閑話ラケル・クエト覚醒しました
プロローグ
━━中央大陸、輝きの都プロキシス。
大陸の中央にあるアセイラの街から東に。輝きの都と呼ばれる王都はある。輝きの都と呼ばれる由縁は、白銀の城が朝日を受け。街中に白銀の城の美しくも。神々しい風景がみれることから。民達が呼び始め……、英雄王オーラルが改めて命名した。沢山の民を受け入れ。街を魔物から守るため。最初に作ったのが、白銀の門である。夜は都の近くまで魔物が現れるため。城門は固く閉ざされるが、城門をくぐると、眼前に広大な中央通りが広がる。
━━そこは他国の王都と比べ。全てが美しくも考えられた街造りがされていた。その一つが……、馬車が優に10両並んでも余裕ある大通り━━。
ただの大通りではない。途中から。馬車二台分の通りがあるが、一般市民が使うことは無く。白亜の柱が、等間隔に並び。白銀の城まで一直線に続いていた。また柱には、幾重にも魔法のロープが張られ。夜になると白亜の柱。天辺が窪みがあり。魔法の炎が灯るように整備されていた。さらに連動して、柱に張られたロープには、魔力が流れると発光する仕組みがあり。夜には大通りに屋台が出され。ちょっとしたデートスポットになる。運が良ければ、竜が飛来する姿が見れることもある。
一見平和な輝きの都プロキシスだが、来春の五国合同による。疑似神討伐が正式に発表された。多少なり不安はあるが、中央大陸最大の懸念。魔人王レイアスが、我等がシンク皇子の手で、見事討たれた。陛下の決定に。民の気持ちは概ね好意的だ。
━━疑似神とは……、元赤の民。7神官の1人。魔人マローダが産み出した。負の遺産である。
中央大陸事件の時。世界中に魔物が溢れた。どうにか魔物を退けることは成功した……、そんなとき現れたのが……魔人。最初の魔人は、オーダイ将軍が討ち取った。だが……南大陸に。最初の疑似神。竜、道化、女神が放たれた。
━━大国華の国ダナイが滅ぼされたのは……。間もなくである。
ダナイが滅ぼされる少し前になるが……、異変の影響で、地下に生息していた。はぐれワームが、軍国ローレンの首都に溢れ出た。首都陥落……バローナ将軍は、ファレイナ公国の剣の女王ミザイナに助けを求めた。
━━たまたまではあったが……、同盟国のアレイク王国に援軍を求めていたミザイナは、派遣されていた。土竜騎士団、フロスト騎士団の援軍に、軍国ローレン救援を依頼、心良く当時の責任者である。ボルト・ホウリは快諾する。
……一度は、軍国ローレンの首都を取り戻したボルト達だったが……、
━━三体の疑似神が現れ。現プロキシス土竜騎士団長ボルト・ホウリの判断で、即座に全員逃げ出した。それが項をそうして、多くの命を救った……、
しかし華の国ダナイが、滅ぼされてしまう……。危機を感じたミザイナ女王、バローナ将軍は、連名で各国に助けを求めた……、
奇しくもギル・ジータ王国。エバーソン国王の計らいで、中央大陸の問題解決まで、世界中の国々が手を結ぶ手伝いをした。それが現在の世界議会である。
そして……各国の英雄・豪傑が一堂に介し。疑似神の調査と討伐が命じられ。三体の疑似神を倒した、さらに魔人討伐に出た一行を襲ったのは、元六将狂喜の双子だった……、魔人バローナに捕らわれ。疑似神と変えられたが、英雄達の活躍により。狂喜の双子は魔人バローナの魔手から解放され。首謀者バローナは、オーラルの手で討たれた。そう……、疑似神の事件は全て、終わった筈だった……、
━━しかし……、
華の国ダナイの遥か地下。人知れず。マローダの悪魔の如く所業により。疑似女神アントンが創造されていた。そして……産まれた……、
……彼女こそ。疑似神の母であり。南大陸最大の敵となった……。
気付いた時には、既に……、南大陸の半分、食らい尽くされていた。華の国ダナイは、不毛な荒れ地になり果て……。疑似女神アントンと、その伴侶マローダ率いる。疑似神の猛攻を。軍国ローレンは受けることになった。
