閑話姉妹弟子珍道中6
プロローグ
黒髪、目元の黒子妖艶な魅力を放つヒナエ・バウスタン、金髪をタテロールにしてる豪奢な美少女アネス・レイ・アレイクの二人は、バウスタン流の姉妹弟子である。それを知ったのは、学園が行った新しいランキング戦。トーナメント後である。アネスの提案で、冬休みを。バウスタン流さらなる高みを目指し。修行の旅に出たのだが……、
リドラニア公国、アレイク王国、ドヴィア国。三国で起こっている。誘拐事件に関わることになった……。
━━リドラニア公国・小さな漁村。
黒衣の長ノルカ、王族護衛長レイカに連れられて、三人はヒナエの母で、バウスタン流宗主ミラ・バウスタンと合流していた。
「姉さん。それで海賊島に渡る方法は見つけたのかしら?」
ミラが未だに。海賊達を、一掃出来ていない理由があった。
「海賊島?」
聞いたことがない島の名である。だがその存在は、あくまでも噂として船乗りは、酒の肴程度の眉唾話に語られていた。
しかし……海賊島は、存在していた━━。
黒衣の調べで、海賊島のだいたいの場所は分かったが……、今もそこにあるとは限らないことを。嫌ってほど理解していた。……海賊島とは、機械と造船の国ジエモンと同じく。船のように航海が可能な島であった。
「そこは大丈夫よ~。間もなくだと……」
ノルカが何か言おうとした瞬間。轟音が、つんざくように大気を震わせた。あまりの音に。ヒナエ、アネスは耳を塞いでいた。
「あれは……」驚いたように。空を見上げたセレナの目は、闇夜を走る。数機の飛行物体を発見していた。
「ブライアン殿率いる。機械竜飛行部隊が、私達の足になってくれるそうよ」にやり不敵に微笑むノルカは、悪戯が成功したと目を輝かせていた。
━━過去。あのオーラルに散々、おちょくられてきたノルカのトラウマは、年月とともに。彼女に多大なる変化をもたらせていた。今では部下や姉妹達を唖然とさせるほど。奇策を演出するようになったのだ、あくまでも余談だが、
まさか……ブライアンとこんなに早く再会するとは、考えておらず三人が戸惑っていると。
「だから言ったでしょ~、海では気をつけてね~って」
にこやかにウインクして言ってのけたブライアンに。毒気を抜かれていた。
━━後の世で、ハウチューデン家、最強の奇才ブライアン・ハウチューデン最大の才は、兄オーラル、甥シンク以上と言われる。危機察知能力だと。ある学者が唱えていたが、あながち間違いではなかった。
ブライアンが、リドラニア公国にやってきたのが、中央大陸で行われた世界議会後のこと。瞬く間に二人の妻の為に……、あらゆる危険を排除したとされた。それが疑似神との戦い前の。僅かな期間。全てを準備されていたと言うから。為政者として、あの英雄王兄オーラル以上とも言われるが、理由がわかるのはもう少し先の話である。
ヒナエ達は、ブライアン率いる。機械竜二個小隊に便乗して、海賊島に向かうことになった。
初めて乗る機械竜の背は、二人まで乗り込めるよう設計されていて、技術的な問題はあるが、水面以外ならば、あらゆる場所に降り立ち、飛び立てる仕様になっていた。また機械竜が外的に放つ騒音は、機械竜に乗り込み。透明なフィルターを下ろすと中は密閉され。ほとんど防音される。
「ヒナエさん~シートベルトしてくださいね」
くぼんだ機体竜の背にお尻を乗せて、足元にあった金具の付いた革のベルトを。ブライアンのするように腰に巻き付けた。するとブライアンは、
簡単に空を飛ぶ上で、やってはいけないことをレクチャーされながら。ヒナエの顔から緊張は隠せない。何せ空を飛ぶなんて、そうは経験出来ないのだから。不安、緊張、かなりの期待を抱きつつ。ヒナエはその時を待っていた、
各機体に通信機器が備えられており。通信機を用いて命が伝えられる。
