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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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伝説の大賢者の秘密ですね?

プロローグ




━━西大陸。パルストア帝国・新帝都……、



数年前に建設された、新たなる帝都は、別名不夜城と呼ぶ。それは……昼夜問わず。多くの人々が、帝都を訪れていたからだが……。それには様々な理由がある。




今から120年前……。




……失われた大陸があった。





━━━15年前……。

伝承通り。

120年前の……、四大陸にあった。中央大陸に続く扉があった場所に。魔物が溢れたのだ。西大陸には、魔神と呼ばれる異世界の知ある異形の存在が現れた。




━━遥か昔。赤の民と呼ばれる。忘れられた民がいた。創造神に作られた古代の民は……、自分達に似た人間の増長に嘆き。人間を殺した……、重く見た神々は赤の民を中央大陸ごと地中に落とした。赤の民は嘆き、憤り、神々を恨みました……、全ては人間のせいだと。赤の民の王弟だったレイアスは、王である兄を追い出して。新たなる赤の王となり、人間を滅ぼすために……。魔物を産み出しました。増長した赤の民のレイアス王に、神々は怒り。冥界と呼ばれる始まりの世界に。赤の民を大陸ごと落としたのです……。




しかし赤の民は嘆き、怒り。神々を恨みました……。その深い怒りから闇の女神カレールが生まれ。強い恨みから死者の神アレビスが生まれました。二柱の神々は、異世界の扉を開いて、赤の民の願いを叶えるために魔神を呼びだしました。そして……冥界から再び現れた中央大陸は、世界に混乱と死と混沌を産み出した。神々は怒り。闇の女神カーレルを倒し。死者の神アレビスを殺し全てを冥界に落とした。そして……二度と中央大陸が現れぬよう。封印の扉を四大陸に作られたのだった。



……しかし……。

神々の戦争より。数年後……。


再び冥界から中央大陸が現れた。




赤の元王プロキシスと、人間の女の間に生まれし英雄が1人ナタク。



白の二代女王フレナード、人間の王子の間に生まれしアレク。



黒の民、初代魔王ヒザン、



緑の民の狩人。四人は。四大陸にあった封印の扉から。中央大陸に渡り。魔神、魔物、変わり果てた赤の民である。魔人達と戦い。激闘の末。再び冥界に落とした……。



……時は捲る。




15年前……、再び冥界から中央大陸が現れたのだ。英雄王と呼ばれしオーラル・ハウチューデン、



黒の民の新たなる魔王ピアンザ、



緑眼の騎士ギラム、



アレイク王国ヴァレ・オーダイ将軍の新たなる神々の武器に選ばれし英雄達と。各国の英雄、勇者達の活躍により、中央大陸は再び人間の世界に残されることになった……。




だが爪痕は深く。世界中に残された闇は深い。




「はっ。はははっ……」知らせを受けた。幼い顔立ちの繊細そうな少年は、長い白銀の髪。人房だけ黒い髪を後ろに束ね。息を切らせながら、城の廊下を走っていた。普段温厚で大人しい少年には考えられない。キラキラした目に。誰もが目を白黒させていた。

「クライム皇子様!、そんなに急ぎ、どちらに行かれますか」

クライムの武芸指南役を任されてるリーロンが、目を丸くしながら、大音声で訪ねていた。

「あっリーロン!」

クライムは足を止めたが、先を気にしている珍しい姿に目尻を下げていた。

「今ね御姉様が、戻られたと聞いたからだよ♪」 「ああ姫様に会いに行かれるのですね……」

おや?って顔をしたから、小さく苦笑して、

「先程魔王様に苦言を申したもので……」

と種を明かした。成る程と頬を緩めていた。本当はリーロンも顔を出したいが、行きづらいそう言うのだ。元々リーロンは、六将ランバスタの副官であった。様々な理由で、以前の六将が抜けた時に。抜擢されたのだが……、




彼は少々……毒が強い。父王だろうと、貴族だろうと、チクリとハチの毒針のような苦笑を言う人物で。煙たがる人も多く。今朝のこと思い出して、クライムまで小さく笑っていた。

「ごほんクライム様。リルム様が到着なされたのですね?」

「うん!、今父様とお話してるんだって、なんかねお友達も沢山連れてるって、ミューアが知らせてくれたの♪」

「なるほど……」

ミューア・サリアンは同じ六将だが、今はクライムにベッタリである。昔はピアンザ様にだったが……、

「あの姫様が友達をね……」珍しいと口を開きかけて止めた。純真無垢な目で見られていたからだ。

「クライム様。でしたら皆様のために。手作りお菓子を振るまわれてはいかがですか?」

あって顔をしたかと思えば、瞳をキラキラさせて、

「リーロンそれ良いね!。ぼく作って来るよ」

「はい、では姫様達には、サロンでお待ち頂くよう伝えましょうぞ」

「ありがとうリーロン」 パタパタ走って、自分専用の厨房に向かう皇子を好意的に見送っていた。 そこは聡明なクライム様、大好きなリルム様に直ぐにも会いたかったはずである。

「お優しい方だ」

思わず頬を緩めていた。わざわざリーロンの提案を受け入れ。姫様に合う口実を下さったのだろう。

「さて……、姫様がお友達をね……」

あの姫様が、普通のお友達を連れたとは考え難い。少し楽しみに思い。再び魔王の間に向かう事にした。



━━魔王の間に入ったリーロンは、六将全員が一同に介していたのに驚いた。

「なんだお前まで来たのか」

あきれたようにランバスタが言えば、苦笑気味に頷き、

「クライム様から。姫様に伝言を預かっておりますので」

クライム様が下さった言い訳を。有難く使わせて頂く。

「あらクライムの?、何かしらリーロン」

美しく成長したリルム様が、リーロンを認め。先を促した、傍らに控える6人の女の子達を伺い見るのも忘れない、

いかにも両家のお嬢様といった子もいたが、それぞれが一本筋が入った。凛とした表情が、印象的であった。

「はい姫様。クライム様はサロンで、お手製のお菓子を振る舞いたいと。皆様にはそちらで寛がれては如何ですか?」

堅苦しい挨拶が終わってるなら。気楽に話しては?、元傭兵ならではの気遣いである。

「リーロンありがとう。お父様尽きないお話もありますが……」

「そうだな、シレーヌ今日は母に戻り。リルムの世話をしてやるが良い」深い笑みを刻んで父が申し出てくれた途端。リルムに面差しが似ている美しい女性は、とても嬉しそうに微笑みハイと頷く。

