閑話翼を下さいお姉さまサード
プロローグ
━━アレイク王国、南通りにある。ブランドミヤマ本店、
本店の裏には、屋敷があって、二階にあるモレンの部屋に。噂の翼人サノビアと、活発な少女リナが、来ていた。緊張に包まれた。モレンの部屋を、二人が興味深そうに見ていた。
棚にある。色鮮やかな無数の生地、机に散乱してる、デザインのデッサン、失敗したくしゃくしゃの紙が、ゴミ箱から溢れ。食べ掛けのお菓子が、無造作に机の端に。置かれていて、服飾以外のスキルが皆無だと、分かる部屋に。サノビアは顔をひきつらせていた。リナは目を輝かせ。物珍しい。工具、器具類を見て回る。採寸が終わり。予想通りだった。安堵して仮縫いを済ませた。服の中で、幾つか選び出して。
「サノビアさん、早速ですが、試着お願いします。細かい直しがしたいので」
「うっ……うむ。モレン……、本当によいのか?、私がモデルで?」
先ほどから緊張して、無口でいたのは、そんな不安からだった。無論モレンとて、翼人の成り立ちは知っている。それが彼女に与えてる不安は、散々ミリアから聞いていた。彼女のことまったく知らなかったモレンは、自分の愚かな行動を恥はしたが、マッド服飾職人、デザイナーになるのが夢である。彼女サノビアの美しさを、埋もれさすのは、勿体ないとさえ。新たに思った。
ぱさり翼が出せる服自体が、少なく、また初めて真新しい服を着る喜びに。頬が緩む。手早く着替えたサノビア、美しいうなじから背にかけて、裸体を覗かせる。サマードレスに、モレンはどぎまぎ胸を高鳴らせた、
「ぴったりです……」
中央大陸では、ズボンが多かったサノビア、アレイク王国に来てから、スカートを履く機会が増えた。足元がスースーして。心もとない、緊張した面持ちで、大切なリナ様を伺うと。ニッコリ可愛らしく笑って、
「サノビアさん可愛いい♪」
大絶賛を頂き。嬉しすぎて、安堵の涙を浮かべた。初めて見た。生のサノビアの姿に。モレンも嬉しくなって、提案した。
「サノビアさんさえ良かったら、モデルのお礼に、幾つかプレゼントしますので、着て頂けますか?」パッと顔を輝かせて、
「嬉しい。ありがとうございます!」
感激したのか、手を握られ。笑みでお礼を言われて、モレンの方が照れた。
モレンは知らないが、翼人の国では、女性の服は限られており。お洒落も。楽しめないのが、現状である。特にサノビアは、自分が必要とされると、喜びを感じる女性だ、見られることも慣れているので、綺麗な服、可愛らしい服が作られてく。段階に興味があった。リナは自分の家族が、安全だとわかれば、サノビアさんが楽しんで、くれるならばと、無邪気に楽しんでいた。
「こっちらの国のワンピースは、袖が無いんですね?」サノビアに訪ねられ。きょとんとした。
「あっあの~、夏に着るワンピースは袖は、肌の露出……、あっ!、それだわ」
急に、モレンは1人納得して興奮混じりに。叫んだ。考えたらそうだ。暑いから露出が増えると、それは一見当たり前の考え。西大陸では、足を出すのを、恥ずかしいことと言われて。長い丈のスカートが好まれてる。同じ東大陸にあっても。ギル・ジータ王国のように。サムエを普段は着る文化だってある。確かにサノビアさんが言ったような、袖の長いワンピースは無いが、アンダーシャツはある。モレンは今の今まで、翼人だから、コーディネートコンテストは、サノビアさんに合わせた、背を出す服=着やすいワンピースだと考えていた。しかしよくよく考えれば、中央大陸は、一年中過ごしやすい気候。朝夕は涼しいと聞いた、
それに━━初めて、翼人の服を見たが、着る服ではなかった、前掛けのように横で結び。翼が引っ掛からないよう、工夫されていた、だけど……、サノビアさんは、腕を出すのに抵抗を見せた。
それはほんの些細な、一つの考えが浮かんだ、それを纏めるには……、
「明後日、また来てください。新しいデザインを思い付きましたので」
