閑話姉妹弟子珍道中2
プロローグ
昨夜ようやく城塞都市ベゼルに到着した二人。ヒナエ・バウスタン、アネス・レイ・アレイクは、ベゼルでも有数を誇る。五つ星宿屋に宿泊していた。
……何故こうなったのか……、
ヒナエはいまいち首を傾げたくなったが。姉弟子のアネスは、こうした豪華なもてなしに慣れた物で、ゆあみの後。香油たっぷり肌に塗る。独特のマッサージを受け、ご満悦である。豊かな胸に押しやられ。バスローブがはだけそうになるアネス。同性から見てもとても魅力的であり。同じようにバスローブ姿のヒナエは、髪を後ろに束ね。タオルで巻いて、うなじがチラリ思わずアネスがハッと息を飲む。妖艶な後ろ姿に。一瞬見とれていた。
お互いがお互いを見とれてたなどあえて言わないが、アネスはこの数日の出来事に思いをはせ。
「あれからまだ5日あまり……、色々なことがあったわね」しみじみ呟き嘆息していた……、
━━6日前……、魔物の山を走破しようとして、途中巨大ウオルフと戦っい、何とか引き分け。街道に戻れた。その日の夜━━。
街道沿いにを歩く二人の足で、街道沿いにある宿場が、間もなく見えて来る頃。夕暮れの中。悲鳴と争う声が聞こえてきた。二人は咄嗟に目配せして、同じ考えだと頷き合って、現場に急いだ……。
━━小高い丘を登り。下る道すがら。周りからはやや視界から隠された盆地。薄暗い中。三台の幌馬車が止まっていて、直ぐに山賊に襲われてる。商人のキャラバンだと分かり。助けに駆け降りた。
「待ちなさい!、アレイク王国での狼藉赦しません」
突然の誰何。どこの馬鹿が現れたのだ?。一瞬驚き相手を見て、ニタリヨダレを垂らしかねない顔をしていた。
━━山賊側から見れば、上玉の女二人が、わざわざ向こうから。鴨がネギと鍋背負って、料理人の前に来た心境である。
「ヒュ~♪こいつはいいぜ!。なりの上玉だぜ頭」
いかにも三下。頭の悪いセリフに。下卑た笑いを浮かべる。頭と呼ばれた頭髪を反りあげた、いかにも荒事なれした風貌の男も。好色そうに相貌を崩し。
「ついでだ。このバカ女達も手に入れろ!」
「ヒャホウ~!」
「右の女は俺がやる」
「まて俺にもやらせろ」
下卑た笑い声を上げ。8人あまりの手下が、二人に迫った。
「ヒナエ、私が二人を倒し。頭を急襲宜しくて?」
「任せてアネス……姉」
小さな声だったが、はっきり聞こえてきて、思わず胸が高鳴った。と同時に不思議と安心感を感じていた。
「背中任せたわ」
「うん!」
二人は一瞬で、手練れの拳士と気持ちを変えていた。男達には、突然1人が消えたように見え。
直後━━ドサリ……。後ろにいた二人が、地面に倒れてるではないか。不思議そうに首を傾げた瞬間。凄まじい打撃音がして、大の男が飛ばされたのを。なにが起きた……。分からずポカンと惚けていた。
次の瞬間━━、
黒髪の妖艶な少女が、惚けていた男に迫り。腹部に追い抜き様。凄まじい威力の肘うちを見舞い。瞬き数度した間に。四人の仲間が倒され。
さすがに慌てた四人が身構える。だがそれすら遅く。剣を抜いた男の後をヒナエは取っていた。
頸動脈の上に手刀、逆側こめかみに一指拳を放つ豪の技。
━━手刀により力が抜けてる首筋を強打することで、受けた相手は呼吸困難を起こさせ。すぐさま逆の手。第一関節を折り曲げた。中指を突きだし放つ。一指拳により。意識を一瞬で失わす。黒衣の荒業であった。
「なっ……」
この時ようやく男達は気付いた。少女達が、一流の戦士であると……、山賊の頭は慌てた、だから商人である女を人質にしてるの思いだして。縛ってた商人を幌馬車から引きずり出そうと手を伸ばしたら、パシり手が叩かれ。ギョとしていた。
「あなた……女の子を何だと思って?」
上から目線の女がいつの間にか、目の前に立っていた。
「てっ、テメーいつの間に……」
