閑話あの蠱惑的な奴の名は……
プロローグ
━━西大陸、パルストア帝国。帝都━━。
城に向かう大通りから、ひょいと一つ裏にある通り、通称=緑園公園前に。
今━━帝都で大人気。カフェ・ブルー西大陸本店はあった、
店舗の上は、1人の女性が、自分の隠れ家として購入していた、彼女の名をミューア・サリアン、闇ギルドの長であり、暗殺者サリアン家の当主であった、そんな彼女は、最近夢中な存在がいた、
肌は浅黒く、絹のように滑らかな光沢。奴の上から、熱々のチョコレートがかけられ、芳醇な味わいの生クリームとのコラボレーション……、
サクリ……、
一口食べれば、もう幸せな気持ちになれた━━。「よお~、久しぶりだな、元気そうでなりよりだ」
「クッ………」
また来たのか、色々言いたいことがあるが、まあ~いい……。この間の礼もあるから、鼻を鳴らした。
「旨いか~?、エクレア」
ピクリ小さく反応したのを。内心笑っていた、ブルーの食わえてるハーブは癖だ、枝をピコピコさせるのは、結婚して出来た娘のこと考えてのこと、幼い子供の手前。タバコ吸うわけにもいかず。これで口寂しさ誤魔化していた。
「あんた……、近衛連隊長になったんでしょ?、なんでしょっちゅう他国に要るのよ」
「まあ~言いたいことわかるよ。俺もそう思うが、お前んとこの優男が、オーラルと結託したせいだろうが……」
「うっ……、知ってるけど……」
チラリと見てたが、いちいち気になる奴だわ。あむっとエクレアをほうばる。
悔しいけど美味しい……、視線を送る。
「まあ~、そいつはそう簡単では無いが、どうだろう、パフェ作ってみないか?」
「パフェ?、」
聞いたことが無いが、何だか美味しそうな予感がした。
ニヤリ表情がコロコロ変わるから。分かりやすい、ブルー・ファミイュは、気安く、ミュアの頭をポンポンしながら、
「今日は、無理だが、明日夕方裏に来いよ」
ちょっと頬赤くしながら、嬉しそうに笑みを浮かべて。
「しょ、しょうがないから、行ってあげるわ」
素直でないミューアであった。
お昼を、エクレアで済ませて、アジトの一つに顔を出した。
「お頭様。最近ローレイ商会の。ハーレスの動きが怪しいです」
「そう、ついに動き出したか、ピアンザも、ハーミュアも気をつけてるけど、注意してね」
「承知しました」
国内の有力者。中でもローレイ商会の動きには、注意が必要である。以前の内乱も。裏でハーミュアが、手引きしてた疑いがあった。ついでに。他国の情勢に目を通し。段々面倒になって来た。
「まとめたから。リーロンに渡しといて」
「はっ」
この数年、闇ギルドは、その役目を変えつつある。今では情報戦が、主な仕事である。かなり面倒だが、それも仕方ない。
「それはさておき……」
明日のこと楽しみで……、つい足取りも軽く、ニマニマ顔が緩むミューアであった。
━━朝の会議が終わって、見つからない内に。隠れ家に直行。相も変わらず。沢山の人で賑わってた。カフェ・ブルー。時間はまだあるから、ちょっと休むことにして、時間を潰した。
━━日差しが変わった……、数分単位で寝ることが出来るミューアは、素早く目覚め。伸びをした。外を見れば、夕日がカーテンの隙間から入って来たのだと理解した。それから下の様子を見れば、閉店準備が始まっていた。
「顔洗ったら、着替えなきゃ……」
お菓子作りは、とても繊細で、チョコレートなど埃一つ。気泡一つで、台無しになることもある。
肩口で揃えてる髪を、きちんと髪が邪魔にならないよう。布で巻いて、カフェ・ブルーの仕事着に着替えた。
お店の裏口に降りてくと、パティシエの何人かと挨拶して、お店に入る。ミューアとは顔見知りだから、挨拶程度はする。またお菓子好きなのも知られており、今日は居ないが、女チーフの新作味見を、させてもらう事もしばしば、ミューア用の白い前掛けして、腕捲り、流しで指の先から、丁寧にブラシ使って磨き、堪能に洗う。
