竜姫とシンク皇子の魔獣退治ですかセカンズ?。
遂にケンタウルスの都ザウスに。魔獣暴走が迫り。その決着を見せるとき、覇王とならんと企むサザノーラをも驚かせた結末を迎える。
プロローグ。
━━北大陸。
平原━━。
ケンタウルスの都ザウス。
昨日━━。
モンスターの暴走が起こった……。
不運なことに……。戦士がいない合間に事件は起こり。多くの犠牲者が出た。
そんなとき……、
若き英雄と呼ばれる。シンク・ハウチューデン、祖父リブラ・ハウチューデン、自国の重鎮の子息セナ・ホウリの三人は、ケンタウルスの都ザウスに到着した。
━━ケンタウルス都は、魔獣の暴走に襲われて、酷い惨状となっていた。見かねたシンクは、手伝いを申し出て、見事多くのケンタウルス族を助けた。民は若き英雄と呼ばれしシンクの優しさに……。惹かれていた……。
一夜明けて……、
魔獣の脅威を重く見たシンク皇子は、ケンタウルス族の王ラグ・ジュアリーに。ある提案をしていた━━。
だがその頃……、
次期宰相の座をを狙う。アブスト族のサザノーラは、密かに。同盟を結ぶ戦士の部族。ダラノフ、クラブラ、ジブロサ三部族の秘密の力を用いて……、ある計略を打ち立てていた。それこそが魔獣の暴走。誰にも気付かれず。再び魔の手が忍び寄ろうとしていた。
そうとは知らないシンクだが……、サザノーラは、白銀竜の能力を知らなかった……。
『シンク!。魔獣が沢山集まってる場所を見付けたよ!』
竜としては、まだ子供のシンクレアだが、魔物、魔獣の存在を感知する能力が開花していた。だから再びケンタウルスの都が襲われる危険を考え。シンク達竜騎士だけが偵察に出たのだ。
「シンクレアご苦労様。みんなに場所を知らせるから。だいたいの場所教えてね」
『うん任せて!、えとね~……。ここから南西に15キロにいるけど。かなりのスピードで北上してるよ』
『北上……って、爺ちゃん。この辺りの地理分かる?』
『どうしたシンク?、多少なら分かるが……』
シンクの魔法で、三人を繋いでいるから。会話が可能だ。
『シンクレアが魔獣の存在を察知した。だいたいの地理を把握したくてね』
『ほう……シンクレアは、探知の竜魔法覚えたのか』
『うん夏にね』『なるほどな……、それで場所は』
祖父に聞かれるまま、魔獣の現在地と向かってる方向を伝えるや、険しい表情になる。
『いかんな……、このままでは再びザウスが襲われる』
唸るように険しい声音。苦汁が滲む。
『爺ちゃん。今の話からすると魔獣が来るのは、ザウスの裏側だったよね?』
シンクに言われてハッとした。
『確かに言われてみれば……、』
『確かザウスの裏側は……』
小声で呟くが、直ぐに孫の狙いに気が付いた。水源の川に行く道は塞げるな……、すると存外悪くないが……。まだピースが足りない。
『爺ちゃん忘れてないかな?。セナさんなら土竜を呼べるんだよ』
『おお!そうだった。なら裏を塞ぎ、魔獣一点に集めたら……、袋の鼠にして、一網打尽に出来る策が使えるな!。よしよし。シンク皆にこう伝えるのだ━━』
祖父の悪巧みに。孫は楽しげに笑っていた。
━━そうとは知らない。クラブラ族の族長ラタノーラは、予定通り魔獣を操りながら。部下の報告に眉をひそめていた。
「何故ケンタウルスの戦士が、魔獣討伐に出ていない?」
「わっわかりませんが、竜騎士は確かに西と。北に。飛んで行っておりますが……」
今頃ジブロサ族が行った。魔獣襲撃事件の一報を受けて、アブスト族の村から。竜騎士団に助けを求めた筈である。西に竜騎士が向かうのは分かるが……、北とは?。意味が分からず困惑していた。
「まあいい。既に魔獣暴走は止まらぬ。目的の場所まで、ルカリ、ファン先導は任せたわよ?」
「はい!。お任せ下さいお姉様」
「お任せを」
妖艶なラタノーラに似た風貌の従姉妹ルカリ。その手下のファンは、自信満々に頷いていた。
━━その頃。シンクから報せを受けたレダは、アブスト族の村にいて、魔獣の姿がなく途方に暮れていた。
『まことザウスに!?』
『うん。それでね……』
皇子は、リブラ将軍発案の奇策を楽しげに話した。思わず感嘆と同時に。呆れていた。
『分かりました。そちらはお任せしても?』
『うん任せて、それよりもレダ卿気を付けて、今回の事件は、人為的な感じがするから』
『……はっ、シンク様もお気をつけを』
通信が切れ。
「流石……若き英雄と呼ばれるシンク様だ。此方の様子をまるで、見てるようだな」
感心していた。村の被害を調査したが、村外れの小屋と家畜が、魔獣と思われる物に破壊され。食い殺された程度。村人に怪我は無かったが……、アブスト族の戦士が来るまで、恐怖に震える村人を残していくわけにはいかない……。シンク様の懸念通り。人為的な作為を感じずにはいられない。
