士ぶりだな~オーラル!」

軽く胸を叩く仕草は、ドヴィア騎士団の親愛を示す行為。イブロは相変わらずのようだ。「娘らしいなイブロ」

イブロの妻セシルは、ナターシャの姉で、オーラルの旧友の1人だ、

「そうなんだ」

戦士の顔から、親バカ丸出しのデレデレ顔に崩れた。幸せなのが滲み出てる。

「セレナは、妻に似て、美しくなるぞ!」

ガシガシ背を叩かれ、いささか眉をひそめながら、

「イブロ、セシルに頼まれてた生地が手に入った、後で取りに来てくれ」あっと思い出して、感謝を述べる。

「助かる。この時勢で、南大陸の生地は手に入らないからな……」

「薬、あれも手に入った、一緒に届けてくれ」

驚いた顔をしてたが、クシャリ安堵で、顔をくしゃくしゃにしながら、頭を下げる。

「北大陸から良く手に入ったな……」イブロの父、前騎士団長は、肺の病のため引退した、が、強運の戦士と呼ばれ、戦上手と知られていた。

「ああ北のレオールの宰相レイナに、無理を言った、旅立つ前に届いて良かった」

イブロも、一度会ったことがある。旧知の人物、

「おお!レイナ殿か、懐かしい……」


━━━もう……8年以上前になるか…、



見るからに強面の武人らしいイブロだが、人情に弱く、優しい性格が災いして、苦労もする。だからこそ国を越えて、さらには国すら動かして、義妹ナターシャを助けるために、イブロは動いた、面白い奴だ……、


━━昔。レイナから教えられた、特別な材料を使った薬だ、問題は材料だが、運が良いのか…、飛竜の尾、はぐれワームの胆石とか…、たまたま以前手に入れてたのだから……、レイナからの知らせを見て、笑ってしまった、

「一度、最強の運を持つ戦士に会いたいものだよ」

オーラルの呟きに。にかっと虫歯すら近寄らなさそうな、白い歯を煌めかせ、

「セレナに会わせてやろう」

娘自慢すらして、照れ笑いする。クスリ笑いながら、イブロの胸を軽く、ドウィア式に、拳で小突きあい、

「楽しみにしてる」

二人は久しぶりに心から笑っていた。


ナターシャ女王から、イブロとオーラルの二人は、女王暗殺を防いだ功績により、ラトワニアで、一代限りの貴族の称号を与えられた、これは、リドアニア公国との戦において、ラトワニア軍の指揮権も、与える為の処置である。イブロとオーラルはその日の内に、軍に赴き、ラトワニア神国の暗闇を垣間見て、顔をしかめた。



ラトワニア神国には、始まりの4祖神を祭る。古い神殿があった、それぞれが強力な僧兵を独自に抱えるため、4人の大僧正による。派遣争いが、大問題であった……、


新しい8神殿は、女王の要請を快諾した。合わせて8千の僧兵が、今のラトワニア神国の戦力である。しかし一方で……リドアニア公国の戦力は、少なくとも4万と聞く、戦力的には、4つの神殿から僧兵を借りれなければ…劣勢は明白である。

「なんだあいつ等は!」

実直なイブロには、信じられない暴挙だろう……、しかし欲は人間だれしもある。ラトワニア神国は、東大陸の人々の拠り所である。飾りの女王とて、民に絶大な尊敬を集めていた。だから女王に。殿の後ろ楯になったと言わせるだけで莫大な利益が見込めるのだ。


利権が絡む以上……、神殿のトップである4人の大僧正は、自分たちこそが、ラトワニア神国の国教と認めて貰えなくては、1人の僧兵も出さないとお互い譲らず。膠着して、今日の話し合いは終わった。

「どうするのだオーラル?」

不機嫌なイブロだが、力業でどうにかなる問題でないこと理解していた。

「アセリア大僧正、ルメージ大僧正の2人次第かな……」

「む?、太陽神アセードラの大僧正ルメージと。海神プラトーンの大僧正アセリアが?」

眉間に皺を寄せながら、腕を組む、ピンと来ないようだ。

古き祖の4柱を頂く神殿は、四方の門を守っていた。

東の海王神プラトーン、南の太陽神アセードラ、北の蒼神セイラーン、

西の緑神ロレンブラである。ラトワニア神国の四方の門を守っていると言い伝えられていた、中でも太陽神アセードラ、海王神プラトーンは神々の中でも覇権争いをしたなか、犬猿の神々である。神殿同士。仲が悪いのは有名であろうか、

「イブロ………最近海賊が、海王神プラトーンの商船を襲ってるて話を。知ってるか?」

これはラトワニアで、暗殺者炙り出しの最中、黒衣の長ノルカから聞いた話である。と、前置きしたが、ノルカに調べてくれと頼んでた案件である。



━━ラトワニア神国、海の玄関口として利用してる街がある。

三日月の形をした半島の先にある港街ラーダは、どの国にも属さない独立自治区で、北大陸からも連日、沢山の商船が、港を訪れていた。

━━そして……、ラーダの商船は、海王神プラトーンの神殿が出資してる。商会の持ち船である。



━━最近……、リドラニア公国に向かう商船が、海賊に襲われていると言うのだ、魔王と同盟を組むリドラニアとはいえ。あくまでも商いに関係はなく。神殿にとって、多大な損害がでるのは確かである。


その為てはないが、噂が出始めていた。太陽神アセードラの信者が、裏で糸を引いていると、アセリア大僧正も疑っているようだと……、

「なるほど……お前の狙い読めたぜ!」イブロは単純に、自分の役割に気付き、ニヤリ…獰猛に笑んでいた、




━━━その日の明け方。オーラルは、秘密利に、ノルカの手引きで、ラーダの街に潜入し、情報収集をしていた、


………古くも、


暖かみのある食堂で、酸味のきつい。北の果物ライムをふんだんに使って、酒を混ぜた、エールがある。オーラルはそれを頼み、店主のお勧めを注文して、料理が来たら、やや多めの料金を払う。金払いの良い客に、嫌な顔をする店員はいない、噂話を仕入れるには、有効である。

二杯目を注文して、一気に飲み干すと、

早々に、次の店に向かった、


━━流石に3件目からきつい……、胸焼け気味の腹を抱えて、オーラルは探す。海賊を……、

海賊の話を集める内に。興味深い話を耳にした。


━━数年前……。


リドラニアの王命で、処刑された王族がいたと……、彼女は1人の海賊を頼り、王に逆らい逆賊とされ多額の賞金が掛けられたこと。最後は仲間に裏切られ死んだ……、その海賊団の生き残が、今も暴れてると噂を聞いた……、


「例の息子……、彼を面倒見てる。男の住まいが解ったわ」

街頭で、果物を選ぶ、使用人に扮装したノルカは、唇さえ動かさず。特殊な音域で話すため、オーラルにしか聞こえない。「俺は接触してみる。数人残して、ナターシャの護衛を頼む」ムッと剣呑な眼差しのノルカに、維持悪く微笑しながら、

小さな包装された、小箱が手渡される。

「何よこれ?」


甘い香りがほのかに香る。どうやら焼き菓子のようだが……、怪訝なノルカに、

「ミラ先輩に頼まれてね」

「なっ………、あの子……」

肯定すると羞恥に、赤い顔になる。

「ミラ先輩知ってたよ~。俺がノルカさんと付き合ってるのを」

ドサリ……、何も無いところで、痩けるノルカ、オーラルは無視して、雑踏を進む。わなわな怒りの声が、聞こえてきたが、クスクス笑いながら。港に向かう。



━━港から外れにある。古い古民家の密集する。漁師の住む通り、目的の家は、直ぐに見つかった、共用井戸の傍で、赤茶けた髪、少女のような面立ちの小柄な男の子が、おばちゃん達にからかわれながら、野菜を洗っていた、ノルカの話では、祖父と名乗る。男と住むと言うが、これといって、普通の少年に見える。しかしフッとしたしょさは、明らかに女性の物で…………、オーラルは癖のある髪をそのままに、やる気無さそうな顔で、

「すいませんハン・ミラさんの家は此方ですか?」

井戸端会議する。おばちゃん達に、声を掛ける。

「ハン・ミラじいさんの家はそこだよ。あんた何のようだい?」

地域の人間の結束は固く。そっとシセを隠すおばちゃん達。もたもたする演技をしながら、まさか俳優をした経験が、生きるとは思いもしなかったが、

「ギルドの方から、此方に来るように言われたので………」

ハン・ミラは、港の近くで酒場を経営しており、商業ギルドに登録した老舗である。料理の出来る手伝いを、数日雇いたいと、申し出ていて、オーラルは、自身がアレイク王国にある。有名料理店で料理人をしてたことを伝え、独立するのに諸国のお店を渡り歩くてると伝える。

見れば、オーラルの手は傷だらけ、手荒れは、見るからに、料理人の手である。おばちゃん達は、成る程と、警戒を解いて、人好きする優しい笑みを向けた。

「聞いてるよ。今日顔出すとね。シセ」様子を伺ってた、少年もやや警戒を解いて、ぼそぼそとわざと男の子のような声を出して、

「じいちゃんは店だよ。えーと……」

「リラ・ハウチェンです」

凡庸とするオーラルに、やや不安を覚えながら、道すがら、シセの話やオーラルが、見た他国の話を物珍しそうに耳を傾けていた。



こじんまりした『海の猟師』酒場は、綺麗に掃除されてる。地元漁師、船乗りに愛される酒場である。

「じいちゃん!ギルドから、お手伝いの料理人来たよ」

孫の声を聞き、奥からのそり……、右足を引きずりながら、昔は戦士か船乗りと一目で解る。眼光鋭い白髪を短く刈り上げた老人が、顔を出した、右目を眼帯で隠している。「地下からエールの樽を出してくれ……、そこの料理人」

名前を聞いて無かったことを思い出したが、聞くのは気恥ずかしいと、当たり障り無く命ずる。思わず微笑しそうになるが、こらえて、

「リラ・ハウチェンです」

肩をすくめ、外套を脱ぎ捨て、僅かな荷物、背負い袋から、使い慣れた前掛け、包丁の入った布を取りだし、外套を畳み、背負いに仕舞う、カウンターの端にある篭に入れて、店の裏手に回った。



このような造り酒場は、自分たちの店の地下で、独自の酒蔵を持っていて、エールを発酵させていたりする。そのため樽を運ぶのは、シセのような少年には無理である。オーラルがいなくなり、シセはカウンターに置いてあった。オーラルの包丁を広げた、大小10はある。見たことない包丁に眼を丸くする。

「ほう……これは、北大陸で使われとる。獣包丁、こっはギル・ジータの香辛料を作る包丁だな、こっちは、魚用か……、きちんと世話をしておるな……」

包丁を見れば、料理人の性格、腕が解ると言う、祖父が珍しく感心した声を上げた。

「2つで足りますか?」

30キロ近くある樽を片手に持ち、もう1つを軽々、かつぎながら勝手口から顔を出すオーラルに、さらに眼を丸くするシセ、

「そこの端に置いとけ」感心するハン老人に片眼を瞑り、種を空かす。

「アレイク王国の商家で、毎日塩と小麦の荷下ろしの人足をしてたので、コツを知ってるだけです」なるほど……、あちらには、学校は無料で入れると聞く。生活費稼ぎのアルバイトをしてたのか、納得した。

