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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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天才軍師の計略に。魔神も戦々恐々ですか?

プロローグ




━━魔王軍の魔導兵一個師団は……、轟音たて、凄まじい勢いで、待ち構えるニ体の魔神に迫った。



四体の強大な力を持った魔神が、西大陸にいた。鋼の体。全身鏡のような光沢ある魔神スタンレイは、無数に打ち込まれた。あらゆる魔法攻撃を。『切り払え。我が名は鋼鉄の刃なり!。全てを切り裂くデュランダル

閃光一閃━━。切り裂いていた。

「なっ、なんとあれほどの魔法が一撃で……」

魔導兵に動揺を与えた。さらに水の魔神ブルワーズが、

『大地よ。我が水を含み。沼地になるがよい』

大地に手を付けるや。見える限りの広大な土地は一瞬で、沼地に変えてしまう地殻変化の魔法を行っていた。これにより数千もいた魔導兵は。身動き出来ない木偶に成り果ててしまう。こうなるといかな魔導兵とて、なすすべなく次々と討ち取られてしまい。魔王軍は退却を余儀なくされた。




一軍を任された騎士団長トロン・バーンは、次々と上がる報告に。舌打ちしていた。

「それで村人は、誠に魔神の民を名乗ったのだな?」

「はっ確かに聞きました」

部下の1人、分団長が頭を下げていた。これは予定外である。ただ魔神と相対してればよいと言う訳にはならなくなったのだ。

「よりにもよって反乱を起こすとは……」

聞けば、元領主と村人による売り言葉に買い言葉。そう聞こえなくもない、だがはっきりと領主に言った事実は、陛下に伝えなければならない。いくら後程……、あれは嘘だったと言おうと。最早取り消せない事実になってしまったのだ。忌々しが……、陛下に伝え。対策を練らねばならない。

「直ちに急使を立てる」 「ハッ」

分団長が退室して、苛々と爪を噛むしかない。




━━同日・同時刻、

元商人の国セロン。郊外の閑静な屋敷の一つ。世界有数の商家ローレイ商会。商会長ハーレス・ローレイは端正な顔立ち、雪のように白い肌。とても年齢と容姿が一致しない。神秘的な人物とされていた。髪は太陽の光を浴びると銀にも金にも見えるため。より神秘的だと噂が流れた。女性のような長い睫毛を揺らし。

「罠に掛かったか……、上手くすれば魔神の前に。リルムを引きずり出せような……」

口から出たのは女の声である。嫌らしく薄く目を細め。世界を自分の玩具にする算段を整えていた。そもそもが間違いであった。ハーレスは白の女王の分身体で、本体は隠された管理者の塔にいて、分身体を操っていた。その1人は騎士団のある分団長の地位にあった。後は急使に持たせる報告書に細工をするだけである。

「早く自由になって……、愚かな人間どもを駆逐してくれるものを」

壊れた笑みを浮かべ、もはや何がしたかったか、自分でも覚えていない……、



白の女王は、黒の民が王、魔王ヒザン、ナタクの追っ手から逃れるため、大陸に存在しない。秘密の管理者の塔に身を隠した。しかし逃げ隠れるだけでは面白くなく。また自分の欲求すら満たせないと考えて、ある禁術を思い出した。そもそも白の民とは神々に新たな生命を作り出し管理するよう命じられた。錬金術士の一族である。世界中には白の民が作り出した。研究施設があった。白の民が暮らす海中都市とは、そもそもが研究施設を管理するためのシステムの一つである。しかし白の民は自分たちすらを。管理されることを望んだ。初代女王セルローザは民の願いを叶えるため。二人の子供の妹シルフィールを管理者に選んだ。そこには理由もあったのだ。彼女シルフィールは、生まれつき生殖能力の欠如というハンデがあったからである。未来永劫民を管理する責をもたらせるには、女王の血脈が必要である。また長になる者は、長命であり。管理者にするにも。都合が良いと考えた。よくも悪くもセルローザは、研究者であり娘を傀儡にした。




━━時は流れる。



緩やかだがシルフィールは、自分の生き方に疑問を抱いた。




やがて……外の世界に憧れを抱いた。いくら長命な種族であろうと。根本的な間違いに気付くことはなく。セルローザは人間の王に殺される。無論裏で糸を引いていたのはシルフィールであった。自分が自由になるには、白の民その物が邪魔であった。だから人間の王子と愛を育み。子を産んだ。姉フレナードをも。自分の生まれに嘆き。欲望を抱いた赤の7神官を唆して殺させた、

━━ようやくだ。自由流れる準備が整ったと思い喜んだのもつかの間……。

あることに気が付いた。女王となり自由になったはずのシルフィールに。邪魔なはずの白の民が訴え求めた。自分たちを管理してほしいと……。知らぬ魔に白の民は自分たちで考え。行動することを投げたしたのだ。これにはほとほと困ったシルフィールは、姉の子供達を思い出した。そして……研究施設の力を使って、子供達を探しだした。再びシルフィールは裏で動いた。欲望を抱いた四人の弟子達を唆し。幸せに暮らしてるアレク、レシアを赤の民が秘蔵していた。神々の禁術書『赤の書』、あらゆる錬金術が書かれた『白の書』に封印させた。本来書のガーディアンは竜にさせるはずだった、全てが好都合だった━━。




