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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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三人の婚約者大活躍ですか?

プロローグ




━━北大陸、竜の巣。



薄い茶色い髪、切れ長の目に髪と同じ色の瞳。やや若く見える顔立ちは、彼女にとって豊かな胸と同じくらいコンプレックスであった。




彼女━━。

『アンナ身体は良いのですか?』

優しく気遣う優しい思念が━━。

━━竜の巣。

最奥まで降りたアンナの意識に優しく触れた、薄暗い奥の台座。目が慣れるまでしばしばまばたきしていると。徐々に目が慣れて、辺りを伺う事が出来る。アンナの眼差しの先に。そこには世界に三頭しかいない。白銀の美しい竜鱗のそれはそれは美しい竜が、理知的な眼差しの赤い眼を優しく細めると。まるで貴婦人が微笑むような、気品が漂うから不思議である。

「ミリアーナ元気そうね♪。私は大丈夫よ。この子も元気に育って、もう安定期に入ってるわ」

ふっくら目立ってきた下腹部を。愛しいく。幸せそうに撫でた。

『それは何よりです。貴女がわざわざ大事な時期に来たのは、姉やシンクレアが都を騒がせてしまい。竜の巣が手薄になって、心配させたからかしら?』

そっと彼女の相棒である。アンナに額をくっ付け。目を細めていた。そうするとミリアーナはまるで、嬉しそうに微笑むように見える。二人だけのコミュニケーションである。久しぶりに触れるミリアーナの首筋を。優しく撫でながら。小さく吐息を吐いた。

「それもあるけど。あの人が……王子様の護衛に出てるから……。少し寂しくなってね……」

ムッスリ思い出して、寂しげな顔を見せていた。


『あらあらあの貴女がね~。クスクス♪』

意味ありげに言われてしまい。思わず赤面していた。アンナは拗ねてるのか、普段は分からない程度に、右頬だけ膨らませていた。懐かしい癖である。嬉しい気持ちを抱き、ついついからかいたくなったのだ。

「も~貴女まで、レイナ姉みたいに言うのね~」

完全に不貞腐れたか。むくれ始めていた。

━━彼女アンナの言うレイナとは、レオール連合の礎を築いたレイナ宰相のことで。アンナの従姉であり。あの英雄王オーラル・ハウチューデン陛下、魔王ピアンザ陛下と友人と言うから……、ただの憧れとは違う。崇拝に近い気持ちを抱いていた。成人してからは姉のように慕うレイナの役にたとうと。軍部に身を置いた。その時出会ったのが、尊敬を抱いたリブラ将軍である。

「今日よりお世話になります。アンナ・ホルトです」

レオール連合には、他国と違い軍部は、特殊な階級が存在していた。それが部族内の階級戦士、勇者、若長、部族長、長老である。それぞれの階級にさらに、5段階の階級が存在しており。当時のアンナは、まだ新米の見習い戦士でしかなかった……。



それがいきなり異国の将軍とはいえ。あの魔王軍を様々に策略で敗走させた手腕。土竜だけでなく。竜の王を相棒にした生きた伝説は、四英雄に勝るとも劣らない人物である。

「お前さんが、レイナのお気に入りかよ~」

どんな厳つい人物が登場するか、不安だったアンナの前に現れたのは、日に当たると赤み掛かった髪の。シニカルに笑った男性。後にアンナの竜騎士の才を見だすのだが……、この時(なんだ怖そうじゃなくて良かった)と安堵したものだ。それから女性初の竜騎士になった。遠縁のイノワ・ミササ、同い年で、同じファルバス族、レイナと遊ぶ権利を競った親友のミネラ・マレスト、リブラ将軍の配下に、女性は三人だけだ、だからではないがいつも三人は一緒だった……。



━━やがてミササが地竜種荒くれ(レブラント)に選ばれ。最初の女性初竜騎士となり。ミネラが雷竜種シリューに選ばれた。悲しいことに、アンナだけが残された……、




毎日悔しい思いを重ねた。答えは竜から選ばれなければ、どんなになりたくて頑張っても。竜騎士にはなれない現実━━。

アンナはいつまでも見習いのままなのだと、悲観していた。



今から数年前、大事件が起きる。リブラ将軍が、至急プロキシスに向かった出来事。その頃のアンナは未だに見習い戦士、見習い竜騎士でしかない。自分の竜もいない見習いは、竜の巣で、竜達の世話を行うのが日課であった。



そもそも竜騎士自体が希少で、レオール全体から見ても数が少く。竜騎士になれないことの現実に。見習いは次々とやめて行く……、その為では無いが、いつも人でが足りず。また仕事も大変な重労働が多いため。日々くたくたになるまで竜達の世話をしていた。




━━そんなある日のこと。普段竜騎士がいないと滅多に竜の巣最奥に足を踏み入れることはないのだが、アンナは何故かリブラ将軍の言付けで、一人竜を纏める竜王達の王座に降りていくことになった。


そこで竜王希少種、白銀の竜ミリアーナに見初めされたのだが……。あれから様々な出来事があった。レイナも二年前に結婚。一児の母である、

「あれから四年。時が立つのって早いね……」リブラ将軍が急ぎ、中央大陸に赴いたのには理由がある。シンク皇子が、魔王の愛娘リルム様を助けるため。大怪我を負われた。そこで竜の骨。鱗が必要となって……、白銀の竜ミリアーナに選ばれた最初の仕事は、輝きの都までの荷物運び、無論緊張した、初めての空。相棒と駆け抜けた時間は、あっという間に終わり。リブラ将軍に届けた。



この時は思いもしなかった。一生を左右する出会いがあるとは……、愛する夫に抱かれて眠る幸せを知った今。1人でいると無性に不安になってしまう。

『大丈夫よアンナ。彼は貴女を選んだわ。愛する貴女をね』

クスクス笑いを含む思念に。段々と顔が熱くなるのを感じてしまう、

「ありがとう……ミリアーナ」

ギュッと大切な相棒を抱き締めていた。




━━西大陸・新帝都。郊外……。



工場のある地の近隣は、林道挟んだ先と……。近隣の住人と、ほとんど付き合いなどないが、工場だと言うのは知られていた。それは朝からリズムよく聞こえる。機械の音。その音が1日の始まりだと感じてる民も多い。