「リラ下ごしらえを手伝え、シセは開店の準備を」

「わかった!」

元気よく、シセが腕捲りして。掃除を始めた。リラ=オーラルは、そつなく料理のした準備を終えて、すぐに開店。お昼になり、小さな店は、沢山のお客で、ごったがえしていた。カウンター越しに店内を見ながら。手が足りないと見ると、

「注文受けてきます」

見た目。眠そうな眼差しでやる気がいまいち分からない風貌ながら、リラ=オーラルはてきぱき、オーダーを受け、テーブルの片付け、飲み物の注文に答え。オーダーが溜まれば、料理の補助に回る。非の打ち所が無い働きを見せた。普段仏頂面のハン・ミラなど終始機嫌が良かったのを初めて見て、シセを感心させた。

「リラ!、洗い物終わったよ~ご苦労様」

すっかりシセはリラ=オーラルに、なついたようで、ハンの目尻も柔らかくなるが、シセがいなくなると、鋭い眼差しをリラに向けていた。

「お前さん『オールラウンダー』ではないか?」

やや驚くリラ=オーラルを、眼をすがめながら、ニヤリ不敵に笑う。

「鷲の眼も、曇ってなかったと言うわけさな」

その後、夜の仕事が終わるまで、ハンは何も言わず。最後の客がいなくなって、

「シセ、リラに明日の話があるから、先に帰ってろ」

「うっうん……」すごすご、二人を気にしながら、シセが店を出て行き、気配が消えたところで、ハンが、冷えたエールを2つ手に戻り、一つをトンと、オーラルの前に置いて、ギシギシ、抗議の音を上げる。椅子を無視して座り、右肘をついてエールをチビり、唇を湿らせ、おもむろに、右目の眼帯を外して晒す。剣かナイフによる傷か十字の傷は、

オーラルの冷静な眼差しに、ハンは意を決意する。

「察しの通り、鷲は大海賊アル・センバード………嫌センバード・ミラの父であり、シセの祖父に当たる。昔ドルガと呼ばれた海賊よ」

再び、チビり、唇を湿らせ。獰猛に笑う、

「例の海賊と、リトワニア公王に処刑された、王族のことを調べとる奴がおる……、と、耳にしとった……」

ジロリ、半眼でオーラルを見る様子は、いかなる嘘、偽りが通じないと感じた、だから、背筋を伸ばして、

「失礼しました、オーラル・ハウチューデン、貴方の見た通り『オールラウンダー』と大層な称号を貰うものです」

ほう~っと、面白いと感心した吐息をつきながら、

「すると…?」

挑む眼差しを、受け流しながら、茶目っ気込めて、ハンの予想外なこと。トンでもないことを、言い出した。

「ラトワニア神国の将軍やりませんか?」

「なっ……なに!?」

予想外過ぎて、たじろぐハン老に、

「彼女がこのまま、女の子であること、リトワニア公国の王女であると隠して、生きるよりは、良いと思いますよ」今度こそ、ハン老人は、天を仰ぐように、右手で顔をおおい。

「いつ……判った?」

ジロリ、怒気すら含む声に、オーラルは微笑浮かべ、どこふく風といった様子で、

「井戸で、見た瞬間に、気付きました」

「そうか……」

ハン老は力なく、座り直しエールを飲み干した、

「あの子を守ってくれる。……そう言うのだな?」

試すように、確かめるように呟いた。

「『オールラウンダー』の名にかけて」

力強く頷いたオーラルに、肩の荷を下ろす。ハン老は、一つ頷き、

「そうか……なら、この老兵の命をやろう、ただし………、裏切りの海賊団を………」スッと、突然現れた気配。厳しい顔をして身構え口をつぐむハン老人を、片手で制して、

「おっと話の途中だったか、済まねえなオーラル」

音も立てず。器用に店に入るなり、背中の大剣を下ろして、

「またせたな~、海賊どもを,仕留めてきたぜ」

虫歯一つ見当たらない、美しい歯を煌めかせ、イブロはオーラルのエールを奪い、一息に飲み干した、

「カ~仕事の後の一杯ゎ、たまらん」

「なんと……それは本当か!」

先を急くように、問うハン老人に向かい、ニヤリ笑いながら、

「凶悪な策略はオーラルの十八番だ、あんたとつなぎ深めてる間に、海賊を仕留める策ゎ。わりとお得意よ~。きっとまた結末まで読んでるんだぜ、な?」バシバシ背中が叩かれ、ちょっと痛いが、あながち間違いではないので、肩を竦めていた、

「なんと……『オールラウンダー』とは……」

何かに気付き、口をつぐみ、やがて、


「クフ……クフフフフ、アハハハハハ、これほどの者に請われるか!、男冥利に尽きるわ。うむ。久しぶりに血がたぎるわい」

笑い声は、路地まで響いたと言う。



━━━━2日後、ハン・ミラ、シセ・ミラを秘密りに連れ戻ったオーラルは、ラトワニア神国にその姿があった。




━━オーラルがラトワニアを離れてから数日。城下町では、ある噂が流れていた。いや黒衣の手により流されていた。━━噂はこうだ、高名な義賊と名高い海賊アル・センバートは、仲間だった海賊から、娘を人質にされ殺された。どうにか娘は逃げ出せたが、祖父であるハン・ミラは孫娘を助けるため。長く隠れるように暮らしてたこと。再び海賊が娘を探して動き出したことを知り。『オールラウンダー』の称号を持ったオーラルに助けを求めたと……、




歯噛みする太陽神アセードラの大僧正ルメージ、海王神プラトーンの大僧正アセリア両名は、オーラルを睨みつけながら、黙ってでっち上げの話に、感心したり、感銘した顔をしてみせる。



━━二人がその話をようやく耳にして、訝しげに同席したオーラルを睨み付けていた。

「そんな話がどうしたと言うのだ?」

貴重な時間を作れば無駄話をされたと不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「本当に分かりませんか意味が?」

自信たっぷりに告げられ鼻白む。

そしてオーラルは、この茶番劇の話。裏にある秘密を語りだした。



━━4日後。ナターシャ女王陛下は、元高名な海賊だった、ハン・ミラを将軍の1人に据えたのである。

本来……、真っ先に反対するであろう、二人の大僧正は真っ先にハン・ミラ将軍の後ろ楯に、名乗りを上げた。犬猿の仲と噂される両名である、周りを、ナターシャをも驚かせていた━━。




これには無論訳がある……、オーラルとイブロを煙たがってた両大僧正が、密かにオーラルとイヴロの動向を探って知った事だ、無論大それた秘密を知るつもりで探らせていたわけではない。何か弱みを握ろうとした姑息な考えであった。何せあの二人は、他国の人間だ。上手く扱えれば自分の地位を安泰にさせる。




そして二人の部下何人か買収して。何らかの秘密を隠してることまでは突き止めた。そして……二人が探していた人物。孫娘の秘密を知って、驚いていた。

「そうか……アレイク王国は力を貸すと言いながら、裏でリドラニア王族を探していたか」得心していた。無論狙いもわかった。



そう孫のシセリアこそ、数年前に、公王に処刑された。リドラニア公国王女の娘である。

彼女は後継者になりえる王族だった。

そうとなればただの海賊の娘と祖父では立場的に不味い。



リドラニア公国に勝った暁には。彼女を女王として擁立。後ろ楯になれば、リトラニア公国の中枢に食い込める。二人の大僧正にとって、プラスにしかならない、



それに……、


━━片や海賊まで倒してもらい被害がなくなり利益を上げられる。


━━片やあらぬ疑いを掛けたライバルの大僧正に、貸しを作くれた。


………ここで後ろ盾に、ならないと……、自分達の方が、排斥を促される可能性が高いからだ。何せオーラル聖アレイク王国の政治的介入で動いていたのだから。それを防ぎ、監視するにも、ハン老を将軍として認めたほうが、自分達に都合がよいと思わせたのだ、最大の障害であった、二人の大僧正に確約させて、残った二人の大僧正からも約束を取り付け。

30000の僧兵が、陣営に加わった。これでリトアニア公国と兵力の差は、だいぶ緩和された。


余談だがハン・ミラを慕い。昔の海賊仲間100名が、ハン老の配下に加わっていた。

「これでナターシャの味方が、増えたかな?」

小さく呟いた。ハン老なら善き味方になってくれるだろう……、そんな淡い願いが裏にあった。

「リラ……と、オーラル~♪」廊下を歩いていると。甘えたような声で、ほっそりした女の子が、オーラルの腕にしがみついた。

「おっとシセリア。だいぶ慣れたかい?」

親愛を込めて、優しく頭を撫でる。くすぐったそうに笑いながら、

「まだまだ足元がスースーして、不安かな」

不満そうに。スカートの裾をつまみ、悪戯ぽい顔で、

「オーラル見たい?」

艶やかな女の眼差しが入ていた。ドスドス大股でハン老がシセリアの後ろに立って、

「このバカ孫が……何を浮かれておる」

軽い拳骨も、小気味良い音がして。シセリアは眼の端に涙浮かべていた。「何にするのさ、くそジジイ!」

負けん気の強い、鋭い眼差しは祖父譲りか、シセ=シセリアは、祖父のハン・ミラ将軍とにらみ会う。

━━少し前までシセと名乗って、男の子を演じてた時とは雲泥の差である。表情がコロコロ変わって。生き生きしていた。「なんじゃこの馬鹿孫が!」

朝から、元気なじいさんと孫である。傍らのクエナなど眼を丸くして。カールは鼻の下を伸ばした。瞬間エルのスタッフが、カールの脇を強打、


「グッ……」

脂汗を流して悶絶した。ミラ先輩は、キョロキョロしながら、手持ちぶさたで、夕べ一番上の姉ノルカに、お手製のお菓子を、渡したことを告げているから、母犬が何処かに潜んでないか、探す子犬のようである。「あらあら~愉しげな声がしたから、つい釣られて来てしまいましたわ♪」

すっかり顔に血色が戻り、美しさに磨きが掛かる。ナターシャ女王は、シセリアを見つけて、嬉しそうにはにかむ。

「ナターシャ様」

嬉しそうにシセリアも眼を輝かせ、ナターシャに抱きついた。二人を見てると本物の姉妹に見えた。先ほどまで、けんもほろほろだったハンですら、目尻を下げていた。ナターシャ女王の優しい人柄に、海賊だったハン老だが、騎士のように、振る舞う、

「そうだオーくん……、アレイク王国から、伝令です。明日にも。カレイラ師団が到着すると━━」



━━━リドラニア公国軍が、動いた━━、


急使が届いたのは未明。直ちにナターシャ女王は、

四人の大僧正に命じて、僧兵18000を、国境付近に向け、出発させていた。


━━大将軍として、四人の息の掛かった凡庸な男が選ばれ、任に付いていた、イヴロは副将軍として同行していた、


オーラル達、第1分隊は、本体の到着が遅れてるため。到着次第━━出発の予定である。


本国の防衛を任されたのは、新任のハン・ミラ将軍だ。あくまで名目の将軍である。


━━やはりと言うべきか、ラトワニア神国の内情はかなり深刻で、王政の筈だが、四人の大僧正の力は、女王より遥かに大きい、ハン・ミラ将軍は、女王にとって、微力ながら気を許せる味方であった。ナターシャ様は、オーラルと話すときだけ、可愛らしく切ない目をしてるから。ムムムと悩ましげな。顔をするシセリアであった。