しかし……計画は、赤の王の子ナタク、魔王ヒザンに崩されてしまった。どうにか管理者をレシアの子供にさせ。再び自由になったシルフィールは、二人から逃げることにした……。逃亡の末ようやく。大陸に存在しない。白の女王にだけその存在を知る。秘密の塔で、世界を見ることになってしまった。

「私の自由……、自由が……」

もはや忘れてしまった気持ちに。首を傾げた。だが盲信に近い暗い欲望に。常につき動かされた憐れな女は。全ての古代の民の対になる存在である。白の民の秘密を知った。女=シルフィールは、自分こそが民を導く神々の代行者であり。人間や古代の民。全てを管理する必要を狂信した。




だから……、女王の杖の力。あらゆる錬金術を対価無しで使うことが出来る杖の力と。

秘密の施設。空飛ぶ島にある。女王の研究施設に降り立ち。自分の手足となるホムンクルスを作り出した。




そもそもホムンクルスとは、自分の髪を媒体に作り出して、魔石を苗床に。数年掛けて成長させるのが、一般的な製法である。だがシルフィールは自分の身体を苗床にしていた。その場合ホムンクルスの成長は早く。分身として、本体が操ることが可能となるが、リスクとして、分身体を作り出しすぎると自身の記憶、感情、味覚、視覚等失うことになる禁術である。今のシルフィールは、子供の感情だけ残され。善悪の心を失い。ただ思うままに自我をぶつける存在となっていた。



シルフィールの分身体の一体である。魔王騎士団・第6分団長ザルツ・ブルクは、部下の一人にトロン・バーン騎士団長の急を有する書状を持たせ。帝都に向かわせた。走り去る部下を壊れた笑みを浮かべ見送っていた。






━━パスルトア帝国・新帝都。



不夜城・魔王の間━━。


魔王ピアンザを初め。パスルトア魔導学校長・宰相の地位にあるゼノン。軍職の地位にあるランバスタ将軍、リーロン副将軍、親衛隊長アグレド。六将が集まっていた。

「陛下……困った事態になりましたな」

白いものが混じった初老のゼノンに。ランバスタが追従して、苦渋を滲ませた。

「まさか村人が、反乱を起こすとは……」

「陛下……、村人があのような要求をしてくるとは。未だに信じられません」

リーロンの苦言はもっともである。魔神の民を名乗った村人は、あろうことかシンク皇子と婚約したリルム様に。謝罪を求めて来たのだ、

「しかし……。あながち間違いでは無いのが辛いところではないですか?」不器用ながらもアグレドの言う通り、村人の苦言に正統性を感じたのも確かである。再びピアンザは急使の書簡を開き。眉を潜めていた。

『禁忌の村にて、反乱を示唆したとの報告あり。また自分たちを魔神の民と呼び。長きに渡る魔神の支配を許し。魔王は世界を救ったと言うが、自分たちは見捨てられているではないか、若き英雄の婚約者であるリルム様に謝罪を求める』

例え自分たちの都合を優先させたとはいえ。領主は確かに村人を見捨てているし。魔王軍は村人を守れていない。既に15年という歳月は、謝罪を求めるに十分ではないか?、心情的に理解出来るゆえ。簡単には答えが出せずにいた。

「リルムと婚約者二人を呼びなさい」

「しかし陛下……」

「構わん。リルムの判断に任せたい」

普段慎重なピアンザが何故?、そう思ったゼノンだが……、真剣な眼差しを受け、

「……リーロン、姫様を」


珍しくゼノンが早々に折れていた。リーロンが退出した所で、

「ゼノン、手紙を持たせた者を調べよ。ミューアには既にトロンの影を任せてある。奴の急使に持たせた書を記憶してるはずだ、直ちに闇ギルドに赴き内容を調べるのだ」

ハッと息を飲んで、深々頭を下げていた。

「陛下……」

ランバスタの物言いたげな顔に一つ頷く。

「各自気を引き締めよ」『ハッ』

皆も気付いたようである。白の女王の分身体が入り込んだ可能性を……、



━━魔王の間から出たリーロンは、女官の一人に姫様が何処に居られるか、尋ねた。

「姫様でしたら、お友達と訓練所に居られましたよ」

「訓練所?」

「はい。先ほど姫様が、どの部隊が詰めてるか聞かれまして、親衛隊が詰めてますと答えると『それは好都合だと申されてました』」

訝しげな顔をして、姫様が好都合と言った理由を考えたが、いまいち分からず。

「確か親衛隊の訓練所は地下だったな……」

魔王軍の親衛隊は、立場上特殊な部隊であった。何せ全員が緑の民である。魔法も使えるが、特殊な力を持った一軍。他の軍部と訓練は出来ない、それゆえにリーロンですら。滅多に地下訓練所には足を運んだことがない。ある意味闇ギルド並みに。謎ある場所た。だがそもそも六将のリーロンが自ら。姫様を探さなくても良いのだが、ああした場所では、リーロンに出番はない。それにピアンザ様は、リーロンの性格を知り尽くしての配置である。それなりに理由があるのだろうと推測出来る。