しかし軍国ローレンには、三賢者の1人デーア・オルトスがいた。現在世界各国で、導入されてる魔導兵の開発者にして、天才的なゴーレムの作り手、彼の造りし魔導兵により。人命を失い。喰われるリスクを減らし。疑似神達と拮抗した。これにより疑似神との永き闘いは、魔導兵の発展を促し。更には、シンク皇子の生きた義手、義足、に生かされた。
シンク皇子の為。国を越え手を差し伸べたのは、デーアだけではなかった。数多の様々な古い魔法に造詣が深く。前魔王ヒザンの信頼厚い。三賢者の1人。現帝国ゼノン宰相が、生きる義手、義足に必要な。あらゆる複雑な魔法儀式を構築してくれた。
また三賢者、最大の貢献者ケイタ・イナバによる。竜の牙、骨、鱗を骨格に使う考え。加工技術があって、初めてなし得た奇跡……。僅かな意思を持った。生きた義手、義足は、ただ1人のために作られた。特別な物だった。
シンクはあの英雄王オーラル・ハウチューデンの子息であり。自分の危険を省みず。幼なじみの魔王の愛娘様を助けるため。右腕、左足を失った。三人はオーラル陛下に深い恩義があった。だから国を越え手を携えることを。可能にした。
━━余談だが……、シンク・ハウチューデンは、今年アレイク王国のアレイ学園に入学した。
━━彼は、瞬く間に。アレイク王国に住む人々を魅了した。入学式翌日から。全ては始まる。
『総合武術大会』予選を勝ち抜き、見事優勝したのは、シンクだった。なんと……決勝の相手は、昨年の優勝者クルミ・アルタイルであり。決して楽な相手ではあり得ず。剣姫になっていたクルミを圧倒しての優勝で……、流石は英雄王の子息……、当初はそんな色眼鏡で、誰もが見ていた。
そんな甘い思いが。一変させられたのが、『魔法比べ』通称コンテスタと呼ばれる双子の姉妹。魔法の天災シアン・イナバ、財務の天災フレア=カレン・ダレスとの決勝はあまりにも幻想的であり。シンク皇子のセンスの高さを垣間見た。
『学年戦争』において、シンク皇子は傭兵ギルドと言う。学園側に属し参加。シンク・ハウチューデンの魔導兵を操る。凄まじい技量を。目にすることになった。
丁度そんな頃。シンクは……、自身の異変を認識した。
夏休みの事件で……、最初の義手、義足を失ってから……、それは強まる。
『シンク……、力なる』
『我ら、力なる……』
拙い、幼稚な思念が、はっきり聞こえ始めたのは……。
ラケル・クエトがはっきり。自分の意思を伝えるようになって来たのは……、トーナメント準決勝二回戦。ミル・ダルフォン・カーリアとの総合武術戦で、ダルフォン家に掛けられた。女神達の過度な祝福。彼との激闘が、引き金だった。
風竜の力に目覚めたラケルは、わりとおしゃべり好きで。竜の肉体強化、風の加速魔法を得意としていた。
地竜の力に目覚めたクエトは、厳格な性格で、覚醒、防御に特化した地の魔法を使うことを好む、二匹の性格は違うが、お互いを認め。シンクを守ろうとする。強い使命感を持ってるようだ。必要な時……、
『シンク……我を使え』
主張してくるから、有りがたく。力を借りる。変化はそれだけだと思っていたのだが……、
ケイタさんが、アレイク王国に住む。義娘エルさんに会うため。来日したとき……、内密にラケル・クエトの話を聞かせるや。目をしばたかせ。驚いたのだが……、ある仮説を立ててくれた。
「もしかしたら……、彼らを切り離して使えることが、可能かもしれないね……」
「ケイタさん?」あまりに突拍子もないことだから。ただ戸惑いを浮かべる。
「あくまでも仮説だと思って、聞いてほしい」
昨夜━━エルさんと、感動的な再開の後。わざわざ時間を作ってくれたケイタさん━━。
家族と過ごせる時間を削ってまで、話す時間を作ってくれた……。深い感謝を抱き。包みを受けとった。中身は、夏休みの時に失なった。義手、義足の新しい予備である。