……祖父と孫の予想通り……。レダの報告は、竜騎士達をケンタウルスの都から。分断する策略であるようだ。既にラグ王には、此度の策を聞かせていた。念のため民には、城に避難してもらうと聞いていた。まだ予想の限りと断っているが、最悪城の裏手にある。水源が一時失われる可能性。ただしセナが土竜騎士であると伝えるや。シンクの狙いに気付き愉しげな笑い声が伝わってきた。
『なるほどシンク殿』
『ラグ王には存分に戦って頂きますが……、此方の動向が探られてる可能性があり。僕は直ぐに戻ることが出来ません、ですがそろそろ祖父と。セナがそちらに到着する頃です。ラグ王……』
シンク皇子の躊躇う声で、此方を気遣っての事だと察した。
『大丈夫だシンク殿。そなたの期待に答えて見せようぞ』
『そうではありませんラグ王。僕は爺ちゃんが、ラグ王達戦士が活躍する場を奪うかが心配で……』
『なんと……』
思わず眼を剥いて吹き出していた。
『アハハハハハハ!。流石はシンク皇子。これは我等も負けてはいられませんな』
愉しげに答えた豪放伯楽な返答こそ。シンクの苦しい胸の内を理解してくれての優しさだ。
『ラグ王、御武運を』
『うむ!任せよ』
ラグ王との会話を終えて、三頭の竜と平原の北で、寝そべるシンクを不安そうなクルミは。天気の良い空を眺めていた。
『良いのか……そなたが動かなくとも?』
竜王プライムが、威厳ある眼差しを。気遣わしそうに細めていた。
「構わないよプライム。だって人為的な物で、この国の者が関与していたら。僕やクルミが率先して関わるのは、あまり良くない気がしたからさ」
ぱちくり眼をしばたいてたクルミは、アッて顔をした。竜王は成る程と頷く。
『ねぇ~シンク。二人は大丈夫かな?』
円らな赤い瞳をクリクリッと丸くして、心配そうにシンクの胸に鼻を付けた。
「大丈夫だよ。爺ちゃんとセナさんならね」
『ふう~ん。シンクがそう言うなら大丈夫だね♪』
久しぶりに。大好きなシンクに構ってもらえて、シンクレアは終始ご機嫌である。これには竜王プライムも苦笑を浮かべた。
━━時間は少し戻る。シンクの狙いに気が付いたリブラは、直ぐ様。セナに岩山の影に土竜を呼ばせて。穴を掘らせていた。
「えっ……本当に地下道が?」右腕に着けた赤い手甲に話し掛ける。セナは土竜を召喚するのが初めてで……、そんなこと可能なことも知らなかったから。半信半疑であった。リブラに言われるまま。リブラが描いた魔方陣を使って。北ターミナルにいる。相棒に呼び掛けるや。直ぐに返事か来てビックリ。辿々しくも見事相棒のクレタを召喚していた。
「クレタ大変だろうが、この下に穴を開けてほしい」
「きゅ~い」
任せてよと黒毛の土竜はあっという間に。硬い岩盤を砕きながら大人が屈んで通り抜けれる。下り道を堀抜くと。セナに地下道を見付けたと思念が送られてきた。
「リブラ様……何故。この地に洞窟があると。知ってたのですか?」セナのもっともな疑問に。リブラは曖昧に笑うしかない。先程聞いた懐かしい声に導かれたとは……、そうは語れない。古き家族との約束である。「まあ~俺も元は土竜騎士だぜ?。地層を見る観察眼は、鍛えられてたのさ」
とシニカルに笑い。誤魔化すように言っていた。「はっはあ~成る程」
「それよりもセナ。お前さんはもっと相棒を信じろよな」
「あっ、はい肝に命じます」
リブラ様がいなければ、相棒の土竜クレタを召喚が可能だとは、今でも知らなかったたろうし。まだまだリブラ様には遠く及ばなくとも。シンク皇子様の期待には答えたい。何より……ミネラさんに良い報告をしたいと。男の顔を覗かせたセナに。ガシガシ頭を掻きながら。リブラは成長してゆくセナの姿が、妙に心地よく思えた。
━━セナの相棒クレタの掘った穴から。地下に降りた二人は、クレタに乗って、ケンタウルスの都ザウスに向かって、移動を開始した。
━━同時刻……。
魔獣の群れが凄まじい勢いで、都に迫ってると一報が入った。ケンタウルスのラグ王は、若き英雄の見識の高さと。深謀に舌を巻いていた。
「聞いての通りです。それでも参りますか?」
ラグ王の隣で。やや厳しい表情を浮かべていたララ大司教は。シンク皇子の婚約者を伴い。広場に現れたから。驚き以上に感心すら抱いた。
「無論ですわラグ王、怪我人が出たら直ぐにも手当てが必要です!」芯の強さを醸し出すような凛とした佇まい。ララ大司教の姿に。感嘆の面持ちになっていた。
「ローザさん準備の方は?」
「はいララ様。必要な器具は先程仕上がりました」