━━家宅に使ってる小屋から出ながら。うん~と背伸びして、レイラ・バレスが顔を洗いに。工場の裏手にある水場に向かう。



「おはよう~レイラ眠れた?」

レイラを見つけて、黒髪の気の強そうな顔立ち、サラ・ローガンが、微妙な笑みを浮かべて場所を替わる。

「少しな……」

同じく微妙な顔を隠さず。苦笑滲ませたレイラは、嘆息混じりに工場を伺いながら。諦めにそっと肩を竦めていた、

━━ガシャコン、ガシャコン、リズムかるに機械が奏でる大きな……気になって。なかなか熟睡出来ないのだ、

「あの二人は……、良く寝れるわよね」

「ええ……羨ましいくらいに」

二人の会話に加わったのは、目の下に森ではないクマをこさえていた。両家のお嬢様カノア・テレグシアである。三人は今も夢の世界にいる二人の人物を、羨ましく思い。そっと吐息を吐いていた。



小屋の一室。リマの部屋を借りて仮眠をとるのが、噂の元=魔王の愛娘リルム・アオザ・パルストア、まるで姉妹のように幸せそうな顔で、リルムに抱かれて眠るのが、花の魔神ベテルローズである。あの二人には困った癖があった。寝起きの悪さは無論。抱き着き癖があるのだ。

「それはそうと。あのメグったら。リマさんと一緒に頑張ってるけど……、大丈夫かしら?」

テレグシアは心配そうに。メグ・ファノアを気遣う。それと言うのもメグは昔から。変な所で頑固で頑張ってしまうからだ。



三人が初めて出会ったのは、物心が付いた頃である。メグの家名ファノア家は、騎士階級の下級貴族であるが、財務官シルビア・カレン=ダレスの配下として活躍。数年前から王都の商業会のメンバーとして、今では有力者である。その関係で、リーブル酒家が実家のサラ・ローガン、商会長の娘フィル・マノイは、子供の頃から幼なじみであった。

「おはよう二人とも。メグの奴。さすがに眠そうな顔をしてるが、あの様子では、何を言っても無駄だとおもうよ」

そう声を掛けて来たラグ・セレンは、レイラと水場を替わり。冷たい湧水を手押し式ポンプで汲み上げる。珍しいカラクリを使って。何度と動かせば、桶に冷たい水がなみなみと汲み出せる。苦労が半減されるのはありがたい。早速顔を洗い。タオルで汗を拭った。どうやら朝の鍛練をしていたようだ。ラグの父は近衛連隊の武術顧問であり、ラグも拳士である。朝の鍛練が日課なのだろう。

「ラグ」

レイラが新しいタオルを渡すと。ありがとうと嬉しそうに微笑む。こうしたちょっとした変化も旅に出て、気が付かされた。どうやらラグが普段仏頂面をしていたのは、たんに人見知りなところがあり、もともと口数も少なく。きつい印象を与えるのが要因だった。彼女の性格を知らない者には、取っ付きにくいと思われてる。でも一度打ち解けると。彼女が甘えん坊なところがある。可愛らしい性格の女性だと分かってきた。

「みんなおはよう、もう朝ごはん出来てるわ。天気もいいし外で食べませんか?」

サラが気を利かせて、朝から色々と準備してくれたようだ。

「確かに、あの中よりはいいな……」

あの独特の匂いが充満する工場の中での食事は……、ちょっとと考えていたテレグシア、肌寒いが、外で食べる方がゆっくり出来ると同意した。ラグも何だか嬉しそうに。うんうん頷いた。

「でもさ~。あの二人……。特にリルムを起こすのは大変そうだよね」

サラの一言に。思わずみんな複雑そうな顔をしていた。



━━昨日の夕方……、連絡係として、何時ものように突然現れたベテルローズは、疲れもあったと思うが、彼女の仕事が終わった安堵からか、いつの間にか寝てしまった。

「ん~……、あっ……」

ゆっくり目を開けたベテルロースは、不思議と幸せな気持ちを抱きながら、抱き締められる気持ち良さを。噛みしめていた。「すっかり寝ちゃたな~」

昔を思い出して、自分からリルムに抱き付いた。こうしてると安心出来た。

「顔はレシア姉に似てないのに……」

天然で頑固なところが同居していて、普段は頼りないのだが、何かことがあれば、頼りたくなる。不思議な安心感を与えてくれる存在。レシアとはそんな女性であった……、扉の開く音がして、身を固くしたベテルローズ。

「あら、ベルは。起きてたのね」

「あっレイラ、おはよう♪」

傍らのリルムを見て、小さく苦笑しながら。そっとリルムの腕から抜け出して、

「こうしてる寝姿は、可愛い人なのに……」

リルムを見ながらレイラの率直な意見を呟いた、意表を突かれて笑みを広げながら。

「クス。本当ね~、でもあのとき私達が見たリルムは、策を巡らせてる時の貴女と。いい勝負だったわ♪」

チクリ軽口で切り返され。

「誉め言葉として受けとりましょうベル」

にこやかに笑い肩をすくめる。軽口を言える程度に、仲良くなっていた。

「リルム……。朝ごはんの支度が出来ました。そろそろ起きてください」

軽く身体を揺すると。赤子がムズがるように。眉間に皺を寄せていた。それを見ていたベテルローズはしみじみと呟く。

「レシア姉も。朝は大変だったのよね……」

これからの苦労を滲ませる呟きを聞いて。思わず肩を落としたレイラだった。



ようやく目覚めたリルムを連れて。外に連れ出した頃。




技術者レノン・ハウチューデン、メグ・ファノアによる。大詰めの作業も終わりを迎えていた。

「そうじゃないリマ!。下半身のジェネレータは、魔力質量を変換させる魔力を。左側と相互干渉を引き起こさせないため。背にタービンを総裁させるのだ」

「ええ~レノンさん、それだと積載量がありすぎて。歩行が遅くなりませんか?」

相変わらず感は鋭い、抜けてるところがあるのに。

「なんでカードリッチを装備させるか、忘れたか?、それに誰を入れるか」

あって顔をしたかと思えば、

「なるほど、カードリッチに魔力のデバイスを切り替える役目をするからか、人間で言う魔力強化が可能になります。だからレノンさんは……」

理解の光を宿す眼差しに、こそばゆい気持ちになって、思わずリマの帽子をわざと引き下げた、

「あう……、レノンさんの意地悪」

「フン!」薄く笑い。自分の仕事に戻った。残されたリマはも~とか言いながら。やけに嬉しそうな顔をしていた。

「ゴホン……、リマさん。積載量増やすタービンはどのように着けるのですか?」

一応咳払いなどしてみたが、口元がニヤニヤ笑みになるのをどうにか抑えるのに苦労した。

「あっ……、クスクスありがとうメグさん♪」優しい笑みでお礼を言われてしまい、あまり表情変えないメグは、目元、首筋を赤くして照れていた。

「うんうん、今のメグさん見てるとつい。ブライアン君思い出しちゃて♪、それで私もレノンさんも色々難しいお願いしちゃて。ごめんなさいね」なんだその事か、安堵と同時に。技術者として尊敬出来るレノンと。同じく技術者を目指すリマから。信頼されてると分かるからこそ嬉しい感情はあるが、謝られても困ってしまう。

