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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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閑話三部族と偽りの盟約

プロローグ、






━━15年前。




クラブラ族のラタノーラは、幼き日に。月の女神ラトアの祝福を与えられ。多感な年頃を。不安と悲しみの中で暮らしていた。



━━普通の人間には判らない苦しみ……。



クラブラ族の蛇化には、他のブサノア、ダラノフには無い。危険を孕んでいたからだ。それは……完全なる変化をしてしまうと……。人間に戻れなくなる可能性が高いからなのだが……、その為クラブラ族は、半身だけ蛇に変化させる習わしであった。



━━だが……、


不幸か幸いか解らぬが、幼き日に。祝福を与えられたラタノーラは、部分変化が出来るまでに業を極めた。クラブラ族有数の天才だったのだ……。しかし……その才能は、部族内でこそ認められるが、外の世界では、恐れ。忌み嫌われる力であると知ることになった……、



同じ月の女神ラトアの祝福を受けてる。ダラノフ族のカナタ、ブサノア族のジブロサとは、幼なじみで、少なくともラタノーラの不安を理解してくれていた。



しかし……、アブスト族のサザノーラは違う。炎の神フレイムを崇め。自分が思うまま。己が信じた道を歩む者……。腕力馬鹿が多く。汗臭いむさい男たちばかりのアブスト族だと。ラタノーラは毛嫌いしていた。




数年後……。




サザノーラと初めて会ったのが、『勇者の儀』の時である……。



毎年━━、



梅雨入りから。梅雨明けまでの数日間のみ。『勇者の儀』が行われていた。それには理由もある。梅雨明けから。魔獣の多くは、恋の季節を迎える。それまでの短い期間。魔獣は体力を蓄えるまで、大人くなるからだと言われていた。




『勇者の儀』には、平原の入り口を守る四部族が、一堂に会する場であり。儀式を受ける若い戦士の中に。まだ少年のサザノーラが選ばれ。ラタノーラは酷く驚いたが、

どうせ大したことはあるまいと。小馬鹿にしていた。




それが、間違いだったと思い知ることになった……、まだ子供のサザノーラが、勇者に選ばれたのだ。ぐうの音の出ない完璧な印。魔獣の群れを一人で、狩り尽くし。持ち帰ったのだ。あまりの出来事に……、一堂に会した。戦士の部族長の四人は絶句した。同じく茫然自失となったのが、ラタノーラ、カナタ、ブサノアの三人。サザノーラとは同年代であり。同じ戦士の部族。幼なじみと言ってよい間柄だが……、炎の神フレイムを崇める部族等。信用は出来ないと。幼少の頃から聞かされ続けていた。だから忌々しい気持ちを抱いた。



