閑話我が主の兆しを切り開く者。その名は閃光の騎士
プロローグ
西大陸……、元商人の国セロン。巨大なクレーターに抉られた廃墟。
魔王軍の進軍を。魔神が阻む。全身光沢ある鋼の肉体。
「歩兵散開!」
立ちはだかる魔神に恐れ戦く歩兵に。騎士団長トロン・バーンは号令を掛けた。
作戦通り左右に道を開けさせる。魔神はそんな矮小な人間の策略を嘲笑うように。ゆっくり本隊に向けて走り出した。
「撃て!」
そんな魔神の油断にトロン・バーンは、魔砲部隊に号令をかけた。
一斉砲撃を命じられた魔砲部隊は。訓練通り身構え。次々と魔砲が放たれていた。空を埋め尽くす程の魔法の雨が、全身鋼の魔神にぶち当たった……、モウモクと上がる土煙。視界0になってしまい。実践投入が初めてだった。魔砲部隊所属の一兵卒にとって、一瞬の油断があった……。とはいえ━━あれだけの砲撃を受けたら普通は……、
突如として銀光が、爆風すら切り開いて……。鏡のような表面に一切の曇りなく。鋼の腕を刃にした。魔神は立っていた。
「そっ、そんな……」
呆然として。信じられぬ想いから首を振るっていた。迫り来る魔神に対して、再び攻撃を仕掛けれず。足は震え。ただ恐怖に目を見開くことしか、一兵卒に出来ることはなかった……。
振り上げられる右腕。ああ……自分は死ぬのだ……、
「それまでだよ。魔神!」
いつの間に現れたか、緑掛かった髪の男が、魔神の背後を殺っていた。驚き振り返ろうとした魔神は、男の手にある魔砲を認め。動揺を隠さない。バシュ、トリガーが引かれてしまい……、
━━魔神の体は、まるで硝子を破壊したような音と伴に━━。
飛散してしまったのだ。
うっ、うぉおおおお!。
助けられた一兵卒は、自分の無事と。魔神が倒された事実を認識した瞬間。咆哮のような歓声を上げていた。
━━戦場を一望する崖の上。赤茶色のローブ姿の青年は、とても驚いた顔をしていた。
「あのスタンレイに気付かせないか……、流石は魔王、あれほどの配下を隠していたとは……」
頻りに感心していた。そんな夫に呆れた顔を隠さない。銀髪の美しい顔立ちの妻は、
「セラ、良かったの?。スタンに何も言わなくて……」
妻の心配そうな顔を認め。ついに長年助けようと苦心した妻を取り戻していた。
━━彼こそ。聖アレイク王国において、知らぬものはいない。大賢者オール・セラその人であった。「ん。だって……彼が最後じゃないか、いつまでも待たせちゃ可哀想だよ♪」
これである……。全く分かっていない夫に。やれやれとため息を吐いていた。
「だからよ!。魔神が消えたら、遂に動き出すわ。叔母は……」
そのことかと納得して、心配性な妻の頭を撫でていた。
「なっ、セラ……」真っ赤になってうつむいたレシアを。愛しそうに目を細め見ていた。目に焼き付けるように……。
「ん、それこそアレク様を。封印から解放するチャンスでもあだろ?」
「ん……。そうよね……でも」
不安そうな妻の横顔。間もなく夜が訪れる時間。妻とはしばしのお別れである。「大丈夫さレシア……。だから」
「……はい、薔薇の騎士」
一瞬泣きそうになりながら。一つ頷き。かつて花の魔神であった少女の名を呼んでいた。
『はいは~い』
お気楽な返事が聞こえて。花が一輪空間に現れたかと思えば、可愛らしいピンクカラーの。ほっそりしたホルムの自動人形が現れた。
「ベル。レシアを頼む……」
『は~い。任せてよセラ兄♪、さっ行きましょレシア姉』
「……ええそうね。また明日」
「ああまた明日だレシア」こうしてまた触れあえる夫婦は、幸せを噛み締めながら、一時の別れを告げていた。
今一度戦場を見てから。
「スタンレイ、レシアを頼む」
最後の別れを。ようやく口にして、大賢者オール・セラこと。闇の魔神ベルゼバブルは消え去った。
最後の戦いに赴く為に……。
━━新帝都・郊外。
最近魔王のご子息クライム様が、ある技術者の元に頻繁に訪れるようになって、少し変化があった。よっぽど自動人形が気に入ったのか、自分の護衛を三体の自動人形にやらせているという。
━━ある日の午後。遂に四体目の整備が終わったと聞いたクライム皇子様は。一日中そわそわしてたかと思えば、我慢できなくなって、公務の合間に。技術者の住まう工房に。馬車を飛ばしていた。
「……今日ゎ!」