「あのリマさん、ブライアンてもしかしてあの?」

あくまでも外国のめでたい話と、噂を聞いた程度には知っていた。

「そうそう~。ブライアン君ね。来春リドラニア国王に迎えられるのよ~♪」

やっぱり……、アレイ学園でも逸話が伝えられていた。人間で初めて、竜の魔法を体得し。僅か7歳で、新しい飛行系魔法を作り出した奇才……。

「ブライアン君てば、頭が凄くいいから。レノンさんが何か言えば直ぐに分かっちゃうんだよ~。本当に羨ま……、じゃなくて、優しい子だよ」本当に羨ま……、じゃなくて、優しい子だよ」

慌てて手をパタパタさせたが、あまりに分かりやすい素顔に。

「………プッ、だっだめ……、」

ついに我慢出来ず。大爆笑していた。因みにレイラは知らなかったが、メグは普段クールにしてる理由があって……、実は笑い上戸だったのだ。

━━そんな訳で、しばらく笑い声が響いていた。




落ち着いたメグを交えて、大きな作業台を引っ張りだし。立食形式で、朝ごはんを食べ始めた一同。朝食としてはかなりな量である。メインは簡単に摘まめるサンドイッチ、唐揚げ等である。手に付いた機械油が付かないよう。鉄製のホークと呼ばれる。三股の食器を使う。

「この唐揚げに使ってる鶏肉……。もしかして筋ばって固くて食べられないと諦めたあの鶏肉ですよね?」

訪ねながらリマはあむって一口噛み締めた瞬間。あまりにも柔らかいから、思わずサラを見て、目を丸くした。

「ええ。私が祖父から学んだ。ダナイ料理には、筋ばった肉を柔らかくしたり。肉の旨味を引き出す調理法が沢山伝えられております」

「あっダナイ料理。確かブライアン君から、オーラル様がとても得意にされてるって聞いてたから。一度食べてみたかったんです~」

もうひとつ唐揚げを刺して、パクり幸せそうに身悶えしていた。釣られてベテルローズもパクり。思わず可愛らしい笑顔でニコニコしていた。「美味しい~♪、ベル料理苦手だから。サラやリマが羨ましいな……、こんなに美味しい物作れてさ」

いつも思念を使う事が多いベルだが、本音が出るとき口に出すのが癖のようだ。

「ベルさんこっちの揚げ小籠包も試してね」

サラがベルのために。一口大の揚げ小籠包を取り分ける。

「中のスープが熱いから、レンゲに乗せ皮を破って下さい」 「え~とレンゲってこれね」

鉄製のスプンみたいなのに。揚げ小籠包を乗せ。上の部分にホークを刺したら。スープがジュワリ……。生姜の爽やかな香りが鼻腔を擽る。ビックリしたベテルローズは、恐々フーフーしてスープを一口……。

「うわ!、スープ熱々だけど美味しい……」薔薇色に頬を染めていた。それを見て、リルム、レイラも真似て早速スープを堪能。小籠包もあむって食べた瞬間。華やいだ笑顔の花を咲かせていた。釣られて、

「ほ~うこいつはなかなか……」

気難しい顔をしていたレノンが、しきりに感心した口振りである。そんなレノンの様子を見て、思わず勢い込んで、リマはサラに詰めより。真剣な顔で小籠包のレシピを聞いていたのだが……、

「ちょっと技術がいりますね……」

難しい顔をしていた。チラリレノンを慕う可愛らしい顔をしている彼女。

「リマだったらどうかな、餃子なんて?、あれなら慣れればわりと簡単に作れて、保存しやすく。食べたい量だけ作れるし」

「餃子ですか?」いまいちわからない料理名に。リマは首を傾げた、そんな彼女に簡単に餃子のレクチャーを交えて。何だか面白そうだとテレグシアが、

「じゃさ夜はその餃子やりましょうよ♪。話だと作業もあと少しなんでしょ?」

「あっ、わっ私は……」

意味ありげにレノンを伺うと。薄く笑い。一つ頷いてやる。

「構わんさ。後は調整だけだしな。メグに任せれば良いだろうぜ」

「ほっ本日ですか!」

信頼込めて指名されたメグは、顔を上気させ。意気込み立ち上がっていた、ハッと皆の笑み含む視線に気が付いて。真っ赤になりつつも。ちらりリマを気遣う顔をしていた。

「あっ、あの~わっ私にやらせてもらっていいですか」にこやかに微笑み、

「はい、メグさんさえ良かったら。後はお願いします♪」

「はっはい!」

リマさんとすっかり打ち解けていたメグは、嬉しそうに元気に返事をしていた。こうして同性との何気ない交流を交え。リマの内面にも変化をもたらせたようで。好ましく思うレノン。



彼女達の様子を伺っていた。魔神となった少女は……、少しずつ失った時を。再び動かし始めていた。




━━新帝都・城下。 緑園通り、旧帝都での緑園通りとは、緑の民の区画だった。


城は、緑園通りから見て北西に位置しており。帝都の外壁部分の造りは、林道が走る珍しい作りになっていて、城に赴くには。東西の城門から。大通りに出て右手にある。この緑園通りの公園を抜けるのが、近道であった。




━━公園の四方の路面は、綺麗に舗装されているが、沢山の木々が帝都の街並みに美しい景観を持って残されていた。また林道が街を囲むような作りとなったのは、四方にある大通りの商家、または軍部の訓練に使われる為である。商家が林道を使うのには昼夜時は決められてるが、その外側が外壁である。各城門から入ると。大通りとなっていて、一歩裏通りを行くと。商店街になっていた。



