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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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三学期ですねみんな集合ですか?

冬休みを終えて、北大陸から戻ったシンクは、姉としたうラシカ、竜騎士の師のミネラとつかの間の別れをかわしていた。


ついに動き出す『特別教室』と。選ばれた23人の生徒逹。それぞれの物語が、今始まろうとしていた……。

プロローグ




━━レオール連合、首都アージン。総統府。



半月前になるか……、乗り合い土竜馬車首都ターミナルで起こった。ララ大司教様誘拐未遂事件。ケンタウルスの都モンスター襲撃スタンビートの顛末を調べていた密偵が……、何人も姿を消していた。重く見た宰相レイナ・ホルトは、急遽ラノバ・プレイゼンを呼んでいた。

「先日シンク皇子が、何も言わず帰られたけど。少々……、頭が痛いわね」

いずれの事件。戦士の一族が絡んでいるのは明白。関与を示す証拠こそ出てないが、間違いなくサザノーラが裏で、糸を引いている可能性が高い。

「レイナさんそれもですが、最近の四部族動き、目に余りました。このままでは、レオールは分裂する恐れが高まりました……」

それでなくとも後2ヶ月足らずで、五ヵ国合同で、疑似神討伐が行われるのにだ。

「それでセナ殿を、あなたの元に置かれたのは……」

いずれセナ殿が、輝きの都の重鎮になると。叔母の娘ミネラと婚約した時確約していた。それに見合う技量をセナは示した。なんとケンタウルスの都を襲って来た魔獣を100以上も1人で狩ったのだ。もはや力量は疑う理由がない、竜騎士の枠に捕らわれず。勇者と称えられるに相応しい。それほどの勇者をプレイゼンの側に置いた理由━━。

「参ったわ、不味いとは思ったけど。正直なところ助かったと言う気持ちが勝るわね……」「そうですね。目に見えてラノバをおとしめる行為が減りました。それにララ様誘拐未遂は、やりすぎたようで、戦士の一族の間にも不和が現れてると」

それはレイナも聞いていた。良くも悪くもシンクが、ケンタウルス族を世界加盟国にしてしまった結果が、波紋を呼んでいた。今頃サザノーラは頭を抱えてることだろう。逆にプレイゼンには、大きな後ろ盾が増えた形である。

「全く……、末恐ろしいわね~」

父オーラルをも凌駕する調停力は、神がかり的である。いずれレオールが分裂したとしても。プレイゼンには、サザノーラと抗するだけの力が残されたのだから、高くついた可能性を予感していた。





━━アレイク国王、ターミナル。



駅舎に大洞窟を上がってきた。ブチ柄の可愛らしい土竜が、三両の車両を引いて、駅にたどり着いた。



車両から降りて来たのは、冬休み北大陸で過ごしたシンク達である。先に降りたシンクは、クルミ、ローザが降りるの手助け、その後をぴょんぴょんトリトン族の子供達カメザ、カメローが降りてきてシンクに抱き着いた。二人はこの先クルミの宿舎で暮らしながら。シンクの使い魔として、王都で生活することが決まっていた。

「それじゃシンク、クルミ、ローザ、次に会うときは夏休みかな?」

ラシカがにこやかに大切な王子様と、彼の婚約者二人にゆっくり目を向けて、首を傾げた。

「ラシカ姉さん。今年の世界議会は、リドラニアだからどうかな……」

シンクの言わんことに気が付いて、渋い顔をした。それはシンクが、夏休みリドラニアで過ごす可能性が高いことを示唆していたからだ。

「ですから冬休みに、帰郷する予定です姉さん」

少し寂しいが、シンクの気遣う顔を見たら……、「またねシンク」

「はい姉さん、ついでにミネラさんも」

別れに顔を出したミネラは、小さく苦笑しながら。

「はいはい……、私はついでね~」

軽く不満を口にした。まあ~ラシカに免じてと、肩を竦めていた。

「姉さん……、ミネラさんてばあんなこと言ってるよ?」

声を潜ませ。数日前のこと蒸し返す。

「本当よね~。見送りに来たセナにキスされて、感涙してた時と大違いね~」

二人が意味ありげな顔で、にやにや笑ってるのを見て、まともに狼狽えた。

「なっ……、みっミネラ、もしかして……」

当然とばかりに豊かな胸をプルルンと張ったラシカ。

みるみるミネラは、羞恥に真っ赤になっていた。「自分を愛してくれるセナから離れて、きっと寂しいから。何気に素っ気ないんだわきっと」

ずばり核心を突かれてアワアワしたから。からかうのはこれくらいにして。血が繋がっていない姉弟はにこやかに笑う、

「またね姉さん、ミネラさん」

三人が軽やかに別れを告げて、シンク達は雑踏に消えていく。




━━交易の町ドマーニ。 沢山の船舶が、連日入港していた。早朝未明━━、

東大陸近海を回る。ガレイ船が、帆をたたみ緩やかに入港してくるや。間もなく桟橋に停泊して、沢山の旅人が降りるなか、美しい白銀の髪を広げ、女神もかくやと誰もが息を飲む美しい少女が、同じく輝く美しさを放つ6人の少女に囲まれながら。軽やかな足取りで歩いていく。

「さすがに疲れたわね」 まさか父の魔王ピアンザが、あれほどのこと隠していたとは思いもしなかった。つくずく自分の甘さを恥じずにはいられなかった冬休み。戻る時、本当はもう一体連れてこようか迷ったが、結局白騎士ロノバリエを弟クライムの護衛に任せ、置いてきていた。

あれで良かったか分からないが……、今は四人の魔神から引き離すのはよくない気がしたのだ。

「明日シンクに会えるわ。リルム彼女の紹介を頼むわ」

傍らの金髪を後ろで束ね。ほっそりした顔立ちのレイラに言われて、不安そうなフィルの気持ちを考え。そうねっと相槌を打ちながらも。その相貌は、愛しい男に早く会いたいと、切に思った。




━━王都カウレーン、西学園通り。繁華街━━。バウスタン流道場。



凛とした顔に。キリリと表情を引き締めたアネスは、師であるミラから、二段階で学ぶ奥義、弧弓月こるいつき牙山がざん、新たな技瞬歩しゅんぽを学んでいた。冬休みに考えていた。ヒナエと修行の旅では、バウスタン流三段階に上がる修行をするつもりが……、

色々あって出来なかった。代わりではないが、ミラ直々に奥義を仕込まれていた。

「弧弓月は、もっと接近して、相手から反撃を受けない間合いから、肩、肘、手首に瞬時に回転を伝え。僅かな隙間、手のひらを付けた状態で、衝撃波を身体に通す技」

2日の訓練では、さすがに身に付けることは出来なかった。しかし同じ技の反復訓練を繰り返し。昼から乱取りをヒナエ、ミラ相手に。濃密な練習を繰り広げていた。



中でも牙山の訓練は大変で、鎧を着せた木偶に、利き手の肘、腕、手首に。革で作った細い紐を組み合わせた。バウスタン流の防具を着けて行う。

「それはアネスにあげるから。ダメになったらいいなさい」

「はい、先生ありがとうございます!」

アネスの技はほとんどが基礎だけ。二段階の触りしか学んでいなかったので、自分に足りなかったことが砂に染みる水のように。みるみる吸収していた。いずれは弧弓月、牙山、瞬歩を自分の物に出来るだろう。