━━━数日前、オーラルが、ラーダの町に潜入してる頃。



カレイラはノルカの妹レイカから報告を受け取り、ざっと眼を通していた、ケレル殿下の命を、オーラルがどう判断したかを、知り、自分ならどう動くか、考えるためである。

「私と違う切り口だが、最良な采配だ……、しかし……、軍内部に、入り込んでいたか……、厄介だな……」

幻影の魔女ラグラドの能力、かなり危険である。「失礼します。カレイラ准将」

アロ・ジムス補佐官が、やつれた顔をしながらも、満足そうに入ってきて、

「滞りなく、準備出来ました」

「ご苦労様、今日はゆっくり休んでください、明朝出発します」

予定より時間かかったのは仕方ない、オーラルの性格から、今頃楔を打ち込む為の行動しているころだろうか?、



━━南大陸、ダーレン自由解放軍━━本部。



野心に満ちた、精悍な眼差し、痩せて風貌が変わっているが、隠しきれない洗練された、品の良さが。男は王家に連なる。名家の生まれだった……が、父の失脚とともに家は没落、領地を奪われ、国を逃げ出した。男の名を、エトワール・バローナと言う、

「バローナ将軍、いよいよですな」感慨深く。呟くのはダーレン自由解放軍参謀、アルマン・ソゲン、黒髪は、南大陸では珍しくない、顔立ちは、木彫りの木を、荒く、削りだした。味のある男で、南大陸の地理を隅々まで、知り尽くす。南大陸最大の商家アルマンの時期当主で、ダーレン自由解放軍の資金を出してる人物である。



なぜバローナが、南大陸にいるのか、そして反乱軍で将軍などと祭り上げられているのか……、最初に彼と出会ったのは、今から数ヶ月前になるか……、

アルマンの手引きで、小国ダーレンの民衆を煽り、一つの国を手に出来たのは行幸である。

━━アルマン商会の目的は、自治区の商業都市国家を造りだすことだった。

そもそも南大陸の商人は、軍人と違い、発言力が無いに等し扱いを受ける。



近年━━天候不良続く以前から、小国ダーレンは、財政難の穴埋めに。アルマン商会から多額の資金を貸りてたが、財政難を理由に、支払いを渋り、終いには……、アルマンの父と妹をなぶり殺した、無惨に殺された父、何度も犯され。殺された妹………、アルマンは復讐を誓う、



そして……。

商人の為の国━━━、

商業都市を造る為に、バローナを━━。


魔法使いギルドに在籍していた、デーア・オルトスと言う男も仲間にした。


バローナは、アルマンに拾われて、とりあえずの頭に据えられたのだが……、元来の負けん気の強さが、苦労を重ね。それをバネに出来たからこそバローナをカリスマ性ある指導者に仕立てあげていた。憮然と眉を寄せたバローナが、

「そうだな……、この戦、上手く長引かせれば、十分にお前たちの準備を固められ。俺はお払い箱か?」

鋭い先見性、商人であるアルマンにはない、素晴らしい読みを、バローナは見せた。惜しいと実に惜しいと思わぬ拾い物に。表情に出さないが、素直に感心していた。

彼の言う通り、使い捨てとして、それも考えたが……、今では惜しいと……考えるようになっていた。

やはり━━商人が、表に出るには不都合と、理解していた。

あの━━魔王の配下との約束もある。ファレイナ公国との戦が長引けば、それだけ盟約を結びやすい。

うまくファレイナ公国側の土竜馬車ギルドに。参入出来れば、アルマン商会の名を、全大陸中に知れ渡らせる事が出来る。アルマンの夢は、大陸一の商人になること━━。父や妹のような不平等を無くす為に。アルマンは整列する。ダーレン解放軍の陣営で作られた。兵達を見ていた。




━━ダーレン自由解放軍5万に対して、ファレイナ公国は僅か8000の陣営だ、しかしパライラ騎士団の兵は、一騎当千の強者ばかり、

対して、ダーレン自由解放軍は人数こそうわまるが、半数以上が元農民である。


「デーア次席」

黒のゆったりしたローブを着た、若い魔法使いは、敬愛するデーアの手伝いを申し出る。彼に肩を借りて、不自由な足を引きずりながら、目的地に向かう。



南大陸には、他の大陸にはない古き歴史ある。魔法使いの塔があった。

神代の時代。最初の魔法が生まれたのが南大陸であった━━。



時は流れ何時しか、魔法使いの塔とは、魔法使いの象徴とされていた。

しかし数百年もの怠惰は……、魔法使いをも腐らせた。

古き叡知はごみ溜めに埋もれ、知識は金を得る手段に変えて、今や権力者に成り代わろうとしてる学舎であった魔法使いの塔は……、不正の温床に。腐りたるは、南大陸最大の国と変わらない……、


清廉こそ美徳、武こそ雄弁、そう語り、体現してきた、剣の国ファレイナ公国以外、隣国は歴史にあぐらをかいて、腐っていたのだ……、



若き学生時代のデーア・オルトスは、若き天才の名を、欲しいままにしていた魔法使いであり。稀代の歴史学者であった。彼は8年前……、一つの概念と出会った。

東大陸で使われ始めた。因子変換魔法を、デーアは新しい系譜として、独自に研鑽。新らたな魔法をいくつも作り出していた。

若い魔法使いは、デーア・オルトスの才能に畏怖しながらも。彼を師として慕う、同じような若い魔法使いは、彼に師事を願い集まったのは言うまでもない、


結果━━デーアを妬み。魔法使いの塔、魔法使い筆頭を含めた幹部は、デーア排斥を行った、

無論デーアとて、沢山の仲間と抵抗したが━━ダーレン国王の甥にあたる筆頭に破れ━━、


多くの仲間を失いながら、デーアは生きた。拷問され左手と右足を失い。腐りかけたパンを食べ。泥水を啜りながら、それでも最後の最後まで生きることを止めなかった。まさに殺される直前。ダーレンで一気が起こり……、デーアは一命を取り止めた、

ゆっくり義足を引きずり、不十な身体を動かし向かう。



そして……稀代の賢者は、自分を慕い。世界が、国が、変わる瞬間を己が目で確かめること望んだ者。百人近い若い魔法使いが集まっていた。陣営近くの山間。石切場に作られた。巨大な魔法陣。整列してる巨大なゴーレムを前に。表情を改めて。デーアは手を血に染めることをい問わない。



自分の知識を使い。また有用と認めてくれた。若き英雄の為に━━その力を使うことを。デーアは求めたのだ。

複雑な魔法陣が、幾重にも描かれ、魔力は一体の巨兵に、注ぎ込む、

「明日の戦にまにあおうぞ、我が主よ」

満足そうに、デーアは微笑する。



━━━ファレイナ公国・陣営。

「団長、本国から連絡です」

着物と呼ばれる。着流しの白装束姿の壮年の武者は、小間使いに髪を結い上げさせながら、おうように促した。

「お嬢━━ミザイナ様が、来るそうですぜ」

ザワリ……、驚きと嬉しそうな声音が、陣営に木霊する。

「ふっ、そうか……、ならばあやつに良いところ見せねばな、ジンベイ?」

傍らの重鎮の中でも、一番若い武者は、ほんのり赤面しながらも、ぼくとつと頷いた。



ファレイナ公国には、厳然とした序列がある。

━━最強の剣王=国王を筆頭に、

騎士王=パライラ騎士団長アルタイト・アルタイル、

剣姫=ミザイナ・アルタイル、

剣聖=ジンベイ・アート

剣将、騎士、剣士の順に、剣の腕が問われる。ファレイナ公国にとって、八人の剣将になるのはある意味、夢であるが、次代の王となることが、決まってる剣姫=剣皇は、ミザイナ1人である。次代の王となるミザイナが、参戦すると言うのだ。幼なじみで、婚約者である。ジンベイにとって、憎からず思ってるミザイナに、良いところを見せたいと思うのも仕方ないこと。アルタイト・アルタイルにとっても、久しぶりの愛娘の参戦だ、うっすら笑んだ、

「明日は、思い上がってる。商人どもに鉄槌をくれてやれ」

「おう!」

嫌がおうなく、士気が上がっていた。、



真新しい、剣姫用。純白の白銀鎧を身に纏い。重厚ある。片刃のロングソードを腰に懐き、眥を険しくして見定め。剣姫にだけ、着用を許されたマント、赤に、王家の家紋、馬と剣を錦糸の刺繍で、精緻に凝らせていたを翻し。ミザイナは、伯父である国王の前に、頭を垂れる。

「剣姫ミザイナ・アルタイルよ。その剣をもちいて、我が国を狙った愚を、思い知らせるがよい」

「はっ!、剣に掛けて」

ミザイナは颯爽と立ち上がり、中庭に待つ、剣姫親衛隊12人と馬上の人になり、ミザイナはベランダに出た伯父に一礼して、愛馬の腹を蹴った、


山岳地帯であるファレイナ公国だが、隣接する国国境は、平原となっていて、真っ直ぐ街道が走っていた。伯父の話では、遥か昔建てられた、とても古い見張りの塔がある。塔と言っても、二階建ての古い屋敷に毛の生えた物に。敷地と、申し訳程度の掘りが作られている程度の物だ。



━━いきなりダーレン自由解放軍が辺境ではあるが、意表を突かれ占拠されてしまう、

僅か半月の間に、予想外の要塞化がなされていた。


周囲に家々を建設して。さらに木造の騎馬返しが、正面入り口、更に、左右の三ヶ所に設置され、騎馬返しの横に土嚢が幾つも掘られ、弓兵が、隠れてると見るしかない……、

「この僅かな時間でここまでとは……」

パライラ騎士団の主力は、騎士である。騎馬戦を主流に、剣聖他、剣将率いる。剣士が少数精鋭で、斬り込む戦略を得意としているため、消耗戦のような、地道な戦いに、向いてないと言う、弱点を突かれた型になる。いささか驚きを隠せないが、困る程ではない、アルタイトにとってこの程度のこと……、想定内であったのだ、

「白兵戦用意!」騎士全員、馬を降りて、

「抜刀、第1陣から、流水の陣を形成、第2陣側面から急襲、第3陣は待機」

剣聖ジンベイ率いる第2陣は、騎士を囲む様に、左右に待機する。アルタイトの号令一陣、凄まじいスピードで、走り出さしていた。


ファレイナの剣士の足は、馬に並ぶと言われている。

第2陣にはスピードを誇る剣士が集まっていた。

騎士は鎧の重量で、ややスピードは劣るが、息一つ乱さず。鎧を着こんでるとは考えられないスピードで、走っていた、

これこそファレイナ公国独自の魔法である。肉体強化に特化した。北大陸の魔法似てるが、ファレイナ公国独自の魔法それは……、


慌てる。ダーレン自由解放軍は、単発的にだが、数千もの凄まじい弓矢が、雨の如く、落ちて来たのだが……、

信じられない光景を、目にすることになる━━━。


「ほう……あれをかわすか、あの動き、風の魔法か?」

学生時代は落ちこぼれだったバローナである。しかし卒業間際の頃には、アレイ学園の『院』に在籍していた。無論大陸ごと、国ごとに魔法が違うことを知っていて、軍師デーアより学んでいる。「オーラルを嫌ってた俺が、あいつの魔法を得意とするとはな……、変な縁を感じるぜ」

