閑話恋愛しちゃいましたが何か?
王命により、第1分隊が、王女の護衛任務に、つくことになり、それに備えるため、2日の休暇が与えられた、クエナ・ガイロンは、友人のミリア・ハウチューデンに誘われ、お茶に出掛ける毎になった、
「しばらく帰れないから、友人孝行するか」
ミリアは、同じ部隊の同僚である。クエナより年上だが、ミリアと年齢関係なく、気があった。クエナは真っ直ぐ突っ走る。直線的な、性格で、癖のあるくすんだ金髪、コロコロ変わる表情から、ミリアから分かりやすいと、やや不満な評価を受けている。対してミリアは気が強いが、さっぱりした性格で、姉御肌の女性で、男女問わず。老若男女、子供や動物に好かれやすい性格である。癖のある髪を、カチューシャでまとめ、後ろを左右の髪を編み上げ、装飾のように後ろで、束ね。薄いピンクの前掛けをしてるが、気性か、すぐ腕捲りして、柔な職人を、怒鳴り散らす姿は、西の職人通りの名物とされている。ミリアが男なら、クエナは旦那にしたいと、常々感心するばかりだ、街の中心部にある。大きな公園があり、朝は朝市、毎週末は露店が、立ち並ぶ。冬の月初祭りが近い、明日は、男女が集まり、ダンスを披露する。そうした祭りである。
中心部から、木々の開けた場所に、ステージが用意され、明日のため準備に奔走していた、
「ブルーのお店出てる出てる♪」
嬉しそうに、目的の露店が出ていた、ブルー・ファミイユと言う、若きパティシエが、新作菓子を、手頃な値段で、食べれる上、40種類もある。フレイバーから、好みのブレンドを作るのが、流行りである。可愛らしい。女の子が喜ぶ、花をモチーフにした、テーブルが空いたので、ちゃっかりミリアが、席を取る間に、クエナが、列に並んだ。季節のプディング、ショコラーデ、焼き菓子を適当に選び、席に着いた、
「よお、どうしたポーとして?」
ブルーでは珍しいく無いが、男性客もいる。いかにも育ちが、良く見える青年はに、声を掛けられ、真面目そうな青年が、慌てて、我に返った、
「レヴァ、どうやら堅物のカルバンが、恋をしたらしいな」
「ブルーお疲れ……、何!、まさかカルバンが?……、ないない……マジ?」
再び、二人組の女性客を見て、顔を赤くする。
「黒髪?」
「金髪の女性だろ」
ブルーが、うまそうにたばこを吸い込み、紫煙を吐き出した、「らしいな…」真面目そうな女性客の隣に、気が強そうだが、美人の部類に入る。女性の二人組、非番だから、仕方ない……、
気を効かせた、ブルーから、豊潤な香いのロイヤルミルクティ、高値の一杯だが、女性に好評なフレイバー、レヴァは同僚カルバンのため、一肌脱ぐかと、足取り軽く、二人組に話し掛けた、
「これは美しいお嬢様方。二人に、心を奪われた、哀れな私めの一杯を、飲んでくださると幸いです」
堂に入った向上を述べ、芝居かかった仕草を、レヴァ行い、一礼する。
「遠慮なく頂くわ」
勝ち気だが、聡明そうな眼差しの女性、彼女の目は、おや?……よく知る。人物に似てる気がする。
面白そうに眼を細め、カウンターにいる。呆気にとられオロオロしながら、成り行きを見守ってるカルバンをチラリ見てから、彼ね?と問うてると直感して、`同類´と理解した。小さく首肯して、同じように成り行きをオロオロしながら、見てる女性を観察した、不器用だが、実直真面目そうな印象だ、似てるかも……、相手の女性も同じことを考えてたと、すぐに理解した、
「ちょうどよかった、暇してたのエスコートして下さると嬉しいですわ」ミリアの言葉に、
「えっ……えー!」
慌てるクエナは、つい苛めたくなる可愛さがある。思わずカルバンの見る目。満更ではないようだな。妙な感心をした。カルバンを加えた四人で、お茶をしながら、何処に行くか、話し合い、広場に出てる。芝居小屋で、出し物見てから、街をぶらつくことにした、
「今年は、セリーヌの悲劇ね!」
セリーヌの悲劇とは、数十年前に作られた物語である。舞台は、まだ建国したばかりのアレイク王国、激動の時代、セリーヌは、針子で生計をたてる。一般市民だ、容姿は普通の娘、一度歌えば、天使の歌声と言われた、実在した歌姫の半生を書き下ろした、ミュージカルである。