ヒナエは高いレベルで、これらの技を身に付けていた。しかしまだ基礎が弱い。そこはアネスと逆である。アネスは基礎は十分だが、技を知らなすぎた。確かに三段階・覚醒は基礎があれば、爆発的に攻撃力はあがるが、技が無いので高い力量のシンク、クルミに通じない。

「明日から学校だから。今日はこれまで」二人は、上座に正座するミラに深々一礼して、

『ありがとうございました』

晴れやかに自信を覗かせていた。

「それはそうとアネス~、あんた……、好きな人がいるんだって?」

タオルで汗を拭って、気を抜いてたアネスは、驚いた顔をして目をぱちくりしていた。

「えっえ~と先生……、どうしてそれを」

恥ずかしそうに頬を赤らめたが、素直に認めていた。

「ヘエ~あんたがね♪。ヒナエの話だと。あのシンクに勝ったことあるんでしょその彼は」

それだけでも異例である。実際手合わせしたミラだからこそ。シンクの実力は肌で感じていた。それだけで興味を抱く。

「彼の名は、ミルと言って、ダルフォン家の━━」恋ばなが始まっていた。



━━職人通り、長屋。

この辺り住民の多くは、若く金のない職人や、苦学生のアパートメント、何らかの事情で身をやつした住人が身を寄せあって、楽しくも騒がしく生活していた。



……しかし、最近ある1人の少女が起こした。奇跡のシンデレラストーリーが話題となっていた。

「ノンちゃんおはよう~、今日も早いわね」

「あっ、おばさんおはようございます♪」

変わらぬ笑顔、優しい瞳。少しだけお洒落になった少女、ノノフレイミ・ラネスである。

家計も最近少し楽になって、髪や衣服にちょっぴりお金を掛けられるようになって、トレードマークのお下を止めた。活動的に見える髪形にイメチェンしたら。すっかり見違えていた。フレイミは冬休みの間『院』に上がったのを期に、同輩のリーザと二人で、魔法道具について調べたり。勉強に励んでいた。それはフレイミが自分を知っているからの選択である。

さらにフィールドワークである野外活動において、動植物の生態を調べ、植物が人間に及ぼす効能を深く知ることが、いずれ自分の武器になると理解していた。最早魔法、武芸だけではシンクの傍らにいる。婚約者達に敵わない。だから自分だけの武器を磨くことにした。そして最大の武器を惜し気もなく発揮することを、自分に課していた。「ノンちゃん、悪いけど、家の子長くなったからさ、また切っておくれよ~。頼めるかい」

「良いですよ~、今日は家にいますから。ご飯食べた後なら」

「本当かい!?助かるよ。ノンちゃん腕がいいから、散髪にいくより可愛くなるってあの子がね━━」

朝ご飯の野菜を洗いながら、楽しい井戸端会議は徐々に拡大してゆく。ノノフレイミ・ラネスの最大の武器は、人に好かれ、好意を抱かれること。人間は自分より幸せな者を羨み。妬み。相手より上位に立とうとする性質がある。だけどフレイミにとって、他人の上位に立とうとする意志がない。自己犠牲の精神を強く抱いてるためだ。だから人との関わりを大切にすることをいとわない。たとえ大国の王子様と婚約したとしても。隣人に変わらぬ優しく接する人柄が、住民から人気であった。


━━貴族街、豪華な屋敷が並ぶ中に、古くは建国、聖アレクの弟子で、忠臣ガイロン家の屋敷はあった。



ビュン、ビュン、ビュン、左の槍、

ゴッ、ビュン、ビュン、かわされた瞬間、足を薙ぐような右戰斧の一撃、体勢を崩したと見るや、刺突の連撃を母クエナに見舞うが、触れることなくかわされた。逆にフィアの後ろからザッ、切り裂く烈風を感じて、慌ててかわした途端に。攻守が一変━━。




瞬く間に追い込まれてく。滴る汗、息も尽かせね攻撃、これこそ無尽蔵の体力が売りの母クエナの真骨頂。速さはないが、一撃の破壊力は無視できない。さらにタイミングが読み辛く。かわしてもかわしても、それが次の攻撃に繋がるから、一度攻撃に入られると。今までの実力では、挽回するのは無理だった。



今━━。

急激にフィアのスピードが上がって。クエナの攻撃範囲から外れた。すると今度はクエナの動きが鈍る。母クエナの攻撃は、自分の間合いに特化した集団戰を間据えたもの。一度距離が離れると後手に回る。フィアは戰斧を左脇下。短槍を持つ腕で交差させる構えから。走りだしいきなり踊りだしたように。クルクル回転しながら不可思議なタイミングで、クエナに向かいジャンプ━━。

短槍を頭上にあげると。身体が鋭く回転していた。そのため戰斧を持つ腕が自然に伸びて、鋭い斬撃が放たれた。クエナは思わず避ける選択を見失い。不利な体制で。戰斧で受けていた。「クッ……」

腕に走る鋭い凄まじい打撃。身体が持ってかれ、後ろにたたらを踏んでいた。しまった……、そう思ったが遅く。フィアの槍が下から掬うように。クエナの戦斧を払い。戰斧を弾き飛ばされてしまい焦る。例え短槍だけとなろうと……、クエナは巻き返しを図る。

「はぁああああ!」

そこから戰斧、短槍の連技に。巻き返しどころでは無くなり。初めて娘に負けていた。

「あ~あ~まけちゃったか……、フィア強くなったわね」

「……はっ、ありがとうございました」

艶やかに褒め称えられて。充実した晴れやかな笑みを浮かべていた。




━━アレイ学園。秘密の教室。


胸元を開けた扇情的な衣装を着込み、艶やかな毛並みの真っ白いファーで、首もとを温めるエドナは、ようやく使うことになる。大賢者が作った最初の教室を訪れていた。「ようやく始まるわ。『特待生』が集います。貴方達しっかり苛めるのよ?」

ぷっくりした魅惑的な唇を、艶然と微笑させると。気配が現れた。

「ようやく僕達の出番だね」

「まずは何から始めようか?」

「やはり制服からじゃないかな?」

「「すると彼女だね」」 金髪碧眼、張り付けた笑顔は実に楽しそうで、無垢ではあるが、壊れた笑い声をあげた。

「あらあの子からなの?、お手柔らかにね」困った顔をしたエドナに。狂喜の双子はクスクス笑う。エドナはわかってないから。余計に可笑しかったのだ。

「あの子が、本当は一番才能あるのにね」

「あれだけの力、そうは無いのにね」

双子は意味深な笑顔で。エドナに聞こえない小声で呟いていた




━━ブランドミヤマ本店。裏手が屋敷になっていて、二階の一室。ミヤマのデザイナーとなった。モレン・カルメン・オードリーの部屋はある。

部屋の壁側に棚があって、店舗顔負けの生地の山、隅にベッドが申し訳程度にあるが、部屋の机はデザイン画で散乱していた。部屋の真ん中に。でで~んとある採寸台には、早くも切り出した、パーツごとの生地があった。これから仮縫いを済ませ。明日みんなに見せに行く予定である。結局デザインは決まったが、生地が届くのが来週となり。制服の試作は、お預けとなっていた。