「はっはあ~、分かりました」
戸惑いながらも了承した。
リナを連れ。サノビアさんが帰った後。部屋に戻ったモレンは、溢れる創作意欲をぶつけるように。真っ白い画用紙に向かった。
「そうだ♪、別に袖を。全て付けて、デザイン的な不備を、露呈する必要はない。例えば……そうね。皮製品の鎧。部分鎧を着けるような感覚で、腕の見える部分。手首から腕の部分だけを着たり。肩は風通しよく。スリット入れたら……、涼もとれるし、ん~いい!、絶対いいわ。まったく新しい。服が産まれる予感がある♪」
明け方まで掛かり。一枚のデザインを完成させた。久しぶりに自信のあるデザインが出来て、目をショボショボしたが、目を生き生き輝かせた。
「問題は色ね……、生地はあえて既製品を使って。デザインだけで勝負したいし……」
サノビアに似合う色合い。シンプルな白。空色も似合っていただけど。一番彼女の魅力を引き出せるのは、深紅、純白レモンイエローなど、はっきりした色彩である。
「そうね……。ピンクにしてみよう!」
薄い色彩にすることで、サノビアさんの美しさを、際立たせるには、それが良いと感じた。後は、縫製に気を付けなきゃならないから、型紙作りは、一苦労になるだろう……、パチン頬を叩き、気合いを入れた。
━━2日後……。
朝方まで、縫製で、苦心したのが、胸元のリボンと、肩に入れたスリッドの部分で、腕を動かす度に僅かに見える。肩のラインがセクシーで、十分満足いくサマードレスが出来上がった。
昼前……、
サノビアさんとリナが、屋敷にやって来て、早速サマードレスの試着をしてもらい。
「うっうわ~。サノビアさん綺麗♪」
華やかにはしゃいだリナ。お褒めの言葉は、サノビアだけでなく。モレンの心まで、撃ち抜く賛辞である。
「あっ。ありがとうございますリナ様」
嬉しさで、羞恥に赤くなったが、すっきりしたドレスは、翼人の戦士として、生きていたサノビアに。すんなり受け入れられた。
一見華やかに見えるサマードレスだが、着心地、特に腕を出さない部分は、自分好みであり。つい心踊り。ウキウキして。立ち見鏡を前に。思わずくるくるっと回っていた、
「モレンお姉さん!、すごいね」「あっ……、ありがとう」リナの素直な賛辞に、モレンは照れ臭そうに、魔法の眼鏡を直した。
サノビアさんから言われて、胸元と、ウエストの直しをして。ひとまずその日は、お開きになった。
「参ったな……、忘れてた……。髪や化粧の知識がないや……」
改めて出場に必要な、項目を見て、血の気が引いた。何も考えず突っ走ってたが……、問題は服とモデルだけでは無かった、そう気が付いた、いや……我に反ったと言うべきか……、
モレンは、流行りの髪型なんて、知らないし、化粧の仕方なんて全く判らない。頭の痛い話だ……、
━━翌朝、
色々考えながら、学園に向かった、仕方ないから、後でカット教室見て。適当に誘おうか、本気で悩んで、授業なんて上の空だった。セラナ教諭が、朗らかにニコニコしながら、モレンの机に近付き、
「授業が終わったら。シンクさんを訪ねなさい」シンク?、きょとんとしてたら、あらあら呟き。クスクス笑いだして、
「貴女と会ってるはずですよ、ミリアさんのお店で」
あっ……、確かに聞いた。名前かも。いまいち自信がない。戸惑ってると、
「シンクは、一年生の観察官です。彼は専門教科。各教諭とも懇意です。きっとヒントが頂けますよ」
「……ありがとうございます!、セラナ先生」
モレンが悩んでたことが、知られていたようだ、でも……、自分のこと見ててくれる。人がいた驚きと、小さな感謝を噛みしめ。モレンは授業が終わってから、そそくさ足取りも軽く。『特待生』教室に向かった、
━━専門服飾教室、縫製教室は、巨大学園のコロッセオの北に建物があって。学園内を走る。馬車を利用しなくては、時間が掛かってしまう。西校舎に通う学生と、北校舎に通う生徒は、みんな使っていた。モレンは校門まで戻り。それから特待生教室に向かうから、予想より時間を食った、下校とかち合ったのが、原因だった。