豊かな胸を恥ずかしそうに隠しながら。ララに頼まれた大小様々な器具を見せて、大事そうに抱えていた。
「ありがとうローザ、前戦は危険です。貴女は城に戻ってなさい」
急な事で、ララはろくな治療器具をもって来ていなかった。だからローザはララの為に。僅か半日で、様々な器具を一から作って見せたのだ。
「大丈夫ですララ様。私もクルミと遜色ない技量がありますから!」そう宣言して、一振りの剣を取り出した瞬間。周りから感嘆の声が漏れていた。かなりの業物と一目で分かる品である。
「あら……、剣まで作ってたのね」
準備の良さに呆れてるララ。気遣わしい眼差しのラグ王と義祖母になるララのために。自らの力量を示す必要を感じた。
「ラグ王、足手まといにはなりません。ララ様は私がお守り致します!」そう宣言するや広場にある。鎧を着せた打ち込み人形。デクの前に一瞬で駆け抜け。無造作に剣の持ち手を見せず抜いていた。
「ほ~う……、言うだけありますなラグ王」
かなりの力量と分かる。
「流石シンク皇子様が選んだ女性ですな。それにこれ程の剣の腕があれば、ララ様をお守り出来ましょうぞ!」
ダノ戦士長のお褒めに。顔を赤くしたローザは、「あっありがとう。ただ後ろの木偶まで切ったのは、やり過ぎました。ごめんなさい」
照れ笑いしたローザに謝られ……、ん?ダノ戦士長とラグ王が訝しげに見あった瞬間━━━━ドサッドサドサ。鈍い音がして、二人がそちらを見れば、言葉を失っていた……。まさかと言う気持ちであった。打ち込み訓練用に特別固く丈夫に作られたデクが。バラバラに斬られていたからだ。
「おいおい右のデクは、玉砂利が詰めてあったよな……」
「あっああ……、壊れないよう砂と樹液をまぜて固めてた。特別製だ」どよめく戦士達の気持ちがよく分かる。同じ事がこの中で、何人出来ようか?。ラグ王は思わず唸っていた。女性にしとくのは勿体ないと。
「これはまた凄まじいなダノよ」
「そうですな~これはうかうかしてると。獲物を取られかねませんな~」愉しげに笑われてしまい。ローザはますます赤くなっていたが、ララは頼もしい孫の婚約者を好ましく思い。目を細めてみていた。
「これ程の剣士と鞍を並べるのだ。ケンタウルスの戦士達よ!。我らの力。存分に見てもらおうぞ!」
『おう!』
気合いも入った。
━━リブラの策はこうだ。ザウスの南には都の水源で、川から水を引いてる貯水地になっていた。魔獣が来てるのが、深い森を隔てた岩山をくり貫いた道で、ここを魔獣が抜けて来たら。3日前の非ではない被害が出た可能性があった。しかし……。その道は岩山が崩落しており存在しないとしたら?。袋小路となった貯水地の岩山の上に。ケンタウルスの戦士が弓を手に身構えていた。指揮をとるのが戦士長ダノ・バルタスであった。
ケンタウルスの王ラグ・ジュアリーは、貯水以外に流れ込む魔獣の討伐に当たる。その中に。リブラ将軍、セナ・ホウリの姿があった。
「間に合ったなラグ王」 「おおリブラ」
二人は熱く握手を交わして、砂煙に目を細めていた。
「そちらの準備はどうかね?」
「何時でも構わん」「そうかそれは助かるが……」チラリ若い青年を見る。「セナ危険な仕事だ。俺が変わろうか?」
実力は認めていた。才能も申し分ない。惜しむは実戦経験の無さである。 「大丈夫ですリブラ様!。僕はシンク様の右手になる男ですよ?。この程度のこと……。乗り越えて見せますよ」
若いが冷静な面持ちに。熱い心を覗かせたセナは、戦士の顔をしていた。 懐かしさに目を細めながら。セナの背を叩き。 「好きなように暴れてこい。ホローはしてやる」 激を飛ばした。
一礼して走り去るセナと数人のケンタウルス戦士を見送り。酒友の横顔を見ているラグ王に。
「ラグ王、俺はせがれの成長を見れなかった。だからではないが、セナを見てると我が子が成長する姿をみるようで、嬉しく思う」
珍しく感慨深く呟くリブラに対して、ラグ王はうむ相づちを打っていた。
━━間もなく魔獣暴走の先頭が、ケンタウルスの都ザウスの貯水地にたどり着く前に。ルカリとファンは、魔獣の群れから離れ。小高い丘にある。木陰からザウスの様子を見ることになっていた。
「ルカリ様……」
不安そうなファンの呟きに。ルカリも顔を曇らせていた。
「どういうこと?。何故ケンタウルスの戦士達が待ち構えてるのよ」
訳が分からなかったが、二人が見てる前で、魔獣 の群が、貯水地から先に進めず立ち往生していた、ケンタウルス戦士達1隊を率いるダノ戦士長は、獰猛な笑みを浮かべ命じた。
「今こそ我等が力見せようぞ!」
『おう!』
「放て!」