「ここをこうして、魔石を裏ボタンに使えば、魔法耐性が上がるわね」

当初戦争に駆り出される可能性があると言われた時は、さすがに動揺した。でも集まった生徒達。リルムと出会い『特別教室』で、自分の立場を考えたら。妙に納得していた。

「そう言えば……、魔法耐性のある鎧はあるけど、通常ダメージを半減する服とか無いわよね~」

もし疑似神と直接戦うことになれば、物理攻撃が 有効だと狂喜の双子から教えられていた。

「意外と楽しいのよね~こういった理論学ぶの」冬休みに入ってから。伯母のエドナにお願いして、魔法道具関連の書物を見せてもらい。色々と調べあげていた。その結果リルムの口添えで、パルスト帝国からレジストを付与した。特製の布を使える事が決まった。しかし人数分となると……、それなりの量が必要だった。生地が届くまでの間。そんな訳で、デザインを整えたのだ。女子の制服は、ブレザータイプの上着に。下はワイシャツ、赤い紐ネクタイ、ズボンにしようか迷ったが、ミニのスカートにした。ただし一番苦労した仕組みを制服に組み込んだ。それもこれもシンクからふんだんに魔石が、プレゼントされたので可能だった。女子の制服ブレザーにだけ、胸元に付けられたブローチがあって、これは魔法道具で、魔石のダイヤルを回すとスカートが一瞬で、ズボンに変わる仕組みだ。パンチラは好きだが、みんなから睨まれるのは流石に怖い。

「制服だけだと防御力が低いのが難点ね~。やっぱり布に鋼糸を仕込んだマントは必要かな~。念のため下に着るワイシャツにも使うべきだけど……。鋼糸を織り込むと、着辛くなるし重さがね……、そう言えばこの前サノビアさん達。翼人が使う洋服には、特別な糸が織り込まれていて、革鎧を着るよりも丈夫だとと言ってたっけ……」

そんな糸があって、たとえはマントに使えれば、凄まじく防御力が上がる。

━━翼人が使う防具は、見た目こそ。服と全く見分けがつかない出来で、攻撃を受けた瞬間だけ。鋼鉄のように硬くなり。刃物、槍等も透さないと言うし近い材質無いかしら?。本気で思案していた。

「明日みんなに相談してみようかな~」

結論を出したので、仮縫いに戻った。




━━東通り、中央公園側、カレン=ダレス家が営む商会がある。裏手が屋敷になっていて、テラスから庭を望める部屋で、優雅にお茶を頂く姉妹。片や炎のように赤い髪を。腰まで伸ばしてるのが、プロのコンテスタと呼ばれる姉のフレア・カレン=ダレス。

片やショートカットにして、活発さをアピールしてる妹のシアン・イナバ、姓が違うのは、将来の運命が違うからだ。先ほどから母シルビアが、姉妹の前をそわそわしてうろうろしてるから。二人は苦笑していた。

「母さん、そんなに心配しなくても。姉さんはもう来るわ」

「分かってます。でもあの子が、子供見せに来てくれるのよ!」

姉妹の姉エルが、子供を生んだのが、先週のこと、何かと忙しい母は立ち合えず。ようやく時間が取れた今日。姉が母に孫を会わせるため訪れるからと……、昨日からこんな感じである。

「奥様、お嬢様が参りました」

ピタリ動きが止まった母は、

「そっそう……」

緊張した面持ちである。 姉妹は、プッと笑いを堪えるのに必死だ。



穏やかな顔立ち、淡い金の髪をウェブに整えた美しい美貌の女性が、姉妹と母のまつ部屋に足を運ぶ。腕にはすやすや寝息をたてる赤子を抱いていた。

「エルお帰りなさい!」腕を広げいきなりエルを抱きしめていた。驚き目を丸くしたエルに。急いで顔に触れて、元気そうだと安堵していた。改めて孫娘の可愛い寝顔を認め。嬉しそうに頬を綻ばせた。

「お母さん……、娘のジルよ。抱いてあげて」

にこやかな照れた笑みで、赤子を母に渡せば、慌てながらもまるで宝物を抱くように。そっと抱きしめていた。

「まあ~見てシアン、お母さんの顔を」

笑い含む物言いに。同じくクスクス笑いながら。

「姉さんの娘だからって、特に緊張しちゃってさ~」

でも……、二人は知っていた。幸せそうな姉の顔を見れただけで、母は嬉しいのだと。ちらり妹達のこと見て、エルは柔らかな笑みを唇に浮かべてくれたから。二人も笑顔になっていた。姉が安心して実家に来てくれるのもシンクが、姉と……、

『シルビアおばあちゃん、フレアお姉ちゃん、シアンお姉ちゃん~、大好き』

ほんの微かに聞こえた思念。思わず家族は顔を見合せ、クスクス笑っていた。



━━中央公園、カフェ・ブルー本店。



昔から変わらず。野外の露店を頑なに守る店は、元人足のパティシエが、男が食べたいと思う塩プリン、サクサクした食感が楽しい塩シュークリームを販売していて、変わらず人気商品となっていた。露店の近くに。可愛らしい花をモチーフにした。パラソルがいつくか用意されており下にテーブルがあって。人気のデートスポットである。まだ肌寒いのだが、テーブルの1つに二人の女の子に囲まれた。細面の柔らかな癖のあるブロンドの髪を隠すため、気取った帽子を被る青年。ミル・ダルホン・カーリアがいた。肩には冬眠出来なかったため眠そうな顔の栗鼠姿の使い魔。ムーン、パラソルの上で美声を披露してる。極彩色な美しい鳥のライトである。

『ピュ~ピュ~ピュ~ピュピュ~、ピュ~ピュピュ~ピュピュ~』

二匹の使い魔を連れてデートにちょくちょく来てるミルは、カフェ・ブルーの常連で、近隣てばちょっとした有名人である。「素敵だわミル様!、光ちゃんありがとう♪」

目をハートにして、うっとりした女生徒。不器用ながらも真摯な態度を崩さないミルは、シンクと二分するほど女生徒から人気である。最近ではミルを独占していたアネスが、修行の旅に出てるから我先に、デートの申し込みがあって、冬休みなどはろくに休めない日々を過ごしていた。「ようやく最後、朝練がこんなに待ち遠しい気持ちになるとはな……」

しみじみ思い。深々嘆息を漏らしていた。




━━男子学生寮、実家から急を知らせる手紙を受け取ったコルト・アルベルトは、送り名を見て戸惑った顔をしながら。手紙を広げた。内容に眼を通した刹那……。コルトは驚愕を顕にした。



━━アレイ学園、演舞場。



「ハッ、やあ!、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」

鋭い呼気を繰り返し、使い込まれた棍棒を。凄まじい勢いで繰り出すランダルフは、自分の実力が誰よりも劣っていることを知っていた。



ランダルフが『特待生』になってから今まで……、人の足を引っ張ることしか、考えなかった男である。

しかしある少年がアレイ学園に入学してからの短い期間で、様々なことが起こった。冬休み前に行われたトーナメントがあるまで、学園最強は、間違いないと思っていたシンク・ハウチューデンが負けた……、



