閑話翼を下さいお姉さま……って、なぜ私が?
プロローグ
━━東大陸アレイク王国、王都カウレーン。
━━西側にある。通称職人通り。小さな裏通りには、所狭しと。沢山の職人が店を出していた。
最近……、あの小間物屋に変わった亜人が、住人になって、しばらく沢山の人が、彼女サノビアを見に来ていた、美しい容姿。豊かな肢体。多くは男性客ばかりだったが、店の売り上げが三倍になって、ミリアは上機嫌だ。それと言うのも……、 「サノビア姉~。おはよう♪」
リナ様が、ギュッて抱き着いて甘える。サノビアも嬉しそうな優しい顔で、
「リナ様おはようございます」
ギュッと抱き締め。それはそれは嬉しそうに笑うのだ、新しく出来たお姉ちゃんは、リナを守る為に。
側で一生過ごすことを誓い。中央大陸から異国とも言うべき。アレイク王国に移り住んだ。
女神もかくや、背の翼もあって、美しい容姿のサノビアは、アレイク王国の人々から、戦乙女と呼ばれてた。本人は知らないが、そんなサノビアに一目惚れした。学園生徒がいた。
「すっ、素敵です~サノビアさん……」
彼女モレン・カルメン・オードリーは、一般の服飾科生徒で、かのエドナ・カルメン・オードリーの弟の娘で、父は世界有数の服飾デザイナーである。
「私の専属モデルにしたいわ~」妖しげな舐めるような目で、サノビアを見てムフムフ笑うから、
「怖いから、他所でやってくれ」
通りの角で、金型鉄鋼の店を営む。ドワーフは、いかにも邪魔だと苦言を言うが、恋する乙女ならぬ。いやマッド服飾職人を目指すモレンには、伝わらずムフムフ笑いだした。流石に気味悪く思い、見なかったことに決めて仕方なく。店を開けるの諦めた。
近所の騒ぎなど、あまり興味ないサノビアは、ただいまリナと、一緒にいられる喜びに、でれでれ中である。
モレンの住まいは、南にある劇場側で、父は貴族御用達の店から。劇場で使う。衣装の発注受ける店まで、幅広く商いをしている。モレンにとって小さな小間物屋など。気にする必要も。興味すら無かった。
それが……、あのコンテスター姉妹。フレア=カレン・ダレス、シアン・イナバは、ブランドミヤマの店を選ばず。あろうことか……、中央大陸で行われたコンテスターの演技用ドレスを。小さな小間物屋に発注するなど。言語道断である。マッド服飾職人を目指すモレンにとって、許さざるべき事態である。自分の綺麗な女の子達をひんむいて、無理やり採寸する喜びは、自分だけの物。それを汚された気がして、観察してたのだが……、
夏休みに入った途端。しばらく暇をもて余した。小間物屋が休みをとっていたためで。モレンにとって忌々しい限りだった。そんなある日。夏休みの終わり間際……。女神もかくやの美しい翼人。女の子を連れて中央大陸から戻ってきた。
太陽に煌めく金の髪。絹のようにキラキラ輝く翼。男性は無論。モレンをも魅了する。異性ならば一目惚れだろう……、
揉みしだきたい豊満な乳、ムフムフ手をワキワキしながら、よだれを垂らした。あの身体を心ゆくまで採寸して、自分がデザインした服を着せたい。それが今の願いである。それとな~く父におねだりしたのだが、すげなく断られた……、モレンは知らなかったが、
それには理由があって……、そうは全く見えないが、あの小間物屋が、実は王室御用達の店で、アレイク王国の重鎮が、密かに会談する特別な店だったのだ……、しかも女店主は、父曰くやんごとなきご身分とのこと。
「口惜しや~、口惜しや~」
呪いの言葉ともとれない呟き。リナはキョトンと見上げ。首を傾げた。ハッと我に反ったモレンは、サノビアとリナが目の前に。立ってたことに狼狽した。
「お姉さんどうして?、毎日サノビアさん見てるけど、何の用かな?」