女性は喜劇より、悲劇を好むのは、よく聞く話である。ミュージカルの始まる。夕方まで、まだ時間がある。小物の露店をめぐり、軽食を食べ歩きながら、夕方の公演に、四人で座れる。席を見つけ、席に着いた、気を利かせてか、クエナの隣にカルバンが、お互い、意識して、赤面していた、開演を告げる。チェロの独奏から始まり、幕が上がる。セリーヌは幼くして、両親と死別、アレイ教の孤児院で、育てられた、15で針子として、仕立屋の親方の元。数年を暮らす。転機が訪れたのは、19の誕生日を迎えた日から、数日に行われる。新しい歌姫を、オーディションで、決めると、新進気鋭の若手、演劇脚本家アディスが発表、街は騒然とオーディションの話で、持ちきりの場面から、軽快な音、セリーヌは、仲間の針子に言われ、オーディションを一度は受けることを承知した、美しく着飾った女性の中、貧しく、繕いだらけの服しかない自分……、一変して、哀しげな音楽に変わる。そんな彼女を救ったのは、仲間の針子達。寸断で、ごみでしかない端切れから、一着のドレスを作って、セリーヌにプレゼントした皆に、セリーヌは涙ながら感謝した、後の世に、天使が舞い降りたと言わしめた、歌姫は、舞台に上がる。美しい歌姫候補の女性達、苦悩、不安、後悔、場違いな場所に来たのでは……、何度も人々の視線に、恐怖したが、仲間の針子達の声に、ハッと不安が消えていた、セリーヌは仲間の優しさ、自分の辛さをも歌にのせて、喜び、歌う、その歌声に、民は言葉を失った、アディスは浮かべてた冷笑を凍り付かせ、自身の傲慢さを、激しく恥じた、涙すら流しセリーヌの歌声に、晴れ晴れと微笑して、彼女こそ、我が、生涯を捧げる女性と決意する。セリーヌは満場一致で、優勝した、それから彼女の運命が動きだした、栄華を極めたとも言われ、王宮に何度も呼ばれる程に、アディスは、偉大なる功績を認められ、脚本家として始めて、貴族に取り立てられたのだ、今までにない、斬新な演出。様々な天才的な作曲家を見つけ出し、晩年音楽家の父と呼ばれる。アディスだが、彼の栄華に陰りが、現れる。突如セリーヌが、声を失ったからだ、度重なる。長期公演は、彼女のストレスとなり、原因不明の病となる。セリーヌには、子供の頃から、仄かな思いを抱く、幼なじみがいたが、アディスが、強引にセリーヌと結婚した、彼はセリーヌの友人だった、針子と結婚。失意に落ちた為ではないかと、研究者は定説を上げた、歌えなくなった妻セリーヌを、アディスは激しく責める所から、場面が始まり、音楽は不安を掻き立てる。狂想曲に移る。悩み、苦悩する日々。あんなにも輝いていた、セリーヌは、見る影すら失い、1人部屋に籠る日々、愛してない夫との間に子供が生まれ、つかの間の幸せを味わうが、流行り病に倒れ、幼くして子供を失い、セリーヌは人が変わる。あまりの変貌振りに、夫アディスは、愛情を失い、妻を施設に預けた、奇しくも、セリーヌが生まれ育った、孤児院の側に……、
数年の月日が流れた、日だまりの中。落ち着きを取り戻した、セリーヌは、子供達の楽しげな声に、耳を澄ませた、そんなある日、木のぼうを削った杖で、地面を叩くようにしながら、眼に包帯を巻いた少女、リレーヌと出会う。優しいのんびりした音楽に変わり、場面が変わる。
リレーヌは、流行り病で死んだ、セリーヌの友人だった針子と、幼なじみの思い人との子供だったと、知った場面から幕が上がる。数奇な運命を感じたセリーヌは、彼女を養女として、余生を過ごすつもりだった、そんなある日……、
夫アディスが、暴れた馬に蹴られ、死亡した、セリーヌは、奇しくも再び、表舞台に立つことになる。夫が残した、役者、音楽家、脚本家、彼等の家族、その生活を背負う毎になったのだ。苦難、裏切り、出会い、セリーヌは夫の残した劇場で、苦労の据え、人々に愛される。演劇を産み出した、晩年演劇の母と呼ばれるセリーヌは、養女リレーヌの女優としての才能を、引き出し て、惜しまれながら、病に倒れ、義娘リレーヌに看取られ、激動の晩成を終えた、
ミリアが、呆れるくらい、ヴァレとクエナは泣きじゃくり、いつの間に……、二人は意気投合、明日のダンス大会に出る約束をしたのである。
━━翌朝、頭を抱え、真っ赤なクエナ、うんうん悶える様子を、早朝から叩き起こされたミリアは、ついでに帰宅してた、オーラルは、母の入れた、薬茶を啜りながら、嘆息した、
「どうしようミリア、あたしダンスもそうだけど、ドレスが……」
男勝りな性格のクエナは、ドレスを一着も持って無いことを激白、
「姉さん、相手はどんな人なんだい?」
苦笑混じりながら、ドレスなら、当てのあるオーラルは、姉に聞いた、