━━愕然とした。

ランダルフ・フレンツェの価値は、三人の少女を間近に見て、変わっていった。

━━自分の浅い悪知恵など……、物の数ではない強さを見せたレイラ・バレス、



━━散々騙し利用していた相手ローザ・リナイゼフなど、ランダルフが驚く以上に変わっていた。


━━そして……、ランダルフの根幹を揺るがせる存在。明らかに自分よりも実力が劣る彼女は、ランダルフが何人束になっても勝てない。あの氷の女神と称される。魔王の愛娘を単独で撃破したノノフレイミ・ラネス、自分は何を見ていたんだろうか?。



疑問を抱いた瞬間。自分自身に嫌悪感を抱いた……、そして……様々な葛藤に沈み。自分の心の奥底にあった。本当の気持ちに気付いた。『誰にも負けたくない』と純粋に思った日から。無心に訓練を繰り返していた。今日が無理なら明日、

明日が駄目なら明後日。コツコツ強くなって、死ぬまでにはローザにも、レイラにも、何よりフレイミに負けたくない……。そんな風に思えるようになっていた。

それに倒したい相手は他に沢山いることも……、 想いに耽ってると。

「ランダルフさん、おはようございま~す♪」

後輩のリーザが、ランチボックス片手に現れた。もうそんな時間か、思わず笑みを浮かべていた。



彼女リーザと冬休み。毎日のように朝食を供にするようになったのは……、つい最近のことだが、彼女と出会ったのは、トーナメントに参加することにしたランダルフだが、仲間が集まらず腐っている時である。

「クソ、クソクソクソ!、このままじゃ俺は……」

何を焦ってたのかが、今ではもう解らなかった。狂喜の双子と出会い。見せかけだけの自分をまざまざ見せられて、自暴自棄になっていた。恥ずかしいところを散々見せたのが、リーザで彼女は侮蔑するどころか、何だかんだ理由をつけては、側にいて話を聞いてくれた。

最初は……、鬱陶しいと無下にしていたのだが、彼女が自分の夢を語りだしてからかな……。つられてランダルフも夢を語っていた。

「自分の居場所を作りたい……」

ランダルフは南大陸最大の国、華の国ダナイの生まれである。フレンツェ家は、将軍家に支えた武家御三家が一つであった。しかし疑似神に滅ぼされ。家を…、国を…、土地を…、全てを失ったランダルフの一族は、隣国に頼ることなく。それぞれバラバラになった。東大陸のアレイク王国に渡ったランダルフは、英雄王、魔王が机を並べた。アレイ学園に入学していた。……まさかローザと再び、異国で、会うとは思いもよらなかった。

「苦労したんですね」

静かに語るリーザ、彼女の身の上を聞いたのもその時である。

「お前も!、母上を亡くしてたのか……」

妙な近親感が、二人の間に流れた。しかも母を亡くした時期が妙に近く。何時しか二人は話をするようになっていた。

「お前も『特別教室』に選ばれたのか……」

その頃、彼女がエドナ学園長の養女だと聞かされていて。対応に迷っていた時だった。再び現れた狂喜の双子が、

「君は、本当にダメダメで弱々だけど」

「彼女が君を、変えたね」

『そんな君だから僕たちは期待するよ』

勝手なこと言いやがる。彼女と言われて、脳裏に浮かんだのは、リーザのはにかんだ笑顔だった。「彼女を守れるのは君だけだよ~」

「彼女の夢を守れるのは君だけさ」

悪意の欠片もない。人間の感情という感情の全てが、すっぽり抜け落ちた笑顔。それだけに鋭い指摘をされると、忌々しい気持ちになって、チッと舌打ちしていた。

「魔王は言っていたよ。守る女がいる男は強くなるさ」「英雄王は言っていた。 信念を抱いた男は努力を惜しまないと」

双子の言葉は、凄まじい衝撃となって、魂を揺さぶった。それが自分の隠されざる気持ちだと。気付かされた。

「今日の卵焼きちょっと失敗しちゃた~、でもしょうが焼きとか、美味しく出来たと思うけどどうかな?」

確かに。ちょっと焦げた卵焼きはほんのり苦い、でもランダルフの好きな甘いやつで、これはこれで旨い。

「美味しいぜ、俺は好きだなこの卵焼きも……」 「本当に!?、良かった」

嬉しそうにはにかみながら。来年魔法討論会・予選が、軍国ローレンで行われることや。来春の疑似神討伐の準備で、『特別教室』参加生徒の制服を。モレンと作ってること。「だから冬休みは『院』で、物質変化の付属魔法を。理論から勉強してて大変だけど私頑張るね♪」

「そうか……、なら俺はお前の為に。疑似神を討伐してやる」

ぶっきらぼうに言っていた。

「あっ、ありがとうランダルフさん」

「ダルフで構わんと言ったろ?」

「あうっ、でも~」

もじもじ恥ずかしそうにしたリーザ、二人の時。愛称で呼ぶように言ったのだが、まだ慣れないようだ。

「リーザ、俺はお前が好きだ。だからお前だけには、俺を愛称で呼んで欲しい」

ランダルフを愛称で呼んでくれた。母上はもういない。

「あっ……、私も先輩のこと。その……、好きですよ」赤くなり俯くリーザ、彼女を見てるだけで、心にあった満たされね気持ちが癒されてる気がした。俺は彼女を守れる男になるためだけに。己を磨くと。新たに決意した。



━━黒衣の村。次代の長に期待されるアオイは、1人黒衣の奥義を学ぶため修行に戻っていた。


黒衣の祖は、華の国ダナイの将軍家に支えていた忍びの一族であった。聖人アレクと出会い。アレイク王家に支えるようになって━━はや100年。忍びの技は絶えず進化してきていた。魔法と呼ばれる新たな技術を取り入れ。独自の忍術が、黒衣には存在していた。

「アオイ、分身の術はコンテスタ姉妹が行った。四分身魔法。あれと理論は随分と近い」

黒衣が扱う分身は、自分の力を分身に与える技でわなく。魔法で作った攻撃魔法を分身に見せているのだ。通称爆裂分身。攻撃させダメージを与えて、隙を突く。これこそ黒衣の真骨頂であった。

「アオイよ我等の一部が、中央大陸に移り住むことが決まった。なんとしてもヒナエを守るのだ。良いな?」

長老で、祖父にあたる老人の言葉に素直に頷いていた。彼女の本当の母は、宮廷魔導師として、王家に支えてる。その辺りの理由は承知していた。 「アオイそなたにも忍術を学んでもらう。厳しい修行となる覚悟せよ」

「わかってるわ!、だからおじいちゃん。私が黒衣最強の長になるから。妹を誘うのはやめて」冷たい眼差しに貫かれ。不覚にもアオイの眼光に恐れを抱いた。気付かれていた……、一切表情は変えぬが、内心舌を巻いた。