皮肉気に笑うバーロナの元。次々報告が入る。

「魔法弓部隊、配置に着きました!」

直ぐ様命を与える。

「引き付けて、目にもの見せてやれ」伝令が走り、各部隊に伝達された、


━━突然土嚢の穴から、数人が立ち上がった兵が、矢をつがえぬ弓を引く姿を。目のよいジンベイは見た。長年培った戦士としての勘が、警鐘をならした。

「気を付けろ!普通の矢ではないぞ」

その場に立ち止まり、ジンベイは、両手持ちの大剣を正眼に構えた。それを見て周囲の配下は、ジンベイの斜線から外れ、背後に下がる。

同じ采配をした。各剣将も同じような陣形を型どった。

━━上から見ると、10の矢じり陣形が、逆扇状に見える筈だ。

「てい!」

間髪入れず。色彩様々な矢が、装填、次々に放たれた。

「ちっ!魔法を矢にして放つ武器か」魔法武器、そう呼ばれる。遺物が、まれに遺跡から発掘される。魔力のあるものなら、誰しも簡単に扱えるため、国々で、研究されたが、あまりに難しく、配備されていないと聞いていた。

「舐めるな━━━!、はぁあああああああああああ!?」

ジンベイの構えたる大剣。精緻な竜は魔力に反応して、生き物のように動きだした。大剣の台座にあるオーブに向かい竜は、手を伸ばしオーブを掴んだ。

「うおぉおおおおおおおおおおお!!」

ジンベイの魔力は、一瞬で、オーブに吸われて、オーブは赤く明滅する。「喰らえ。竜の咆哮」

凄まじい烈風が、剣の一振り切で、放たれ、迫る魔法の矢を滅した。


次いで、爆発が、次々と上空で起こりる。両軍を強風で凪いだ、

アルタイトは、薄く笑い、

「良い判断だ」

弟子の成長に、眼を細めていた。



━━━ダーレン自由解放軍、

「ちっあれを斬るか、とんでもな奴等だ……、だが、ミザイナに絡んだお陰か、それくらい出来て貰わないとな面白くねえぜ」

不敵に笑いながら、先日魔王ピアンザの配下である。不気味な双子と会談したのを思い出していた。


あれはバローナが、アレイ学園卒業を数日に控えていたある日のこと、叔母のレイダ王妃から、自身の暗殺計画がある知った。



━━当時のバローナは、クソたれな少年だった。父を失い、飾り物の家名だけ残された没落した貴族など、誰からも構われず。無視され。ついには苛められていた……。



……元来バローナは、剣の素質、魔力も高く、才能に溢れていた。しかし駄目な父を真似て荒れて、がなり散らし。人に当たって、どうしょうもなかった。しかしミザイナと彼女の部隊と散々戦って、気が付けば……、バローナは叔母のレイダ認められて、あの船に招待されていた。

ミザイナ達と、あの船に乗ったことが、バローナを変えたきっかけである。

色々と苦労はしたが、どうにか助かり。学園に戻ってら。真面目に勉強をするようになっていった。

元来バローナは、レイダ王妃に似ていて、聡明な少年だったが、父の悪影響で、腐っていた、今ならば素直にオーラルを尊敬すら出来る。あんな状況から『オールラウンダー』の称号を与えられたのだ。

当時は考えもしなかったな……、あのケレルが、自分を危険視して、暗殺を企ててるとは、知らせてくれた叔母も辛かったに違いない……、



もはや権力に、興味すらなかったバローナだったが、外の世界を見て回ることに決めて。

命からがらアレイク王国を逃げ出していた。

━━最初に向かったのが、両大陸を繋ぐ地下迷宮。徒歩で巡り、様々な亜人の街や、人間の集落を巡り、三年かけて━━、南大陸にやって来た。



たまたま立ち寄った次の国で、色々な不運が重なりダーレンで、農民の一気に加わり。大きな屋敷を襲っていた。その地下牢で見つけたのが、死にかけていたデーアである。ついでに助けた。逃走の途中、ダーレン軍の追撃を撃退して、命からがら逃げた先にいたのが、傭兵を集めていたアルマンと出会う……。

彼から自分の父と妹がダーレン王家に殺された事を聞いて、迷いはあったが、力になることにした。


アルマンは当時ダーレン国王の暗殺を考えていた、バローナの説得もあり反乱軍と手を組むことを選んでくれた。



だが所詮は農民である。無論ダーレン軍は侮っていた。バローナの目覚ましい活躍で。次々にダーレン軍を敗退させていった……。

瞬く間にバローナは反乱軍で一目置かれるようになり。一月とせず。反乱軍のリーダーに据えられていた。


━━数日前。

深夜━━、国境の見張り台を占拠した反乱軍の陣営。アルマンに呼ばれて。やつのテントを訪れた。

出迎えたのは二人の子供だった。訝しい気に眉をひそむさせたが、アルマンは二人を敬っている様子で、さすがに違和感を感じた。無邪気に笑う仲の良い双子。最初はそう思った。だが……兄弟がバローナを見た瞬間。

肌が粟立つっていた。

まるで人形をでも見るように、ガラスの眼のように透明だが、何も写さない……、

そう誰もが一度は見たことがある筈だ、人形を可愛がるが、大事にしない子供を……、



人間を玩具か、何かとしか見ていない……、壊れた眼差しこそ双子の少年が、人間に対する思いであると、バローナは直感した、こいつらの見た目に騙されるなと……、眼差し鋭く双子を警戒しながら、席に着いたバローナ、驚きを隠せず。立ち尽くすデーア、

「お前たちは……」

「ああ~兄さん兄さん見てよ。アハハは、先生がいたよ」

「アハハは、生きてたんだね~馬鹿学長から逃げ出せたんだ」

同時に喋るようで、どちらが喋ったか解らない……、

「流石は、魔法使いの塔で、学長に次ぐ、次席魔法使いである。デーア・オルトス様、二人をご存知でしたか!」

恭しく丁重な口調ながら、アルマンも何処か壊れた笑みを浮かべていた。

「お二人は、魔王ピアンザ陛下の配下。6将の1人━━、正確にはお二人ですが」

「グラベル」

「グレム」同時に答え。無邪気に笑う。

「闇術士━━━そう呼ばれてるそうです」

バローナの顔色が変わる。地下迷宮で、さ迷っていた時だ。アレイク王都を襲った、奇妙な伝染病があったと聞いた、

南大陸でも珍しい病……、テロを起こしたのは年端も行かぬ。双子の少年と言われていた。

バローナは、アレイ学園の入学式前に、地下迷宮に入っていて、噂で知った程度だが━━━。

バーロナの顔色を見て、アルマンはにやりほくそ笑むと、胸中を考えもしない盲信者のうよな、言葉を連ねる。

「バローナ殿も知っておられましたか、それは好都合━━」



日を追う毎。狂喜を抱き変貌するアルマン━━。


まさか━━。

今さら見捨てることは出来なかった……、魔王の狙いを知り、叔母に密かに知らせるためにも残ることを決めたバローナ、「それよりも……楽しみだぜ」

ミザイナと再び戦う機会が与えられるのだ。自分の力量を試す好奇である。




━━東大陸東部。リドラニア公国。


中央大陸があった程の昔。東大陸にはラトワニア神国しかなかった……、魔物の生息地域はいま以上に広く分布しており、何としても海岸までの街道整備が急務だった。



リドラニア公国は、ラトワニア神国王の双子の弟が祖であり、今ほど険悪でなかった……、

当時王弟は数千の民を引き連れ、見事海岸までの街道を整備して見せた。その偉業を称えた兄王は、新たに国を興すよう命じた……。


現国王セージ・キラオクは━━、

三人の兄、二人の妹を処刑して、残虐王と呼ばれていた。


セージ王が王になるや、航路、陸路の商人以外の入国を断裂させた。全ての国々との同盟を破棄。密偵は、見つけ次第殺害、疑いあるものを捕まえ、拷問して殺した。異を唱えた忠臣やその家族を路頭に引き出し、皆殺しにしたのだ。



そのため……、国王に逆らう者は消え、奇妙な静寂と、惰性的、閉鎖的だが、王に、逆らわなければ━━、

国民は奴隷のように、常に怯え、恐怖の中。

一応の平和が、表面上は━━訪れた……。セージ王にとって、魔王と同盟したのは、ほんの気まぐれであるが、

「まあ~よい」

ベッドで、美しい肢体を惜し気もなく蠢めかせる。何人もの女を侍らせながら、無造作に聖剣と呼ばれる。長剣を無造作に、投げ与える。


「セーダ、貴様にくれてやる」

王であり、半身の狂態を、興味なく眺めていた。王と瓜二つの半身は、興味深そうに、その剣を抜いた。と思ったらいきなり王の首を跳ねた、

「おいおいいきなり何をするセーダ」

頭だけゴロリと回りながら、何も感じる事がないように、ニヤリと笑んだ、斬られた筈だが……一切の血が流れず。王の下半身に群がる女達は、驚きも、興味すら無いようだ、

「まあいい~。貴様の昔馴染みだろ奴等は」

青白い顔を、狂喜に彩らせ。神の呪いで、不死となった狂王セージ・キラオクは、自身の影である。セーダを将軍に据え、進軍を命じた、そう……不死の軍を━━。




━━━ラトワニア神国、北にある集落。深夜━━━。




温かい母の温もりが消え、アミは眼を覚ました。集落では、母と二人暮らしだが、司祭の母を慕う村人から、アミは可愛がられていた。愛らしい風貌と。誰からも愛される。そんな少女である。

「ママ?」

奇妙な静寂と日が昇らぬ深夜。不安になったアミは、クシャリ泣きそうになっていた。おずおずランタンの明かりのある。食堂兼キッチンに向かう。

「ママ?」ガサゴソ、ぐちゃぐちゃ、グシャリ、骨を噛み砕き、肉を喰らう獣ような、うめき声、アミは、少し開いてる。扉の隙間から中を覗き見て………、



息を飲んだ━━、

………パクパク、少女は無意識に声を出してはいけないと、悲鳴を上げそうになる口を、両手で押さえた。


アミは、部屋に急ぎ……扉を閉めて開かないように扉に鍵をかけた。

本当は怖かった……、強く美しい母の変わり果てた姿。思い出して嗚咽を堪えた。母の言い付けを思い出した。

『アミもしも母さんに何かあったら……』

涙が次々溢れ、ポタポタシミを作り、ベッドの下にあるリックと杖を掴み。床下の嵌め込みを外して、軒下に降りて、しゃくりあげながら声を押し殺し。這いずりな涙を飲んだ。



どうにか森まで逃れ、そして……、集落を徘徊する。ゾンビの群れに、蒼白に青ざめる。いつの間にか首に掛けられてた母のアミュレットを掴んだ。

「ママ………」

これは不浄なる者から、身を守る護符の役目をしていた、母は無意識にアミを守るためにアミュレットを握らせていたのだ、

アミは、母愛用の杖を手に、集落を逃げ出していた。



━━━数日後。ラトワニア神国、

「申し上げます!。国境北西に、ゾンビの群れに襲われてると急報が……」

次々に舞い込む、ゾンビ被害は、増大していった。話によれば、ゾンビは、リドラニア公国から流れてると、報告されていた、青ざめる女王ナターシャ、既に出発準備を終えたカレイラに、視線を送る。しばし考えるカレイラは、オーラルに目配せ返していた。