「時に。その二人かねリルム?」

リルムの両隣に控える。我が娘に負けぬ。強き光を相貌に宿す女の子達を見て、目を細めていた。「そうですわお父様、こちらが私が認めた最大のライバル、レイラ・バレス、私とレイラの友人フィル・マノイですわ」

ザワリ……。六将の間で驚きの声が上がる。

「……確かに。カレイラ殿に面影が似ている。そちらのフィル・マノイ……、うん!祖父の人足頭に目元が似たようだね」驚いたのはフィルである。まさか自分にお声が掛かるとは考えもしなかった。

「なに苦学生だった頃は、オーラルと供に。人足のバイトをしたものさ」ハッと息を飲んでいた。 だが魔王ピアンザは、それ以上多くを語ろうとはしない。不安そうに目を曇らせたフィルの手を握り。

「クスクスお父様。それでは言葉が足りませんよ。フィルが不安に思います。お父様懐かしく楽しい思い出なのですね?」

コクり柔らかく微笑しながら。ピアンザが頷く姿は、不器用なリルムに似ていた。フィルはようやくホッと息を着いて、軽くリルムの手を握り返した。二人の様子を見ていたシレーヌは、小さく口元を押さえ。嬉しそうに微笑んでいた。それはシレーヌ王妃だけではない。ランバスタ等は早くも涙ぐみ。珍しくミューアが好意的に微笑み。騎士団長トロン・バーン、財務大臣ハーミュアまで嬉しそうに笑う。そのなかで唯一。何か聞きたそうにしてる。アグレドにリルムは気が付いた。

「アグレド、エルマはギラム殿と今年は過ごすわ。私が嫁げば、あの子は着いて来よう?」

ハッと息を飲んでいた、少し残念そうだが、ホッとした顔をしていた。

「姫様……、兄は?」

「ギラム殿も息災である。安心されよ」

「そうでしたか、心使い感謝致します」

深々頭を下げて、不器用に微笑んでいた。時を見計らい。

「リルム、クライムが待っていよう」

「そうですわねお父様、私達はサロンでお茶を頂いてますわ」

「うむ。皆様もゆっくり長旅の疲れを癒されよ。シレーヌ任せる」

「はい、あなた……」

「ランバスタ、ミューア頼む」

「ハッ、お任せを」

「はいは~い♪」

お気楽に返事したが、ミューアは西大陸の暗部を一手に引き受ける。闇ギルドの長であり。クライムのお目付け役でもある。ランバスタもリーロンと交代でクライムの護衛兼。武芸の師を任せていた。クライムは温厚な性格で、やや武芸に劣るが、王妃に似て魔法の素養が高く。経済に明るいから。ハーミュアからは財務関連の勉強を教わっていた。リルムの友人達と連れだって、王妃シレーヌが退出して行くのを優しい眼差しで見送った、




━━扉がしまり。ハーミュアが目配せをするや、騎士団長トロン・バーン、副将軍リーロンが表情を固くした。親衛隊長アグレド、ミューアの表情は変わらない。

「して陛下、賢者殿はなんと?」

口を開いたのは、最近ローレイ商会と一線をひいているハーミュアである。

「うむ……、まだ白の女王は見付からぬが、危険な状況である」

「姫様が戻られている以上、リルム様に危険が及ぶやも知れませんな……」

一つ頷き、表情を曇らせる。

「今一つ確信は持てぬが、リルム……、シンクが気付いてる節がある」

ボソリ……、重要な疑問を口にしていた。

「陛下それは流石に……」

いくら若き英雄と呼ばれる少年でも。そこまで聡明であるとは考えたくないトロン・バーンの気持ちである。

「アグレド……、ミューア、二人はどう思う?」吉備にさといアグレドは、人間の表情から様々な情報を見抜く才に恵まれていて、ミューアの元には世界中の情報が集まっているはずだ。

「陛下の考えてる通りだと思うよ」

真っ先に口を開いたのはミューアであった。何時ものおちゃらけた空気ではなく。闇ギルドの長の顔を覗かせていた。

「レイラ・バレス、フィル・マノイあの二人は、かなりの実力者です。その他の4人もね。あの姫が普通の友人を連れて戻られているとは、考え難いですし~」

言い方は悪いが、ミューアの言いたいことはよくわかる。シンクと冬休み一緒に過ごさないことも異常なことだったからだ。これには滅多に表情を変えないアグレドが苦笑していた。「では、リルムは探りに来たと?、ミューアは考えるのだな」

「うん、陛下もそう思ってるんでしょ」

目端が効くミューアならではの切り返しに。ピアンザは苦笑していた。 「何処まで気付いてるか分からぬが……、白の女王がリルムを狙う可能性はある。賢者殿が白の女王の目をかわすため四天が動くと言っていた。確か領主の一人から訴えがあったな?」

「はい……あまり評判の良くない領主ですが」

内務省に関わる案件故にハーミュアが答えた。

「トロン編成はそちに任せる。一軍をもって、四天に当たれ。魔導兵を一個師団使うこ赦す」

「ハッ、承知しました」生真面目にトロン・バーンが答える。

「それから賢者殿から。ある程度リルムに秘密を打ち明けてはと、言われている」

「それはまさか……」

ランバスタの懸念に小さく頷き、

「あまり中途半端な情報を与え。リルムに動かれては困るからな。どうするかはシレーヌに一任した」

「そうでしたか……」

「じゃ~陛下。私達は姫様の実力を出させないように、情報操作と目眩ましを仕掛けますね~♪」お気楽に言うが、恐ろしく難しい注文である。六将の顔が引き締まる。

「ミューア頼んだ。魔神の方は恐らく鋼の魔神スタンレイ。水の魔神ブルワーズが来るであろう」

「はいは~い任せてね~陛下♪」ミューアはお気に返事をして。皆を苦笑させていた。




なんと皆を案内してくれたのが、王妃シレーヌ様自らで……、華やかに微笑む姿は、あくまでも艶やか、二人の子を産んだとは思えないあどけない表情をした。可愛らしい女性である。またリルムと並ぶと親子と言うよりも姉妹にしか見えないから。ただただ女の子達は、興味津々であった。