凄まじい勢い。3日前……、何も出来なかった戦士達は、息を尽かせぬ素早さで矢を放ち、瞬く間に針ネズミの山を産み出して行く。命の危機を前に。暴走していた魔獣達も逃げ出そうとした。
だが後ろから魔獣が次々と押し寄せるから。逃げ出せない。狭い貯水地に凄まじい数の魔獣がひしめきあっているという状況である。
さらに衝撃を受ける事件が。二人が見てる前で起こった……、魔獣の群れが突然消えた。
「えっ……」もうもうと上がる砂煙。訳が分からず。呆然としていると。視界が広がり。二人が見たのは……、
貯水地が、巨大な穴となって、巨大な口を開けていた場面である。想定外の出来事に。方針状態で見守るなか、残された魔獣に変化が起きた。遂に均衡が失われ……。正気を取り戻した魔獣達が、逃げ出したのだ。しかしラグ王率いる戦士の本隊が、まるでわかってたようなタイミングで急襲。魔獣の群れは、瞬く間に壊滅したのであった。
━━時間は少し戻る。セナと五人のケンタウルス戦士達は、貯水地の真下にいて、セナの相棒クレタと供に。シンク皇子発案。リブラ様計略の崩落の計。要を担ってるのはセナであり時間との戦いである。限定的とは言え。大地の崩落を作り出すには、相当の苦労を強いられる。
「クレタ!もう少しだ頑張ってくれ」
「きゅ~いきゅ~い♪」 元気に答える土竜は、金属含む岩盤を砕き進む。
「間もなく崩落が始まる。魔獣が落ちてきたら止めを刺してくぞ」
「任せよセナ殿!」
「きゅ~い!」
「崩れるぞ!」
セナが注意換気した瞬間、その時が始まった……。
……鳴動。
パラパラ小石が落ちてきて、天井付近が一瞬にしてひび割れが走る。崩落が始まった。
貯水地の水に流され。岩に押し潰され。それでも生きてる魔獣は危険である。土砂から抜け出して来た魔獣を……、数百近い魔獣は……、セナ・ホウリと呼ばれた。中央大陸から来た1人の青年の策略によって、壊滅させたと。衝撃の出来事として、人々は知ることになった……。
一躍ケンタウルス戦士達から認められたセナは、手荒い歓待を受けることになった。だが酒に弱い質で、早々に潰され。酒豪揃いのケンタウルス達から、しばらくからかわれるネタを提供することになった。
「リブラ爺ちゃん!。お疲れ様」
日が暮れ始めた時間になって、シンクは三体の竜を伴いザウスに戻った。 「遅かったなシンク?」出迎えたラグ王とリブラに。にこやかに笑いながら。
「うん犯人の追跡してたからね~」
驚くことさらりと言うから。ラグ王など目を丸くしていた。
「それはまた……」孫のそつなさ過ぎる行動力に呆れるばかりだ。
「ラグ王、問題は想像以上に根深いようです」
深い悲しみのある瞳。今回事件を起こした者が何者であるか、察していた。
「そうであるか……、シンク殿。我等のためにご尽力忝ない」
ケンタウルス族最大の礼である。前足を折って深々と頭を下げた。
「ラグ王、あくまでも最悪の場合なのですが……」
ある提案を告げていた。驚きの内容故に。目を丸くしていたが、存外悪くない話であった。キナ臭い北大陸で暮らすのではなく。まだ未開の地がある中央大陸で、建国しないかとの申し出に。暗くなりかけた気持ちが癒された。
「シンク皇子……、貴方は善き王となるだろう。そなたの申し出とても嬉しく思うたぞ」
「ならばどうでしょう、我が国に傭兵として、何人か暮らしてみては?」 「しかし……」
確かにそれならば、ケンタウルス族にもよい点がある。プロキシスと同盟関係にあると分かれば、同じようなバカな行動はしまい。だが一方で困った事実に気が付いて少々渋る。
「その辺りは大丈夫ですよラグ王。貴方の了承を得れば、我が国が誇る三賢者が1人ケイタ・イナバに命じ、城に『瞬く扉』の設置をさせますから。船に乗って、無理に移動しなくとも見物を広めれます」
「『瞬く扉』と言うのは、世界議会加盟国に与えられているあれか?」「はい。祖父は内々に父に。ケンタウルス族も世界議会加盟国になれるよう。打診しておりました。僕は父から言付かり休日を利用して、ケンタウルスが我が国と国交を開くつもりがあるか、見極める使者の役目も兼任しております。」
「なんと……」
隣でバツが悪そうな顔の酒友リブラを見るや、肩をすくめシニカルに笑っていた。
「するとシンク殿は、そこまで考えて……」
「はい僕が手を出すのは、ケンタウルスにとって負い目になりえます」
ニッコリ微笑したシンクの佇まいは、若き王といった威厳を備えていた。ただ武勇に優れてるだけでなく。凄まじいまでの先見性に。リブラと出会った以上の感嘆を抱いていた。「シンク殿……我がケンタウルス族は、貴方と良い関係を築きたいと考えます。オーラル王と直接お会いしたいですな」