それも今はトーナメントで、コロッセオに出向く生徒も多く。『特待生』は忙しい時期だ、もしかしたら……、生徒がいない可能性はある。それでも誰かいれば、シンクの話が、聞ける可能性があった、あっちょうど教室から、お下げの気弱そうな印象の女生徒が、出てきたので、
「あっあの~すいません。観察官のシンクさんいますか?」
おずおず声を掛けた。 「あっ、シンクですか?、今から合流しますが……」
訝しげな顔を浮かべる生徒、あっ……、そうだった、
「わっ私、服飾科一年モレン・カルメン・オードリーです。セラナ先生から聞いて」
「ああ~セラナ先生の」 納得して、クスリ笑う立ち姿は、派手さはないが、相手をホットさせる。そんな優しい笑みを浮かべる女生徒だった、
「私はノノフレイミ・ラネス、シンクは、私の弓の先生なんですよ」
「えっ?、先生……」 同じ学生なのに、きょとんとしてると、クスリ優しく笑いながら、
「シンクのいる場所に。案内しますよ。行きましょうかモレンさん」
「あっ、はい」
戸惑っていたが、気弱そうな印象とは違い、芯の強い顔が、見え隠れしてるのがわかる。流石は『特待生』である。
━━フレイミに案内され。向かったのは、学園のある通りのさらに奥。大きな繁華街があって、
「ここ入るんですか?」モレンは緊張気味にフレイミを伺う。
「私もそうでした。怪しいとか勝手に。イメージしちゃいますよね」
繁華街に、足を踏み入れたことが無かったのは、同じだと説明され。少し安堵した、
「モレンさんは、知ってるか分かりませんが、私達はトーナメントに出てるのですが、来週試合なんで、仲間のヒナエの訓練&シンクさんが、ヒナエのお母さんに呼ばれて、繁華街にある。ヒナエの家が道場やっていて、みんなそこにいるんですよ。私はバレンタイン教頭に。トーナメントの正式な日時の知らせを待ってたから、遅くなってたんですよ」
「トーナメントに……」生徒であるモレンも、学園行事ゆえ。トーナメントのことは知っていた、まさかシンクが参加してるとは、知らなかった、「因みに私達は、優勝候補らしいですよ~」
「えっ、えええ!!」
自慢する気は、無いようだが、それが余計に。驚いていた。
確かにフレイミの言う通り。繁華街は雑多な。いかがわしいイメージを、勝手に抱いていた、二人で歩いてるが、
「昼間は、意外と普通の商店街なんですよ」
フレイミの説明に、少し緊張を解いた。
さほど歩かず。立派な門構えの道場が見えて来て、フレイミの後に続き中に入った。
凄まじい気迫、硬質な肉を打った音、モレンは道場に入った瞬間。目の前で繰り広げられる。攻防に立ちすくむ。
「いや!、ハッ、ハッ、せい」
烈迫の気合いを込めた声。途端にズン、激突音、横滑りしてくシンクを。油断なく身構えたまま。嬉しそうに睨み付ける。「まだまだいけそうねシンク?」獰猛に問えば、腕の痺れに顔をしかめたが、楽しげに笑い。
「流石です先生~、勿論行きますよ!」
ゾクリ身をすくませた。近くに獰猛な肉食獣がいる。そう思わせる。強い殺気を放ったのが、妙齢の女性で、嬉しそうに破顔して。
「来なシンク!、私を倒せたら、ヒナエの秘密教えちゃうよ~」
悪戯ぽく微笑して、提案をしたら。
「おっお母さん!」
真っ赤になったヒナエが慌てた、他の二人。レイラ・バレス、フィア・ガイロンは、苦笑しながら。フレイミに気が付き、手を振って挨拶した、モレンを見て、おやって首を傾げた。
再び、激しい稽古が始まるのを。他所に。フレイミに付いて、三人の女生徒と、顔を会わせたモレンは。何れも自信に満ちた、美しい女性達に、息を飲んでいた……、どうしようか、迷っていると。
「シンクさんに。用があるそうよ」
突然紹介され。場違いな。場所に来たと思ったが、