ニッコリ可愛らしく。笑みを浮かべてるが、ちょっと迫力があって、サノビアは息を飲んでいた。リナの様子がまるで、シンク王子が時折見せる。大切な物を守る時。さらにはオーラル王が見せる眼差し、何者の嘘、偽りは通用しない似ていた……。強いプレッシャーすら与える小さな女の子に。ビクリ顔を強張らせていた、
「あらリナ。私が声を掛けようと思ってたけど……、そうね貴女に任せるわ。好きになさい」
「はあ~い♪お母さん」 さらに娘と同じく。モレンを認めていた。母ミリアの顔に浮かべてるのは、やたらしつこい客に見せる。いわゆる営業スマアルを張り付け。さらりと近日に買い物お願いね~♪、と言わんばかりあっさり娘に任せていた。困ったのはサノビア。どうしたものか?、思案してたら、
「お姉さんは変態さん?」
ド直球な質問を投げ掛けた。
「なっ。違う違う違う、怪しいのは認めるが、変態のようなやからとは断じて違う!」
力一杯。本気で否定。ジィ~と見られ。ややだじろぐが、マッド服飾職人として、引くわけには行かない。生真面目に。鼻息荒く。リナを見下ろすこと。
しばらくして、やや警戒を解いたのが、サノビアにはわかった。
「お姉さんお名前は?。私はリナ・シタイル」
「わっ私はモレン、モレン・カルメン・オードリー、マッド服飾職人と、呼びたまえはっはははは」
薄い胸を張り。馬鹿笑いを初めた女の子に。パチクリ目をしばたきながら、一つ頷いて、
「やっぱり変態さんだね♪」
あっさり切り捨てられ。グサリ心を突き刺され。胸を押さえながら、
「ゲフッ」
謎のダメージを受け、膝を着いた。会心の一撃だったか、プルプル震えながら、リナに手を伸ばし。
「だっ、断じてぢがう」
いまにも泣きそうである。リナを守るべきか、連れて店に戻るべきか、迷う所である。「じゃ、危ないお姉さんてことかな?」
サノビアは、リナの横顔を見て、戦いた……、ニヤリ不敵にリナが微笑していたのだ。
「ちっ違う、きっ危害は加えるつもりはない!」 慌てて小さな女の子のリナに。言い訳するのだが、端で見てると違和感が強まる。
「ええ~本当かな?、だってサノビア姉を、ハーハー言いながら見てたよね?。それって周りからみたら。危ないお姉さんにしか見えないけど~?」
グハッと呻いていた。
「せっ、正論です。しっしかし私は断じて、変な気持ちで」
ズバリとか音がしそうな勢いで、サノビアを指差し。
「翼ある。お姉さんを愛でてた訳ではない!。………………………あっあ………………の~………………………」
リナの冷たい眼差しに。言ってて、段々自信が揺らいで来たらしい。
「ふう~ん……、だからッて、相手やその家族に。気味悪がられたら、お姉さんはただの変態さんだよね~♪」
まさに一刀両断。名刀の切れ味。
「グハッ………、あっ……、あう…………」
リナの前に。倒されたモレンは、茫然自失と力尽きた、
「お客様じゃないなら、迷惑になるから、帰ってね~♪」
バイバイしながら去る。リナの背を、茫然自失と見送った。再起不能……、もはや言葉はなない。ただ心がポッキリ折られていた。
「お嬢ちゃん。まだいたのかね」呆れた顔をしたドワーフの職人は、おはようと挨拶してくれた。可愛らしい隣人に笑みを浮かべ、にこやかに返事を返した。
「邪魔じゃ、早く帰りなさい」
ビクリ……、背を震わせたモレンは、今にも泣きそうな顔を上げて、力なくコクリと頷いた。
とぼとぼ……力なく。帰路に着いた。モレンを見送り。
「流石ミリアちゃんの子供じゃて……、今度嫌な客のあしらい方。リナちゃんに習おうかの~?」
真剣に悩むドワーフ職人であった、
……一方。リナの言葉に斬り倒されたモレンは、意気消沈しながら、帰路に着いた。
エピローグ