走って来たのか、息を切らせながら。クライム様が、勢いよく自動人形の整備場である。バラック小屋に入って来た。
「あらいらっしゃいませ。クライム様」痩せた翼人の女性は、目を丸くしていた。
「あれ……、リマさんだけですか?」
キョロキョロしていたクライムの顔が曇っていた。整備中の五体目の自動人形の姿もなかった。
「あっ、閃光の騎士さんなら。歩行訓練に町までレノンさんと買い物ですよ」
「ええ~!。急いで来たのに。モオ~レノン伯父さんてば」
プックリ頬を膨らませて。拗ねた少年らしい顔を見て。
「うふふ。よっぽど楽しみにしてたんですね♪」
製作者としては、嬉しいことである。
「そっ、そんなことないですから!?」図星を指され。真っ赤になって全力で否定したが、分かりやすい性格の少年は、自分の感情を隠すのが下手な。素直で不器用な少年であった。
「うふふふ♪、実はあの子も。朝からずっとクライム様みたいに。落ち着きがないから。少し落ち着かせる為。レノンさんが連れ出したんですよ」
「なっ、スタンレイが……」
パッと目を輝かせて振り返るクライム様。彼は本当に四人が好きなんだわと。目を優しく細めていた。
━━数日後……。
新しくクライムの守護四天になった。閃光の騎士に。誰よりも食い付いた人物が、魔王軍にいた。近衛副隊長のナガレであった。彼は実質クライム様の部下として、守護四天の上役に命じられたからである。棍棒のような……重い物を振り抜く轟音がして。火花が散った。
「行くぞ。閃光の騎士!」
ナガレの凄まじい重さがある。重鉱石で造られた剣の斬撃を。黄色と黄金色にカラーリングされたボディー、目がチカチカしそうな程だ。閃光の騎士は軽々受け流す。
「ほほ~う。流石は元鋼の魔神だな~」『む……』
普段から口数が少ないスタンレイであるが、ナガレの軽口に答える余裕が無いようだ。朝からスタンレイ、ナガレの訓練を見ていたクライムは、少し不安そうに見守っていたら。
『大丈夫ですよクライム様、スタンレイはあの体に慣れていないので、苦労してるだけですから』
四天の中でも。おしゃべりが好きなお調子者、青いカラーリングの自動人形。青騎士が解説する。
「そうなのかな……、ブルワーズ?」
『はい。ナガレ殿もそれは分かってるようで、あの重い訓練剣で、相手をしてるのです』
自信満々に言われて。ようやく安心したのか、ホッとした顔をしていた。
閃光の騎士が、加わって6日は経つが、未だに護衛に加わらず。訓練を繰り返していた。それには理由があった……。魔神の中でも。新しい肉体に。慣れる時間が必要だったからだ。
彼は魔神の中でも。全身鋼の不自然な体を。魔力で動かすことに。すっかり慣れてしまっていた……。そのため関節を動かすことに戸惑い。跳び跳ねたり。走る行為が恐ろしく下手になっていたのだ。『くっ、まだまだだ!。俺が斬り開かなくちゃアレク様に申し訳が立たない』
「その粋やよし!。行くぞ閃光の騎士よ」
流れるような長髪を後ろでまとめ。鋭い眼光に。一瞬柔らかな光を宿す。
『おう!?』
エピローグ
白銀の美しい髪。二人の良く似た顔立ちの女達は……。滅びの匂いたつ秘密の庭園を訪れていた。
『どうして……、ねえ……。どうしてよ……セラ兄』
艶やかな深紅のボディー。座り込む薔薇の騎士は。悲痛な声を上げていた。
じっと涙を堪えていたレシアは、遂に耐えきれず泣き崩れてしまう。
「お父様どうしてですか?。なぜ白の女王に与したのですか……」
ベテルローズの魔力によって、咲き誇っていた。美しい庭園に佇んでいた……。
唇を噛み締めたシレーヌは、父セラの為に用意された。人間の青年にしか見えない自動人形が、ズタズタに破壊され墓標のように。枯れた花の中に打ち捨てられてる。現実に絶望していた……。
レシアは涙を流しながら。セラの気持ちに気付いた。まるで消え去る自分の代わりにと。レシアが封じられていた。白の書が、大切そうに自動人形の胸に抱かれていたのを見て……。
全ては遅かったのだと理解してしまった……。
四天と呼ばれたベテルローズ、ブルーワズ、スタンレイ、ロノバリエの四人は、百年以上も冥界の時が止まった世界に……。閉じ込められていた。そして自分は白の書に。
しかし大賢者オール・セラは……、西大陸で、魔神となり自分が取り込んだ……闇とともにいたのだ。普通の人間が、魔神が王ベセルバブルと━━。