「随時様になってるな~、うちのチーフが、気に入る訳だ」音もなく現れ。ハープの茎をピコピコ、にやにや嫌味に笑う。本当にムカつく男だ。鼻を鳴らしながら睨む。
「お前さんさえ良かったら、こっちの経営任せたいんだが~」
チラリそんなこと言うのだ、ムムムって悩んじゃう、気分悪い処か、少し嬉しい。ニマニマ笑いそうになり、そっぽ向いた。
「フンまあ~いい。考えとけ。では始めるぞ、お前アイスクリームて食べたことあるか?」
聞いたことないお菓子の名前である。
「アイスクリーム?なにそれ」
思わず興味を抱く。
「まあ~材料は単純で、プリン作るのと大して変わらん」
そう前置き、アイスクリームの作り方のレクチャー受けながら、試しにやってみた。
「うっ……確かに、疲れる」魔法で大量の氷作って、二層に改良された、小樽の一層目に敷き詰め。ミルク、卵黄、バニラビーンズ、かなりの量の砂糖を混ぜたので銅で作られた容器の二層目に入れて、溢れないようしっかり蓋を締め。樽の横にあるハンドルを回した。
最初は軽快に回ってたハンドルが、徐々に重くなり、
「それくらいで良いだろ」
真っ赤になりながら、額に汗をかき、ようやくかと安堵した。
ブルーが蓋を開けると、ひんやりした空気が流れてきた、試食用のティースプンてサクリ、そんな音が聞こえそうな、滑らかに切り取られた、乳白色の個体、
「これがアイスクリーム……」
ゴクリ唾を飲み込み、さっそくあむって一口、
「ん~!!、冷たい……んしい」
スプーン食わえたまま、恍惚と感想をのべる。
「だろ?、こいつだけでも十分うまい。だがパフェはもっとうまいぞ~」
なんて言われたら、頬が幸せそうに緩んだ。
ブルーの考えたパフェとは、パティシエの作った、冷たいデザートって意味だと教えられ。なるほどと頷いた。
ブルーが用意したのは、長細いシャンパングラスに。砕いたクッキー、カシスのリキュールをスプーンでほんの少し流し込み。アイス、果物、砕いたクッキー、再びアイスの層を作り。軽い食感の焼き菓子、果物、生クリームで飾り付け、再びカシスリキュールを足らし出来上がりである。
「季節の果物が何でも使えるから、様々な組み合わせと。味が楽しめる。」
「そうだよね~今なら苺や、ライチかしら?」
「そうだな~、逆の発想も出来る」
チラリ意味ありげに笑いながら、冷蔵庫から別の樽を幾つか出して、
「それぞれクッキー、焼いたナッツ、ドライフルーツ、苺、ライチを試しに混ぜたアイスクリームだ」
アッそうか……、察しの良いミューアに小さく頷き。
「お前には食べて、感想聞かせろ」
「なっ、何で私なのよ」
ポンポン頭を気安く撫でなられながら、ムッツリして抗議の声を上げた。
「お前の味覚は、俺が知る限り、信頼に足りる」
さらりと嬉しいこと、言ってくれちゃって♪、ならやってやろうじゃないの。意気揚々とスプーンを持った姿に、優しい眼差しを向けた。
エピローグ
ミューアの意気込みも何のその。実は作られたアイスクリーム……、その数124種類。流石にお腹が冷えて、
翌日━━風邪を引いて……、トイレと友達という。辛い1日を過ごす羽目に。
「アンニャロ!」
色々言いたかったが、さっさと帰りやがった。
━━さらに半月後……、
帝都に新しいお店がオープン。
B&Mアイスクリーム屋さんである。しかもフレーバーは124種類……、オーナーは、ハーブの茎をピコピコ。不敵に笑うブルー・ファミーユだった。「あんな蠱惑的な危険な食べ物。しかも店を出すだと!。私はどうしたら良いのだ、困るではないか……」
にっくき奴の名は、アイスクリーム━━。鼻息荒く。苺のフレーバーに、スプーンを刺して一口あむっと、
「……んしい」
頬が緩むミューアであった。