「はい父にそのように伝えましょう。ラグ王さえよろしければ、来月には我が国の重鎮と会談出来るよう準備をさせますが?」
「そんなに早く?」
「はい。ラグ王の許しを得たならば、明日にも王宮の地下の一室をお借りしたいのです」
「それはまた……」
疑問を抱いたラグ王のために。『瞬く扉』の簡易的な魔方陣を描いて、一度だけ使用できるように出来ること伝えた。
「もしや……」
「父次第になりますが、その可能性はあります」 「彼奴なら来るだろ、シンクのこと心配してるはずだからな」祖父に断言されてしまい。嬉しく頬を赤くした。そんな少年らしい素顔もまた好感が持てた。
「それはさておき、シンク殿どうか我が杯受けて下さらぬか」
嬉しいお誘いに思わず頬を緩ませ。
「喜んで」
三人は楽しげな笑い声の響く。輪の中に加わった。
━━ケンタウルスから酒神と恐れられるリブラ。孫のシンクは彼より強く。ケンタウルスの戦士からは、別の意味で恐れられたと言う……、
……12年後。北大陸で起こった内乱で命を失ったラグ王の死後2年の月日が経って。彼が綴った日記が見つかった。
『我が生涯において、三人の尊敬出来る人間に出会えた』
その1人が、シンク大王を指してると。歴史家は可能性を論じている。この時。13に満たない少年がと。懐疑的な声も多いが……。
━━その頃。サザノーラは、予想外の結果。それをもたらせた人間の名を耳にして、眉をひそませた。
「セナ・ホウリ……」
確かプロキシスの重鎮、その子息であるのは知っていた。異国から北大陸に渡り竜騎士になった変わり種。噂では1人の女のためにだと言う。それが事実ならば、サザノーラ達四人の若長が行った策略は、1人の女を手中にするために阻まれたと言うことになる。
「ふっフハハハハハハ!。そいつはいい」
楽しげに突然笑い出した父に。びっくりとしたザノーラを。抱き上げながら。珍しく優しい顔で、 『ラタノーラは無事なのだな?』
「うん大丈夫だよ♪」「そうか、母に次の策に移ると伝えなさい」
「はあ~い」
サザノーラの子にしては、頭の回転が早く、利発な笑顔を見ると思わず笑顔になった。このような気持ちになるなど思いもしなかったが……、存外悪い気はしない。たった1人の女の為に項をなすか……。そんな馬鹿な男がいたことが嬉しくもあった。
「良い臣下に恵まれるか……、英雄に欠かせぬ資質やもしれんな」
サザノーラが目標とするオーラル王にも。目も眩むような素晴らしい仲間がいた。
「我もそうありたいものよな……」
首を傾げる我が子の頭を撫でてやると。目をキラキラさせて抱き着いてきた。シンク皇子が次に向かうラノバ族の街。そこで起こる事件に思いを馳せる。
━━色々と事件のあったケンタウルスの都ザウスから。翌日シンク達はレオールのリブラ邸に戻る。留守番を任されたミネラ、ラシカ、そして……ミネラの母ソニアに出迎えられた。
「シンク様~♪お帰りなさいませ~」
「お帰りなさいませ~♪」
お目クリクリっとしたトリトン族の子供達。カメロー、カメザがぴょんぴょん跳ねながら手を振っていた。最初にセナの黒竜ガリレイが胸を張りながらやや性急に降り立ち。次いでシンクレア、竜王プライムと続く。
「シンクレア、シンクお帰り」
ラシカさんがクルミ、ローザを。シンクレアから降りるの手伝いながら。不敵に笑っていた。
「ただいま~ラシカ姉。ラグ王からお土産沢山もらって来たよ♪」
鞍から外して、ちょっとした荷物を手渡した。 「シンクレアご苦労様」 シンクレアの美しい首筋を叩き労を労う。
『うん♪シンクまた飛ぼうね』
「うん。後で鞍着けてた場所ケアするから。プライムと竜舎に行っててね」
『はあ~い』
鞍を外して身軽になったシンクレアは、ブルリ身を震わせ。くあ~っと欠伸をしていた。相当疲れたのだろう、のしのし竜舎に向かうシンクレアを。心配そうな竜王プライムが、付いていく。残された黒竜ガリレイは、ホッとしたような残念そうな顔をしたが、相棒が固まったように動かないからどうしたものかと、鼻を鳴らした。
「セナ……、お帰りなさい」「ミネラさん……、ただいま」
再び黙り込む二人の顔は、みるみる赤くなる。まるでお見合い最中の純情な男女のようだ。
「ゴホン、ミネラちゃん、それからセナさん、そこで見詰め合ってないで、せっかくカメザちゃん達がご飯用意してくれたのよ。みんなで食べましょ」
好ましくセナを認め。娘の幸せそうな笑顔が、嬉しくも寂しく感じた。
「はっはいお母様。セナ行こうよ」
「ミネラ……、行こうか」