━━魔王城=別名不夜城は、地下二階。三つの塔が、それぞれ外務省、内務省、魔導師ギルドの施設がある。親衛隊の訓練所に繋がる地下施設に降りるには。魔王の間がある中央の施設。真下に大食堂があって、魔王城で働くほとんどの人間が一度は使う。親衛隊の訓練所は、その食堂の下にある訳だが、一般兵士はあることも知らない。特別な階段があるのだ。東側だけ塔が作られていない。見張り台が申し訳程度にあるだけだ。そして親衛隊の行う仕事に。都の治安保持がある。見張りもその一環である。秘密って程ではないが、鉄製の扉の向こうに。地下に行ける階段がある。チラリ親衛隊の緑掛かった髪の兵士と目が合う。

「陛下の命で、姫様を探してる」

なるほど一つ頷いたが、苦い顔をしていた。珍しい反応におやって首を傾げると。

「姫様のお友達が、訓練に参加されてまして……」

言いにくい顔である。彼の顔を見れば、打撲傷がちらほら。少し照れ臭そうに笑い。

「正直侮っておりました。まさかエルマ様以外に負けるとは」

理由がわかった。相手は姫様だったのだろうか?。

「それが……、姫様と同じ婚約者である。レイラ様とフィル様に」

「ほ~う、親衛隊がか?」

「恥ずかしながら。私は他の少女にも一本とられました。いやはやあの姫様が言うには、レイラ様はエルマを一蹴した実力者とか。アレイク王国には凄まじいおなごが実に多いと聞き。我等親衛隊は戦々恐々しました」

親衛隊の隊士とこんなに長く、話すのが初めてである。不思議に思ったが、姫様達の話題だと。自然と話せるようだ。

「それは是非見たいな」

「でしたら今頃。ナガレ様がお相手なされてます。リーロン様急がれなさい」「そうか長々済まない。助かる」

「いえ。私はこれで」

入れ替わるように。リーロンは地下に向かう。やや暗い視界。されど足元は僅な光が通い。階段を使うのに不都合ではなかった。




━━やがて鋭い金属音が響き渡る。二合、三合と切り合うナガレの一撃を。サラ・ローガンが、しなりのある剣で受け流して見せ。ざわめきが上がった。

「ほう~こいつは」

親衛隊長ナガレ・フィスタ。剣士としての技量は騎士団長トロンに匹敵する。そのナガレの一撃をまともに受けれる者が、親衛隊に何人いるか、実力は足りないと言わざるえないが、素質は高い。四合目に。サラが打ち負け。剣を落としていた。「なかなかの腕でした、しかしサラ殿は体術と一対の業と見ました、体術があまりに未熟ですね」

バッサリ切って落とした。

「クッありがとうございました」

黒髪の少女は悔しそうに俯き、頭を下げて、

「次は、私が行かせて頂きますわ」

再びざわめきが上がった、いかにも良家のお嬢様といったカノア・テレグシア。可憐な彼女が持つにしては、あまりに凶悪な武器を手に。艶やかだが鋭い眼差しをして立っていた。

「ファランクスとは珍しい武器を……、どうぞ何時でも」

勇ましく気を吐いたテレグシアを。好ましく迎え撃つ。

「遠慮はしません!」凄まじい重量があるファランクス。少女の身長よりも長い鋼鉄製の柄を軽々片腕で振るい上げながら。横なぎの斬撃が唸りを上げ。ナガレに迫る。 「こいつは凄さまじい怪力だ……」

感心の声を漏らした。だがナガレは力に逆らうことなく。凄まじい一撃を軽くいなし。たたらを踏んだテレグシアに迫る。 「甘いですわ!」

体制が崩れたかに見えたが、それは違っていた……。ファランクスの重量を考え。いなされた瞬間。その方向に回転。二度、三度と様々な軌道から。斬撃が唸りを上げナガレに迫る。しかし全て余裕を持っていなし。息が上がり集中力が落ちた所で、

「まっ参りました……」悔しそうに唇を噛んでいた。

「力に頼りすぎですな、だから技が単調になり、個の戦いで不利になります。もっと基本を大切に」

「はい……ありがとうございました」

シュンっと萎れた花のように意気消沈したテレグシア。リーロンが見たところかなりのレベルであるように見えたが、ナガレは最高の剣士を目指している。ならばこそ武人としての正論なのだろう。

「次は、私とお願いします」

凛とした決意ある顔立ち。ハッと見とれる程強い眼差し。茶色の短い髪から活発さをイメージさせるが、彼女が手にしてるのはあまり見たことが無い。珍しい武器を両手に持っていた。

「あれはサイと呼ばれる武器よ」

「これは姫様……」思わず見事な訓練を前に。魅入っていたようだ。「リーロン。これから行われる二人の訓練しかと見届けなさい」

おやっ?、意外な顔をリルムが浮かべていた。強い信頼を感じたからだ。 「お願いします」

静かに一礼して、フィル・マノイは右足を前に。爪先立ちに、身を屈めて真っ直ぐナガレを伺う、

「何時でも」

頷いたが瞬間。フィルは、自然な感じで構えも。気概も。気配すらなくすたすたナガレに迫り……。いきなり激突音がして、ハッとリーロンは目をしばたいた。

「今のは……」

「彼女フィル・マノイは、一度みた相手の技を。自分の技に出来る。そんな面白い才能がありますの」

「ほ~う?。あのような意表を突いた技を。持つ生徒がいるのですか?」「わたくしが知る限り。二人おりますわ。1人は私達と同じ婚約者のヒナエ・バウスタン。そして……シンク」