「カレイラ准将、おそらくは……リドラニア王の力だ、噂通りなら厄介だ、第1分隊に、調査、撃退命令を」

既に、目配せで、お互い決めてあったが、敢えて口にすることで、女王を=聖職者たる。要職にある大僧正を我に返らせる。数瞬の間を取って、

「カレイラ准将閣下、我等の司祭同行を、打診する」

思惑通り、太陽神アセードラ大僧正ルメージは、語気荒く、息巻く、

「我が神殿からも司祭も同行させる!」

対抗心燃やす。海王神プラトーン大僧正アセリアが申し出た、アンデット騒ぎはカレイラの想定内で、その為の魔法使いの部隊編成であったのだ。


本来ならフロスト騎士団を、織り込むべきだが、そうはいかない理由がある。

「礼をいいますカレイラ准将、申し訳ありませんが、オーラルさん頼みましたよ」

「はっ」安堵のため、ナターシャ陛下は艶やかに微笑していた。



━━━━オーラル、クエナ率いる。第1分隊は、カレイラ師団と時を同じくし、北上するが、途中から第1分隊は、西回りに進路を変えて、問題のアンデット騒ぎのある。国境の街に向かった。

「炎よ、渦巻け、ファイヤーボール」

エルの頭上に、ちょっとした岩程の炎球を浮かせ、放つ、

着弾、凄まじい暴風、大局して迫るゾンビを焼き尽くす。

「隊長!下がって」魔力の使いすぎで、真っ青な顔のエルを庇い、ジン・ゲルマンが、得意の長剣を抜き放ち、前に飛び出した、緩慢な動きのゾンビを豪剣で両断して退却する隙を作っていた。小隊の面々も心得たもので、隊長を中心に、強固な陣形を組む、隣のカール小隊が、エル小隊の前に出て、エル小隊の退却を助けに出る。

カールの合図に、ジンが呼応して、

「隊長失礼します」

「ジン!カールは」

慌てるエルを抱え。クエナ小隊の本陣まで下がると同時に。ミラ小隊が一気に、戦線に入るや、ミラは先頭に立ち、当たるを幸いに、ゾンビを倒しまくる。後に続く小隊員が、傷口を広げ、


オーラル小隊が護衛する、司祭を連れ、ようやくゾンビの群れの中枢まで切り込んだ、

「頼みます」

「心得ましたわ」

「うむ」

まだ10代であろう少女は、太陽神アセードラの司祭リーヌ、

白頭の中年は、海王神プラトーンの司祭でハイル。二人を守りながら、近付くゾンビを倒し周囲の様子を伺う、


オーラル達が要るのは、国境から離れた、遠目に国境の街が見える草原で、

あの巨大な岩からこの辺り一帯は、小分けにされた柵で囲まれた畑である。


━━ゾンビさえいなければ、葡萄の収穫時期で。その為。仕事を求めにきた。沢山の人間が集まっていた。かっこうの餌場になってしまった……、



その数━━、

万を超える数のゾンビが徘徊していた。もはや国境は危険地域となっていたのだ。

第1分隊が到着したのは、10日程前……、壊滅間際の国境の街には、僅かに生き残った住人を助けながら、どう打開するか、話し合った結果。

血気に逸る。太陽神司祭リーヌが、

「死者の浄化ターンアンデットで一気に倒すしかありません!」

確かにそうだが、フロスト騎士や聖職者の使う死者の浄化は、術者から、目視で見える範囲の円形状で、範囲は術者の熟練度で決まる。さらに高い魔力を必要とされてため。そうそう連発出来る奇跡ではない、

「お嬢ちゃん、確かにそうだが、連発は出来ないよ」やんわりと有無を言わせずたしなめる。思量深い、中年の海王神プラトーンの司祭ハイルが、リーヌを諌める。

「うっ……、そうだけど」

羞恥に顔を赤らめながら、素直に座り直す。

「オーラル殿、私もリーヌの答えしか思い付きません、貴方ならどうしますか?」

些か、驚きを隠さずオーラルは薄く笑っていた。、



ラトワニアを出発した当初━━、

国境の街についてからしばらくは、反目し会う神を頂く二人である。いさかいを起こすかと懸念してた、


━━しかし海王神プラトーンの司祭ハイルは、司祭にしては変わった人物だった。

街に到着して間もなく、ついに我慢出来ずハイルに噛みつくリーヌ、ハイルは優しく説き伏せていた。数日の間……。

一緒に行動を共にしていたリーヌは、諦めずハイルに噛み付き続け神々の討論を繰り返しては、時に怒鳴り散らすを辛抱強く聞いてから諭じた。

やがて……、少しずつリーヌ司祭は、他の神を信じる事を認め……、互いの神の教えについて語り合うようになっていた……、

「こんな策はどうでしょうか?」

ハイルの真摯な眼差しをみて、今の二人なら……、ある提案を、二人の司祭にして、二人を唖然とさせた。

「そのようなこと可能なのですか……」

息すら吸うのを忘れたように。ハイルは興奮する。



━━━二人の司祭が、それぞれの神に奇跡を祈る。

「人々に、光の慈しみを」

「人々に、優しき恵みを」『与えたまえ。』

二人の司祭の声がハモり、互いの手を握り合う、オーラル小隊の面々に、カールが増幅の魔法を何十にも掛けた。



━━アレイク王国、フロスト騎士団には。大地の女神アレを奉るが、他の神の信者の入団も認めてるため。大地の女神アレ以外の奇跡を使える者がたまにいる。

あれは本当にたまたまで……、王都が、伝染病に見舞われた時である。みんな疲れていた。喩え違う神に祈ろうと。人を助けたいと願う心は同じだ。二人の司祭は患者のため癒しの魔法を、同時に使ったことがあった……。


━━エレーナ大司教はそれを、奇跡の共鳴と呼んでいた━━。


オーラル小隊に掛けられた。増加の補助魔法、これこそフロスト騎士団が、大陸最強と呼ばれる由縁である。二人の司祭の奇跡を願う心が。奇跡を起こす。


神々は、純粋な祈りに応える。そう━━神々が、時に、手を結ぶ程に━━。

それが互いを嫌う神々とて同じ……、二人の司祭の純粋なる気持ちに、神々は応えた。二人の司祭が唱えた。死者の浄化ターンアンデットは共鳴して、広がり、更に。オーラル小隊に掛けられた補助魔法で、爆発的に広がった。



━━……在野を埋め尽くさんとしていた。ゾンビの群れが……、一瞬で灰になっていた。

「せっ、成功した……」「本当にこのような奇跡が……」

二人の司祭は驚き見合う、握ってた手を慌ててハイルが放し。

「済まない……」謝辞を述べたが、リーヌは小さく首を振り、信頼を込めてハイルを見ていた、

「どうにか鎮静化したか……」

オーラルは疲れた吐息を吐いて。安堵していた。



無事戻ったた第1分隊を見つけ、隠れて生き残った人々が集まってきた。沈鬱な顔ながら、安堵が広がる。

「あの……、宜しいでしょうか」

意思の強そうな、少女が、侍祭の杖を手に、大地の女神アレのペンタグラムを掛けていた、強く聖なる光が、ペンダントから感じられる。

「私は、大地の女神アレの侍祭フレンダ・マーキュリーの娘で、アミ・マーキュリーです」迷っていたアミだったが、自分の身の上を話し見習いとして、二人の司祭の手伝いを申し出た、

「それは助かる。お願いします」

命を落とす部下はいなかったが、怪我を負った者は多い。二人の司祭がいるとはいえ。強力な奇跡を使ったばかりだ。無理は出来ないだろうと考えていた、

「リーヌ司祭……」

疲れが見受けられたリーヌ司祭に、アミの身の上を聞いてたオーラルは、彼女が見習いながら癒しの魔法が使えると伝え

「任せて下さい。オーラル様」

2つ返事で了承してみせたので、ハイルを驚かせた。



オーラル達第1分隊は、怪我人をリーヌ司祭達に任せて。一方で、オーラルは、自分を見詰める気配に気付いていた。




━━その日の夜……。



オーラルは料理人となり。生き残った人々のために山のような料理を。テキパキと準備して、リーヌ、ハイル両司祭を驚かせた。オーラルの手伝いをロート・ハーレス他、小隊の面々は慣れた物で手伝う、そんなみんなを遠巻きにオロオロするクエナは、悔しそうに唇を噛み、怨めしげな視線をオーラルに投げていた。それも仕方ない……、クエナは壊滅的に、料理下手である。

第1分隊の暗黙のルール1、クエナを絶対に料理に近付けるな、である。クエナには遺憾だろうが、誰もが旨い物が食べたいのだ。

「オーラル様、洗い物は私が……」

アミは一日中。両司祭に付いて、怪我人を見舞い。癒しの魔法を使って疲れてる筈だが……、オーラルを気遣っての申し出。

「ありがとう~、お願いするよ~」

軽薄そうに答えるカールだが、どこか妹リーラに似通った、生真面目さを見せるアミを、女の子大好きには珍しく、気遣う様子を見せ、エルの不協を得ていた。

アミとカールに後は任せて、オーラルは気配を殺し闇に隠れる。

「オーラル?」

ミラは、驚いた顔をしたが、直ぐに表情を消して、気配を殺したオーラルと同じように闇に紛れていた。



しばらく闇夜を走っていると。遠目にオーラル背が見えてきて。段々と嫌な予感を覚えたのだ、

そう……あの時。起きたら見覚えのない宿で、目覚めた時のような全てが終わった後の不快感。これではあの時と同じである。



━━あれは……10年以上前になるか、オーラルとの出会いは、

当時ただ一人ライバルと認めたミザイナが、やたら彼奴のこと話すのが気に入らなくて、

気に入らない!、自分勝手な理由だった……、



入学式に合わせ、学園では、弓、槍、剣、拳の4つの大会がある。新入生の歓迎会と。

━━アレイ学園が誇る。『特待生』同士の力を見せる。言わば、一年に一度あるお祭りで、参加は学生なら自由、新入生の飛び入り参加等。屋台が出たりと。とにかく楽しいのだ。あの年は……、季節外れの嵐のせいで他大陸からわざわざ、アレイ学園に入学を望む学生達が、4日遅れた、その為武芸大会まで遅れた……、

「おい!新入生、拳の部に必ず出ろよ」

戸惑う、新入生=オーラルと慌てるミザイナを残し颯爽と立ち去っていた。

ミラは黒衣の一族の生まれだった……、体術だけはずば抜けた才能があったがそれだけだ。他の暗殺術、諜報活動に向かない性格で、随分と悩んだ……、


姉のノルカは本当の天才である。あらゆる技術が図抜けていた。幼少からていたミラは、自分が何処かおかしいのかと、本気で悩んでいた。

妹レイカの手紙を見るまでは……、優しい姉だと誤解していた。

「ミラ、お前を黒衣から除名する!」

息を飲むミラに、僅かな金子を投げ寄越し、村から追い出された、一瞬意味が分からなかったが、村の大人達は誰も何も言ってくれなかった。でも無言の重圧に耐えられず。ミラは涙ながら村を出て行こうとしたときだ、「お姉ちゃん!」