ハッと息を飲んでいた。でも何だか嬉しくなってきて。クスクス笑い出せば、セナも何だが気恥ずかしそうである。二人は微妙な距離を保ちながら、屋敷に入った。残された黒竜ガリレイは鼻を鳴らして、なんだかやってられんなと。自分の竜舎に向かって、再び空を飛んでいった。
━━一夜明けて、楽しい夕食を思いだし小さく微笑みながら、ソニアは皆が起きる前に起床して、娘に。一通の手紙を残し帰宅するつもりで、外に出ると。
「おっ、お義母さん……」
セナが自分の相棒ガリレイと供に待っていた。 「セナさん……、どうして?」
「ミネラが、お義母さんを送って欲しいと……」 ハッとして、振り返れば娘と目が合った。
「お母様は、方向音痴だからね」
ツンと横を向いたが、娘の気遣う心が、こそばゆい。思わず娘を抱き締めていた。
「ミネラちゃん!。好い人見初められて……良かったね。幸せになるのよ~。子供が出来たら直ぐに知らせてね♪」
「おっお母様……」
真っ赤になったが、はいと頷いていた。
「ではお言葉に甘えて。セナさんを借りるわねミネラちゃん♪」
こうしてミネラ帰郷・お見合い騒動の終息を見せた。それは……、ようやくシンクの冬休みが始まろうとしていた。
━━レオール官邸・執務室。部屋の主であるレイナ・ホルト宰相は、ラノバ族長プレイゼン。後見人フォルク・バードを同席させて、竜騎士団長レダ・アソートの報告を受け。眉を潜めていた。
「それは確かなのね?」 「はい……、シンク様が問題の人物を追跡して、間違いなくクラブラ族の者だったと」
最悪の事態である……、レイナは完全に後手に回っていた。それもシンク皇子の機転がなくば、もっと危うい立場に立たされていたに違いない。「それでオー君の取り成しで、ラグ王は私に任せてくれるのね?」
「はい……、まさか本当にオーラル王がいらっしゃるとは」
感服した声音のレダに。レイナは苦笑していた。誰も考えもしないだろうな普通は……。大国の王が単身異国に現れ。ケンタウルスに会いに来るなんてことは、
「オー君らしいけど。二人には、大きな借りが出来たわね……、プレイゼン貴方を呼んだのは他でも無いわ。貴方にシンク皇子の接待をお願いしたいのよ」
「ほほ~う。それはまた大役ですなレイナ宰相?」
意味ありげなフォルク老の指摘に。肩を竦めるしかない、
「そうかもね。でも彼が貴方達の未来でもあるわ」意味は分かるわね?、含む眼差しにプレイゼンは静かに頷いていた。
「後程シンク皇子にお願いして、非公式に会談を設けるあから。二人は同席してね」
「ほ~うレイナ様。プレイゼンはわかりますが、何故わしを同席なさる?」
「フォルク老。シンクは貴方に聞きたいことがあるようよ」
「ほ~うこの老いぼれに。それは楽しみじゃて」好好爺。愉しげに笑うフォルクとは違い。プレイゼンは気が重い。多少なり好感は抱いてもらってはいるが、サザノーラがこのまま大人しくしてるとは思えないからだ。
━━昼前。シンクはクルミとローザだけを伴い。総督府で雑務を終えたレイナ、プレイゼン、フォルクと会談した。
「お久しぶりですレイナさん」
「ええよく来たわ。そちらが……」
「はい婚約者の……」
「レイナ様。ご無沙汰してます」
「クルミ姫二年ぶりでしたわねクスクス。貴女がシンクとね~」
レイナのからかう口調に顔を赤らめながら。小さくはいと照れたように返事をしていた。
「初めましてローザ・リナイゼフと申します」
すっと一部のスキもなく一礼していた。豊かな胸がたゆむのはご愛敬だが、かなりの使い手だと分かる。
「ほほ~うリナイゼフとな?、黒剣の一族とは珍しいの~」
「フォルク老知ってるの?」
あまり聞かない家名だが、フォルクは知っているようなので水を向けた。 「うむ今は亡き。華の国ダナイの将軍家に支えた。4つの武家の一つで、確か移動国クラウベリア王の遠縁に当たる筈じゃな?」
「はっはいそうですが、よくご存知ですね」
驚いたローザやクルミはさておき、シンクやはりと確信していた。
「フォルク老と言いましたね。やはり貴方がたは、白の民の一族の者なのだね」
ほ~うっと驚いた顔をしたが、にやり好好爺と笑って肩を竦めていた。 「赤の直系とは違い。ハーフですがね」
片目を瞑りお茶目に言って退ける。食えない老人である。
「フォルク様……今のは」
「なあ~にどのような歴史にも暗部はある。そうよな赤の皇子よ」
「ええレイナさんは知ってますよね。祖父が赤の直系だと。僕や父、ブライアンは赤のハーフですよフォルク老」
素早く切り返す気転の素早さに。なるほどと愉しげに笑いながら。
「やはりお前さんは頭が良いな~。聞きたいのは黒と白の王女を襲った。白の民と姿を消しとる。女王のことじゃな?」