ゾワリ……姫様の呟きに。言い知れぬ寒気を感じていた。

「ほ~う虚実を使われるか」

ざっわ訓練所の空気が変わった。今まで受けに回ってたナガレが、笑みを浮かべ。剣を構えたのだ、親衛隊の面々にざわめきが上がった。

「あのナガレが、本気になった……」

驚くリーロンとは違い。 リルムはさも当然と薄く唇を綻ばせていた。

「フィル・マノイ様。参ります」

「はい!」ナガレは宣言するや。疾風となって、フィルに迫る。リーロンの目ですら十合の攻防が僅かに目で追えた程度。斬音は十五合を数えた。ほんの数瞬の合間に。フィルの力量が分かる。

「まだフィルには荷が重かったようね。でも流石だわフィル……」

素直な称賛の言葉を呟いていた。

「我流で、そこまで腕を上げるとは……、さらに精進なさいフィル殿」

「はい、ありがとうございました……」

浅く痣を手足に受けたフィルは、痛みに顔を歪めて頭を下げたが、リーロンはそれ以上に。ナガレの訓練服の腕と胸元が裂かれているのに驚いていた。


「次お願いします」槍を手に、ほっそりした顔立ち、金の髪を後ろに束ねた少女。レイラ・バレスが訓練所に現れるや。ピーンと張り詰めた空気が流れていた。おやっ?首を傾げていると。

「ついさっきナガレが来るまで、レイラ1人に親衛隊の兵はなすすべなかったからの~。ピリピリするのは仕方がないわね」

驚くべき説明を聞いて、そんなことあるのだろうか……。怪訝に思ってると。あのナガレが厳しい表情をしていた。普段トロン・バーン、ランバスタ将軍と手合わせした時にしか見せない。真剣な眼差しをレイラに向けていた。

「あのナガレが認める実力を。あの少女が?」

俄には信じられないが、自然とリーロンの手は握りしめられていた。




「レイラ・バレス参る」 「承知!」

クルクル槍を回転させ。サッと脇に構えるや。独特の歩方で軽やかに走り出した。だがまるで地面をこするギリギリの位置以上膝をあげず。滑るような歩方にリーロンは訝し気な顔をしていた。

「私もあれを見たとき意味はあるのか、疑問を抱いた。だがあれは対峙してこそその恐ろしさが分かる」

意味はいまいち分からないが、二人が交差した瞬間信じられないが現象が起こる。

「やあ~!、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、」

横薙ぎの攻撃をかわしたナガレが、直ぐに剣先を合わせに行った。しかし剣をひいて、真横からの刺突の攻撃をいなした、次の突きは辛くもかわして、避けた方の真横から再び刺突が繰り出され。圧倒的な窮地に立たされていた。

「なっ、あのナガレが……」

驚くべき事態に。辺りもざわめく、

「あの独特の歩方は、予測不可。相手が避けた瞬間に真横に移動する。三差歩方と呼ばれる体移動技で、自分に近く相手に遠い間合いを実現させるわ」

「そんな技を彼女が……、相当な修練を積んだのですな」

感嘆を漏らしたリーロンに。小さく苦笑を浮かべ、

「あんなの何年修練したって、そうそう身に付かないわ。彼女のあれは10日で自分の物にしてしまった。それに夏休み前まで彼女は、二本の細剣を使う剣士だったって言ったらリーロン信じられる?」

「なっ……、夏休み前とすると彼女の槍は、まだ半年も」

「ええ……、まさかあれほどの使い手になるなんて、シンク以外だれも考えていなかったわ」

驚くべき事実を聞いて、唖然としたリーロンは、改めてレイラ・バレスと言う。あのアレイク王国救国の英雄の妹たる少女を見て、背に寒気が走った。



それは対峙してるナガレが一番理解していた。まだ少女でしかないレイラに。圧倒される驚きゆえ……。だからこそ自分の非礼を詫びる心をいだいた。

「そこまで、しばしお待ち下さい。貴女様にハンデを持って挑むのは失礼と感じました。このナガレ本気で試合たいと思います。レイラ殿よろしいか?」

息をやや上げていたレイラだが、穏やかな微笑を称え。たおやかに頷いた。

「誰か訓練剣を持て」

ナガレに請われ。何故か兵士三人がナガレの元に急ぐ。不思議に思ったリーロンに。

「ナガレの使ってたあれは、重鉱石を加工した特注品だ」

「なんと!……重鉱石の剣を使って、あんな動きが出来るのか」

リーロンが驚いた重鉱石とは、通常剣に用いられる鋼よりも密度があり。親指程度の重さで、剣一振りと同じ程度も重さがある特種な鉱石である。加工自体重鉱石は固すぎて、不可能と言われていた、だが造船と機械の国ジエモンで、最近加工が可能になったと知り。ちょうど自国に技術者が訪れており造らせてみたら。いたく気に入って、ここ2ヶ月程。重鉱石の訓練剣を用いていた。