ハッと泣いてる顔を乱暴に拭い、

「何!」

何も知らない妹の無邪気な顔が、無性に腹正しい。妹は息を飲み、顔を強ばらせながら、

「これ……お姉ちゃん」大好きな姉に、怒られて、泣きそうな顔のレイカに、罪悪感を覚えるミラ、でも唇を噛み締めて、ふんだくるように、手紙を受けとる……、


━━ミラへ……、


父さん……、あまりのことに忘れていた、いつも優しくしてくれた、優しい父親の存在━━、

救いを求めたかった……、父親を信じていたかった………、



そして……息が止まる。数行の手紙には、



━━王都カウレーンにいけ、アレイ学園の入学手続きは終わっている。



それだけだった……、慰める言葉も、気遣う様子すら……なかった、

『私に居場所はない……』

アレイ学園、入学式ミラは、新入生でありながら、オーラルが入学する前年。拳の部と呼ばれ、今年から体術の部に変わった大会で、優勝してみせた……、ミザイナは、ミラと同じく、剣の部で、新入生ながら優勝していた。同じクラスの『特待生』同性の気安さか、すぐに意気投合していた。



『今なら分かる……、自分の場所を取られた気がして、赦せなかった』

体術の部で、あいつは準決勝の舞台に立っていた……、むかつくことに、あいつは強かった……、だがあの程度……、私の圧勝だった、が……初めて苦戦を強いられた。



翌日意気揚々とミザイナの応援に、会場に入りして、オーラルがいるのに、驚きを隠せなかった。あれだけ痛め付けたのに……、無傷なんて、呆気に取られる内に、オーラルは決勝まで残り、ミザイナ相手に、互角に近い戦いを見せて、ミザイナの勝利に終わる。

『なんなのこいつ!』

気に入らない、だから気になった、ミラが自分の道場をもつきっかけは、オーラルの生き方だった………、


元黒衣として、オーラルを調べることにした……、父親は、名の通った土竜騎士で、数年前の大崩落で、行方不明、母と姉の三人暮らしだった。

毎朝、日も登らぬ早朝、オーラルは、アレイ教の神殿のある。大通りで商家の人足バイトをしていた━━毎日毎日、誰にも言わず、黙々と仕事をしていた。

気になったミラは、商人に訪ねた。

「オーラルかい、彼奴は、優しい子だよ、苦労して、働きに出た姉に負担を掛けないよう、一切の学園で必要な、本、制服、雑貨を自分で働いて用意したのさ」

優しく眼を細める商人の顔を、まともに見れなかった。自分はどれだけ浅はかだったのか……、

それからオーラルを見る目が変わり、気になるようになっていた。




突然オーラルは立ち止まっていた。相対するように、暗闇を厳しい顔で睨む。

━━雲が晴れて……、月明かりに照らされ。1人の男が浮かび上がる。

「久しいな『オールラウンダー』ギル・ジータ王国以来か……」

「お久しぶりです。リドアニア公王……、いやその影と呼びましょうか?」

青白い顔をした、白髪の男は、驚きと嬉しさを隠さず。

「セーダ………だ、オーラル」

白銀に煌めく、長剣を引き抜き、斬撃の見えぬ。抜き打ちで、オーラルの胴を払った。

ミラの眼でも僅かにかわした。としか見えなかった、背に、嫌な汗が流れた━━、

「流石だ、王は首を落としたぞ」

満足そうにほくそ笑む、「影は、主を乗っとるつもりかな?」セーダは微苦笑を崩さず。オーラルに注視する。まるで相手の全体を見る俯瞰の眼差しである。対してオーラルはゆったりした動きで、泰然自若な構えのまま音もなく剣を抜いていた。

「今は……まだ無理だが、そのつもりではあるよ」

嬉しさを隠さず。公王の影と呼ばれ、また本人も認める男の身体がぶれた。

━━刹那、甲高い金属音が、数号一度に響く。


ミラの目では、一度の攻防にしか感じられない。『これ程……、開きがあるのか』

ゴクリ唾を飲んでいた、自分は随分と強くなってると……、充実感すら覚えてたのに……、ショックであった。


━━数号の。煌めく星々のごとく、斬撃が、受け、また攻める。


あまりに次元の違う立ち会いは………、


一種の舞踊を見てる程だ、だが………、物語に始まりがあるように……、終わりが訪れた、

「剣の速さは……、我が勝ったが……」

「手数で、俺が勝った、それだけさセーダ」

素直に敗けを認めニッコリ、セーダは子供のように笑い、

「良い立ち会いだったぞ『オールラウンダー』褒美に、この剣をやろう』


━━美しい月の見える。雲がほとんどない星明かりだった…………、白銀に煌めく、長剣をオーラルに差し出した。公王の影と名乗る男は、黒い炭のように……、塵と消え失せた。


まるで夢、幻のごとく。ただ仄かな光を。剣自体が放つのみであった。


オーラルは吐息を吐いて、使えなくなった自身の剣を、墓碑の如く男のいた場所に突き刺して、男が残した、剣と鞘を手に、一度だけ黙祷を捧げ足早に、街に帰戻って行った━━━、

ミラは余韻に浸るよう。しばし立ち尽くす。

「……ちき、………」

歯を食い縛り。前を向いて、何事もなかったような顔して。ミラは立ち去った。



「これで良かったのかしら?」

不安そうな色を隠さず。最愛の妹を見送り、黒衣の長ノルカは……、一部始終をケレル殿下に、報告するため。ケレル殿下の側にいるレイカに、黒衣に伝わる独自の魔法で、結末を知らせた。



━━━翌朝。クエナ小隊、カール小隊を残して、

残った小隊と両司祭、見習いのアミを同行させて、国境に向かっていった。


━━━10日前……。リドラニア、ラトワニア国境付近。ラトワニア陣営━━。

リドアニア公国軍の鎧を着た。アンデットの集団に襲われてしまい。ラトワニア側は苦戦していた。

「申し上げます!。右から1万のアンデットが迫っております」

「将軍!、前線から救援要請が、このままでは前線が崩壊します。急ぎ次策をお願いします」

嵐のように命令を求める伝令の数々に。本陣は右往左往と浮き足立つ。

「申し上げます!。援軍が、カレイラ准将が此方に参りました」

カレイラ師団が到着してから。戦況は一変。新たに編成された魔導小隊が、遠方から魔法砲撃を仕掛け。アンデットの軍団を切り崩した所を。息を吹き返したラトワニア神国の僧兵が、鬼神もかくやとメイスの攻撃で、アンデットを次々と、塵に変えて行く……。



これでようやくアンデットを退けたかに思えた………。だが、ゾンビ兵だけでなく、ボーン兵士、スカル騎士が、統率された軍勢となり、再び攻め込んできたため。膠着状態に陥る。疲れ知らずのアンデット軍勢、カレイラが用意した強化した馬車で、防御壁を築き。どうにか、その日の戦は終わりを告げた。



━━その夜、ラトワニア陣営、カレイラの片腕と黙される。アロ補佐官、ラトワニア神国将軍スイデン、ドヴィア国の騎士団長イブロ・レダが、陣幕で、議論を飛ばす。

「直ちに、討ってでるべきだ!」

頑として、自分の我をとうそうとする将軍スイデンは、太陽神アセードラの大僧正ルメージの甥にあたる。そのため少しでも手柄をたてて、自分の立場を有利にしようと躍起になってるが、誰も彼を見ない。カレイラが到着まで、失策続きで、信用すら失ってることを、本人は未だ気付いてないのだ。カレイラは内心辟易したが、一応は立てるように、

「分かりました」

優しげな表情を作り、スイデン将軍に相槌を付いた。


「では!」腰を浮かし喜色満面の顔をする将軍を、生暖かい瞳を向けて、

「将軍は、自信がおありのようです。自身の軍勢2000を率いて、討伐に出ていただききましょう」

「なっ……、そっそれは」

顔が凍り付く、目がオドオドして、冷汗を拭いながら、

今までの勢いを、失い、焦り出す。

所詮は、自分のことしか考えられない、小物だ、蔑ろにするには危険である。

「流石はルメージ大僧正の甥子様だ!、豪気ですな~、不精このイブロ、スイデン将軍が、心おきなく戦えるよう、後衛に立ちましょうぞ!」

覚めた眼で、チラリカレイラを伺うと、眼がイブロの考えに気付き、笑う。

「では、スイデン将軍お願いします。将軍の武名を、リドアニア公国に知らしめてください」

スイデンは自分が、口にした以上━━━。

後には引けない状況を作り出され、二人はスイデン将軍を何気に追い込む。

「わっ、私に任せろ………」

真っ青になりながら、力なくスイデン将軍は頭を垂れた、しばらくして……。

青白い顔をする将軍を見送り、やれやれと首を振りながら。

「逃げ出すな……」

「逃げ出しますね」

イブロの呟きに、肯定する涼しげな眼差しのカレイラは、揶揄するような、それこそ悪戯子のような、笑みを顔に宿していた。

「このまま持久戦か?」「そうですね……、新しい魔導師部隊、確かに強力ですが、消耗が激しいので、仕方ありません」何でもないと言わんばかりである。やれやれ肩を竦めながら、イブロは皮肉を顔に張り付けて、

「オーラルを待つつもりか?」

チラリ、意外と敏感なイブロに感心した色を向け、

「先ほど、ケレル殿下から、連絡がありました」

眉を潜ませ、無精髭に手を伸ばし撫でる。

「黒衣てやつか?」

察しの早いイブロに、満足そうに軽く頷き、カレイラは一度だけ、軽く自分の首を叩くとニヤリ意味ありげに笑う。

イブロは訝しげな顔をしてたが、ハッ……と息を飲み。思わず唸る。その可能性はあるのかと考えていた……、


そう……例えば、カレイラが自ら囮としたなら……、

「かー、彼奴は、また味なことを」恨めしそうに、カレイラを睨み付けたが、にこやかに笑われ仕方ないと諦め、頭をガシガシ掻きながら、

「よくやるよあんたも、自ら囮役とはな……、彼奴も。公王暗殺なんてよ……」

静かにカレイラは微笑して、肩を竦めた。




━━━話は、カレイラ、ケレル殿下との会談に戻る。


オーラルが、二人に呼び出され、命じられた仕事は3つある。

1つはナターシャ女王の暗殺を防ぐこと、

1つはリドアニア公王が、悪魔と取引をして、吸血鬼━不死となっているため、弱点を集めた、影を、先に殺すこと、

1つは吸血鬼=公王の浄化あんさつであった、

流石に驚きを隠せずにいたオーラルだが、了承していた。そして……、第1分隊が……国境に着いた頃……、



何故かオーラルは頭を抱えていた。視線を下げると、とても真剣な眼差しをしていて、口を一文字に結び、譲ろうとしない強い決意の光さえ、相貌に宿して……、

「あの~アミさん?、この先危ないので、街の宿で、待ってて貰えないかな?」

「私も行きます!、母を殺した、吸血鬼をこの手で、倒しに……」


意表を突かれオーラルは驚き、同時に、感心していた。

「アミさんはどうして公王が、吸血鬼だと、気付いた?」

アミは一瞬迷った顔をしたから、何か理由があると感じていた。だからアミが話すまで待つことに。

そして……明かされたアミの父親の名を聞いて、さすがに動揺したオーラル、自分の秘密。微かに伸びる八重歯を見せられては、信じるしかなかった。


━━ダンピル……、吸血鬼と人間の混血を意味する単語で。遥か昔……、僅か一例だけその存在が見付けられたと、本で読んだ事があった……、

「まさか……、そんなことが……、アミ一つ聞く。吸血衝動は無いのか?」

これだけは聞いておかなければならない。

「はい、母に聞いたのですがダンピルは、吸血鬼とはそもそも存在自体違うそうです……」

アミの話しでは、ダンピルは人間に近く。呪いによる拘束が無いが、生命エネルギーは必要だと、「私は動植物、人から発するマナを吸います」

足元に咲く花を手折り、オーラルに見せるように、アミの手の花は、一瞬で枯れた。

「癒しの奇跡を使えるのは……、とても珍しいそうです」

照れ笑いしていたから。肩の荷を下ろしたのやもしれないな。不可思議なアミの運命を考えると、小さく首を振っていた。



まさかアミの父親が、リドアニア公王セージ・キラオクとは……、世紀の大事件である。吸血鬼と司祭の禁断の恋……、

アミは、セージ王がまだ優しい心を持っていた時の結晶だった……、



「多分ですが……」

母フレンダは、アミがセージの側にいることが良くないと判断して。父の手から逃れ、小さな集落で暮らしていたと。しかしセージ王はアミを探すため、多くの命を奪っていた……、