「はっ、初めまして、モレン・カルメン・オードリーです」
慌てて自己紹介した、すると四人は顔を見合せ。複雑な表情をした。
「成る程……、学園長に似ている」
「そうかな?」
伯母さんを知る人は、名乗ると、何故かみんな同じ反応である。
「シンクに用と聞いたが?」
「あっ、はい実は……」
モレンが、服飾科の一年生であること、来月の終わりに、学園行事で、コーディネートコンテストがあり。モデルを、翼人のサノビアさをに頼んだこと、洋服が出来たが、困ったことに。カット、美容関連に造詣が、低いことで悩んでたら、縫製科のセラナ先生から、シンクに相談してみなさいと、言われたこと話した、
「専門教練には、そのような。催しがあるのだな……」
妙な感心を示すフィアは、おしゃれ、美容とか、流行りの洋服に。無頓着なところがある。ヒナエ、レイラは、自分を魅せる方法を知ってるし。他の部隊メンバーも。フィアより気を使っている。だからではないが……、自分の周りは、浮いた話ばかりで。多少なり、興味を抱いた。
「まだまだだなシンク~♪。その程度では、ヒナエはやれんな」
「おっ、お母さん……」どうやら決着が着いたようだ。どちらが強いとか、どんな差があるとか、モレンにはさっぱり判らないが、彼女達の反応から、どうやら凄いらしい。
「では先生、ヒナエの秘密は、次回の楽しみにとっといて。ぼくにお客さんのようです。ありがとうございました」
「うむ!、また来るがよいシンク♪」
「も~う、シンクまで」
恥ずかしそうに赤くなると。二人は楽しげに笑い会う、
「シン」
「ありがとうレイラ」
程よく魔法で冷やされた、タオル受け取り、汗を拭う。
「話は、聞いてましたモレンさん。レイラ、ノン二人に。お願い出来るかな?」
ちらりシンクの視線を受け。二人は、仕方ないと頷き、
「シンただじゃ嫌よ?」甘えた声音を出したレイラ、その眼差しに、モレンはドキドキ、
「わっ、私で良ければ、頑張ります!」
健気に頑張る。アピールのフレイミ。
「わっ、私だってネールなら任せてよシン!」
レイラに対抗心燃やして、シンクの反対の腕を捕まえる。同じ女性でも。ヒナエの扇情的な肉体美と。蠱惑的な眼差しに、生唾ゴクリ、シンクは真っ赤になるが、
「そうだな~。モレンさんが優勝出来たら。二人と別々の日に。デートでどうかな?」
二人の主張に、妥協案をだした。すると二人は晴れやかな笑みを浮かべ。 「ありがとうシン!。俄然やる気になるわ」
「わっ私だって負けません」二人が、バチバチ火花を散らせる横で、
「わっ私も……、とか言ってみたり……」
おずおず主張したフレイミに、二人は新しいライバル登場かと。厳しい眼差しをに向け。
「ヒッ……」
怖さのあまり首を竦めた。少し考えてたシンク。 「じゃ、三人が、モレンさんを優勝出来たら、別々の日に。デートでどうかな?」
あっさりシンクは受け入れ。逆にフレイミがアワアワ緊張し出した。
「……シンクがそういうなら、仕方ないわ……、フレイミさん、わかってると思うけど、貴女には負けないから」
囁く声で、宣言をされ。真っ赤だったフレイミは、一瞬で血の気を失っていた。
「なんか、凄いことになったわね……」自分のほってった。頬に触れながら。本物の王子様の懐の深さに。ドキドキさせられぱなしである。
「皆さん。よろしくお願いしました」
素直に頭を下げていた、
エピローグ
今まで、人に頭を下げたことがなかった私は、人と関わることが、苦手だった……。それがちょっとした頑張りで、こんな出会いもあるんだと、帰り道楽しくなっていた。
三人には、明後日屋敷にくるようお願いして、不安はいつしか消えていた。
「私は見た目だけ。表面だけでしか、見てなかった」
違う、わかってたはずだ、それがいつの間にか、自分の殻に閉じ籠り。相手を枠に嵌め込みたかった、それではダメだ。
「何だがすっごく楽しい!」
クスクス笑い出した。