「だがなアオイ……。中央大陸に渡り、ヒナエを守る者を選ばなければならぬ」

長老の言葉は無論理解していたが、それとこれとは話が違う。妹はいずれ母の跡を継いで、宮廷魔導師になるのを夢に抱いていた。

「その辺で良かろう父上、そう無理を言わずともオーラル様が、何とかしてくれます」

二人の会話を中断させたのは、突然現れたレイカに。渋い顔をしていた。

「そもそも黒衣を送ること、陛下は望まれませんよ」

「しかしな……」

「でしたら姉を。行かせてくださいませんか父様」レイカの突然の申し出に、流石に眼を剥いていた。

「父様も気が付いてるでしょ?、姉さんが結婚を頑なに拒み。独り身に拘る理由を」

姉も四十を過ぎた。技も衰えて来ている。後任に任せ退く時期である。

「アオイ貴女が黒衣の長として、姉に命じなさい、姉は従うわ」

驚き眼を見張るが、義母のレイカが言うならその通りなのだろう。なぜ伯母なのか疑問を抱いた顔をしていると。少しだけ寂しそうな顔をして、

「姉は、陛下を愛してる。それだけよ」

次の瞬間には、艷かな笑顔を浮かべていた。叶わぬ恋心か……、それでも一途に思い。側に要られるだけでも幸せに思うこと。アオイとて女である理解出来た。

「義母様、おじいちゃんよろしいですね?。前長ノルカ・エンディ・オーマを黒衣の任から解いて、中央大陸に居を移し。後にヒナエの護衛にします」

黒衣の長の命は絶対である。苦々しく思ったが祖父は静かに頷いていた。



━━ラトワニア神国にある実家に。冬休みを利用して帰省していたエルマは、珍しく男装ではなかった。夏から緑かかった髪を長く伸ばし始め。ようや少しだけ縛ることが出来たから。娘らしい姿を見せたのだが……、まさか父があんなに喜んでくれるとは、思い出してクスクス微笑んでいた。短い休みではあったが……、母の墓参りに行ったり、女王陛下に謁見して、色々なところにつれ回された時は目を白黒させたが、振り返ると母を早くに亡くしたエルマにとって、本当の母と過ごした気持ちになっていた。

父は隠していたが、二人が惹かれあってるのは火を見るよりも明らか、後は父さん次第みたいなことナターシャ様が、それとなく言うから。帰り際に父の背を押した。来年の夏は、リドラニアで世界議会が行われる。リルム様には、父さんとナターシャ様のこと話して、手を貸して貰おうと密かに決めていた。




『特別教室』に選ばれた、学園最強部隊の少年少女達。忘れられない三学期は、それぞれの物語を内包して、こうして始まりを告げた━━。



━━翌朝……、何時もの時間に目覚め。財布を確認して、シンクは登校した。屋台で揚げパンと温かいお茶を購入。至福の時間である。



久しぶりに訪れた演舞場には、先に来ていた見覚えのある。後ろ頭があった。栗色のちんまい少女は、足音でシンクと気付いたが、あえてその時を待った。気安く頭をポンポン彼にだけ赦した挨拶。

「クルミおはようございます。夕べは休めましたか?」

「おはようシン♪、大丈夫よ」

思わずニヤケそうになりながら、声音が弾む。二人はにこやかに微笑み。日常が始まっていた。



今日は休み明けである。一般生徒は、午前授業で終わる。教室では、明日から行われる専門教科のカリキュラムが説明されていた。『特待生』の多くは来年の卒業式と平行して、入学式の準備が任せられるため。通常学科以外は自主練になるのだが、『特別教室』の生徒だけ秘密の連絡網。観察官シンク、学級員のリーザから秘密の教室に集まるよう伝えられた。

「やあ~初めての生徒もいるが」

「自己紹介をしよう」

突然現れた双子に驚き、訝しむ生徒はいたが、それよりも双子の不気味さに、誰もが寒気を抱いた。

「僕達が教諭のグラベル」

「グラム、狂喜の双子そう言えば分かりやすいかな?」

双子は整った顔をしていた。なれど誠意、熱意、倦怠、興味、感情と呼べるような感情を一切感じない虚無。まるで生きた無機物。そんな印象を皆に与えた。『じゃ~シンク初めてくれ』

二人同時に促され、シンクは一つ頷いた。

「モレンさん早速だけど、休み前リルムちゃんがお願いした制服のデザイン見せて頂きます」

やや寝不足気味のモレン は、眠そうに目をショボショボさせながら。

「ふあ~い、え~と一番背が高いランダルフさんと。華奢なリルムさん、早速だけどこれを着てきて下さい」

二人は戸惑いながら、そそくさ着替えに教室から出た。直ぐに着替えを終えて、二人が教室に戻るや生徒全員が、モレンがデザインした制服に釘付けになっていた。

「まず女生徒の制服には、このようにブローチが付けられていまして、リルムさん試しにブローチのダイヤルを回して下さい」

「ああこれね」言われた通りに回せば、一瞬にしてミニスカートが、ズボンに変わった。 「へえ~戦闘と平時を分けれるのね♪」

クルリと回って見せると。女生徒全員気に入ったようだ。それに気を良くしたモレンは、

「これ提案なんですけど━━」

さらに制服にマントが追加したいこと。理由を詳しく説明していた。

「モレンさん、翼人が使ってる蟹蜘蛛かにぐもの糸は、流石に貴重過ぎて手に入らないけど……、確かブライアンが、似た素材作ってたから、聞いてみようか?」

「本当ですか!、なるべくなら早く試作したいので、早めに手に入れば嬉しいです」

「うん、だったら明日持ってくればいいかな?」シンクの何気ない一言に、教室の生徒達が揃って首を傾げていた。シンクの叔父に当たるブライアンは、公式にリドラニア公国にいることは知られている。とは言えどんなに急いでもリドラニアまで片道4日は掛かるのにどうやって……。

「ああ~そうか、忘れてましたが、教えときますね。残り一つの席。ラケル・クエトは僕の義手、義足の名前です」

突然の暴露に。シンクのこと知っていた生徒に驚きは無いが、知らなかった生徒は唖然とした。気付かなかった生徒ばかりだったのだ。

「彼等は竜の骨、鱗で造られた生きた義手、義足でね。僕の魔力を合わせたら僅かな時間召還出来るようになった。それが竜人ラケル・クエトさ。彼等を召還してる間、ラケル・クエトは竜魔法が使える。その魔法で、リドラニア公国まで移動出来る。あまりおおぴらに使えないんだけどね~」にこやかにとんでもないこと暴露されて。流石にシーンとなった教室。

「ただこの秘密は二人に、知られていたようだし。秘密にしても、得にはなりませんので」

そんな理由で秘密を話してしまえる。それだけでも驚嘆に値した。それよりも問題があった。あれだけの実力がありながら、シンクが義手、義足を付けて戦っていた事実に、二人の男はよろめいた。コルト・アルベルト、ランダルフ・フィレンツェである。片や顔をひきつらせ自分の甘さを恥じ入り。

片や自分の不安を口にするか迷う。

「さあ~今日はこの位で」

「また明日、この時間に」

そう言って、にこやかに微笑み、狂喜の双子は消えていた。



「シン少しいいかしら、それからクルミ、ノン、ヒナエも」

リルムとレイラは、フィル・マノイと彼女の部隊の面々を伴い、シンクに声を掛けてきた。丁度いいとシンクは、

「ローザさん、同席して下さい」

どうしようか迷うローザに声を掛けると、ホッとしてやや緊張した面持ちのまま、訝しむリルム、レイラ、ヒナエ、フレイミ等を伺っていた。何となくピリピリした雰囲気を察して、