アミは神に使える身。とてつもない罪悪感を感じていた………。

「なるほど……、例え俺が置いてきぼりにして、も。君は……、1人でも向かう。そうだね?」

一切の迷いなく、アミは首肯した、

「では、一つ約束してくれるかな?」

「何をですか?」

オーラルは優しい眼差しをアミに向けて、一つの約束をさせていた。それはとても酷いことを言ってるだろうと思った。

アミは戸惑い。それでも強い決意ある瞳は、険しい顔は……、やがて……、戸惑い、泣きそうな顔になり。

「はい………」

可愛らしい、年相応の笑みを浮かべていた━━━、



━━━南大陸、ファレイナ公国━━元国境砦、



……現ローンの街。



━━街は着々と建物が建てられ、通りと区がが整備されていた。



ファレイナ公国と戦端を開いた反乱軍は、半月が前の激戦を辛くも退け、新たなる国家建設を世界に認めさせて、承認国になることが決まっていた。

新しい国名は近日、ファレイナ公国との和平条約締結時に、発表される。



━━半月前……、戦争の始まりも突然ながら。

戦争の終息も突然だった。


━━数ヶ月後。国境の街ローン。


決印式に署名するのは、ダーレン解放軍の英雄バローナ将軍と、

病死した前国王に代わり、女王となったミザイナ・アルタイルは、

締結の式場に、この街を選んだ、ことになっていた。

「大丈夫か……、ミザイナ?」

ぼくとつとした顔立ちの少年。童顔のためそう思われるが、年はミザイナの2つ上である。彼こそ夫となる剣聖ジンベイ。優しさに、艶やかに微笑していた。

「大丈夫だジンベイ……、伯父が、まさか病死するとは……」

未だに信じられない。ファレイナ公国最強の剣士であったあの伯父がだ。ミザイナが国境に向かった翌日……。息をひきとったと言うのだ……、



あの日ミザイナが戦場に着いた時には既に。父は、ダーレン解放軍の魔神を倒すため無理が祟り、右腕を失っていた。今も生きてるのが不思議な状態だ……、



━━なし崩しで、ミザイナが女王として戴冠した。こんな形で……、女王になるとは思わず。夢ではないか?、自問自答した。不安に揺れるミザイナを救ったのは……、幼なじみで、ミザイナの許嫁ジンベイだった。本当は不安だ。でもやるしかない、

「こちらでしたか陛下━━」

声を聞いた瞬間。ミザイナの眼差しが鋭くなる。


コツコツ杖を着きながら、黒衣のゆったりしたローブを羽織り、現れた男こそ。ダーレン解放軍、軍師デーア・オルトスがであった。

ミザイナの目に幾分、険があるのは理解している。彼こそ魔神と呼ばれるゴーレムを作った製作者であり。バローナの右腕。ミザイナとしては認めることは出来ない。ただ1人の肉親となった父を、ああまでしたのだ、赦すなら、殺してやりたいと今でも思っていた。



しかし民のことを、さらには情勢の悪い、東大陸ばかりを気にする訳にはいかない……。

「よっ~と、ようやく会えたなミザイナ、相変わらず元気そうで……おっと止めときな、次期国王様」

珍しく怒りを顕にした婚約者の腕に、手を置いて制す。

「バローナ……相変わらずだな。人の神経をさかなでにするのが旨い」

呆れたような口調で、睨み付ける。バローナは肩をすくめながら、不敵に笑っていた。ミザイナは内心唸っていた、まさかあのバローナから秘密りに密書を受けようとは……、ダーレン解放軍の後ろ楯に、魔王の影があるとは……、


「デーア頼む━━」

バローナの意向を瞬時に理解して、魔法を唱えていた、一瞬ジンベイが反応するが、ミザイナが留める。

「大丈夫なんだな?」

確かめると静かにバローナを促す。

「魔王の手下が……、この会談を覗いてやがる。誤魔化せる時間は僅かだ、口を挟むなよ」

既にミザイナから、ジンベイには話していた。二人は素直に頷く。

不敵に笑いつつバローナは、魔王の手下=闇術仕の双子の目的を話していた。



━━━西大陸、パレストア帝国。王都ミッドパレス。


「あっ。あああ!」

大好きな父と母を見つけて、幼子はバランスを崩しながらヨタヨタ駆け寄って来て、

「ああうう♪」

母のスカートに顔を埋める。

「まあ~リムルたら、お部屋から逃げ出してきたのかしら?」

驚き、眼を丸くしながらシレーヌは、可愛い我が娘を抱き上げ、柔らかな頬に、キスをする。

「だ~だ~」

母に抱かれていたが父に手を伸ばしていた。ピアンザはリルムの頭を優しく撫でるとご機嫌である。

「シレーヌ」

夫魔王ピアンザの願いに。クスクス笑いながら、娘を手渡す。ピアンザは魔王の顔から、子煩悩な優しい父の顔になり、娘を抱き締め撫でると、嬉しそうな笑い声を上げた。

「ありがとう」温かな。子供のぬくもりを感じて……、人の心を失ってないか、確かめる。

ピアンザは、大切な友人の父を傷付けた……、

間接的でもあれ、命じたのはピアンザ自身。優しい魔王は、苦悩する。優し過ぎて、世界の敵と言われる覚悟を決めたとしても。大切な時を過ごした仲間である。北大陸のある方を見て、やれやれと首を竦めたのは、


もう一人の友に苦戦を強いられてるからではない、大切な友人達の行く末を、願わずにはいられなかった。

世界を救うため━━、我が子供の未来を守るため。魔王は覇道を歩む。




━━リドアニア公国、人の気配、生き物の気配を無くした、町並み、つい最近まで人が住み。泣き、笑い。通りには沢山の人通りがあって、馬車が通っていた筈だった。街だけが存在する。無いのは、人間のみ……。

「………ん……」

ゴクリ、アミの唾を飲み込んだ音が、やたら大きく聞こえた。街の城門前にいた、何体かのゾンビ、骸骨兵を倒したが、後は平穏である。流石に、吸血鬼の気配はない。アミは不安そうに、唇を青ざめさせ、辺りを見ていた。

「明かりを」

魔法の光玉を幾つか造り、周囲に浮かせた。

オーラル1人なら、気にすることもないのだが、闇を押しやる光を見てアミは、安堵の吐息を吐いていた。青白い魔法の光に照らされ、光すら飲み込む静寂は、アミのような少女には、プレッシャーであったようだ。

「………?」訝しげな顔のアミを手で静止して、オーラルは闇を鋭く睨む。

「クスクス……あはははは」


複数の女の笑い声が、闇に木霊する。身体を強ばらせたアミを鋭く見て。 「眼を潰れ!」

「はっはい」

オーラルは素早く。明かりの魔法の因子を発動した。カッと一瞬……辺りは、昼間のように明るくなった、フラッシュ……、相手の目くらませする魔法である。

「ギャーャー!?」

つんざくような悲鳴。眼を押さえ、悶える三人の女吸血鬼、僅か一呼吸の合間に。三人の心臓を長剣で貫き灰にする。

アミも半分とは言え吸血鬼である。闇を見通せる力があるはずだが、まだ視力回復していないのか、目を押さえていた。「大丈夫か?」

眼をしょぼつかせるアミ、心配そうに気遣う。

「ひゃひゃい」

間近にあった。オーラルに驚き、顔を真っ赤にして、あわてて飛び退いた。


トスン……?

「えっ……」

驚きの声を上げた。強い力、闇の強大な魔力が、アミの背から感じられた、

「クッククク、あははははははは、女達は滅んだか、影も倒したようだな『オールラウンダー』よ」

見上げる吸血鬼こそ、赤い瞳を細め、享楽的に笑う父の姿。ゾッとした寒気を覚えた。トンと吸血鬼の怪力で、背が軽く押されたが、凄まじい勢いで飛ばされたアミの眼は、石壁が眼前に広がる。

フワリ……、オーラルは片手でアミの腰を抱き。円の足運びで、アミの勢いを消していた、

「下がって」「あっありがとうございます」

真っ赤になりながら、あわてて下がる。


━━ピチャリ……。ピチャリ………、

……水分を含んだ何か、地面に擦り付けるような、不快な音。生物が腐ったような、悪臭が、周囲を覆う━━。

素早く、光玉で周囲を照らせば、

「ひっ……」

ナメクジみたいな軟体生物が、辺りの家々の壁、舗装された路面にビッシリ迫り来ていた、

「風の刃」

風の刃の魔法で、近づくナメクジに向け放つ。烈風によりナメクジを凪ぎ払うや、血を撒き散らせる。すると周りにいたナメクジ達が反応して、肉食獣のような牙をむき出しに、死骸に群がり、喰らい、血を啜る。凄惨な光景に、アミは血の気を喪う。

「こいつらは……」オーラルは断りなくアミを抱えた、

「あっ、ちょっ、オーラル様……」

慌てるアミに説明する間はない。素早く自身に、強化の魔法を掛けて、ひと1人抱えるてるとは思えないスピードで、屋根まで飛びあがり、風の魔法を背後かは吹くように唱え追い風に乗って、壁伝いに迫るナメクジを避けて、家々の合間を、幅跳びの要領で、先を急ぐことにした。



途中、巨大なコーモリや、狼に襲われたが、撃退。

疲れはてしたが、どうにか城に到着する。

「ここからは、自分の身は自分で守ること、良いね?」

顔色を失ってはいるが、気丈にも素直に頷いた、ピチャリ……、王座の間に向かう途中、ナメクジに人間は血を啜られ、アンデットに還られる場面を目撃した。

恐らく……リドラニア公国の民は、そのほとんどを、公王セージが、自身を吸血鬼にしてまで、何かを手にいれようとした結果なのか、オーラルには分からないが、まさに公王こそがリドラニアを襲った天災だったのだろう……、生きた災厄……、