━━四方の城門の内。正門のある南大通りでは、主に乾物を扱う商家が並んでいて、大きな馬車が毎朝何百と通りの店に止まっていた。



━━大通りの一角。B&M・カフェブルーがオープンしたのは昨年の冬であった。


西大陸でB&Mと聞けば、アイスクリームのお店で有名あり。30種類の定番アイスと。季節ごとの果物を用いた。限定アイスが子供から大人まで、幅広い層に大人気である。さてこのB&M本店は、何を隠そう、東大陸聖アレイク王国の城下町にある。カフェ・ブルーの姉妹店であった、さらに社長を勤めるブルー・ファミイユは、アレイク王国の近衛連隊長の重職にあるが、世界中に支店展開をした。企業家として有名でる。しかし多忙のため現在。実質B&M・カフェブルー西大陸本店・責任者はミューア・サリアンに任されていた。何故他国の重臣に?。不思議に思われる、何せ彼女は魔王ピアンザ配下の六将の1人であり。暗殺者、闇ギルドの長と沢山の顔を持っている。さらに言えば中央事件で、十代の身で、単身魔人を倒した逸話が残されるほどの実力者。スイーツと結び付きがなさそうだが……。



政治の世界ではわりと有名であるか、近年外交の場で、ミューアは表世界に顔をだしており。お菓子をもちいた、お・も・て・な・し。をすることが、話題になっていた。



━━本店の三階。旧カフェ・ブルー本店と同じく、隠れ家のように使ってる小さな部屋に、闇ギルドに在籍する。上級ギルドメンバー、ミューアの影と呼ばれる。男女の姿があった……。

1人は、本店アルバイト長である。コゴミ・サリアン、ブラウン気味の赤髪を短くしていて、仕事の合間ゆえに女性スタッフ専用。エプロンドレス姿である。活発さをアピールしている風に装っているが、ゆくゆくはミューア後継にと考えるほどの逸材。今は学生の身ゆえ。本店に仮住まいをさせていて。この部屋の隣が彼女の部屋だ。

傍らの男は。ルーベンス・ホルディス、黒髪浅黒い肌を見れば分かる。黒の民である。彼は前頭ダレークと同じく。闇魔法の使い手で、何かと重宝してる手下である。

「ルーベンス、貴方は姫様達の護衛から外れなさい。後任はコゴミに任せるから。貴方はダレークとコンタクト取り。どうもあの皇子様は……、また何か事件に巻き込まれてるらしいわ。そんな訳で、貴方は彼の補佐役として合流を」

「承知した。これより向かう」

「そうそう魔王様から『瞬きの扉』の使用許可が降りてるわ。意味は判るわね?」

「姉御……、それはまさか?」

「魔王様は、かなり危険だと判断してるわ」

それ以上何も語らず。ルーベンスは静かに頷き。影に沈むように部屋から消えていた。

「さてコゴミ。貴女にはルーベンスに代わり。姫様達の護衛をと言いたい所だけど……、貴女の実力では姫様達に気付かれてしまうわ~。だからいい、クライム皇子に頼まれたと。姫様達にアイス届けて、顔見知りになりなさいな」

パチリと手を合わせそれが良いわと。魅力的に微笑むミューア。コゴミとしては不満を抱いた。自分は上級ギルドメンバー影の中でも。暗器の使い手であり暗殺者としても一流だと自負していた、それゆえにいささか憮然とした表情を表した。だからではないが、優しくコゴミの頬に触れながら、クスクスからかうように微笑む。彼女は本当に顔に出るから。分かりやすい。闇としてよくはないが……、これからの帝国には、彼女のような人材が必要になっていくのだ。

「コゴミ貴女も姫様や、取り巻く彼女達に会えば分かるわ」

尊敬する養母のミューアに言われては、仕方ない……。

「……わかりました。姉さん……」

コゴミにだけ。そう呼ぶこと許していた。でも……、小さく唇を歪め悪戯を思い付いたように微笑んでいた。その日の夕方……、



赤み掛かったブラウン気味の髪に、バレットを飾り。メイドの格好して。スラリとした背の高い少女が、町外れの工場に向かい。郊外の林道をてくてく歩いていた。

「ずいぶんヘンピな所にいるのね姫様達……」

一応コゴミも闇ギルドの人間である。魔神の村で起こった事件は耳にしていた。それに対した姫様の反応も。

「あの魔王軍が、敵わない魔神を。討伐なんて出来るのかしら?」

必ずしも闇ギルドとて、全てを知る位置に居るわけではない。コゴミがミューアの後継者と黙されてもそれは同じである。

「ミューア姉さんならまだしも。魔王様の愛娘リルム様では……」

身内びいきな感想を抱いたが、魔神討伐は難しいとコゴミは考えていた。



普段のコゴミは、パルストア魔法学校に通う二年生である。その為学校が終わってからなので。この時間である。いくら学生とはいえそれなりに。腕に自信があった。魔法こそ『院』首席アレンザ・ホーネリアに及ばないが、実戦なら負ける気はしない。しかしミューア姉や、上級ギルドメンバーの影達。六将にはとても敵わないまでも、それなりに闘える自負があった。いくら姉のように慕うミューアに言われたとして。姫様達を過大評価をしない現実派である。自分の眼で見たもの以外信じない。頑迷な性格と言ってよいが……。



色々と考えながらも歩みは止めず。木々のアーチを抜けた先━━。古ぼけた工場が見えてきて……、近付くにつれ。華やいだ笑い声が聞こえてきた。

「ずいぶんと賑やかね……」

事前に調べた話では、国から委託された師弟の職人二人だけで住んでいたことは調べてある。「まあ~姫様達が要るのだ多少なり騒がしいのは、許容範囲だわ」


工場の広い敷地。鉄製のテーブル。その回りに姫様と……、コゴミは自然と二人の少女に目が向いていた……、



その二人は、姫様の傍らにいて、不思議と遜色ない魅力を醸し出していた。

「あの二人が、姫様と同じ婚約者ねきっと……」

コゴミは何度か、リルムと顔を合わせた事があった。あの怖いと感じた空気。氷のような眼差しがそこにはなかった。驚きである。あの姫様が二人に全幅の信頼をしているのが、表情から読み取れた。

「あら……、貴女は確か」

まだ距離もあった。だけどリルムは、工場の敷地に入った瞬間。まっすぐ此方を見ていた。驚くコゴミ。今も陰行をしていたのだが……。僅かな気の緩みも。油断すらしていなかったのに……、気がつけば翼人、中年男性以外の七人の少女達が、相次いでコゴミを見ていた。