『これより海賊島に向かう部隊を3つに分け、3方向から時間差で攻撃を加える』
ブライアンの説明はこうだ。機械竜は二個小隊六機。二機づつ別々に海賊島を目指し。一番遠回りする。北側が先に出発するなど。細かい打ち合わせが行われた。それぞれの機体に分乗するヒナエ達に知らされる。北側を攻撃する機械竜に乗るヒナエ・バウスタン、ヒナエの母ミラ・バウスタンが先に出発して、
ついで西側を攻撃する機械竜に乗る。王位継承権を持つ姫。アネス・レイ・アレイク。もう一人は、アレイク王国の暗部を。建国より受け持ちし。黒衣の長ノルカ・エンディ・オーマ。
最後に最初に攻撃に入る。東側を受け持つ機械竜に、セレナ・レダ、レイカ・エンディ・オーマである。
ブライアンの作戦はこうだ。六機の機械竜が、三方より攻撃を開始して。混乱を起こし━━。
━━深夜未明。
凄まじい破壊音。海賊島・港町は、突然の襲撃に。大混乱となった。
━━島のほぼ中央にある。切り立った崖の上には、海賊島の制御施設が、小さな小屋の地下に広がっていた。
━━最奥。機関部。小さな部屋が隣室にあって、ジョゼ・ブラッドは、先ほどまで、足が不十な祖母ジョアーゼ・ブラッドの世話をしていた。
ジョゼの母は、ジョゼを産んで、すぐ死んでいたため。海賊を引退していた祖母である。ジョアーゼが育てた。そのせいか血筋か定かではないが、血気盛んな。考え無しの青年になってしまった……、まさかこんなことになろうとは、
「ごめんなさい(ドルガ……)……」一度は愛し。自分が追い落とした男は……、今やハン・ミラと名乗る。リドラニア公国の将軍職にある……、自分の欲を拭えず。ただ愚かな自分を思い。慚愧に涙した。微かに感じる鳴動……、
孫が起こしていた事件の結末を予感したのだ。「私は……。先に逝くわ。だからドルガ……あの子の命……」
ゆっくり瞼を閉じるや。静寂に包まれていた。ジョアーゼは静かに息を……。引き取っていた。
轟音を響かせた瞬間。凄まじい破壊音がして、ジョゼの身体が煽られ倒れた。咄嗟に顔を庇いながら伏せて、飛んできた瓦礫から。難を逃れた━━。
あまりに予想外過ぎた。それゆえ、すっかり顔から血の気を無くした。
「あれは何だ……」
最早言葉もない。再び轟音がした。まるで竜が咆哮を上げたよだ……。再びジョゼの近くにあった家屋が、一瞬で燃え上がっていた。
「いったいこれは……、何事なんだ?」
自分の理解を越えた出来事。今まで自分は、選ばれた者という自負が、一瞬で瓦解していた。いや夢から覚めたという方が、最適であったか、ようやく襲撃から身を守ろうと。海賊達も動き出した。そんなとき怒号。悲鳴が聞こえてきた。ジョゼが何が起きてると燃え上がる炎。争う部下達を見た時だ。
「ガフ……」
打撃音。崩れ落ちる仲間達。怒りの声が聞こえた。ジョゼは立ち上がりカトラスを抜いて、辺りを眼をすがめ。睨み付けるように伺っていると。凄まじい殺気を感じて。咄嗟に身を屈めた瞬間。後方から髪を粟立ちさせるような。烈風が流れた。
「あら?、今のかわすなんて、海賊の癖にやるじゃないの♪」
嬉しいと、声音に滲ませる女の声を聞いて、怒りよりも今の今まで何処にいた?、疑問を抱いた。素早く身を起こして振り返った先には、見るからに場違いなお嬢様風の少女が、艶然と微笑して、ジョゼを見ていた。まるで俺をその辺の路傍の石を見るような、蔑んだ眼差し。カーっとして、
「殺してやる!」
彼が、血まみれジョゼと呼ばれる所以は、怒りを感じる沸点が、低すぎるからだ。
無抵抗な子供を殺したこともある。だから所詮女など……、構えも技もない自己流。無法者の刺突。アネスは軽やかにかわしていく。一撃、二撃。十撃。必殺を期した全ての突きは、女にふれることなく。かわされ続けた。