今も。それは変わらない。信用はしていないが……、同盟者として、愛する伴侶として、一応……は、敬意出来る存在。それだけが偽りの四部族同盟の真実であった。




ラタノーラの周囲に。裸体を惜しげもなく晒す。美しい女達が集まっていた。

「ラタノーラ様。スタンビートが始まりました。昼過ぎに。ケンタウルス族の都ザウスに到着するでしょう」

「そう……ブサノア、カナタに伝えな。ついでにサザノーラにもね」

「はい!」

クラブラ族の女達は、あらゆる場所に潜伏していた。その為特別な熱を用いた伝達方法で、仲間に簡単な命令や報告が可能なのである。

ダラノフ(狼)は遠吠え。

ジブロサ(蝙蝠)は音波を用いてと。同じような能力があった。




最初に。能力を。見抜かれていたのが、ラタノーラである。まさか……と、驚愕した。

あの日ラタノーラ達三人は、後の英雄王オーラル・ハウチューデン。三人の英雄と会う。栄誉が与えられた。

『君たち。面白い能力を持っているね?』

一目で、オーラル様に見抜かれ……、さっと血の気の引いたカナタ、驚愕して言葉を失ったブサノア。視線に身を固くしたラタノーラの三人に。他の英雄達からも……、

『ほうほう成る程な~。お嬢ちゃんは、苦労したようだね』

『お前は……、ラグラドと同じ?。嫌違うな……』

『面白いな』

心が凍るかと思われたが、何故かサザノーラは、何も言わなかった。それが会見が終わった直後━━。



『やはりな……』

敢えて、ラタノーラだけに囁いていた。さっと青ざめた顔をじっくり見られ。もう……言い逃れは出来ない。腹をくくり。サザノーラを暗殺すること決めた。




夜陰に紛れ━━。アブスト族の街に入り込んだラタノーラは、半身を変化させると。人間を熱で見ることが出来た。だから自信があったのだ……、

喩え勇者と呼ばれるようになろうと。獣人化すれば殺せると……、今なら分かる。安易だったと。




サザノーラの住まう郊外の屋敷━━。

黒塗りのナイフを抜いて、寝息を立てるサザノーラにナイフを━━。

「ふむ……。遅かったなラタノーラ」

万力で腕を掴まれたように。ピタリと━━。動きが止まっていた。

「うぐっ!、何で」

サザノーラに。強引に引き寄せられた瞬間。蛇眼を使って、支配しようと試みた。

「ほう~。面白い能力だ、だが……、精神力が勝る者には効かないな」

「あっ……」身をすくませていた。母には散々言われていたのに……、悔しさのあまり臍を噛んでいた。強引にベッドに引きずり込まれ。恐怖と羞恥に戸惑い涙した。

「お前は美しい……、何故お前達は、その姿を隠すか理解出来ぬ」

「なっ……、私が美しいだと」

困惑する心……、驚きのあまりサザノーラの瞳を覗き込み。真剣な目で見上げていた。

「本当に……、私が美しいと思うのか?」

「ああ~我の言葉に。いっぺんの曇りもない」

再び涙が溢れた……。今度の涙は、サザノーラが真実を言ってるのが分かったからだ。だから……不覚にも。女としての喜びを感じた。いつの間にか身体から力が抜け。コトリ……、手からナイフが滑り落ちていた。

「ラタノーラ……、我はお前が欲しい」

もはや……拒絶はなかった。ラタノーラ自身もそれを願っていたから。

「私を……」

「ラタノーラ……、我の子を産んでくれ」

「ああ……」

歓喜のあまり。自分からサザノーラを抱き締めていた。

「本当に……、本当に、私で良いのか?」

むつみごとの戯言だろうと。ラタノーラには大切なことである。

「お前は美しい。美しい女に。我が子を産んで欲しいと思うのは、自然なことだ。だから我が子を産んでくれラタノーラ」

「はい……」

喜びサザノーラの愛を受け入れた。それが喩え一夜のむつみごとだろうと……。最早後悔しないだろう。強い決意を抱いた。二人は結ばれ……、ラタノーラは翌年1人娘を産んでいる。未婚の母と随分騒ぎになったが、クラブラ族の女は、時折そうした事例もあり。問題なく現在に至る。




エピローグ




二年後……、



サザノーラは、1人の男子を養子に迎えていた。内縁の妻ラタノーラが産んだ。二人の子供であった。

「御父様!」

利発そうな少年が、パタパタ走り。大好きな父に抱き着いていた。

「ザノーラどうした?」 ニヤリ不敵に笑いながら。我が子を抱き上げた刹那。

『ミルターラねえ様が、お母様の言葉を伝えて来たの~。作戦遂行したって』

「そうか……」

柔らかな。青みかかった髪を優しく撫でると。ザノーラはくすぐったそうに。クスクス目を細めた。我が子の目を見つめながら。

「ザノーラ。姉に伝えよ。父が愛してると」

「うん!」

サザノーラの抱いた我が子は、身体の一部を蛇に変えて。遠く離れた双子の姉に。父の言葉を報せた。

「御父様~。早くお母様と一緒に暮らせたら良いね」

「ああ~。その為にもザノーラ。お前は強くならねばならぬぞ」

「はい!。御父様みたく。僕は、強い男になるね」

目をキラキラさせる我が子を。頭をガシガシ撫でてやると。きゃきゃと喜んだ。

「シンク皇子……、そなたならこの試練いかとする?」遠く目を細め見る先。あの土竜馬車の停留所で見た。凄まじい力量を思い出さずはいられず。魂を熱くした。

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