「はい。リルムちゃんは内密に動いてますが、恐らく白の王女が絡んでると僕は見ています。フォルク老がどのような思惑か、確かめときたかったのです」
「お~怖い怖い。もしも敵になるならリルムという娘のため。我等を根絶やしにする覚悟もあったようじゃな~」
気楽に言うが、戦慄の話にプレイゼン所か、レイナまで顔を青ざめさせる。
「シンク……」
ちらりレイナに視線を送ったが、真っ直ぐフォルク老から注意をそらさない。
「やれやれそう睨まんでも。我々バードは、白の王女正式には、フレナード様に支えていた。黒と白の王女はフレナード様の忘れ形見の子じゃ。敵対などせぬよ」
手を上げた老人に。ようやくシンクも肩の荷を卸した。
「まったくお主は、将来恐ろしい男になるだろうの~」
「そう思っていただけただけでも。お会いした価値はあります。プレイゼンとは敵対したくはありませんからね」
未来を見据えた外交と言うが、シンクが行ったのがまさにそれだ。
「だからケンタウルスか~、わしすら思いつかなんだ荒業よな~。この大陸は、後10年の平和を得ようて」
「あれは僕ではなく。祖父の願いを。父がじっくりと練り。僕が使わせてもらっただけですよ」
「やれやれなるほど。将軍殿が動かれてたか……」
段々話が大きくなりだして、でも老人と孫ほども年の離れた二人は、愉しげに会話を続ける。深い智謀はフォルクが上だが、全てにおいて高い知識とそれを行動に移せる才覚があるシンク。語らう内にお互いを認めていた。それは知恵者のみの頂きである。
「わしからも一つ聞きたい。プレイゼンはお眼鏡に叶うたかな?」だからこそ聞きたい。自分の目が雲っていないかを。
「十分に」
「そうか……」
答に満足して、思わずにこやかに笑っていた。重々しい圧力が消えて。ホッとしたプレイゼンは、いつの間にか引き結んでいた手を開くと。ジットリ汗をかいていた。
「シンク……まあ~いいわ。貴方の使者としての使命は、無事終えたと思って良いのね?」
一番重要なことはその一点である。
「はいレイナさん。明日は楽しみにしていたラノバの街に向かいます」
ちらりプレイゼンに視線を向ける。小さく頷き、 「シンク殿。ラノバの街にいらっしゃるなら。僕に案内させてください」「そうですね。ではお願いします」即答で了承された。驚いたプレイゼンだが、
「ではシンク様、僕の方で、馬車は用意しますね♪」
にこやかに微笑むと、つい声が弾んでいた。こうした気遣いが出来るからこそ。レイナはプレイゼンを後継者に選んだのだ。
━━翌朝。リブラ邸に。一台の馬車が到着する。大陸でよく見かける中古の荷馬車だ。主に商人が好んで使う幌馬車であった。意表を突かれたシンクに。にこやかな子供ぽい笑顔のプレイゼンは、御主を勤めるリオナ。カノア姉弟。見送りに出た祖父と祖母。ミネラさん、ラシカ姉まで。驚き目が丸くなっていたを見回して説明をした。
「シン。ここだけの話。先程シンク皇子が乗ったとされる馬車が、出てと聞いてます。ですから僕達はゆっくり行きましょう♪」
なるほど……、プレイゼンの狙いに気が付いた。「爺ちゃん。先に行ってるね」
「ああ~楽しんでこい」 「ラシカ姉。ミネラさん行ってきます♪」
「気をつけて行ってきな。あたしは帰りの準備しとくからさ」
「シン……、色々ありがとうね」
ほんのり赤い顔なのは、昨日セナから正式にプロポーズされたからだろう。
「ミネラさん。結婚はセナさんが戻ってからですか?」
「うっ……、」
ゴニョゴニョして聞こえないが、そのつもりと言いたいのだろう。今までみたことない可愛らしい姿に。思わずいじめたい気持ちになったが、ローザが機先を制してダメですよ?と。優しい一面を見たから。我慢出来た。
「カメザ、カメロー、姉さん達のこと頼んだよ?」
だから円らな瞳で見上げてる。留守番する二匹に。二人の世話を頼む。
「はあ~い♪。任せてください」
カメザがはしりシンクに抱き着き、にこにこ甘える。
「任せてください!」
クルミに抱き抱えられたカメローが、パタパタ手を振っていた。クルミが、しきりにカメローとの別れを惜しむから。
「クルミ、二匹は僕の従者になりたいそうなんだがどう思う?」
「えっ……、じゃあ~……」
「うんこの旅行が終わって、一度みんなの元に戻るが、来年の夏には僕の元に来てもらうつもりだよ~。ただ伯母さんの家では厳しいんだけど。クルミ何処かいい家知らないかな?」「……あっ……、しっシンクわっ私の所なら大丈夫だ」
嬉しそうに頬を赤らめて申し出ていた。あまりにも予想通りの反応に。クルミの頭をなでなでしたシンク。
「あっ……あう……」
恥ずかしそうだが、嬉しそうなクルミであった。