「あっあの~失礼ですが、王妃様の髪きらきらサラサラです~♪」

「リルムの髪もサラサラで。白銀の髪って素敵だよね」

カノア・テレグシアの呟きにサラ・ローガンが追従して、祖父譲りの黒髪を指でつまみ。切なげに吐息をついていた。

「ありがとうサラさん。テレグシアさん♪。結構猫っ毛なので、冬場は大変なんですよ」

「私も毛先細いので、冬場は大変なんですよ」

しみじみほっそりした顔立ちのレイラ・バレスが呟けば、髪の長いサラ、テレグシアがそうそうと食い付く。

「ぼくは短くしてるから気にしたことないな」

拳士のラグ・セレン、同じく短くしてるメグ・ファノアには分からない悩みである。

「髪と言えば、クルミに聞いたんだけど」

馴染みある名前を耳にして、シレーヌはミザイナ女王を思い出していた。 「リルム、クルミ様はお元気なのですか?」

「はいお母様、それはもう強力なライバルです」 しみじみ言えば、レイラが強く頷き。

「純粋な剣技だけならば、私では敵いません。今ではシンクでも敵うかどうか」

「次は、負けない……」密かにクルミにライバル心を燃やすサラの言葉に。皆が頷いていた。

「ウフフ♪。リルム良い友達を見つけましたね」「……はい!」

ほんのり頬を赤らめ。自信満々な返事をしていた。



━━楽しげな笑い声が聞こえてきて、クライムはキッチンからこっそりサロンを覗くと。目を輝かせていた。目敏いレイラ、サラの視線を追ったリルムは、久しぶりに会うクライムと目が合って、柔らかく微笑んでいた。「クライム!、ただいま」

「おっ、お帰りなさい姉上」

やや緊張した面持ちで、姿を表したクライムを見て、息を飲む一同。愛らしい少年がモジモジしていて、まるで女の子だなとレイラが妙な感嘆を抱く。

「クライムいらっしゃい」

リルムが手を広げ出迎えると。パッと顔を輝かせて、トテトテ効果音が似合いそうな空気を纏い。リルムに抱き着いた。

「可愛い……」

思わずメグがぽつりと呟いていた。それはこの場にいた皆が抱いた感想である。



━━クライム自慢の絶品お菓子を頂きながら。王妃シレーヌを交え。リルムの近況を話ていた。

「シンク様は、昔のままなのですね……」

周りに流され。変わってしまう人がいるのだが……、変わらない強さこそ本当は大切で、難しいことであった。喩え英雄と呼ばれた者も時を経て、甘言に耳を傾け。落ちた者を歴史は教えている。「リルム、レイラ、フィル貴女達を見てると、昔を思い出しますわ」

メグがハッとして。頬を高揚させ急に佇まいを正した。ビックリした母に、メグが偉人伝を好む歴女であると教えると。

「まあ~そうでしたの。メグさん素敵な趣味ですわ。私で良ければ、ミザイナ様やエバーソン。それとも貴女達のしらない。ナタク様の話が良いかしら?」

ナタクと聞いて、レイラは息を飲んでいた。やや緊張した様子に気が付いたシレーヌだが、

「リルム貴女のことだから、気が付いてるのでしょ?」

敢えて何がとは聞かない。

「はいお母様。ミューアに聞くつもりでした」やはりね。そんな顔をしてから。

「あの人も貴女がそうする可能性を言ってたわ。だから私で、話せる範囲だけ教えるようにとも」「父様が……」

驚きよりも父の先見性を怖く感じた。それはレイラまで感じたことがない。帝国を一代で築き、世界の敵になった魔王と言う存在の恐ろしさを垣間見た、深い動揺である。「何故ナタク様の話を今したか、それはリルム貴女や……私に深く関わる。出生に纏わる理由があるの……、貴女は、真実を知る勇気があるかしら?」

優しく諭すようでありながら。まるで挑発するような物言いに。俄然リルムは反発。レイラですら困惑していた。

「お母様……聞かせて下さい」

決意を顕に頷いていた。



━━皆が知るナタク・レブロとは、魔王の六将の1人であり。自国の王を殺し。逆賊と呼ばれながら聖騎士と呼ばれた者である。また東大陸に狂喜と混乱。殺戮を繰り広げ、アレイク王国救国の英雄カレイラ・バレスを殺し。なれど東大陸の危機を救った狂勇合わせ持った武人である。




アレイク王国では、ナタクを嫌う気持ちが強いが、東大陸が、魔物から守られた事実も確かである。また聖人と知られた聖アレイの弟子と同じ名を持った人物。現在でも賛美はあった。

「レイラさん、貴女に会うことがあるならば、一度お話して、ナタク様の物語を聞いて欲しかったんですの……」非常に言いにくい事ではある。物心つく前とはいえ実の兄を殺した者の話は、だけど彼のことを知って欲しかった。優しすぎた彼の物語を……。

やや強張った顔をしたが、小さく頷くレイラの真っ直ぐな面立ちに。シレーヌは瞼を閉じて語る。「最初に知って下さい。ナタク様は、紛れもなく聖アレイ様の12使徒の1人でした……」




━━今から120年前。中央大陸が世界に現れた。

その話は、アレイ学園でも学んだ歴史である。

「学園では名も無き四人の勇者が、中央大陸に赴き魔人、魔神と戦い。元魔導王国レバンナの地下にあった封印の扉を閉じた。そんな話ね?」少女達は揃って頷いた。「ナタク様、アレク様は四人の勇者の1人だったの……」