「ナガレ様、どうぞ」

「うむ」

三人に今まで使っていた重鉱石の剣を渡した瞬間。よろめいていた。それほど重いのか気になって、

「済まないが、少し持たせてくれないか?」

「これはリーロン様。構いませぬが、気を付けて持って下さい」

三人がかりで、石の土台に乗せた剣をリーロンが引き抜こうと、掴み持ち上げようとした瞬間。

「ん……、グックッ」

片手だけでは持ち上げられぬと。真っ赤になりながら。両手を使って渾身の力を使って。僅かに持ち上がる程度である。

「だっは……、何て重さだ」━━リーロンが呆れて首を振りつつ、対峙した二人を見ていた。



━━久しぶりの軽い訓練剣である。馴れる必要を感じて素振りを繰り返していた。刃を付けてない訓練剣とはいえ。兵士が使うのはれっきとした鋼で作られた剣である。それを棒切れを扱うような。ビュンビュン信じられない音させるナガレに。レイラは呆れていた。感覚的に剣速があまりに早く。剣を振った後から音が付いてくる感じであろうか。

「クルミとは真逆だわね」

感心した呟きを漏らした矢先。ようやく納得したナガレが、一礼して、訓練剣を正眼に構えた。 「いつでも」

「参ります」レイラは放たれた矢のごとく。今までの三差歩方を捨て去り。目の覚めるような凄まじい素早さでナガレに肉薄し。いきなり背を見せながら飛んで、連撃を見舞う。

「ほう~」

思い切りのよい行動は、何かしらの一撃を待ち構えていた。ナガレの意表を衝く行動であり、思わず感嘆の声を上げていた。 レイラが何故背を向けたか、攻める相手の気持ちを反らし。相手の意表。虚を突き。実を行うためである。



━━身体を捻りながら、下方からの斬撃に舌を巻きながら、紙一重で交わして、一歩踏み込んだ瞬間。眼前に迫る石突きを咄嗟に剣で受け流し。剣の間合いから一歩離れた。だがまだナガレの間合いである。何かしらの技を仕掛けるつもりであると見抜き、剣風を放っていた━━。




━━槍の中間に、いきなり打撃を受けたような感覚があり。レイラはたたらを踏んでいた。

「今のは……」

驚き目を丸くしたレイラに。

「剣風と呼ぶ。まだ奥義と呼べぬ技だが、そなたに技を出させるは危険な気がしてな」

ニヤリ不敵に微笑したナガレ、レイラは驚きはしたが、卑怯とは感じず。武人ならではの誠実さを感じて、

「次は、私の技をお見せしましょう」

ナガレの気持ちに呼応していた。




━━二人の攻防は数分間も続き。決着は着かず終わりとなった。

「レイラ殿、さすが姫様が認められたお友達だ。また手合わせ願いたい」実直そのものな物言いだ、武人として最高の賛辞である。晴れやかに微笑み。

「こちらこそ。ライバルに勝つヒントが得られました」

狡猾さをチラリ口にする。見た目とは違う図太さに。周りで見ていた兵士は唖然としたが、

「フッ……、それくらいでなくば、姫様と渡り合えないだろうな」

ナガレは好意を抱いたようである。




手に汗握る訓練が終わりホッとした。

「リーロン貴方がわざわざ来た理由は、お父様が呼ばれたのね」

「あっ」

忘れていたとは言えず小さく苦笑しながら。神妙に頷いた、

「はい……、陛下が姫様達をお呼びになられてます」

「そうレイラ、フィル二人は同行なさい」

リーロンが言うまでもなく。即座に察せれる才覚は、女王の片鱗すら伺わせた。さすが姫様である。

「シンク皇子がおられないと……」

に限られる。リルムにジロリ睨まれたから首を竦めていた。

リーロンの口の悪さを知ってるリルムだから。無礼も許されるが、他の重鎮がそんなこと言おうものなら。射抜かれない。リルムとは苛烈な性格であった。

「そうそうリーロン。馬車の用意をお願いするわ」

「……はあ~。何処かにお出かけですか?」

「多分お父様のお話は、魔神絡みでしょ。そちらに伝がありますから。お話を伺ってから。出かけることになるでしょう」もはや言葉もないな……、

「あらリーロン違うわよ。朝レイラに言われてたのおそらく貴方が、呼びに来るとね」

キョトンと目を丸くしたリーロンに。涼しげに微笑みがら。

「リーロン、何か誤解してるようだから言うけど。レイラはあのシンクや私を相手に。手玉に取れる軍師ですのよ」

まさか……、口にしようとしたが、リルムは真剣な眼差しであった。

「本当に……、でも何故俺が姫様達を呼びに来ることが……」

「昨夜魔神達から聞いた話から。レイラは予測したの魔神とお父様の策は、失敗するとね」

それが本当だとすれば……、

あくまでも声音は穏やか、だが内容は風雪を含み。言い知れね寒気を感じて、顔がかじかんだように強張る。「貴方は知らないわ。彼女の本当の恐ろしさがね」





「お待たせした」

ほっそりした面立ち。金髪を下ろしたレイラは、リルムと並んでも遜色ない。存在感を醸し出していた。

「行きましょうリルム」フィル彼女からも拙いながら。二人に近しい空気を纏っているのがわかる。三人を伴い。魔王の間に戻ったのは間もなくのこと……、話を訊き終えるや。

「白の女王が動いてるようですわ。レイラ予定通りね」

リルムの発言に。魔王の間にいた重鎮は色を無くした。

「姫様……、このランバスタ今の発言……些か。府に落ちませぬ。それではそこなレイラ・バレスが、陛下の策が失敗すると予測したと申しますか?」実直な人柄ゆえに。看過できない発言だったのだろう。