━━━始まりは十数年………、当時海賊だが、おかしくなった兄の変貌ぶりに恐れを抱いたリドアニア公国ロメイダは、アル・センバートに助けを求めた。しかし……シセリアの父は、仲間に裏切られて殺された。母公女ロメイダはセージに捕らわれ処刑されたと言うが、事実は違った……、妹ロメイダの生肝を生きたまま腹から引きずり出して喰らい、心臓を掴み出して、滴る。血を飲み干し、吸血鬼の開祖となるため。

『神を呪う者の呪い』(不死者)を己にかけた━━



リドラニア公家は、その昔ラトワニア神王から託された、禁忌の禁呪を守るための、守り手であった。『神を呪う者』の呪われた魔法書他、禁呪の書物が、公王の封印書庫に保管されていたはずだが……。

この様子では、魔王の手にある。可能性が高いか……、


━━突然、窓の外に、雷鳴が轟いた。轟音凄まじい勢いで、石畳を叩く、水音……雨が、降りしきる。

「フハハハハ、ヒャハハハハハ、よくも生きていたな娘よ………。お前を殺し、心臓の血を飲みたいものだ」陰淫に、欲望に溺れた開祖である吸血鬼は、雷光に照らされ、王座から立ち上がる。瞳は血のように赤く、犬歯は、唇から伸び、鋭い、伝説では、人から開祖となる吸血鬼になった者がいたのは……、まだ中央大陸があった頃まで遡る。

「それは、出来ないかもね」

長剣を静かに抜き放ち、身構える。

「あんたは不死だが、不完全な生き物だからね」

「ふん……影を殺し、聖剣を奪ったか」

鋭く、憎悪の眼で睨む顔が、段々薄くなり、吸血鬼のいた場所には、真っ白い霧が不自然に、発生していた。

『我が場所、解るまい』

気配は、王座の間辺り一帯にあった。

オーラルはこの能力の特性を知っている。

長剣を正眼に構え。魔力を剣に流し込むと、うっすら輝く長剣は、急に聖々した光を広げていた。

『グアアァアアア、おっおののれ……』

聖なる光に、弾かれ。霧は押しやられる 。

「忌々しい聖剣だ」

吸血鬼セージは、下半身を狼に変化させ、左腕を千切ると、空に投げる。すると左腕は巨大なコウモリに変化した。どす黒い、憎悪の赤い眼をするコウモリは、羽ばたくと嫌らしく赤い眼を細めた。

「あの蝙蝠と狼は……」公王が変身した姿だったか……、

オーラルとアミに向けて、牙をムキ出して、音なき、叫び声を上げた。

「あっうう、頭………」

チラリ肩越しに、アミを見ると頭を押さえ、苦しんでいた。不思議とオーラルは平気だったのは……。手にした長剣は薄い光で明滅していた。

「この剣の力か……」

フッと思い出したのは、蝙蝠の鳴き声には、空気を振動させる力があること。人の耳には聞こえない特殊な音波を放つ……、頭を抱え座りこむアミ、辛そうな顔である。このままでな身体が持たない……。素早く、爆炎の魔法を足元に叩きつけた。



━━轟音、爆風にさらされ。さしもの巨大コウモリも熱風に煽られ、体制を崩した。


しかしオーラルがコウモリに気をとられてる隙に。回り込んでいた吸血鬼は、不気味な骸骨を模した杖と下半身の狼、上下の挟撃を受けて、

「クッ……」

「ふはははは、ふはははは!、やるなオーラルよ」

辛くも長剣でいなしながら、歯を食い縛り。

「因子を解き放つ」

爆炎の魔法に掛けていた因子を解き放つ━━。

破壊された床から、無数の石の礫が、弾丸となり、吸血鬼の背を撃った、

「なっ、何だと……!」

オーラルは一瞬で怯んだ吸血鬼の下方から迫り。すれ違い様。長剣を切り上げ、狼の首を落としていた、

「ぐぁあああ、おのれよくも。よくもやってくれたな!」

バランスをくずした吸血鬼は、怒りのあまり自身が回復するよりも早く。オーラルを追いかけようと、振り返った瞬間。



━━吸血鬼の身体を土台に、オーラルは宙を飛んでいた。吸血鬼は眼を見張り、手にした杖の先端を槍のように構えた。

その時には既に、コウモリの心臓に長剣を突き刺し灰にする。

「グァアアアアアアアアアアアア!!、おのれ……、おのれ!、我が腕を滅するとは………」

血を吐き出すような、怒りの咆哮を上げた、しかし吸血鬼は狼の首を拾い繋げた。見る間に狼の首にあった傷痕は消えた……、

しかし吸血鬼の左腕は戻らない。忌々し気に舌打ちして、吸血鬼は怒りの目を細め。狼の首に抱き着いた。すると狼は……巨大化して、吸血鬼の姿は狼と一体化した。

「アミ………」

とても優しい声を、娘にかける。



「……お父さん…?」

戸惑いを浮かべるアミを。愛しそうに見つめ、したなめずりしそうに、陰貪なる眼差しを細め。

『「娘よ……今こそ。父の為に。身を捧げるのだ!』

牙を剥き出して、一息で、アミ飛び掛かる。

「遅いよ……公王……」

オーラルが指を鳴らせば、アミを中心に、魔方陣が浮かび上がるや。

魔方の障壁に弾かれたから。忌々しそうに唸り、狼の爪、牙で障壁を壊そうと、何度も挑むが、強力な障壁は、傷一つ付かず。逆に狼の身体が傷付くだけである。

『そんなバカなことがあるか!。我は神に等しい、開祖ぞ、不死の王なのだぞ』

憤りに似た叫びは、虚しく、雷鳴に消された。

「因子を解いて、構築する。絡めとれ」

魔方陣が黄色から、青に代わり。無数の茨が、触手のように巨大な狼を絡めとる。

『何故だ!我は神に等しい吸血鬼ぞ』喚き立てる吸血鬼……、哀れなリドラニア王だった者に、アミは一滴の涙を流しながら、母の形見のスタッフを構え、先端を父だった者に……。


「うわぁあああああああああああああああああ━━━━!!!」

身を切り裂くような、悲痛な叫びを上げ、全身の力を使い。ダンピルの人間にはない。強大な力は、少女の力とは思えぬ破壊力を産み出して……。狼の剥き出しの胸……、心臓に、スタッフを根元まで、突き刺していた、

『ガハ……。バカな……バカ……な…」

鏡が割れるような音がして、巨大な狼は砕け散り。吸血鬼は娘に手を伸ばしたまま……灰と化した。

「わっ私……、」悲しみと自分のした事が信じられす。呆然と立ち尽くした、




━━━その日。呪いと暗雲で包まれたリドラニア公国は、暗雲が消え失せ、太陽の光が闇を洗い流すよう降り注いだ。人々は温かな温もりを感じて、神に祈り涙した。




━━吸血鬼が滅んだ同時刻、

ラトワニア神国=リドラニア公国。国境。

地を埋め尽くす勢い、統率のあったアンデット達……は、

突如━━━。統率を失い。たださ迷い始めた。

最早……ラトワニア神軍、カレアラ師団の敵ではなかった。




エピローグ




━━南大陸、元ファレイナ公国・国境砦。ローンの街。



━━━ファレイナ公国女王ミザイナ・アルタイル。新制ローレン軍国と和平条約が交わされた。



後日━━両国により正式に発表した。



━━聖アレイク王国、ケレル皇子の元。リトラニア公国に巣くってた、吸血鬼消滅の報せが届く。一方で……、驚きの報せが届いたのである。



ファレイナ公王死去=病死が伝えられたことで、アレイク王宮を揺るがせた。さらにミザイナ・アルタイルが女王に即位したと……、ファレイナ公国の大使補佐より報され、騒然とした。



「それほどの大事が……立て続けに起きてると言うのか………」

野望を胸に懐く、ケレルは危機感を覚えていた。



━━沢山の人出に出迎えられ。無事に帰還する。我が国の兵を、喜ばしく、誇らしげに見守るナターシャ女王は、民の歓声を受け。手を振り答えた。


ラトワニア神国の僧兵に続き。いち早く救援に参じた。ドヴィア騎士団長イブロが、ニカリ虫歯に嫌われた美しい歯を煌めかせるや。多大な賛辞か降り注いだ、

横には聖アレイク王国が誇る。二人の『オールランダー 』の1人。カレイラ・パレス准将が、甘いマスクを笑みにして、声援に答える。二人の英雄から隠れるように、馬を並べてるが、将軍は忘れ去られていた、真っ赤になって、憎悪の眼を、両英雄に向けた、

「オーラル様だ!」

ひときわ歓声が上がる。


三人から少し離れ。第1分隊を率いて、聖アレイク王国が誇る。二人の『オールランダー』のもう1人に、ラトワニアの国民は、大歓声を持って、強烈な支持を送る。


若くして……。夫を亡くしたナターシャ女王を、暗殺を察知して、颯爽と現れ防ぎ、国境付近の村や街を襲ったアンデットの脅威から、多くの命を救ってくれた。

さらには海賊に狙われた幼い少女を救い、豪胆な将軍を連れてきくれた。


━━リドラニア公王が、吸血鬼であったと、民は知ている。伝説でしか聞かない化け物。吸血鬼殺し……、まさに英雄と呼ぶに相応しい偉業である。


ラトワニア神国女王ナターシャは、三人の英雄に敬意を現して、ラトワニア神国の公共の広場に、三人の銅像が建てられる運びになった、

「オーラルお帰り!」弾ける笑顔を振り撒きながら、人目を気にせず。オーラルに抱き付く少女、セシリアの大胆さに眼を白黒させてる。

「ただいまセシリア、だいぶ女の子の格好が、板に着いたな」

「むー、言ったなオーラル、見てろよ。僕は綺麗になるんだからな」

ムッスリしてたシセリアの頭を、軽い衝撃が落ちた。

「騒ぐなバカ孫が」

「あにすんだよクソジジイ!」

涙目のシセリアを、やれやれ嘆息しながら、肩をすくめた、

「クス、お帰りなさい皆さん」

ナターシャに艶やかに笑われてしまい、シセリアは照れ笑いした。周りの侍女達も何時もの光景なのか、朗らかに微笑していた。

同席を許されたアミは、場違いな場所に来たようで、不安になっていた。

「あっ……」思わず。声を出していたアミは、あわてて口を押さえたが、 「ん?、君は誰なのだ」 興味深そうに、シセリアに見詰められて、息が詰まった。

『綺麗な瞳……』

力強く、真っ直ぐとアミを見詰めていた。

「わっ私……アミ・マーキュリー」

困ったような、恥ずかしそうに、オーラルを見上げたら、静かに同意されて、迷いながら、一歩を踏み出した。

「私は………」


シセリアは、眼を見開き、ゆっくり笑みを浮かべて、アミに抱き付いた……、

「初めまして私の従妹」「初めまして私の従姉」二人は見つめあい心から喜びに満ちた、涙を拭った、



暖かな日差しの名残が、仄かに二人の従姉妹を照らした。



静かに……、時を過ぎるように━━。

苦心の末吸血鬼となっていたリドラニア公王を倒したオーラル。アンデットの軍勢を殲滅したカレイラ准将、二人の『オールラウンダー』がラトワニア神国を救っていた。一方その頃━━ファレイナ公国で、異変が起きていた。また同じ物語か別の物語で背徳の魔王でした。

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