衝撃の告白に。誰もが動揺を顕にしていた。

「ナタクが……、しかし」

リルムも生前何度か見掛けたが、赤髪が印象的な。冷たい眼差しの男だとしかイメージはない。

「お母様……、ナタクはそんな歳には」

「クスクスそうよね。無論ナタク様には秘密があったわ。彼は世界にただ1人残された。赤の民の王族だった。彼と私達すらそう考えていたわ」

母が言わんとすることに、リルムは気が付いた。 「まさかナタクは……」 「ええ。シンクの伯父に当たります」

凄まじい爆弾が投下され。レイラは知らず知らずよろめいていた。

「本当は、ナタク様と私、夫の秘密にしとく筈でした……」



話は、中央大陸で起こった事件の結末にあった……。

「オーラル様とリブラ様は、太陽神アセードラの神殿で、闇の女神カーレルと相対したとき。リブラ様の内から。赤の王プロキシスが現れたの……、そもそもリブラ様は、大崩落に巻き込まれ。失踪した経緯があったのだけど……、赤の王に出会い。未来に飛ばされたためだったわ」

それはリルムも聞いていた。しかし皆は知らない真実。戸惑いすら浮かべていた。

「ナタク様や私達は知らなかった……、リブラ様が赤の王の子で、ナタク様の弟であったこと。また土竜騎士が、赤の民の末裔であったことを」

「それでは……」「ええ各国の王族は知っているわ。公然の秘密ですから。貴女達も内密にして下さいね♪」

可愛らしくお願いされてしまい。手に汗握る話ながら。小さく笑みすら浮かべてしまう。

「王妃様、どうしてナタクは、自分の王を殺したんですか?」

メグの当然の疑問に一つ頷き。

「聖帝の国はそもそもナタク様が、聖王の剣に選ばれ作った国だったの……、王はそもそも傀儡だったわ。でも白の女王に唆されだ傀儡の王は、前魔王祖父ヒザン様がナタク様に渡そうとした『赤の書』と呼ばれる禁書を手にいれるためクーデターを起こし裏切ったの。最初の移動国を破壊した事件。あれも裏で、白の女王が傀儡の王をあやつって『赤の書』を奪うため起こした事件だったのよ」

最早なんと言ってよいか分からなくなっていた。「話を戻すわね。皆さんは、聖人と呼ばれたアレク様の話は、何処まで知ってられるのかしら?」

アレイク王国で未だに尊敬を集める。アレイ教を広めた人物。建国王の兄で、王族の血脈であることそれぞれ語る。

「でも皆さん。アレク様が死んだとは誰も聞いたことが無いのではなくて?」

ハッとレイラが息を飲み、次いでアレイク王国に住む五人がハッとした。 「たっ確かにそうですが……」

アレイク王国の貴族であるテレグシアが口を挟む。

「確か……、建国王バレンシア様の墓はありますが、聖人アレイの墓は無かったと記憶しております」

「シレーヌ様。もしや……」

予測の才を秘めたレイラならではの感性で、答えを導いた。

「そうよ。アレク様は死んではいないわ。妹のレシア様もね」

そして……、語る。




ナタクが、親友アレクと幼なじみで妹のように可愛がったレシアを探す。悲運の旅と。前魔王ヒザンの苦悩。失われた12使徒の4人の名前と。裏切りの物語を。

「そっ、そんなことが……、もしやミレーヌ様とシレーヌ様は?」

「ええ親しい親戚になりますわ。この先は貴女に深く関わることです。しかと聞いて答えなさいリルム。西大陸には魔神が猛威を奮ったのは知ってますね?」

「はい……」「では、アレク様の弟子と同じ名前の魔神がこの大陸にいるのは?」

「なっ……」

立ち上がったリルムは、知らなかった事実によろめいた。西大陸で暗躍する。四天と呼ばれる魔神がいるとは聞いてた……。恐ろしく強大であることもだ。まさか同一人物であると言うのか?。

「もう1人。忘れてはならない人がおります」

「まっ、まだ秘密が」

あまりに秘密が強過ぎて、呼吸多可、顔色が優れぬ娘に。

「まだ秘密の触りしか話してませんよ?。その程度で根をあげるのですか?」

ぴしゃり言って退けた。流石は魔王の王妃である。凄まじい胆力の強さに。七人は戦いた。ゴクリ唾と心の不安を飲み込みリルムは、一歩踏み出すことを決めた瞬間。左右の手に。震えるフィルの手と。ひんやりしたレイラの手が乗せられていた。二人を見るや。しっかりと頷いてくれた。

「大賢者オール・セラ。アレイク王国で知らない人はいませんね?」

みんな揃って頷いていた。オール・セラは1人の女性と結婚した。名をレシアといい。敬愛するアレクの妹だった。

「まさか!、建国王バレンシアとは?」

「二人の間に産まれた子供に付ける名前になる筈でした……。しかし二人の子供は何者かに拐われた。アレク様、レシア様、ナタク様が血眼になり探しましたが、犯人が解りませんでした……、しかしある日のこと。四人の弟子達が、アレク様、レシア様を呼び出し赤子の行方がわかったと伝えました。二人はいてもたってもいられず。四人の弟子達と供に。西大陸に渡りました」

だが二人は帰って来なかった……、理由も分からず。行方がわからなくなった。アレク達を心配したナタクが、足取りを追った。そして見たのは……。




━━変わり果てた四人の弟子達が、魔神となった姿である。アレクはなんと『赤の書』に封じられた直後であった。僅かな隙を突いてナタクはアレクだけを救い。どうにか逃げた。



そして……ナタクは、西大陸にいた。中央大陸を供に封じる旅をした。魔王ヒザンに助けを求めた。




当時……魔王ヒザンは、唯一破壊出来なかった西大陸の封印の扉を監視するため。その上に新しく国を建国している所でした。急場しのぎにしかならぬが、魔神と墜ちた弟子達を封印の扉の向こうに落とすしかないと。策をナタクに与えました……。ナタクは苦悩の末。今はそれしかないと理解をしたと言う。

「人間が魔神となった例は、彼等四人だけでした。だから時を経れば強大な力を得る。その可能性を危惧したのです。アレク様は当時。太陽神アセードラの祝福を受けた。『聖王の剣』の使い手でした。彼がいない今。苦戦は必死であると考えたのです」

そして……覚醒したばかりとはいえ。凄まじい力を持った四体の魔神に。ナタク、魔王ヒザンは決死で戦った。




━━ようやく……、四体の魔神を。封印の扉から冥界アビスに追いやることが出来たのです。「しかし……、ホッとしたのもつかの間。レシア様を封印した白の書が見付からなかったのです。またせっかく助けた赤の書まで紛失して、ナタク様は途方に暮れていた」だからナタクは二冊の書を探すため。西大陸に腰を据えた。