「くっ。くそくそくそくそくそくそくそくそくそ!!」
苛立ち。頭に血が登ったジョゼは、さらにめちゃくちゃカトラスを振り回す。アネスはあまりにも愚かな男。ジョゼを見下し。それ以上見ることを止めていた。だから大振りな一撃をかわすと同時に。カウンター。渾身の一撃が、ジョゼの臓腑を抉る。
「がっ……、ガハッ……」
血混じりの吐瀉物を。地面に吐き散らし。自分の吐瀉物の上に。倒れ伏した。
「ちきしょう……、ちきしょう……、俺は……選ばれた者だ」血混じりの唾をを吐きながら。最後のプライドを吐露した。
「くだらないわね。貴方達は所詮その程度の存在だわ」
踏み砕く言葉。ジョゼは涙混じりに。あまりにも無慈悲。あまりにも美しい女を見上げ、自分の思い上がりを感じて。涙がこぼれた。
エピローグ
大海賊アル・センバートを名乗った。ジョゼ・ブラッド以下。海賊ギルド幹部。絞首のバティン・ブレイゾ。首切りギジマ・エドルフ。
ジョアーゼ・ブラッドの遺体を発見したと。リドラニア公国は発表した。
━━リドラニア公国・留置場。
かつかつ。甲高い音を響かせて、大柄な白髪を短く。右目に眼帯をした、元大海賊ドルガ=ハン・ミラは、一番奥にある独房を訪れていた。
独房の中。膝を抱え。顔を埋めてる。まだ若い青年を見舞うためだ。青年は何の色も目になく。ただ虚無感を漂わせ。生きた屍のように。虚ろな眼を祖父に向けていた。
「……」
「……」
お互い掛ける言葉など既にない。ただ深い溝が横たわるのみである。
━━リドラニア公国、カフェ・ブルーリドラニア支店。
━━海賊島事件。数日後……。ブルー・ファミイユは、1人の少年と相対していた。
「わざわざのご来店。ありがとうございます」やや面倒臭いと言わんばかりに、僅かに眉ねに皺が寄る。
「クスクス。開店前に訪れたこと申し訳ない」一国の王になる者と知っても。ブルーの態度は変わらない。兄から聞いていた通りの人物と分かり、嬉しそうに微笑んだ。
「それにファミイユ殿は、仕込みが終わったら。即日帰国なさるつもりでしょ?」
少年の指摘に。違いないと思わず苦笑を深めた。
「ファミイユ殿。貴方が礼を嫌うとは承知してます。ですが敢えてさせて下さい。我が国の為。ご尽力感謝致します」
少年はにこやかに微笑みながら。深々と一礼していた。
「まあ~仕方ないだろう……」しみじみ呟きながら1人ごちる。この場で口にしないが、若き王を見る眼差しは柔らかい。ファミイユは欲望に忠実で、自分を飾らない者を好む。目の前の少年は如才なく、あの海賊島を差し押さえて。新たな領土として。機械竜騎士団の基地にしてしまうつもりのようで、なかなか侮れない少年である。
「それで……。ハン将軍は?」
「まだまだ二人には、時間が必要そうですね。それよりも気にしてらっしゃるのは……」
「ああ~都にいる。黒幕だな」ハープの茎を口に入れながら。ピコピコ始めた。
「はい。商人としてはいりこんでますね」
目の前の少年は、それを理解した上で、黒幕であるあの商人を使う気でいる……。性格はオーラル以上に厄介だ。
「その黒幕もまさか……、お前さんの手のひらの上で、いいように扱われて気の毒にな……」しみじみ呟いていた。
「クスクスそれほどでも~アリマ~ス」
いけしゃーしゃーと言ってのける辺り。ファミイユ好みである。思わず好意的な眼差しを向けていた。それに気付き小さく肩をすくめながら。
「……もっとも。今のリドラニアでは、手段は選べませんからね~」
にこやかに言いながら。それでいて楽しそうに微笑んでいる。喰えない少年である。店内に入り込む日差しに眼を細めながら。今頃城塞都市ベゼルを出発してる。娘と我が国の戦う姫様を思い。深々ため息を吐いていた。
「やれやれ忙しくなりそうだ」