慌てて山刀を振りかぶる頭。アネスは下がった頭に合わせて、間合いを詰め。軽く双頭掌※素早い踏み込みから。左右の手を胸前に上げてから。体重を上乗せし。足が地面を踏む勢いに任せ腹部に掌手を腹部に見舞う。凄まじい破壊力の技。「ゲフ……」
身体を九の字にしてたたらを踏んで下がった。何とか山刀を落とさず。力なく振り回したが、無論アネスの毛先すら傷つけることすら出来ない。ヨロヨロ動きの弱った頭の側面に回り込み。大木ですら破壊するアネスの凄まじいローキックを放ち。ゴキン。
「ぎっ、ぎぃああああああ!」
たまらず絶叫を上げ。のたうち回る。
「あらあら~あなたそれでも山賊の頭なの?。女の子みたいな悲鳴ね~、クスクス」
油汗流し。青ざめる頭は、痛みに耐えながら。アネスから逃げようとした。だが……右膝を折られては、思うように逃げられず。ズリズリさがるだけである。
「やっやめろ……」今まで自分たちが、犠牲者に言われた言葉。まさか自分が口にしようとは……、皮肉に気が付き、泣き笑いのような顔をしていた。
「甘えんじゃ無いわよ!」パン!、耳の後ろ。三半規管に打撃を与え山賊の頭を昏倒させる。かくして……、キャラバンを襲った山賊は、二人の少女に捕らえられ。宿場の村に常勤していた。フロスト騎士に引き渡したのである、
「あっありがとうございました!。本当に助かりました。是非ともお礼をさせてください」
彼女ラノバ・ハルは、東大陸には珍しい、北大陸から来てる商人だと名乗った。
ラノバ族とは、北大陸16部族の一つで、商人の一族と呼ばれていたと二人は、宿や兼居酒屋遅めの夕飯をご馳走になり。ハルから聞いていた。
「わたしはアネス、隣が妹弟子の」
「ヒナエです」
普段目深に被ってるフードを外したハルは、ピンク掛かった珍しい髪をしていて、ちょっと驚いた。だけど愛嬌のある顔立ちに。とても似合っていた。
「わたしファルバスの血を半分引いていて、16歳まではこうゆう髪色なんだそうですよ。珍しいですよね~」
二人にじっと髪を見詰められて。ちょっと恥ずかしそうだ。「確かに珍しいけど。初めてではないですよハル。私達の通うアレイ学園の生徒にいますから」
ヒナエが説明すれば、なるほどと理解の笑みを浮かべて、
「もしかしてお二人は、学園の生徒さんでしたか?」
「そうよ」
それであれほどの武芸をと納得して、大きく頷いた。
「あっあの~、二人にぶしつけなのですが、良かったら。城塞都市ベセルまで、護衛をお願い出来ませんか」
学生と知り余計もう訳ない気持ちが、胸中に溢れた。本人は気が付いて無いようだが、本当に申し訳なさそうな顔をしていた。何か理由があるのだろうか?。
「お話聞かせていただけますか?」
アネスが先を促した。
「はい……実は」
ハルは自分が、半月程前まで、南大陸のファレイナ公国で、砂糖の買い付けに来ていたこと。そこの商会長の紹介で、ミザイナ女王と直接謁見することになり。ある願いを託されたことを打ち明けた。
「面識が無いのですが……、リドラニア公国の王となられる。ブライアン陛下に頼まれていた。真金を届けなくては無いのですが……、山賊に襲われてしまい。護衛が……」
怪我は大したことなかったが、辞めてしまったと言う。
「なるほどね……。私達のような女の子に助けられたと知られれば、護衛の仕事失いかねないか……」
アネスはあっさり見抜き、遠慮なくバッサリ切り落としていた。チラリ……ヒナエを意味ありげに見つめ。笑みを浮かべて、
「いいわハル、ついでだから。リドラニアまで護衛しましょう。ねっヒナエ」
「えっ!?。本当ですか」
パッと可愛らしく顔を輝かせるハルに。ヒナエもはいと頷いていた。
エピローグ。
ハルとの出会いは、本当に偶然な出会いだったのだが……、まさかちょっとした大冒険になるとは。この時二人は、考えもしなかった……。