「エルマ、良かったらちょっとやらないか?」

友人となったフィアの誘いに、みるからホッとして頷いていた。

「ミル~早く帰りましょ。ヒナエまた明日ね~」

甘えた声を出して、ミルの腕に腕を絡め。

「あっ、おいちょ……」ミル・ダルフォン・カーリアは、アネスに引き摺られるように帰宅する。残されたコルト、ランダルフは所在無さげにしてたが、どちらからともなく。

「良かったら少しどうだ?」

「そうだな。色々考えたいことあるし……」

二人はエルマ達がいる。演舞場に向かった。残された姉妹は、モレン、アオイ、リーザに呼び止められた。

「あのフレアさん、シアンさんにお願いが……」 それぞれ思うことがあるようである。

アオイは、シアンの魔法四分身について、リーザ、モレンは付属魔法の理論について聞きたいことがあると告げた。あまりこうして後輩から、声を掛けられたり。魔法のことで相談されたりがなかった二人は、戸惑いながらも。三人の下級生との会話を楽しんだ。



━━後に。最初の会合と呼ばれる出来事は、それぞれの立場を聞かせ、明かして。7人の婚約者達に。衝撃を与えた。

『なっローザさんが』

『えっ、フィルさんが』 思わず押し黙るリルム。色々と葛藤があるようだ。レイラにとってローザの参加は予想外だが、悪い人選ではないなと、婚約者一同を認めて、ため息を吐いていた。それぞれ思うことはあるが……、同時に長い付き合いになる予感も感じていた。「シン……、色々言いたいことありますが、これからは私達との時間もしっかり作って頂きます。良よろしいわね?」

貴婦人達の家長であるリルムの鶴の一声に。シンクは諦めて頷いていた。「ではフィル、貴女はシンクに付いて、リドラニアに向かいなさい」

「あっ……はい」

「貴女ローザと言うのね。クルミさん、レイラ、ヒナエ、ノン少しお茶をしませんか?」

五人の少女達は、揃って頷き、それからフィル部隊の面々を交えて、それぞれの出来事を話すことにしたのである。



初めて顔を合わせたフィルとシンク。フィルの気持ちを知り、まともに顔が見れない二人だが、迷ったあげく。フィルの手を掴んだシンクは、

「フィルありがとう、幸せにするね」

「あっ……、はい、お願いします♪」唐突な宣言であったが、一瞬にしてフィルの奥底にあった。不安が消えていた。



シンクに手を引かれながら『院』の林道に踏み入れて、小さな開けた場所。足元に泉があるところに出た。

「フィル、しっかり抱き着いて」

いきなり抱きしめられ熱い吐息が、耳をくすぐる。

「はい……」

父や弟とは違う温もり……、こんなにも安心出来た気持ちは初めてであった。

「我が右腕に宿りし天竜よ(ラケル)。

我が左足に宿りし地竜よ(クエト)。

新たなる契約に従い。我が願いを聞き届けたまえ。汝の名はラケル・クエト!。竜人魔法・雷光速動こうそくいどう」凄まじい魔力の本流が3つシンクを中心に現れた。雷鳴がして、フィルが空を見上げた瞬間。光に包まれた……、




「フィル、着いたよ」

まだ目がチカチカしたが、シンクに促され。恐る恐る身を離して、辺りを伺えば、辺りの景色が一変していた。

「リドラニアの都側だよ」

そう説明されても。気持ちが付いて来ない。

「ごめんね~流石に驚いたよね?。説明するのは大変なんだけどな……、そうだフィルは『瞬きの扉』の原理は知ってるよね?」

「ええ知ってます。もしかしてさっきのは」

察しのよい女性だと安堵して、一つ頷きながら。 「さっきも言ったけどラケル・クエトの竜の魔法だよ」

「するとさっきの雷は……」「簡単に言えばそうさ、フィルは雷の落下速度は、属性魔法の光に次いで、最速と言う理論を知ってるかな?、ラケル・クエトは天と地属性の竜なんだが、どちらも雷を操る魔法があってね。そこで考えた。自身を雷に包み込むことで、光の速さでの移動を可能にした魔法さ」

「なるほど……」

理論は理解できたが、それが可能だとすると……、どれだけの魔力が必要か、フィルには想像出来なかった。

「行こうかフィル。君を僕の叔父に紹介するよ」



二人は、城の入り口にある詰所で、ブライアンに謁見を申し込み、自分の名前と赴きを話せば、驚いた顔をしていたが、慌てて直立不動をとった。「失礼しました!、シンク様と婚約者のフィル・マノイ様でしたか、直ちに陛下にお伝え致しますので……」

言い淀む……、

「僕達なら構わないよ」 見るからにホッとしていた。




二人のため貴賓室が用意されて、そこでしばらく時間を過ごしていた。間もなく……、かったつな美しい女性が、黒髪の少年を伴い現れた。

「やあ~シンク、母さんから聞いたよ。この間来てたんだって」

見るからにシンクの親族と分かる。似た雰囲気を纏う少年は、シンクと変わらない年齢で、兄弟と言われたら信じた筈である。

「うん、ブライアンは元気そうだね」

「まあね~♪、そうだこの間お前の婚約者。ヒナエが来ていたよ。彼女と彼女の親族には色々と世話になったから、シンクからお礼を言っといてよ」

くるくるよく表情が変わるなとフィルは思っていると。ブライアンの言葉で。二人を驚かせていた。

「そうか……、わかったよ言っとくね」

それから改めて身をただしたシンクは、美しい女性に、一礼して面を上げ瞬間から、気品を漂わせた。別人となってフィルを驚かせた。

「シンク、よく来たわ」「お久しぶりですアミ女王陛下。あれからまた美しくなられまして、叔父が良い財政を強引に敷いてるのではないか、些かと心配でしたが、どうやら杞憂のようで、安心しました」慇懃でありながら、毒を含む物言いにブライアンは心外だと剥れ。アミの笑みを誘う。

「あら~クスクス。ブライアンバレてるようよ?」

傍らの少年を、愛しそうに認めつつ。頬をつついた。

「う~ん、そうかな~、強引だったかな~?」

照れて赤くなりながら、天井を見上げる顔立ちや、雰囲気はシンクとよく似ているが、ブライアンの方が、猫の子みたいにくるくる表情を変えていた。

「あ~と、そうそうシンク、君が急に来たってことは、例の竜魔法使ってかな?」

「まあね。急用があったからさ、学校終わりに寄ってみた」

何気ない会話の中で、アミは気になったことが幾つかあった。

「まあ~シンク、貴方学校帰りにリドラニアまで来たの?」

「はいアミ様。新しい竜の魔法は、それを可能にしますので」

へえ~っと、感心した声音である。

「それよりブライアン、前に作ってた、合成繊維あれ沢山用意出来るかな?」

「ん?、合成繊維……、ああ~蟹蜘蛛糸に似せたやつか、あれならある程度は直ぐに用意出来るけど、何に使うんだよ」

キラン目を輝かせ、早く話せと急かす。

「実はね……」

ブライアン、アミ陛下にならと、かいつまんで話した。

「へえ~アレイ学園にね。流石は兄さん!、いや魔王陛下も噛んでるか?、あの狂喜の双子をね。何だか楽しい学園生活だなシンク」

「まあね。代わりに父さんでも。もて余す先生を相手にするのは大変だよ?」

しみじみ苦労を噛み締めながら、切々とした理由を口にしたら。目をぱちくりして、

「あの兄さんがもて余す先生なんて、よっぽどだな~、かなり大変だろうな……」

ブライアンの言葉に、肩をすくめ。諦めたようにまあねと首を振っていた。



しばらくしてシセリア女王陛下、ハン将軍を交えて。先日のヒナエ、アネスが活躍した海賊事件の顛末を聞いて、まじまじブライアンを見てから。

「ずるいよブライアンは!、噂の移動島を手にいれてるなんて」

羨ましいそうにシンクが言えば、まあね~と肩をすくめ自慢そうな顔をしていた。二人を見ていてフィルは、ああ~そうかと気が付いた。二人は近しい者で、お互いを認めてるライバルなんだと。そう考えたら子供じみた言い合いは、別段可笑しいことでは無い、アミ、シセリア女王と見合い。不思議な連帯感を感じていた。