ゾワリ……、背筋に寒気が走った。コゴミは優秀な暗殺者である。それ故に理解した。ここにいる少女達は、何れも凄まじい技量を有する戦士であると。何故ミューアがわざわざコゴミに。お土産を持たせたか、瞬時に理解した、

「姫様。お久しぶりでございます、クライム様からの差し入れお持ちいたしました」

B&Mのロゴ入り袋を掲げると。リルムはニッコリ嬉しそうに相貌を綻ばせていた。

「ちょうどアイスが食べたいと思ってたの。ありがとうコゴミさん」

リルムの顔見知りかと。周りの少女達は少し安堵した様子。少し気になったが、今は顔をつなぐだけでよしとしよう。

「姫様、それからミューア様から言付けがありまして……」

一瞬表情を固くしたフィル、レイラ。リルムは泰然自若、悠然と微笑み、先を促した。

「よろしければ、後程季節のケーキ等お持ちしますが、姫様リクエスト等ございます?と」

「あっ本当!」

それはそれは嬉しそうにして、パチリ手を叩き。

「でしたらコゴミさん。ラグをB&Mに連れて行ってください、彼女お菓子に興味があるようだし。ね?」

リルムが声を掛けると。茶色の髪を短くしてる。テーブルの向こうにいたラグ・セレンが、驚いた顔をしていた、でも段々頬を赤くして、そわそわし出した、

「なるほど……」

姫様が言われるように。お菓子に興味があるようだ。見た目はクールビューティー、可愛らしい素顔が垣間見えて。好意的な眼差しを向けていた、

「そこまで言うなら……」「あらあらラグ嬉しい癖に。素直じゃないんだから」

テレグシアに脇をつつかれ。ますます顔が赤くなる。ついついクスクス素で笑うと。みんなが柔らかく追従して笑い声を上げた。




ラグとコゴミが、出かけて直ぐに。レイラとフィルの二人が、リルムの傍らに寄り添い。小声で問う、

「リルム。なぜ彼女を遠ざけたの?」

フィルが口を開いた。

「……そう、貴女達には気付かれたか……、私もまだまだね」

意味ありげに呟き。二人にだけ向け。嬉しそうに笑うリルムだが、その目は笑っていなかった。

「貴女達だけに言いますが、あの子コゴミはミューアお気に入なのよ。彼女の後継者と黙されているわ。ミューアが貴女達への顔繋ぎに送り出した者だと考えています」

なるほどとレイラが、ほっそりした顔を引き締めて。

「それは、あの子が、今朝までいた護衛の引き継ぎだからかしら?」

やや驚いた顔をしたリルムは、まじまじレイラの顔を見てから、小さく嘆息。呆れた顔をした。

「貴女は気が付いていたのね……」

金髪を後ろに束ねながらレイラは、悪戯ぽく微笑んでいた。

「護衛……?」

驚いたフィルに、小さく頷き、レイラが説明した。

「私が気付いたのはたまたま、気配を読む訓練をしていて、僅かな揺らぎを感知していたからだ。それとリルムが私達に話をする間を。わざわざ取ったから。もしかしてとね」「そう……さすがね。あの僅かなヒントで……予測してしまうなんてレイラ、フィルもう1つ。貴女達には伝えなければなりません。今朝までいた護衛は、闇ギルドの上級メンバーで、ミューアの片腕ルーベンスで、元六将闇と呼ばれた。ダークの右腕でした、彼ダレークには、ある任を与えてました」

これは本来リルムだけの秘密にするつもりだった、だが二人には話すべきだと感じて、その時間を作った。

そして……話した。



四年前に起こった事件の間。行っていた自分の秘密を語っていた……、



リルムは右腕、左足を失ったシンクと共に学べ。過ごす時間を求めたのだ。

「時間を止める?」

あまりにも一途な物語ゆえ、怖さすら感じ。二人は絶句していた。

「私は二年の時を。封印したわ」

「そんなこと可能なのか?」

レイラの疑問もっともである。

「当時━━旧帝都には、アビスに墜ちた中央大陸と。この世界を繋ぐ扉があったのは知ってますね?」

歴史に記されたことだから。二人は揃って頷いた。

「ならばどうやって、アビス界に封じられた魔素が、世界に流れぬよう。魔物が溢れぬように。扉を封印し続けることが出来たか分かりますか?」

リルムの問いに。ハッと二人も気が付いたようだ。

「黒の民と白の民が、自らの生命力を媒体に。封印し続けるシステムしか、封印しつづける方法はありませんでした……」そう言えば……、数日前━━、シレーヌ王妃様から聞いた話を……思い出していた。

あのナタクの物語。中でも、古代の民がいないと考えていた時期があったと。

「まさか……、時を止める方法とは」

「そうよ。封印システムを用いた施設。後に『瞬きの扉』に使われた魔力巡回システムと。近い考えの元。母と父が私だけのために作らせた物よ。無論今は存在してないけどね」

そのような秘密がリルムにも……。歴史の裏にあった出来事に驚きは隠せない。

「二人ともこのこと。他言無用でね」

一瞬フィルは発する言葉を失っていた。 レイラとてそれは同じだ。ようやくリルムの傍らに立てたと考えていたのに……、

「リルム……貴女が羨ましい」「……私が?」

レイラのあまりにも素直な言葉故に。意味を理解する間を必要とした。やや訝しげな眼差しで、問うように口を開き掛けた瞬間。

「わっ私もリルムさんズルいと思います!」

声を荒げたフィル。やや驚き、いきなり肩を掴まれ。フィルの迫力に気圧されていた。

「わっ私がズルいだと?」

「はい!、私なんてまだシンクさんに認めてさえ貰えてない!、なのにシンクさんくの為に尽くせてるじゃないですか。レイラだって羨ましい!、シンクさんとデートしたそうですね!」

今度はレイラに噛みついた。ビックリして、思わずやや腰が引きぎみになる。「二人ばっかりズルいです!、私……冬休み終わったらシンクさんに。抱きしめてもらって。一杯……キスしてもらうんだから」