「ランバスタ、確かに貴方の懸念はわかるわでもね……、レイラは賢者殿の話を聞いて確信したみたいよ。あの方は謀略に疎いと。お父様も気付いてるはずですわね。だからわたくしに一任させるため。皆の前に呼ばれた。それはわたくしと言うよりも。二人の才覚を確かめたく思ったからですね?」

先見性から父王の考えを読んでいた。

「それは……陛下」

驚きを顕にしたランバスタは、慌ててピアンザを伺う。これには些か苦笑漏らして小さく頷いていた。

「何かしらの謀略を。白の女王が、仕掛ける可能性を考えていた」

「それでは誠に……」ランバスタ将軍に皆の意識が向いた瞬間。レイラは僅かな殺気を感じて、後ろに下がっていた。

「へえ~貴女なかなか面白わね。これに気付くなんてクスクス」

レイラが今まで立っていた場にいたのは、蠱惑的な笑みを浮かべる少女。年齢無精な女性ミューア・サリアンだった。

「初めまして、ミューアさんですね?」

にこやかにレイラが微笑むが、眼差しにこそりとも油断はない。

「なるほど……影達の報告通り。その若さでねぇ~」

意味ありげに笑うが内心。関心を示した。

━━でも……、陛下達と比べると。まだまだ甘いけど━━、

とは、敢えて言わない。表面上━━にこやかに笑い合う、二人の間には静かな攻防が含まれていて、お互いに唇を笑ませる。それを見てリルムは決意した。

「お父様。私に一任されるつもりならば、ここはレイラに任せたいと思います」

あくまでもにこやかに。だが氷の女神が降臨していた。氷雪の如く裂傷を負わせる鈍い傷みを感じ。この場にいた重鎮は、顔をしかめた。

「そうか……、では未来の『オールラウンダー』その采配見せてもらおう」

娘の挑発に。薄く苦笑を張り付けた、それ以上の楽しみを見出だしてもいた。あのリルムが人に任せるとまで言わせる。レイラ・バレスがどうするのか、楽しみであった。 「宜しいわねレイラ」「ええ任せて、それでは皆様。若輩者の策略にお耳汚し。お付き合い下さい」

ペコリ、まるで男優の役者がやるような舞台挨拶。向上である。思わずミューアまで興味深く目を煌めかせていた。




━━レイラの突拍子ない提案。また予想外な奇策を聞いて、魔王ピアンザは思わず立ち上がり。膝を叩いて、面白いと唸っていた。見ればあのミューア、ゼノンの二人が頷き、興味を示していた。

「ハーミュア、此方の準備にどれくらい掛かる?」

「ハッ、夜までには秘密りに準備します」

「ロドラ、親衛隊の準備に掛かれ、ミューアは直ちに噂を流せ。リルムが魔神討伐に出陣するとな」

「はいは~い陛下お任せ下さい♪」最初の戸惑いを他所に。皆レイラの奇策が有効であると瞬く間に気が付いていた。あまりにも早い対応にレイラの方が恐縮していた。

「若き軍師殿。此方の心配はせず行動されよ。レノン殿に会うのであろう?」

「ええそのつもりです」 流石は魔王ピアンザ、リルムの才能。先見性の元である。たとえ若輩者の意見と言えど。有効と判断すれば、行動は早く。またレイラの考えに気が付いて。先回りされていた。

「ではお父様。私達は早速準備に掛かりますわね」

「うむ。苦労をかけて済まぬな……」

しばし親娘は見つめ合い。リルム達はうやうやしく頭を下げ退出した。




「陛下レイラ様は、なかなか面白い娘ですな。あのリルム様に認めさせるとは」

「ああ、エルマ以来か」ゼノンとほろ苦く笑い合う。

「そうそう陛下♪」

しんみりした空気を切り裂くように。笑顔のミューアは爆弾を落とす。

「ダレークから密書来てます。あちらで騒動があるようね」

一瞬。誰が騒動に巻き込まれてるか考え。睨むようにミューアの気遣いと違う。悪戯心をたしなめようとした。

「姫様の前で報告しても良かったんだけど~。新しい火種だから。敢えて口にしなかったと弁明したら。信じてくれます~」

艶やかに微笑み。ピアンザの気持ちを空かした。相変わらず喰えない女である。

「聞こう」

半分諦め。先を促した。 「えへへ流石は私の陛下。実は……」北大陸で起こった事件について語る。




リルム達7人は、早速用意された馬車に乗り込み。帝都の郊外に馬車を走らせた。

「へえ~砲を作る技術者に会うのか、それは楽しみだ♪」

メグが嬉しそうに相好を崩す。砲はまだ珍しい技術であり。アレイ学園で砲を学ぶ生徒は片手で数える程度。それ故に魔法の最先端である帝都で、実物の砲を作る技術者に会えると知り。喜んだのだ。