━━首都アージンから。街道を西に抜け。そこから北上。夜にはラノバ族が治める地域に入った。
ラノバ族が住まう地域は、起伏が激しく。海からの海抜も低いため。自然と山々の麓に集落・村を形成していた。またラノバ族は商人ばかりで、大陸中を旅することも多く。幼少から馬に乗る習慣がある。一応ラノバ族のリゾート地まで、土竜馬車も出てるが、あえてシンクを。集落に案内したプレイゼンの狙いは……、小さな集落に案内していた。
「本来ならリゾートの街の方に案内するのですが、何かとありましたし。ゆっくり出来る僕の別荘に来ました」
説明しながら。馬車を降りたプレイゼンは、三人を小洒落たログハウスに案内した。
言われてみれば、確かに集落は家屋ではく、ログハウスばかりである。
「この集落の下は、ラノバ族のプライベートビーチになってまして……」 みなを部屋に案内したあと。荷物を下ろしたシンクを誘うように。ログハウスの裏手にある。テラスに出るや━━。
「凄い!」
すみわたる美しい海と。一対の絵画のような空。雲一つなく。まるでひとつなぎのような光景に息を飲んで。圧倒されていた。
「シンが気に入ってくれて良かった」
嬉しそうに微笑むプライゼン。二人はクスクス共犯めいた笑みを浮かべ。 「それよりゼン。君の競争相手は、かなりの強敵だね」
肩を竦めプライゼンは、一つ頷き。
「レイナ様の跡を継ぐんです。サザノーラ族長相手でも負けるつもりはありませんよ」
飄々と言ってのけた。なかなか食えない青年である。
「僕としては、ゼンと長く良い関係を築いていきたい。君の手腕見せてもらうね」
二人はにこやかに微笑んでるが、お互いの立ち位置を確かめ。ようやくプライゼンは安堵した。今はまだレイナ宰相や自分たちに任せてくれると。言ってくれているのだ
「僕が聞きたいのは、四ヶ国による疑似神討伐。シンも参加するのかな?」
「うん父さんの予想では、僕やブライアンの出番があるようだよ」
にこやかに答えていた。いささか呆れた気持ちを抱いたが、シンク本人は気にしてないようだ……。プライゼンが思うよりも疑似神関連情報は、重要ではない可能性もあるが……、
「ゼン、僕達は、爺ちゃんや婆ちゃんには、健やかに暮らしてもらいたいんだ」
ハッとした。ここからとても大切なこと話すのだと前置きした上で、疑似神関連情報を話したと理解した。
「爺ちゃん達に何かあれば、僕やブライアンはどんな犠牲を払っても介入するよ。だから何も無いことを僕は期待したい」
真っ直ぐ真摯な眼差し故に。恐ろしいほど怖かった。彼を敵にしてはならない……、強い警鐘が鳴っていた。
「肝に命じるよ……、僕もリブラ様にはお世話になってるからね」
「うん。ゼンのこと信じてる。それから何かあればセナさんに相談するといいよ。ああ見えて将来は、僕の右腕になる人だから」
どうやら間違った答えではなかったようだ。ほんの少しだけ光明が見えた気がした。二人の黄昏る姿に。顔を赤くする三人の少女達も。それぞれの決意を固めたようだ。
エピローグ
━━その頃。
街道で、豪奢な馬車が襲撃される事件が起きた。重く見たレイナは、直ちに事件究明を命じていた。
━━同時刻。アブスト族の町。
サザノーラは部下の報告を聞き。忌々しそうな舌打ちをしていた。
「プレイゼンの野郎の策にハマったか……、食えない奴だ」
だが……、失敗したのも事実。こうなれば仕方ない、しばらく大人しくしなきゃならない……、だが此方の駒不足が分かったのは収穫だ。部下の育成に力を入れて時を待てばよい。
「お父様~」
パタパタ足音がしてザノーラが走りより。ハシリと抱き着いてきた。
「どうした?」
『あのねお母さんからお知らせあったの。シンク皇子のお姉さんが来たって』
「なに……」
ギョッとしていた。さらにザノーラの話を聞くうちに。顔が青ざめていた。
「全て……、見抜かれたのか……」嫌な汗が頬を伝う。
「えっとね~、『祖父母を狙ったこと僕は忘れない。』家の皇子様からの伝言。サザノーラに伝えてねだって」
絶句していた。得体の知れない恐怖すら覚えた。しかし……、覇王と呼ばれたサザノーラは、嬉しそうに笑っていた。
「それでこそ倒しがいがあると言うものよ……」 シンクとサザノーラの二人は、この因縁が、長く続くことを予感していた。
シンクの冬休みはひとまず終わりです。次回は西大陸に渡ってる。リルム達の物語か、アレイク王国で冬休みを過ごすノノフレイミ、または修行に出てるヒナエとアネスの兄弟弟子修行物語。来春の結婚に忙しいブライアンの物語。エルマ&ギラム父娘の冬休み等色々考えてますが、ひとまずよい年を過ごして下さい。背徳の魔王でした。