「確か、名前はカルバンよ、名はヴァレ、もう1人がレヴァ、多分こっちは貴族かな?、軍関係者だと思う」聞き覚えのある名前に、驚くオーラル、姉はにんまり、やっぱりねと、したり顔である。これには苦笑するしかなく、
「ドレスはなんとかするし、ダンスはヴァレ・カルバンに任せればいい、彼は、動物の動きを見るエキスパートだから」
安心させるように、不器用な、同僚の肩を叩く。困惑するクエナは、ミリアとオーラルに連れられ。大聖堂に、顔見知りの見習いフロスト騎士に、リーラ侍祭を呼んでもらい、驚くリーラに、理由を教えると、驚きながら、チラリオーラルを意味ありげに軽く睨む、タジログオーラルに嘆息したがら、クエナの着付けと化粧について了承した、それから二人を伴い。北の貴族が、居を構える。
豪奢な街並みを尻目に、奥まった古い屋敷を訪れた、出迎えた盲目の老女に気付き、狼狽したクエナ、老女は朗らかに、優しい笑みを浮かべながら、急な訪問客に、相好を崩した、
「ま~ま~オーラルお久しぶりね~、昨日は無理を言ったようで、済まなかったわ」
盲目とは思えないほど、自らの手で、お茶を振る舞われ、クエナは恐縮した、盲目の老女リレーヌ・アディス、彼女こそ、芸能の女神とまで言われた、女優である。「ミリアちゃんもお久しぶりね~」
懐かしそうに眼を細める老女は、伸ばした手でミリアの顔に触れた、
「少し痩せたわね」 「元気ですよリレーヌ、おばあちゃん」嬉しそうに、手を握り返した、リレーヌは幼少を、アレイ教の孤児院で、過ごした、なんとエレーナ大司教と幼なじみである。リレーヌは、孤児院に多大な寄付をしていて、一時期孤児院の先生をしてた、オーラルは、エレーナ大司教に頼まれ、リレーヌの世話をしていた時期があり、ミリアともそこで懇意に、数年前になるか、役者の何人かが、病に倒れた。困り果てたリレーヌの為、二人は役者の真似事から、楽器もそれなりにこなして、重宝がられたのは言うまでもない、
「相変わらず綺麗な肌ね♪羨ましい」
拗ねたように唇をすがめる。童女のような仕草に、呆気とられた、
ミリアからあらましを聞いて、嬉々として、眼を輝かせ、
「素敵な衣装を見繕いましょうね」
「はっはい」
返事を聞いたら最後、盲目の老女とは信じられない、強引さで、ミリアとクエナを引き摺り、衣装部屋に向かった。
━━━古い扉を開けると、絢爛豪華な、光景が広がる。美しいドレスの数々、眼を見張る。壮麗なる装飾品、見慣れたミリアは、息を飲み。クエナなど、うっとり顔を、上気させた、女の子らしい一面を見せるクエナを、好ましく見詰め、優しく微笑するミリアに、
「さあさ、時間がないわよミリアちゃん、どんどん着せてきましょ」
リレーヌが演劇の女神と呼ばれた、女優だった理由がある。クエナの全身を手で触れたかと思うと、盲目なはずなリレーヌは、テキパキ、ドレスを選び、クエナに試着させていること。リレーヌは自分の歩幅を記憶して、部屋の間取り処か、この屋敷の中なら、何が、何処に、置いてあるか、全て、記憶していた、リレーヌの女優としての才能もさることながら。日常会話、誰がどの順番にしゃべり、言葉の響く、大きさで、正確な、距離を感知する技量に長けていた、そのせいもあり、リレーヌが盲目であると、気付く者は、希である。
えもいわれぬ。甘い香りが、してきて、二人のお腹が、可愛らしく鳴る。
「まあ~♪クスクス、ちょうどお昼ね。衣装はそれで決まりとして、オーラルが、せっかく用意してくれたのです。頂きに向かいましょう」
扉の外で、ノックするか迷うオーラルの眼前で、いきなり扉が開いた、呆気にとられるオーラルを、クスクス笑いながら、驚かせた、
三人は、オーラルの入れたお茶と、オーラルが作った、お菓子を堪能して、一息着いた、クエナは待ち合わせの時間になって、会場に衣装を運び、リーラに着付けを手伝ってもらい、不安と緊張で真っ赤になってた、同じように、真っ赤になって、そわそわしてた、待ってたカルバンと顔を合わせた、二人は、恥ずかしそうに笑いながら、カルバンは、クエナの飾らない美しさに、小さく身震いした、クエナはクエナで、カルバンの野性味ある精悍な面立ちと、時折見せる。優しく気遣う。瞳に魅せられた、自然と二人は寄り添い、手を繋いでいた、
━━━夕闇をバックに、魔法の光をスポットライトに、ダンス大会が、宣言された、結果は二人はベストカップル賞をもらい、楽しくもドキドキした1日を過ごしたのである。