「リルムさん。やっぱり帝国は凄いね~専門の技術者がいるなんて」

メグが興奮したようにいい募るが、正直な所帝国にも砲を独自に造れる技術者はいない。レノンと呼ばれた技術者が特別なのだ。あえて秘密を口にせず曖昧に笑っていた。━━間もなく馬車は、閑静な郊外の畦道を走るようになり。自然の中に出来た木々のアーチに入ると。感じる気温がひんやりしてきた。

「この辺りは随分と静かだな……」

「そうですわね。仮にも国から委託された技術者が住むには、郊外すぎますが……」

フィルの言わんとする疑問に。そうとしか答えられない。リルムとて郊外と聞いたが、ここまで人里離れた場所に。工場があるとは思わなかった、でも……、人目に付かないから。魔神達も気楽に訪れるのだ。そう考えれば、少しは救われた。



しばらくしてようやく工場が見えてきた。敷地の広場に馬車は止まり。三人は見るも珍しい。工場の中に足を踏み入れた。ガシャン、プシュー。もうもうと熱気ある蒸気を上げた機械の数々……。初めて見る機械に三人は目を丸くしていた。ただただ動く機械。プレス機械に見入る。

「誰だ?。見ない顔だな」

厳しい口調で声が掛けられ。三人はびっくりしていた。振り向いた先に、偏屈そうな男性が、いかにも職人だと言わん顔した中年男性が立っていた。

「初めましてレノンさんですわね?。私リルム・アオザ・パルストアと申します」

美し過ぎると名高い氷の女神が、一礼した姿は、レイラ達も何度目にしても息を飲む程。神々しい輝きに満ちていた。

「何だ魔王の娘か ……、するって~とシンクかブライアン辺りに聞いたのか?」なんて言われて、思わず三人は顔を見合せていた。一息着いたレノンに断り。馬車で待っていた四人と合わせ改めてお茶に誘われた。

「こんなに沢山お客様来たの初めてで、何も無いけどごめんね」

痩せた翼人の女性リマ・エスヤンが済まなそうに。湯飲みと呼ばれる器でお茶を振る舞う。

中にはかなり大きな鉄製の物があって、デデ~ンとレノンの前に置かれていた。

「それいかにも魔神用よね。ベルあの子今日は来てないのかしら?」

リルムから魔神の話がされるとは思わず。リマが驚いた顔をした。

「今日はまだ見てないが、急用か」

偏屈そうな顔をしてるのに。気を使うような優しい眼差し。何となくシンクに通じる物を感じた。

「ええ。その前にレノンさん。貴方はシンクと血縁がおありなのではないですか?」

いきなりズバリ。核心を突いてきた。だが……レノンとしては今さらそれかと言う心境である。

「あっ、リルムちゃんてシンク様の婚約者の?」 ようやく気が付いた弟子に。思わず苦笑していた。

「ええそうよ。貴女がリマさんね、昨日ベルから聞いてますわ」

「あっはいベルちゃんから~」

ニッコリ日だまりのような柔らかな笑みを浮かべたリマ。ベルの言うとおり。魔神達と普通に接してるのか。言葉の端々から察せれた。




どうも訪問は、イレギュラーな気がして、弟子のリマに会話を任せ。レノンは、彼女達の会話に耳を傾けてる。欠落してる部分に気が付いた。「なんだ……聞いてないのか、意外とシンクも抜けてるのか、俺を信用してるのか、あの甥っ子だけは掴み所が分からんからな」

しみじみと呟いていた、この呟きでリルムは確信したようだ。仕方ない……説明もかねて自己紹介をすることにした。

「俺はレノン・ハウチューデン、シンクの祖父リブラの義兄あたる。まあ~シンクとは血の繋がりはないが、よろしくな」

皮肉気に笑っていた。驚いたのはリルム以外のみなで、どう反応してよいかレイラ、フィルが戸惑いの顔をした。

「お前が、わざわざこんな郊外の工場にきたのは、訳ありなんだろ?。おいリマ、そこの四人を連れて、新作の砲か、機械人形でも見せてろ」口調こそきついが、私達を労る気持ちが伝わってきた。なるほど……魔神に変わり者と言われるだけはある。少しだけレノンに好感を抱いた、また一瞬でレイラ、フィルを訳ありと見抜く辺り……。シンクに通じる物を三人は感じた。




「あの~リマさん。この砲ってカードリッチ式なんですね。直接魔法をチャージしないのは何故なんですか?」

メグ・ファノアは歴女であり。アレイ学園有数の天才と呼ばれるほど。魔法技術には並々ならぬ興味があった。将来は魔法技術の開発者になりたいと考えてた、また数少ない砲の使い手である彼女にとって。砲の開発を国から委託される技術者に興味津々である。

「クスクス、ええ確かに今までのように直接。砲にチャージしながら撃つ方法が、一般的ですね。でもそれだとレノンさん曰く、個人の資質によって性能が変わるからと」

「なるほど……」

だから兵装の砲を。カードリッチ式にと考えたのか、

「これだと最前線で、いちいちチャージせず。カードリッチ分チャージしておけば、部隊間の連携による持続攻撃が可能になりますよね」

すらすらレノンと同じような考えを口にしていた。驚いたリマはメグにええと優しい笑顔を向けていた。今までリマは、こんな風に同姓から。技術的な話をしたことなく。また同じ道を歩む者。楽しいと感じて、彼女が求めるままなるべく詳しく解説した。