「大賢者オール・セラ様は、ただひたすら待ったわ……」

「もしかして……、セラ様は、この西大陸で死なれたのですか?」

メグの疑問に。大きく首を横に振り。

「いいえ……。物語は、まだ始まってすらいませんでした……」




━━四人の弟子達を唆した人物がいたのです。

「その者は、実の姉を赤の民に殺させ。姉の二人の子を追いやった人物であり。レシア様、セラ殿の子を。四人に拐わせ。自分の子供として育てました。そして……海中都市の管理を任せていたのです」

どこか遠くを見るように。シレーヌ王妃は外を見ていた。

「まさか……、お母様が言われていた二人の子供とは……」

皆さんも気が付いたようである。

「はい!、わたくしが、大賢者オール・セラと。レシア母様の子供だからですわ」

全ての根底を覆す真実を前に……。もはや言葉すら失う一同。

「リルム……お父様は、私の父と母を救うため。オーラル様と供に。魔神と手を組んでおります」

「そんな……」

真実はあまりに歪で、恐ろしい物語ゆえ。リルムは深い懸念を抱いたようだ。だからリルムを落ち着かせるように。胸に抱き寄せながら囁いた。『大丈夫よリルム……、四天を改心させたのは、貴女の祖父ヒザンであり。四人を許し指導するのは、わたくしの父であるオール・セラなのですから』

「あっあの~シレーヌ様。人間が……魔神になれるのですか?」

レイラの疑問に。そうねと呟き。

「詳しい事は言えないわ。でもセラお父様は、二人を救うため死せる身を捨てた。だからヒザン様が密かにお父様を支援していたの……、わたくしがその事を知ったのが、貴女が学園に入学した頃なの……」

優しい母の事だ。長く悩んだのだろう。父を恨んだかも知れない……。

「リルム……、少しだけあの人とオーラル様を恨みました。ですが……クライムや貴女のことを考えました。もしも……そう考えたら。二人の気持ちが分かりましたの。だからわたくしは大丈夫ですよ」

母の気持ちを聞いて、ホッと安堵していた。

「先程あの人に。セラ父様から連絡がありましたわ。貴女を港で見たと……」

ハッと息を飲んだリルム。優しく髪を撫でながら、

「僅かな時間ですが、父は、貴女との面会を求めてます。如何しますか?」

それは優しさだろう……。父が手を回していたのだ。決定は母に委ねて……、

「レイラ、フィル……」自然と二人の同行を求めていた。二人ただ静かに頷いてくれた。





━━禁忌の領域━━。




一面美しい花畑が、咲き誇り。香しい匂い漂う領域は、花の魔神ベテルローズの領域である。その領域に足を踏み入れた黒髪の青年は、赤茶けたフードを取り払う。青年が着るローブは、魔導関係の仕事に付いてることを示していた。

『お帰りなさいセラ兄♪、レシア姉』

突然声が降り掛かり。セラの見た虚空に。一輪の花が現れ。咲き誇るや妖艶な眼差しの見目麗しい魔神が、姿を表した。

『ただいまベル♪、セラが四人にお菓子を買ってきたわよ』

お菓子と聞いて、ベテルローズの顔に。嬉しそうな笑みが広がる、

『やった~♪』

歓声を上げたベルのはしゃぎぷりに。

『あはっ、ベルはいいな~。私も食べたいなお菓子』

甘えた声を出して、本気で悔しがるレシアの呟きに。ベテルローズは懐かしくなり、思わず笑っていた。『レシア姉待っててね♪きっと。お姉ちゃん助けるから』

『うんうんありがとうベル♪』

二人の会話に柔らかく笑みを浮かべ。セラは明日に思いを馳せる。孫のリルムが、自分たちと会談してくれるか不安はあった。それと同時に楽しみでもある。

━━だが……、

時は、迫りつつあった。義兄と妻を元に戻すチャンス。それを確実に物にしなければ、この世界に未来はないのだろう……、



━━その日の夜。リルムの誘いで、貴族の夜会に出席した一同は、初めて社交界デビューを果たす。ゆくゆくシンクの妻になれば、華やかな場も慣れとかなければならいとの━━、リルムの配慮である。

「明日の夜は、もう少し気楽に参加出来る。ダンスパーティーがあるわ、明日の昼に。ドレスを用意させるから、仕立屋が伺うと思うわ♪。今日は色々と疲れたでしょ?。部屋にお風呂が用意されてるから。ゆっくり疲れを癒してね」

リルムの言う通り華やかな夜会の場も。昼間聞いた。恐ろしい話に霞んでしまい。気持ちが疲れていた。

「ええ。ありがとうリルム」

しかしシンクの許嫁であるレイラ、フィルの二人に気持ちの疲れを感じる暇はない。明日は伝説の大賢者オール・セラと会談を予定してるのだ。

「どうやって私達を連れてくのかしらね?」

「お母様は『秘密です♪』としか言いませんでしたが、私達三人は、同じ部屋で過ごす方が、都合がよい気がします」

「でしたら私は、リルムとシンクさんの昔話聞きたいな~」

フィルの願いに。確かにとレイラが相槌を打った。

「そうですわね。寝るまで時間があります。もう少し皆でお話しましょうか?」

ウズウズしてるメグに向かい。お誘いをしたら。 「はい!」

真っ先にメグが返事をした。

「も~うメグたら」

テレグシアに笑われてしまい。真っ赤になっていた。

「だったらぼくは、クライム様に使っていいと言われた厨房で、簡単な軽食作って来るね」

「あっそれは良いですわ。サラお願いしますわ」 「うん。任せてよ」

生真面目に頷いていた。



━━翌朝……、誰かの視線を感じたレイラが目を覚ますと。花の香りに包まれてる毎に違和感を覚えた。

『あら以外と早いお目覚めね?』

頭に直接語りかけるような思念に。ハッとしていた。傍らで寝ていたフィルも異変を察知して目覚める。

『やっぱりレシア姉の血筋よね~。ピクリとも反応無いわ~』

呆れたように呟き、可愛らしく寝ているリルムの頬をつついて……、

「うん~」

クスクス笑っていた。

「貴女が、案内人ですね 」

予測の天才は、昨夜リルムの説明から。何者かが 出迎えに来ると考えていた。

『あら~。貴女は驚かないのね』

面白そうな顔をして、反応を伺うような眼差しを向けていた。

「私達には魔神程度、驚く暇はありませんから」キッパリと面と向かい言われたから。アングリ口を開けて、惚けていた。 『なになに。貴女凄いわね!。ベルびっくりしちゃった♪、貴女お名前は?、わたしはベテルローズ。皆からベルと呼ばれてるから、貴女達もそう呼んでね』