なんだかシリアスな空気を爆破して、生々しいお願いを口にしていた。

「なっ……、しっシンクと」

リルム&レイラは、お互いの唇を思わず見てしまい。カーッと赤らめていた。

「もう遠慮はしません!、二人共覚悟しといて下さいね」

いきなりの宣言に。二人とも面食らったが、確かにリルムの言葉が、自分たちの闘争心に火を灯したと感じていた。

「あらダメよフィル。先に私がデートするんだから」

「これは負けられないな……」

珍しいことにレイラまで闘争心むき出しにしていた。



━━なんだか込み入った話をしていた三人に。遠慮して、声を掛けれずにいたリマ達は、安堵の吐息を吐いていた。何となくまとまったようで良かったと……。




辺りが、すっかり暗くなった夕闇。ラグとコゴミがB&Mから戻った。二人の両手に沢山のお土産を抱えて、それはそれは幸せそうな笑みを浮かべていた。何となくぎすぎすした空気を感じたコゴミは、訝しげに眉をしかめていたが、聞いてはいけない気がして、その日は帰宅することにした。



━━外の騒ぎに気付かぬまま。仕事に打ち込んでいたメグは、最後のビスを締めて。調整を終えていた。振り変える先にいたレノンを伺うと。皮肉気な顔に。ほんのり笑みを浮かべ頷いてもらえた。思わずぐっと両手合わせ。喜びを噛み締めていた。

翌朝━━、馬車の荷台に秘密兵器を乗せて、リルムは一度城に戻っていた。



━━リルムが準備に勤しむ数日の間。帝都では様々な噂で持ちきりである。

「リルム様が、凄まじい秘策をあのカレイラ・バレス以上と噂されてる。レイラ嬢から託されたらしいな!」

「そうなのか、流石は我等が姫様だな」

「それよりも良かったではないか、シンク王子と婚約なされると聞いた」

「本当だな。シンク王子様は、我々にも気さくだったしな……」

新帝都に、まだおいでなされてはいないが、旧帝都においで下された時。あの姫様をあんなに可愛い女の子にさせるだけでも。驚嘆に値する。それが素直な民の気持ちであった。━━民の噂話に、耳を傾けていたミューア・サリアンは、誰に気付かれることなく。その場を離れていた。

『準備は整った、後は姫様次第ね♪』

薄く笑みを型どり。気配なく。闇夜を駆け抜けた。



━━一連の報告を受けた魔王ピアンザは、淡々とした表情で、一つ頷き、間もなく訪れる。愛娘の報告を待っていた。間もなく近衛兵がリルム登城を知らせ。外が騒がしい空気を感じていた。

「陛下、姫様が参られております」

「通せ」

魔王の間に繋がる扉が開き、白銀に輝く髪がふわり流れ。凛と表情を改めていたリルムが、1人で入室してきた。

「ほ~う……」早くも策を労してるか。娘の成長を嬉しく思うが、王としては末恐ろしく思うた。

「兵よ。下がれ」

「ハッ」

久しぶり父娘二人の対面に。いささか気恥ずかしく思う半面。こうした時間の大切さを痛感していた。

━━秘密の会談から間もなく。魔王ピアンザは、王座に集まる重鎮達に。さらには民に向け宣言した。

「皆の者。リルムが魔神討伐に向かう。心して準備せよ!」

「はっ、おまかせ下さい」

近衛隊長ロドラ・アグレドは、元六将英雄ギラムの実弟である。深々頭を下げ、直ちに姫様の魔神討伐隊が、近衛から選ばれた。その数僅か100……、兵の少なさに民は唖然とした。




━━それは同じく、白の女王・分身体。ハーレス・ローレイも抱いた疑問である。

「たった100だと?、何を考えておる」

太陽の日に当てられると。白銀の髪に見えるハーレスは、女の声音で、苛立たしく。爪を噛んでいた、




同時刻━━禁忌の領域。

一面花が咲き乱れる園に。茶色のローブを着た青年が立っていた。傍らにいるのは全身岩だなのような肌。巨人族のような巨体。ロノバリエであった。

「ロノバリエ……しばしの別れとなろうが。どうか孫娘の力になって欲しい」

深く頭を下げた人物こそ。聖アレイの12使徒。アレイク王国礎を築いた大賢者オール・セラその人であった、

『セラ様……、レシア様……、おでおで!』『分かっていますロノバリエ、貴方が私達に済まないと悔いてること。私からもお願いします』

『……セラ様、レシア様、おでにおまかせ下さい!』

まるで騎士が決意を述べるように。右膝を着いて、深く一礼していた。




そんなロノバリエの様子に、やや呆れ顔のベテルローズ、スタンレイ、ブルワーズは、仲間の旅立ちを祝福すると同時に。リルムとレイラが示した可能性に。泣きそうな顔をしていた。

『俺達が……、人間だった頃のように暮らせるかも知れないなんてな……、考えもしなかった』

『そうだ……、ロノバリエの奴は、レシア様が大好きだった、だからよ~。あの姫様の側にいられて。彼奴はうれしいかもな~』

カッコつけたブルーワーズは、水の表面に波紋を立たせた。二人も嬉しいのだ、自分たちが人と関われる可能性を示されて、

『それは良いけど、あんた達!、妙な手加減して、彼方に気付かれないでよね』

いきな水を差したのは、蠱惑的な顔立ちの美しい花の魔神ベテルローズの筈だが……、信じられないほど。活発な表情をするようになっていた、

ここ数日。姫様達と過ごしてたからか、なんだか昔のおしゃまな少女に戻っていた。思わず金属の顔に親しみを込めて笑うスタンレイを。睨み付けフン!、鼻で気持ちを吐露したが、気分を害したのでなく。ただ見透かされてしまい。恥ずかしくなったようである。三人の気持ちもロノバリエと同様、自分達が……、不安な気持ちなのだ。それに……、

仄かな希望を抱いていた。



━━魔王騎士団第6分隊長ザルツ・ブルグは、トロン・バーン騎士団長の命令書を手に入れ。第3分隊が姫の後衛を任せられる所を。第6分隊に差し換えに成功していた。

「何とか姫に近付ける……、だが……」

あくまでも後衛であり。姫の護衛は近衛が控えている。おいそれと手が出せないことに代わりはない。

それに……どうやって、たった100の兵で、魔神を討伐すると言うのか?。その根拠が気になっていた。

「油断した瞬間。我の力で、本体に飛ばしてくれようが……」一番気に入らないのが……、姫と同行していた筈の婚約者二人。さらに友人四名が、あれから行方不明であること。その事をリルム、魔王が気にしていないことである。