「とりあえずこんなもんかな」

「助かったよブライアン、試作出来たら送るよ。使うだろ?」

「うんそれは助かるよ~。親衛隊の正式装備に困ってたんだ~。デザインは変えたいから、そうだな~」

「だったらモレンは、ミヤマのデザイナーを兼任してる。その辺りはデザイナー指定して、注文したらどうかな?、モレンには話しとくから」

「確かにその方が、内外の受けはいいか……、じゃシンク悪いけど話を詰めといて」

「うんわかった!。ブライアンまたね~」

おいとまを告げ立ち去ろうとした時。

「シンク……、母さんのこと、ありがとな」

「……お互い様だろ?」

二人は似た笑みをかわして、さよならを言い合った。



━━夜……、フィルを連れて戻ったシンクは、

東通りにある。フィルの家が営む商家を訪れていた。突然の訪問にも関わらず。彼女の両親と弟のレンタはシンクを歓迎してくれた。夕飯をご馳走になった後。お茶を頂きながら。シンクは正式にフィルと婚約したいと話を切り出して。みんなを驚かせた。

「シンク様……、お話は分かりました」

固くなる表情の父。フィルはハッとしていた。悲しげな母の顔。そんな両親の顔を見て、レンタが俯いた。

「……以前父が、ある商人を助けたことがあるそうです。その若い商人は、恩人の娘さんと結婚したと……」

誰のこと言ってるか、夫妻は気が付いて顔を見合せていた。

「お父さん……、僕は彼女のこと全て知っています。それを理解した上で、ぼくには彼女が必要だと感じました。もしもこの先そののことで、彼女が謗りを受けたら。全力を持ってその方に後悔させるつもりです。どうか僕に彼女を幸せにするチャンスを頂けないでしょうか?」

深く頭を下げた姿に、夫妻とシンクの隣にいたフィルは、胸を突かれていた。レンタは不安な眼差しで、両親を伺う。シン兄に目を戻して、膝に置いた手にグッと力が入っていた。子供の自分だってわかったのだ。シン兄が真剣に姉のこと思ってくれてることが、。

「……本当に、この子を幸せにしてくれますか?」

様々な葛藤の末。枯れた声を絞り出した父に、ゆっくり顔を上げたシンクは、一点の曇りもなくこの場にいた皆を見回して。

「はい!、この身が朽ちるその日まで、僕はフィルを愛します」

きっぱりと口にしていた。その瞬間母が泣き崩れた。 父も鼻を啜りながら。ゴンと音がするほどの勢いで、床に額を擦り付けながら、頭を下げて、「シンク様!、娘のこと……どうかお願いします」

父の薄くなった頭を見たフィルは、涙が溢れた。「はい」

シンクの返事を聞いて、ようやく安堵の顔を上げた。




━━一夜明けて、フィル・マノイ、ローザ・リナイゼフがシンク王子の婚約者に選ばれたことが発表されて、大きな話題となった。



━━数日後、シンクの持ち込んだ新素材。炭素繊維とモレンが命名を使ったマント、ワイシャツが、『特別教室』生徒に渡され。その日から訓練が、第二演舞場で行われることになった。訓練に使われる武器は全て。刃のない鋼鉄の武器である。実戦方式の訓練をするのは、マントや制服の耐性になれる必要があるからだ。でも……、舞台に上がったランダルフ、コルト、フィルと部隊の面々を前に。

「本当にやるんですのシンク?、私手加減出来ないけど……」

リルムの氷雪の如く。破壊力ある言葉に。みんな狼狽え。身を震わせる。「無論遠慮なくやっちゃって、死ななければ僕の癒しの魔法で治すからさ~」

にこやかにみんなを死地に追いやるのが、シンクであった。

「ちょっ、ちょとま……」

「そう……なら行くわ」

ランダルフが悲鳴混じりの声を上げる前に。空を掴み。無数の矢を放っていた。ランダルフは咄嗟に体が動き、手にした棍棒を動かして、胸に当たる魔法の矢を弾いていた。隣ではコルトがまともに鳩尾にくらい呻くが、そんなことでリルムが手を休める訳がない。


バシュ、バシュ、バシュ、遠慮なく放たれる見えない弾幕。身体に受けた凄まじい衝撃と痛みはあるが、新しい制服が、致命的なダメージを軽減してくれた。

「だあ~それでも当たると痛いんだよ!、遠慮なく当てやがって、クソクソクソクソクソクソクソクソ」

やけくそ気味な気合いの叫びをあげて、手加減してるとはいえ。リルムの矢を弾けるランダルフの読みは、かなりの物だと。何人かが気付いた。だが本人は自分の才能に気付いてない。それはコルトも同じで、血気盛んな性格が、本来の力量に目隠ししてる状態と言えばよいか、冷静に攻撃を捌くことが出来れば、二人はシンクと十二分に戦える才能があった。



当初は鳴き声ばかり言ってたランダルフ、頭に血が登り暴走していたコルトだったが、数日でリルムの見えない矢を。弾く事が出来るようになっていた。それを見てシンクは、訓練の段階を上げることにした。最初に課せられたリルムの矢を受ける訓練は、新しい装備を自分の身体で理解させるためだ。それと不足の事態に対処する。基本的な概念を植え付ける。あくまでも儀礼でしかない。それをまもなくみなが、思い知ることになるのはまもなくであった。



現代の基本的な戦術は、小隊編成したチームを作って、作戦に従事させ行うのが、現代の戦闘である。学園の『特待生』はそれに慣れていた。シンクはそれを踏まえて、『特別教室』の生徒にも訓練させることにした。

まずはフィア、カノア、ランダルフ、コルト、レイラ。長物を獲物にする5人を小隊に選んだ。小隊戦を想定した訓練を始めるためだ。

相手は、ヒナエ、アネス、ラグ、フィル、アオイ、サラの近戦闘小隊との戦闘訓練である。



その他後方支法部隊フレア、シアン、リーザ、メグ、モレン、ローザには装備の調整や、準備のため。モレンの自宅に出ていた。



狙撃を得意とするリルム、フレイミの二人は、弓使いである。支援をどうするか話し合いを重ねていた。



学園部隊の中核を担うのが、クルミ、エルマ、シンク、ミルであった。多対1を可能にする実力がある四人は、学園で最強と呼べる戦闘力を持っていた。

「ミル!、未だ女神の祝福をコルト部隊に」

「ああ~喰らえ」

近戦闘を得意とする。アネス部隊と。陣形を築き防衛に回ったコルト部隊とでは、明らかな戦力差が生まれた。そうした戦力差を無くすことも訓練に含まれていた。

「アネス今!、接近戦に持ち込め」

ミルの合図に。攻めあぐねていたアネス部隊は一斉に。雪崩れ込む。

「クッレイラ、ランダルフ、散会してプランB」 コルトの判断は早い。武人としてはまだまだでも。四年も『学年戦争』を戦い抜いて将軍を任せられただけはある。アネス部隊が、コルト部隊の陣形を切り崩した形であるが、防衛陣形に拘っては、戦は勝てないことをコルトは父から教えられていた。