あまりに気安い魔神の態度に。レイラは毒気を抜かれた。

「私はレイラ・バレス」 「フィ、フィル・マノイです」

やや緊張をしたフィルとは違い。目にそよとも緊張が無いレイラの胆力を。ベテルローズは好ましく思った。

『二人は、アレイク王国の出よね?』

急に思い悩むような顔をしたから。二人は、ん?と顔を見合う、

「そうだが……」『なら知ってるかな~。ラウ兄や、ダン兄、他のみんながどうなったか?』

不安そうでいて、何かを期待すよ眼差しを受けて、二人はとても驚いた。



なかなか起きないリルムを待つ間。二人が知り得る限りの12使徒のその後を語る。




聖人アレイの高弟の三人、後の世で三人を称えた『オールラウンダー』の称号が作られた。その1人ラウ・ガイロンは、聖人アレイの実子。クラウベリアを王と迎えるため。オール・セラ、ダン・カレンと供に。アレイク王国の基礎を築き。現在もアレイク王国を支える忠臣である。



謎多き美麗な剣士サンレイ・カリアもアレイク王国の基礎を支えたが、元来放蕩な性格で、世界中を冒険し。沢山の逸話を残している。その最中四体の魔神に捕らわれた二人の女神を救い。女神の夫に選ばれている。

『へえ~サンレイあのまま女神の夫になったんだね~。スタンレイが聞いたら目を剥くかも』

意味ありげな呟きに眉をしかめるレイラに。

『気にしないでこっちの話だから』

「そう……、クラウベリア王の母であるルリナ様。アレク様の弟子で聖女セレナ様は、アレイ教を作り。大司教として、沢山の弟子を育てたそうです」

『セレナちゃんが……、それで……、皆には子孫て要るのかな?』

最初は楽しげだったベテルローズも。少しずつ悲しげな顔をするようになっていた。

「ラウ様の子孫。フィアは私達の友人ですよ」

「確か、皆さんはダレス家の双子の姉妹と、友人でしたよね?」

「ええなかなか面白い方々です」

二人がそれぞれ自分たちが知る友人。知人の話を始めた。

『サンレイの子孫もいるんだ……』

ベテルローズのホッとした顔に。何だか二人まで少しだけホッとした。

「あっそうだレイラ、シンクさんは、ナタクさんの親戚になるのよね」

あって顔をして、そうだったわねと相槌を打った。

『ナタク兄の親戚?』

フィルの言葉に。俄然興味を抱いたベテルローズは。

「その話もう少し詳しく聞かせて……」

「貴女言葉が……」

「あっうん、喋れるけど。仲間の1人は言葉が不自由なの。だから普段は、念話を使うのよ」照れ臭そうに説明してくれた。

二人は目配せして、見た目妖艶な魔神ベテルローズ。だけど甘えん坊で可愛らしい性格な彼女を。僅かな間に気に入っていた、




そして……昨夜の話を聞かせる内に、徐々に目を輝かせ始めたベルは、

「嘘!、あの英雄王が、ナタク兄の……、知らなかった。でもでもそれって凄い凄い!『ブルワーズが聞いたら。ラウ兄の子孫フィアに会いたがるし。ロノバリエなんて、ダン兄に可愛がられてから、喜ぶな~。貴女達優しいね♪。私みたく魔神になったら。怖がっても可笑しく無いのにさ』

よほど嬉しかったのか、念話で、気持ちが駄々漏れである。何だか親しみを感じていた。「私達の友人には、翼のある元赤の民も居ますからね」

『あはっ~翼人ね~。私を友達と言ってくれたリマも翼人なんだけど。貴女達となら彼女も友達になりたがるわよ♪』

今度は二人が驚く番である。

「そう言えば、レノンのファーストネームがハウチューデンて言うのよね~」

今度は聞いたことない男性の名前が出た。

『何でも魔王が呼んだ技術者なんだけど。変わった二人なの。私達を見ても普通に接してくれるから。私達はあの二人が好きなのよね~』

「あっあの~ベル?、その二人は何処に住んでるんですか」

やや興味を抱き、訪ねると。

『帝都の郊外に工房を開いてるわ。何でも新しい砲と呼ばれる。武器の製作を頼まれてらしいわよ』

「そうですか、砲はメグの得意分野一度リマさんと、レノンさんに会ってみたいですね」

『リマなら喜ぶよ。レノンは嫌がるかもクスクス』

楽しげに笑いだしたベルにつられて、二人まで笑顔になっていた。

「おはよう……」

目をしばしばさせながら。まだ眠そうなリルムを見て、何時もと違うおっとりした反応に。目をぱちくりしたフィルだった。




━━二人が、リルムの着替えを手伝い。支度が整った三人を。ベテルローズは、花を入り口に。自分の花畑まで異空間を繋ぎ、移動する力を使った。それは本当に一瞬の事だった。『私の力は、花を出入り口にして、あらゆる場に移動出来るの♪』