「いったい何をするつもりなのだ?」

女の声音で、苛立しさを募らせていた。



━━明朝、リルム率いる近衛二個大隊は、一台の古い馬車を守る役目として、行軍を開始した。街道を南下、かなりゆったりしたペースで、3日かけて旧帝都。元魔導王国。現レバンナの街に到着。補給をした翌日、出発した。




━━その頃……、レイラ達六人は、元商人の国セロンを通り抜け。間もなく禁忌の領域に足を踏み入れるところであった。

「そろそろリルムが、レバンナに到着した頃ね」表情を引き締めたフィルが呟けば、

「ええ順調ならば、此方の準備が終わった頃。禁忌の領域に到着するはずだわ」

追従したレイラの表情もやや厳しい。それは自分たちの準備次第で、レイラの策が無に帰してしまうからだ。

「みんなお願いね」

レイラの一言に表情を改めた。




━━時間は戻る。10日前……。



リルム達が工場に訪れて、技術者で、シンクの義伯父レノン・ハウチューデンに。レイラ・バレスが頼んだこと……。それは大規模な霧を発生させる装置。魔神を自動人形オートマイータに封じ。定着させることが可能であるかの確認と、カードリッチを用いて簡単に出来るかの確認であった。

今回作戦で用いる自動人形は、元々リマの制作していた。小型の自動人形を元に。帝都で暮らし始めて、新しく作っていた自作品である、

二人はそもそも西大陸に渡り。魔砲と呼ばれる。新しい技術の発展と新しい魔砲の制作を頼まれていた。レノンはそこで魔王ピアンザに。西大陸で作られた試作品を。工房に届けさせた。


魔砲とは、疑似神討伐にあたり新しく兵のために。準備された武器で、魔導師でなくとも魔法が使えるようになればと開発された物だが、最初に作られた物は、魔砲に一発の魔法をチャージして持たせた。単発式兵器だった。まず問題は魔砲の重量。使用制限、チャージに時間が掛かることである。

そこでレノンが最初に打ち込んだのが、魔砲の小型化と取り扱いの手軽さである。そこで役にたったのが、機械竜制作に用いた。小型ジェネレータ。機械の仕組みで魔法駆動とリンクさせる技術。これにより魔法をいちいちチャージしなくてもよくなるよう。小さな弾に込める技術を開発した。

それがカードリッチである。砲の溝に8発の魔法チャージした弾そうを、差し込み、上部横のハンドルを後ろに引っ張ったら、ジェネレータに装填出来るようにした。これにより一発撃ったら。再びハンドルを後ろに引けば次弾が装填され。手軽に連続魔法が放てる。全く新しい魔砲が出来たのだ。問題は自動人形だった。単純な作業ならば可能になったが、頭脳の容量の割りに、命令出来る内容が少ない理由があった。それは今のレノン、リマにない技術。擬人化プログラムである。それを魔法でどうにかした人物がいた。レノンの師サノエ・ファンの孫娘アノン・ファン。彼女は自分の魂の一部を与える。使い魔を造り出す魔法を代用して、自分の知識を自動人形キラに上書きした。すると……自我を持った。世にも珍しい自動人形が誕生したのだ。それを知っていたレイラは、魔神の特性を前日聞いていた。彼等はエレメンタル生命体となっていると。見た目と質量。性質は異なることを。大賢者オール・セラより聞かされていた。そこでレイラはある仮説を立てた。質量が見た目と違うなら。何か別の物に入れられないかと。それが技術的に可能なのか、レノン・ハウチューデンを尋ね。そこで見たのがほぼ完成していた自動人形である。

「魔石コアのセッチ、魔方陣の準備完了と……」

細かい直しが終わって、天候変化の魔方陣の設置がなんとか終わって、ようやく安堵したフィル。傍らのメグが最終チェックを行ってる横で、ぐっと背伸びしていた。

「ん~大丈夫。完璧だよ♪」

学園有数の天才。彼女のお墨付きを得て、ほっと胸を撫で下ろした。

「お疲れ様~はいご飯」

冷たいお茶とサンドイッチを手に。サラが顔を見せた。

「ありがとう♪。ちょうどお腹空いてたんだ」メグと二人嬉しそうに唇を綻ばせた。

「それにしても……、本当にフィルは、魔方陣の設置とか、手間のかかる作業得意だよね~」

半分呆れながら。大半は感心した声音で、巨大な魔方陣を見回していた。

「そうかも。こういった面倒な作業。わりと好きなんだよね~」

くすり楽しそうに言う友人に。二人は半分呆れながら、肩を竦めていた、



━━禁忌の領域・平野━━。


四体の強大な力を持った魔神達……、岩だなのような肌。岩巨人族ロックのような風貌、大地の属性を持ったロノバリエは、仲間と最後の別れを済ませ。一世一代の決戦に挑むため。凄まじい魔力を放ちながら、水の属性の魔神ブルワーズと供に、我等が姫様の元向かっていた。