珍しくあの娘が、夕飯を抜いた……、めったにない出来事である。娘の落ち込んた姿を見たのは、両親供に初では無かろうか?、父ミヤマは、平和到来と密かに喜んだのは、言うまい。妻に散々話を聞くよう言われて……、仕方なく、短い平和を噛み締めながら。娘の部屋を訪れた。
━━娘の部屋は、相変わらず服飾工房のようで、女の子らしくないが、ベッドに置かれた。竜がデフォルメされたぬいぐるみだけが、唯一女の子らしく見せていた、小さく嘆息しながら、娘に。
「今度は何をやらかしたんだモレン?」
やらかした限定から、話を聞き出したら……、思わず苦い顔を浮かべていた。
「あの女か……」
今から20以上年前になるが……、ミヤマは演劇の女神リレーヌの衣装を、一手に手掛けていた時期がある。救国の英雄と呼ばれる前の。優しい青年だったオーラル、姉のミリアとも顔見知りであり。まだ古い劇場で公演していた時期になるが、劇団員の主演女優、相手役の二人が、急病で相次いで倒れ。窮地に立たされた事があった。
「あれはリレーヌさんが、『英雄物語』を発表すると言ってた時期で」
思い出すのは、二人の姉弟を。翌日女優と男優として、連れてきたことに、誰もが驚き、
「二人には、主演を任せます」
誰もが反対したのは言うまでもない。
「舞台は明日ですよリレーヌさん、ただの素人演劇では無いんです!、貴女の初めての脚本、それも柿落としの舞台ですよ」
当時を思い出して、懐かしい気持ちになった。
「あの時は自分の衣装が初めて、リレーヌに認められ、有頂天だった……」
二人のこと知りもしなかったから、そんなことが言えた、未だにあの二人以外そんな人間はいないそう思えるほど、舞台初日まで僅か2日で、舞台に立って、見事な演技に度肝を抜かれた
「しかし……」
娘のモレンをチラリ横目で見て、小さく嘆息して、実の姉に。性格がそっくりになった娘を。心配してたら。案の定である。大事にならずに済んで安堵していた、
「流石は……、おっと内緒だったが、フムフム……、良い機会やもしれんな~、あれの先生に相談してと」
モレンはアレイ学園の一般服飾科に通っていた、あの姉のこと、すぐに食い付きそうな予感もある。
面白い事になるやもと、久しぶりに楽しい気持ちになって、
━━翌朝、姉エドナと久しぶりに会い。自分の考えを話した。
「へえ~、あんたにしては、面白いこと考えたわね、フフフ……、うん悪くないわ」
艶やかに笑う姉に、同席した教頭とモレンの先生である。セラナ教諭は縫製科の先生で、服飾科も兼任なさってる。朗らかな。何時も笑みを浮かべてるような。柔和と表現出来る先生で、問題も多い服飾科生徒達も、セラナだけは逆らわない。それは……、
「どうだろうかセラナ先生?」
あの姉もセラナ先生には、一目置いていた。普通科の先生達を纏める立場、もう一人の教頭であるためもあるだろう。それ以上に……、
「あらあら面白そうね♪」
クスクス笑いだしていた。
数日後……。
普通科生徒を震撼させる発表がなされた。
『第1回。コーディネートコンテストを開催と━━』
服飾科、縫製科、カット科、演劇科合同でグループを作り、生徒達をモデルとして、採点を行うと言うのだ、
優勝したグループには、好きなモデル10名を選んで、デザインした服を着てもらい、大々的キャンペーンをやり。ブランドミヤマで、服が売り出されると言うのだ、モデルは演劇科以外からでも可と、書いてあり。モレンはカッと目を開き。「ワハハハハハ!、私の野望にとって、良い機会だ」
高らかに手をワキワキさせながら、マッド服飾職人。デザイナーを目指すモレン復活であった、
「必ずサノビアさんを!、私のモデルにして見せるわ」
野望を口にして、鼻息荒く自信満々に嘯くのだった