自慢に言うだけあり。凄まじい能力である。

「ここは……」疑問を口にした瞬間。

「リルム良く来てくれたね」

優しい男性の声が、三人を労る。

『あっ、セラ兄~ベルちゃ~んと仕事したよ。誉めて誉めて♪』

「うん、ベルご苦労様♪」

妖艶な美女である花の魔神ベテルローズが、小さな女の子のように。柔和で、優しい笑顔が魅力的な青年に頭を撫でられ。嬉しそうにしてる姿は異常だった。

「君達は、とても強い力を秘めているね」

オール・セラはゆっくり眼差しを三人に向けた瞬間。底知れぬ力を秘めた。不思議な幾何学的文字が左目に浮かんでいた。

「あっ……その目は……」驚きの声を上げていた。

「ああ~これかい?。真実を解くものと呼ばれる。創造神の祝福らしい」

初めて聞く。祝福の話である。

「もしかして……、初めて見るのかい?」

そう訪ねられ。思わず素直に頷く三人。セラは少し考えながら。

「確かに、瞳に現れた事例は少ないが、神々の祝福を字と言う形で現れることは珍しくないようだよ」

まるで教師のように説明を始めたセラ。また始まったかとベテルローズは呆れた顔をしていた。

『セラ兄!、白の女王に知られる前に手早く話して』

「あっ、そうだったね」 気まず気に笑うセラは、わざとらしく咳払い等して、

「レシア、君から話すんだ」『クス。しょうがないわね♪』

突然聞こえた。初めて聞く女性の声に、三人はハッとして身構え。辺りを伺う。

『あら驚かせてごめんなさいね。私はレシア、セラの妻で……、貴女の祖母に当たるわ』

キョロキョロしてる三人に。改めて咳払いしたセラは、懐から美しい贈呈の一冊の小さな本を取り出した。

「これが、今の妻の姿だ……」

言葉を失って、ただ顔を見合わせる三人は、シレーヌの言葉を思い出していた。

『リルム、オーラル君が持ってる。赤の書である兄が伝えてきたのよ。貴女の婚約者であるシンクが気付く可能性が高いと。あまり信じていなかったんだけど……、うちの人とそうなったら貴女と直接会うこと決めてたの』

柔らかい口調。だけどそれは嬉しいと言う感情が言葉の端々に織り込められていた。優しいものだった。

『私は、百年以上……本に封じられ。母としてバレンシアに触れることも。頭を撫でてあげることも出来なかったわ。でも孫と話すことができて、触れることは出来ないけど……、またセラと一緒にいられて、幸せを感じてる。でも本当はみんなに触れたいと。今は願っています』

素直でいて、切望する気持ち。それ以上に。皆を心配してる気持ちが込められたレシアの言葉に。 『レシア様……、おでおで』

『あらロノバリエ、あんたこっそり覗き見?、趣味悪いわよ』

呆れたように言われて、近くにあった岩がビクリと震えた。

「驚かせてすまない。あの岩人姿は、ロノバリエ。レシアを慕ってた。優しい青年だよ」

セラが説明した途端。岩が体を起き上がらせた。巨大な岩が人形になったから驚いた。さらにボロボロ小石の涙を流したから。流石に驚き過ぎて目を丸くしていたフィル、パクパク言葉が見つからないレイラ。しかしリルムは違った。つかつかいきなり岩男、ロノバリエに近付き、バンって音が聞こえてきて来そうな勢いで、ロノバリエの眼前に立ったかと思えば。

「そこの貴方、男がメソメソしない!」

ピシャリと凄まじい迫力で言われてしまい。ロノバリエはフリーズ。

「聞いてまして?、仮にも我が父と六将を相手に、凄まじい力を見せた魔神なのでしょう。分かったら返事なさい!」

ピンと張り詰めた空気を纏う。美し過ぎる氷の女神リルム様の降臨を前に、あらゆる敵を、全てを破壊する魔神と呼ばれたロノバリエは戦いて、背筋を伸ばして直立不動の姿勢を取って。

『はっはい~、ごっ、ごめんなさい』

慌ててペコペコ頭を下げていた。

『うわ~うわ~うわ~、今の今のスッゴく懐かしいよセラ兄。ねっレシア姉ちゃん』

急にはしゃぎ出したベルの華やいだ声音に。やや目くじらを立てたリルム。ビクリ首を引っ込め。慌てたようにセラの背に隠れた。

「ロノバリエって言ったわね。貴方はそこに座り、大人しくしてるのよ良いわね?」コクコク一生懸命頷いていたが、何故かロノバリエは嬉しそうに命令を受け入れていた。

「プッ………クッククク」

急に。体を九の時に折り曲げ。セラは、目の端に涙を浮かべ大爆笑するではないか、

『こら!、セラ笑わない』

白い小さな本が、激しく明滅して、何となく慌ててるような気がした。 「ごめん……。しみじみ何だか懐かしくなってね……」

どこか遠くを見る眼差しは、切な気である。

「もう宜しくて?。貴方方が大変なのは分かりましたわ、そんな貴方が今の私達に関わるのは、シンクに関してるからですわね?」

まさに一刀両断。氷の女神すら恐々裸足で逃げ出しそうな迫力に。自分たちの気持ちを全面に出してたセラは、口をつぐみ苦笑していた。

「君も多くの物を背負ってるのだね……、さて感傷に浸るのはやめよう。君達と会談したいのは、僕達の狙いと本当の敵について、知ってもらいたかったからだ」

「本当の敵?」

そして語る。世界を欺き。語り、唆し。貶めた女の物語を……、




三人は、昨日シレーヌから聞いてたこともあり。それほど驚きはなかった。四天と呼ばれる。元12使徒の四人。さらには赤の王弟レイアス。世界を揺るがす事件の裏にいたのが……、

「妻レシア、義兄アレクの叔母であり。三代白の民の女王シルフィール……、彼女こそ。全ての元凶である」驚きを隠せず。血の気を失うフィル、予測の天才は既に気付いていたのだろうか?。グッと表情を固くした。

「そう。やぱりね。白の民が、私を海中都市の管理人にさせようとしたのは、白の女王の企みだった可能性がありますわね」

生まれついての女王であるリルムは、二人とは違う思いを抱く。

「大賢者セラ殿。貴方の懸念は理解したわ、それからレシアさん、アレク様を救う為に。オーラル伯父様が手を回した理由もね……」

ゾクリ……、オール・セラの背に。寒気と恐怖が走り。思わず感嘆の声を洩らした。

「レイラ、貴女ならオーラル伯父様が、何処まで予測してるか読めるはずよ。恐らくシンクは最悪の事態を想定しているわ。白の女王が間隙を縫って、アレイ学園を襲うとね……」