そこで簡単な作戦だけは、訓練の前に決めておいたのだ。受けの囲みを行い。1対1にならない絶妙な範囲を開けていた。こうなると反って近距戦部隊は、後手に回ることになった。いくら女神の過度な加護で、戦闘力が半減しようと。部隊戦になれば状況は変わる。実戦経験のない学生が、生き残るには、経験値の蓄積が急務である。




━━何とか近距部隊が勝利して、訓練は終わった。



翌日━━、

コルト、アネスを呼んで、昨日の初めて行った。訓練の反省を含め。これから行う設定訓練について話すためだ。「リルム、クルミ、エルマ。フレイミ、僕、ミルが三人づつが支援チームとして、訓練に加わるのだけど━━」

部隊長に選ばれた二人に。作戦が一任された。これは配属されたメンバーが、部隊長に従う訓練でもある。




コルトは部隊長に選ばれた時。かなりかれていた、しかし昨日の訓練で、実戦の難しさを痛感していた。

「一応言っときますが、二人は初めてにしては、十分うまくやれてます。もう少し考えを柔軟にして、仲間の判断に任せる部分との線引きなど。話し合いしとくと苦労は減りますよ」

二人を呼んだのは、それを伝えるためである。

「昨日のアネス側の問題点は、大まかな作戦を決めてなかったですよね?」

「大まかな作戦?」眉をハの時にしてるから、シンクがコルトに目配せすると、なるほどと頷いた。

「昨日のことだが、部隊長に選ばれてから。俺は副隊長に、レイラとランダルフを任じていてな、攻撃を受けた場合、3パターンの連携を組んでいたんだ」

コルト部隊の獲物は全員。間合いが長武器を得意にしているので、攻撃範囲、視界が広く連携に向いた武器であることを上げた。

「あっそうか……、だから私達は苦戦したんだわ……」

驚いたように呟くアネス。それを自分で考えさせ。反省し次回に生かす時間を持つことが、指揮官を育てるはや道である。「近戦闘の兵用に。気を付けてることはなんですコルトさん?」

シンクが突然そんなこと言い出すから。深く考えることもなく答えていた。

「ムっ、それは無論1対1で闘わないようまずは相手を撹乱して、分断させる方法として、二人一組にする……」

二人は顔を見合わせていた。

「訓練は、沢山失敗するいい機会だと思えば、また違う気持ちで挑めませんか?」

そんなこと考えてもいなかったから。二人はとても驚いたようだ。でもそう考えたら。確かに戦術を実戦方式で学ぶ絶好の機会であることを理解した。



本日の攻撃側は、アネス部隊に決まった。作戦は食料の輸送部隊の襲撃と言う設定である。護衛側のコルトは、何処から襲撃があるか、気を張らなければならない初めての経験に。みんな緊張していた。「来たわフィル、アオイ作戦通りに、フレイミ、シンク、ミルは陽動を」 アネスの命に静かに頷いた。




━━この日は、演舞場にフレア、シアン姉妹が来てくれたので、幻影魔法で、夜の森を透写していて、ただでさえ雰囲気があるので、自分たちが本物の山賊になった気分である。先行したシンク達が輸送部隊をやり過ごした所から。襲撃は始まった。



シンク、ミルが飛び出して、微かな物音を聞いた、エルマ、クルミがハッとして、山賊側を発見。危機を知らせようとした所で、フレイミの矢を受けて、愕然とエルマは言葉を失う。無論訓練用の矢である。多少の痛みはあるが、訓練なのでエルマは戦死扱いになっていた。同じく矢を射掛けられたクルミだが、そうした訓練を積んでいたようで難なく大剣で弾いた。迫るミルを、異変に気付いたコルトは、作戦通りに馬車を急がせ。危険地帯からの離脱を敢行。馬車の屋根に上がったリルムが、矢を放ち牽制。馬車の足が早まるも。いきなりリルムは真横からの体当たりを受けて、馬車から落とされていた。驚いたリルムに、瞬く間にシンクが走りより討ち果たし馬車を追った。ミル、ノノフレイミが続く。



そんなに行かず馬車が止まっていた。設定上街道に木のバリケードがされて馬車を止めさせたのだ。

「後方の敵に当たる。レイラは馬車を、ランダルフ」

コルト、ランダルフが三人を迎え打つ。レイラ達は、まだ敵がいる可能を考え。周囲を伺っていた。



馬車を守る護衛人数が減った瞬間、二人一組で、カノア、フィアが、レイラを襲い。瞬く間に討ち取られてしまった。コルトは訓練とはいえ昨日とあまりに違う戦略的攻撃に。呆然とした。僅かあれだけのヒントから。訓練とはいえ実戦に使えるレベルで、使って見せたのだ。彼女を侮っていたこと。自分を恥じた。



━━翌日、コルト部隊が攻撃側で、アネス部隊が護衛側である。どちらの部隊も前日の失敗を修正していたが、やはり襲撃側が有利となって、攻撃側の勝ちとなった。



数日後……、アネス、コルトは、昼食もそうそうに、自部隊の仲間と護衛側について議論を重ねていた。

「やはり受け身になると難しいわよね……」

それが本音である。二人とも防衛に向かない性格もあって、良い案が浮かばないアネスである。



━━翌日。シンクは再び二人を呼び出して。ある提案をしていた。

「ここ数日の結果を見て思ったんですが、護衛側だけ部隊長変えるっていうのはどうですか?」

シンクの提案に、当然驚いたようだが、確かにシンクの指摘はもっともである。苦手なら仲間にやって貰えばよいのだと。その日から二人は、苦手な分野を仲間に任せる大切さを知った。



━━攻撃側アネス、護衛隊長フィア・ガイロンの場合。大胆な戦略を繰り広げるフィアは、いきなり馬車を放棄して、逃げ出していた。なんと攻撃側に転じて見せ。アネス側を撃退してみせた。



━━攻撃コルト部隊、護衛隊長フィル・マノイの場合。シンク、ミル、フレイミに護衛を任せて、二人一組で、森の中から馬車を遠巻きにしていた。馬車を罠にした。攻守という策を敷いていたのだ。襲撃された瞬間包囲戦を仕掛ける戦法で、攻撃側を撃退してみせた。こうした勝利の刺激に。二人は味をしめて、仲間の話を聞く努力をするようになっていた。




エピローグ



『特別教室』の訓練を始めてから瞬く間に二月が過ぎていた……、



国王レヴァ・バレンシア・アレイクは、来月初めに行われる。疑似神討伐に備え第1師団の派遣を命じた。



さらに防衛のため。ガイロン重騎士団をターミナルに、派遣することを正式に発表。少なからず波紋を呼んでいた。

次回から、南大陸を舞台に。物語は新たな局面を迎えます。また同じ物語か、別の物語で背徳の魔王でした。

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