「本当━━に。メグにも困った物ね~」

半分呆れながらテレグシアが言えば、ラグが全くだと頷く。

サラはチラリ先ほどから、立てられてる機械人形に目が向いていた。

「やっぱり気になりますよね」

「えっ、いやその……はい」

見られてたとわかり。赤くなるサラに。つい目尻が下がる。

「それ兄弟弟子で、レノンさんの甥っ子ブライアン君の技術を。使わせてもらってる自作なの」

「えっ、これリマさんが作ってるんですか!!」驚いたサラは、リマと機械人形を見比べていた。 「クスクス。そうよね私みたいな見習いの自作だと。やっぱり驚きますよね♪」

「あっ………、いやそうじゃなくて、不快に思わせたらごめんね。ただその翼が汚れないか心配になって……」

先ほどからリマの綺麗な翼に、油汚れがあったからふきたくなったと告白。アングリ惚けてたリマだったが、クスクス楽しげに笑いだし。

「な~んだ。嫌われたかと心配しました。良かったら翼の汚れふいて下さいますか?」

「あっうん!、任せてくれ」

細やかな気遣いの出来る女性なのだと。サラを好ましく思ったリマでした。



華やかな笑い声が、母屋に使う小屋まで聞こえていた。偏屈そうな顔にほんのり優しい笑みが浮かぶレノン。案外弟子のリマに同性との交流を与えたく。このような場にしたのかと。三人の胸中には、彼を偏屈だが、決め細やかな心使いの出来る。不器用な優しい人と、共通認識を与えた。三人の表情で、何となく気が付いて気恥ずかしくなり。ゴホゴホ咳払いして誤魔化した、

「では、聞こうか」

などと言われて、思わずあの可愛らしい性格の魔神が、この工場を大切そうに話してたか、よくわかった。

「ええ実は……」

レイラから。工場に訪れた理由を聞き終えて、流石に呆れた。

「まさか……魔神の一人を。倒した毎にするとはな……、それで魔神を隠す必要があるか……」

なるほど……、確かにこの工場なら隠しやすいが……、絶対とは言えない。ならばの奇策。

「機械人形に封じるか……」

レノンですら考えもつかない方法だ。魔導兵と同じ理論である。不可能とは言えない。また魔神は魔力が中核になった存在だと聞いていたし、たまたまそれに適した白銀兵を模した機械人形も揃っている。後は誰を機械人形に入れるか……、

「決まってますレノン。彼ならぴったりだと思いましたわ」

キッパリとリルムの言う彼とは、些か興味を抱いて、訪ね。話を聞くうちになるほどと理解を示した。ならばレノンがやるのは、特別なカードリッチを用意すること。それも半日もあればこと足りる。

「わかった直ぐに準備を始めるが、一言言わせてくれ。お前達が考えた方法は、あの五人に希望を与えるかもしれない。だからありがとう……、俺のところに来たこと技術者として、あの者達の行く末を案じる者として感謝する!」━━そう……、まるであの時のようではないか、孤児院で、義母ベリーが、必要としてくれた時のような。晴れやかな喜びが、レノンの相貌に宿り。三人をハッとさせる魅力的な笑顔を見て、シンクのこと思い出させた。



━━それから間もなく。四人が工場に戻り華やかな笑い声が増した。早速レノンとリマが機械人形の調整と、特注カードリッチ制作に入ると聞いて、メグが手伝いを申し出ていた、驚いたレノンだが、魔砲を学ぶ学生だと聞いて。

「なら手伝え。そこの砲を改良するから━━」

事細かな部品の交換を説明。

「それならバランサーを━━」

「ほほ~う悪くないな。お前……」

「メグです。メグ・ファノアです」

「メグお前に任せる。後でどうかえたか確認する。やってみろ」

終始和やかなムードで、着々と準備が進められていく。サラ、テレグシアはリマに断りを入れて、軽食の準備をしていた。レイラは、リルム、フィルを伴い。最後の作戦調整を行っていると……、 『あれあれ?。みんなどうして此処にいるのかな?』

策略の要。花の魔神ベテルローズが、三人の傍らに現れた。

「丁度良かった。貴女を待ってたのベル」

ほっそりした顔立ちに。底知れぬ深い策謀の眼差しを受けたベテルローズは、寒気を覚えたと言う━━。




エピローグ




━━元商人の国。郊外……、ローレイ商会長であるハーレス・ローレイの屋敷はあった。淡雪のような白い肌。睫毛も長く。顔立ちは女性的で、中年でありながら。とてもそうは見えない年齢不肖、疑惑の大商人ハーレスは、本体からの連絡を受けて。はて……疑問を抱いた。

「何故村人に会うのではなく。魔神討伐なのだ?」

不可思議で仕方がない。リルムがしゃしゃり出てくれば、浚うチャンスであったが……、討伐となると分身体のいる騎士団ではなく。親衛隊が同行してしまう。しかも無理に動けば違和感を与えかねず。こちらとしては困惑してしまう。

「何故ここで魔神討伐なのだ?。何を考えてる愚かな姫よ」まだハーレスは知らなかった。リルムと供に来ていた。お友達と言う援軍の中に。後の世でシンク大王の寵愛を受けたと記された。希代の天才軍師・第二王妃レイラ・バレスが同行していたことに━━。

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