「なんと……、そのようなこと白の女王が考えてるというのか?」

底知れぬ冷たい輝きを内に秘めた瞳に。魔神達は魅入られていた……、

だから全てを見詰め。支配し。踏みつける者を人々は王と崇める。

「あら大賢者オール・セラともあろう者が、そんなことにも気付いてないの?」

意外ねって、感じで首を傾げていた。

「リルム……、先程海中都市の管理者の塔は破壊したと言ったね?」

ようやく自分を取り戻したレイラは、リルムの話と。今までの情報から違和感を覚えていた。

「ええそうよ。それがどうしたの?」「リルム分かったよ……、シンクが、オーラル陛下が抱いた最悪の事態が何か」

顔色は血の気を失い。紙のように真っ白くなり、何故私達が『特別教室』の生徒に選ばれたか理解したのだ。

「オーラル陛下は、白の女王が擬似神討伐の間隙を縫って、アレイク王国を襲うと考えている」

「まさか……白の女王がアレイク王国を?」

疑問を口にしたセラをチラリ伺いつつ。リルムに先を促され1つ頷き。

「白の女王の狙いは分からないわ。ただ狙いは貴女だリルム。いや違うわね貴女と。ミレーヌ様ね」

急激に顔を強張らせたリルムは。強い眼差しをレイラに向けていた。何と無くだが、レイラの予測が当たってる予感がしたのだ。「では、私が西大陸に来たのを……」

「ああ、好機と見なしてるわね」

ニヤリ不敵に笑うレイラに。あらあら楽しそうと共犯めいた。底知れぬ笑みを浮かべたリルムは、楽しげに笑いあった。

「ふっ、二人とも笑顔が怖いぞ」

ガタガタ身を震わせたフィルに。コクコク何故かロノバリエ、ベテルローズが同意した。

「じゃあ~お父様もそれを考えて……、確か魔神は四体いたわね?」

セラに目を向ける。最早言葉が浮かばす。諦めて素直に同意していた。

『なんか、凄い孫ね……』

呆れたような口調で、白亜の本は明滅していた。まるで溜め息のように。




エピローグ



魔王軍の魔導兵が、平野を駆け巡る。全身鋼に覆われた刃の魔神スタンレイは、近くにある水面をちらり目を向けた。

「そろそろ殲滅して、もどるぞブルワーズ」『ああ~そうするか』

水溜まりがブワリ。膨れ上がり。人形を保ち。格好つけた全身水色の男になって笑っていた。

「行くぞ!」

寡黙な戦士スタンレイとブルワーズは、凄まじい魔力を秘めた魔神である。魔導兵の一個師団と言えど敵ではない。




勇猛果敢に迫る魔導兵は四体一組の小隊で、波状攻撃を展開してきた。近隣の村から魔神を引き離したのは、四体の魔神から。村を奪回するつもりなのであろう……。




━━禁忌の地域には、村、町合わせ8つを支配下に置いていた。人間を無理に従わせてはいないが、何故か人間はこの地に止まり。自分たちの支配を受け入れた。元々この地を納めていたのは商人である。



領主となった元商人は、魔王に内緒で、高い税を村人から要求し始めるのに、時間はかからなかった……、半年とせず村人の生活は、厳しいもとなった。



だが魔神は違った。高い税を求めなかった。僅かな食料や酒を献上すれば、さほど無理を言わないとわかり。元の生活よりも今の生活を選んだ人間が実は多いのである。そのせいか魔神が支配した地域の人間は、魔王軍を嫌う傾向にあった。




━━戦場側の村。魔王軍が魔神と戦ってる隙に、領主に泣き付かれ仕方なく指揮官は、数名の精鋭を連れ。説得に来たのだ。

「さあ!、我々と共に行くのだ」

領主は元商人であり。有力貴族に取り入り。金を積んで、貴族の地位を買った成金貴族であった。肉を震わせ村人に猫なで声でがなる。付いてきて当たり前だと考えてるのだろうな。

「今こそ魔神の支配から逃れ。我が新たな地で畑を耕し。家を立て、安全な生活をするのだ」

「ふざけるな!、強欲な商人が、何が新しい生活だ」

「そうよそうよ。どうせ新しい家や畑があるとか言って!、高い税を取るつもりでしょ」

集まった村人の言葉に。まともに顔色を変えて、どす黒く変色させていた。

「煩い!、良民の分際で、領主に口答えするのか」やはりか……。いくら魔王様が素晴らしい方でも、腐った人間はいる。指揮官は溜め息を吐いた。ならば領主を捕らえよと命じようと口を開いた瞬間、領民は信じられぬことを言った。

「我々は魔神の民だ!、我々の土地から出て行け」

年老いた男の言葉に勇気づけられ。

「帰れ!、我々の村から出てけ」

バキン、領主の足元に拳大の石が投げつけられて、

「ヒッ……」

領主は村人の剣幕に。顔を歪め。恐怖のあまり体制を崩した。

「なっ何をする!、ええ~いこんな村焼き払ってしまえ」

あまりな言葉を放つ領主に。村人の顔色が変わった。しかし魔王軍の将兵は動かず。呆れた顔をして冷たく見下ろしていた。「おっおい!、何で動かぬお前達は我の命に従うよう、魔王様に言われておるのだろ」

ジロリと冷たい眼差しで。領主を睨み付け黙らせる。

「貴殿には、既に領主の権限はない」

指揮官の信じられぬ言葉を賜り。領主は顔面蒼白になっていた。

「そもそも良民に捨てられた領主には、極刑を与えられる。陛下よりそう聞いてたはずだ」

パクパクあまりのことに言葉すら出なかった。

「魔王様の名代として、法命を伝える。貴公は法律を蔑ろにして、民を襲う命を下した、それは領主の地位にあるまじき行いである。よって領主の地位を剥奪する。皆直ちにこの者を捕らえよ」

「ハッ」

「おっ、お待ちください」何かいい募る元領主は、村人の前で連行される様子に。流石に唖然とした。

「さて……お前達は、帝国の民でありながら、帝国を認めず魔神の民と言ったな?」

「あっ……いや」

先程までの勢いを失い。やや緊張は隠せない、 「今日は見逃すが、我が帝国に他の民は認めない。その意味よく考えよ」 それだけ捨て置くと。指揮官と兵数名は引き上げていった。



帝国の法律では、領内での独立を許してはいない。いかな理由があろうと……、村人の言葉は、反乱を意味していたのだ。指揮官は引き上げる最中。深い歪な笑みを浮かべていた。

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