「シンク……、我々が産み出した。君だけの生きた義手、義足は、君の成長に合わせ。成長していた」
それは気が付いていた……、初めて義手、義足を着けた時から。夏休みで失うまで……、成長していたから……。
「君は、私達の想像以上の成長をした。だから君と同じように。沢山の経験を積んだラケル・クエトは、自分の意思を持った」
改めてケイタさんは、ラケル・クエトに優しく触れた。その瞬間。二匹は思慕を思わせる甘えた。気持ちが流れてきた。
「出来るか分かりませんが……、試す価値はありますね」
「そうだね。僕に言えることは、生きてる義手、義足を持ったのは世界で。君だけだシンク。君ならどんなことでもきっと出来るさ」
「そうですね」
朗らかに笑うケイタさんは、それから照れ臭そうに。頭をかき笑い。
「実はこの言葉。僕の娘エルが、カール君から言われた言葉なんだってさ」
肩をすくめ種明かしをしたが、カールさんの人となりを見たことがあるシンクは。いまいち信じられない。
「まあ~僕も父として悩んだよ。見た目も噂も。軽い男だったしね」
娘のことになると。如舌になるケイタさん。フレア、シアンは知らないだろうな……。
「エルの幸せそうな顔が見れて、安心したよ~それからジルのこと。ありがとうシンク。娘も君たち親子には、とても感謝してる」
エルさんはケイタさんに話せたのか、小さく安堵した。
「さてもう少し話していたいが、僕は家の家内がやきもきしてるはずだ。そろそろ屋敷に戻るよ」
「ケイタさん……、また夏休みに」
「ああ~、楽しみにしてるよ」
その日から……、シンクは試行錯誤して、ラケル・クエトと。自分からコンタクトが取れるようになった。まだ自分から切り離して使うと。動けなくなるが……、
エピローグ
「我が右腕ラケル、我が左足クエト……、我が敵を討て、双竜降臨ラケル・クエト!」
秋晴れの早朝。誰も見れないよう小さな結界を張り。王都カウレーンから遠く離れた。黒衣の村近く……、湖が一望出来る辺境で。シンクはラケルの力を。借りる方法を密かに訓練していた。
『承知クエト、行くぞ!』
『おう!』
シンクの義手・義足からガクリ力が抜けた、咄嗟に右足に体重が掛かる。素早く魔法で、肉体強化のを使い。凄まじい虚脱感に耐えた。少しは動けるようになるが……、
「ラケル・クエトを降臨してる間は、動きが鈍いか……」
二匹は溶け合うように。一つとなり。シンクの魔力が融合の核になって、新たな存在が産まれた……、それが竜人ラケル・クエト、
『シンク!、我等はお前を守る守護者なり、いつでも我等の力を使え。それが我等の役目』
強い渇望。シンクより一回り大きな竜人は、へたってるシンク抱き抱え。金瞳を真摯に細めた。
竜人ラケル・クエトの顔立を間近に見て、核にシンクの魔力を使ってるから。二人は兄弟のように似ていた、違うのは、竜鱗で作られた鎧を。着こんだようなフォルム。背に畳まれた竜の翼位か……。
「二人供。ありがとう」『……うむ』
嬉しそうに頬を緩ませるラケル・クエトは、朝日が登った瞬間……、光の中に溶けるように消えていた。
「流石に……、魔力の消費が凄まじいな」
疑似神達との戦いでは、アレイク王国の補助要員に選ばれたシンク含めた24人の生徒達。聖人アレクの弟子であった。大賢者オール・セラの作った。特別な兵器が、アレイ学園には隠されていた。エドナ学園長は、長年オール・セラの遺産を探し出し。使用方法を見つけ出した。どのような兵器かは解らないが、使わないよう。父達も最善を尽くす筈だ。それに……、疑似神である狂喜の双子は、シンクの竜人ラケル・クエトに気が付いて、24人に入れた。それは……、最悪を考えてだけとは思えない不安を感じていた。
「父さん……」
考えていても仕方ないか、小さく嘆息して、
「ラケル、家まで頼む」
『承知した』
右腕に凄まじい魔力が集まり、シンクは一瞬で消えていた。