━━禁忌の領域・近隣の村。魔王の愛娘リルムが魔神討伐に。一軍を率いてると聞いて、不安気な顔が消せない民達は、突然辺りに立ち込めた霧に気付いた━━、

「霧………」

この季節に。かなり珍しく。それにかなり深い……、

まるで濃密なミルクのような白乳色、禁忌の領域辺り一面。霧に包まれていた。それも人がすれ違ったとして。鼻を摘ままれても。気付かれないほどの霧であった、



魔神達は、あまりにも視界の悪さに苛立ち。

『これでは何も見えんな。おいロノバリエ』

長年供に行動している。それだけで伝わっていた。

ロノバリエは荒れた地に手を触れて。人間の気配に向かって、大地震アースクエイクを放っていた。



何も見えないのはあちらも同じである。ならば揺さぶりを仕掛け。あちらから攻撃させ。一撃をわざと受けてからでも。反撃すればよい。そんな考えである。

すると……、霧の中に、無数の魔方陣が浮かぶ様を見て、早速掛かった。

岩壁ロックウオール

を展開。その刹那……、炎の球が、隕石群メテオよろしく、ロノバリエの張った岩壁を赤々と加熱してゆく、

「掛かったわね!」

艶やかな声音が戦場に響き渡る。視界が白乳色のため声の主が、何処にいるか分からないが……、

『いまだブルワーズ』

控えていたブルワーズは、

『おおよ~。馬鹿な皇女様だぜ』

天候が、霧と言うのが好都合であった。わざわざ水を召喚しなくて済む。

大規模水刃ウォーターカッター

頭上に飛んだブルワーズは、辺り一面に。ギロチン大の水刃が、無数に放れていた。ドカドカ凄まじい破壊音が響く、

『チッ……』

人間の悲鳴がしないことに、いささか訝しげに思っていると。


大気を割るような轟音がしたかと思えば、

『ちっ、なんだこの攻撃は、風の刃か?』

ブルワーズは水の肉体を持った魔神である。物理的攻撃では、ダメージを受けないが、

「バシュ、バシュ、バシュ、バシュ」忌々しいことにこの見えない攻撃は、少しならずブルワーズにダメージを与える攻撃だと理解した。

『おいロノバリエ、惚けてないて、てめえ戦えや』

八つ当たり気味に、ロノバリエを見下ろして、『ん?……』

訝しげに首を傾げ、戸惑いを浮かべていた。見ればロノバリエが、真っ黒い何かに覆われ、身動きがとれなくなっていると理解するまで。僅かな遅滞を必要とした。



━━禁忌の領域・魔王軍本陣。再び凄まじい轟音がして、近衛兵達は青ざめる。次いで風すら切り裂くような音の後。大地が揺れて、

姫様から待機するよう厳命された近衛・騎士団の兵達は、何も見えぬこの事態に、騒然と浮き足立っていた。一際大きな陣幕に。慌てて駆け込んだのは、第6分団長ザルツ・ブルクである。

「ナガレ殿!。今すぐ姫様の救援に向かうべきです」

勢いに任せて、進言していた。(まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。)

このままでは……、リルムを失い兼ねない……、そうなれば自分の計画が駄目になっしまう……、

「なるほど……、お前が白の女王の分身体か」

「なっ……」

息をするのも忘れ。ギョッと近衛隊長ナガレを見てしまった瞬間。

「ふん!」

いつの間にかナガレが剣を抜き。剛腕一閃。メキメキメキメキ……、

「カハッ……」自分の骨が砕ける音を聞きながら。ザルツ・ブルクは気絶していた。

「流石は未来の『オールラウンダー』凄まじい見識力だ」

しみじみ今に至るまでの一連の出来事は、信じられぬの一言であった……、吐息を持って。姫様が無事魔神討伐なさると。確信していた。



━━ドゴン!。凄まじい破砕音を奏でながら、水飛沫が空を飛来する。無数の酸のアシッドレインが戦場に降り注ぎ。ロノバリエを封じた砂鉄の牢獄を酸化させ。表面が徐々に錆びていき……、ビシリ……、

『ガア~!!』ようやく抜け出したロノバリエは、苛立ちのまま地震を起こし。四方に土石流を引き起こした。しかし僅かな遅滞なく。バシュ、バシュ、バシュ、バシュ、無数の攻撃が、ロノバリエを弾き飛ばした。どうやら水の矢であろうか、

『ちっ厄介な、流石は魔王の愛娘ってとこか、しかしこの霧が邪魔だな……』

苛立ち混じりに。周囲にある霧を吸収して消しに掛かる。

『なっ……、吸収できないだと、まさかこれは、ロノバリエ!』

仲間に注意しようと思念を慌てさせた瞬間。ブルワーズの全方位を。魔方陣の牢獄が覆い。思念ですら届かせぬ特殊な封印に、

『何……、まさかこの封印の魔方陣は、俺の動きを封じるためだけに……』

ハッと息を詰めた瞬間。白銀に輝く。一体の騎士を視界に捉えた。『なんだあの騎士は……』

両手に分厚いショトソード大の何か、空洞化された武器をロノバリエに向かって構え。バシュ、バシュ、バシュ、バシュ、閃光が四度放たれた。周囲にある霧と、砂鉄を溶かした酸の雨が、ロノバリエの身体を凍結の魔法によって、再び封じてゆく。

『逃げろロノバリエ、でかいのが来る!』

思念でがなりたてるが、魔方陣の牢獄からでは、不可能だと知り。深い絶望を抱いていた。

『何なんだよあれは……』

━━後に。王妃リルムの四騎士と呼ばれるようになる。その一体ロノバリエの初陣は、同じ名をもつ魔神を討伐して、終わりを告げる。



━━間近に迫った白銀のフォルム。魔砲を構えた白騎士は。一個の白い魔石を魔砲に取り付け。凍り付いた巨大な氷の彫像に突き刺して、トリガーを引いた。

『グッグアアアア!』

断末魔の悲鳴。精神力が吸われる恐怖を抱いた。凄まじい断末魔は、魔神の領域に住まう民を凍り付かせた。

「いったい何が起こっているのだ……」

農民は、魔神様が戦っている。平原の空をそっと伺う。




……霧が、徐々にうすらみ始めた。ブルワーズは見た。ただ見ていた……、

『これは……』眼下を望み。息を詰めていた。

広大な平原に。無数の魔方陣、最も巨大な魔方陣にそれぞれ起動するため。6人の少女が六星を描くように配置していた。

『まさかこの魔方陣は、まさかそんな馬鹿な。ただの幻影だと言うのか?』

自分が囚われてる魔方陣を見たが、魔神の力を持ってしても。破ることは出来ない凄まじい物である。

「貴方の仲間ロノバリエ、彼は消滅したわ。私の騎士ロノバリエによってね」朗々と零下の如く言葉。小声ながら自分にはっきり聞こえ。ギョッとしていると。彼の背後にいつの間にか、弦る音がして、総毛立つ。

「まずは一体。貴方には狩られる恐怖を、他の三体に伝えなさい。これは命令よ。私には後三体の騎士がおります。ブルワーズ、スタンレイ、ベテルローズ。いずれ貴方方を滅ぼす我が配下がいると」

肉体を持たない筈だが、恐怖を抱き身を震わせていた。彼等は冥界アビスに落とされて。何も感じなかったのだが、だが……1人の少女。魔王の愛娘に絶大なる畏怖と。恐怖を覚えてしまった。

『承知した……』

もはやそう答えるしかなかった……。




エピローグ




霧が消えて、大地が光に包まれるなか、ブルワーズは、石榑いしくれとなったロノバリエを抱え。退却する姿を見送る。7人の少女達。傍らには魔砲をしまい。悠然と佇む白騎士ロノバリエは、無機質なバインダーを向けて。無言を貫いていた。

「ロノバリエ行きますわよ」

『は、い、我が姫』

たどたどしく応え。かしずき一礼していた、




こうして……、三人の婚約者が一堂に介した事件。白の女王の序章は、終わりを告げようとしていた……。

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