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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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帰省中ですが何か?

シンク皇子凱旋。輝きの都に一報が入った。シンクの姉のような存在ラシカ、竜騎士の師であるミネラが、南洋港で出迎える

プロローグ



━━中央大陸、輝きの都プロキシス。



白銀に輝く。美しい城を囲むよう。美しい街並みは整備されていた。城門から城まで続く王の道と呼ばれる。大通りを中心に。商家が店を出していて、買い物客でにぎわっていた。


この数年で……。荒廃した首都近郊の土地も。益々豊かな土地が増え、生命力豊かな国へと変貌していた。

それは国王オーラルの政策で、植林事業も進み。新しい町や村で、品種改良した小麦を育て、稲作事業が成功して、収入が増えたと言う理由も。人々の気持ちに喜びを与えていた。



━━10年前になるが、中央大陸は小さな漁村程度の二ヶ所の港を作った、間もなく海中船が四大陸と。中央大陸の国交を繋げ。瞬く間に小さな港は発展して、大きな港町として三年前。新たに開港した、するとどっと世界中から人々が集まるようになり、それに伴い沢山の仕事が増えて。人口の増加。まだまだ足りないこともあるが、国として大国と比肩するほどの様相を、整えつつあった、



━━プロキシスは白銀の城を、星の頂点として、遠目には解らないが、城の城門の如く。前に建物が2つ建てられていて。片方は土竜騎士団の屯舎である。ギルドの窓口も兼ねていた。反対側の建物は、商業ギルドの窓口である。その建物に隠れるように。建られてる邸宅が、国王の邸宅兼。国政を纏める各部署が、三階建ての一階部分に集められていた。左の豪奢な豪邸は、全室ゲストルームになっていて、数百人ものゲストを、何時でも受け入れられるように。建てられていた、さらに商業ギルド、土竜ギルドの建物の裏手に。各軍部の部署が隣接しているため。警護の意味でも堅牢。通路を塞ぐことも可能で、城壁に代わる造りとなっていた。



街には毎日のように。商いを希望する者が訪れる。商業ギルドで、手続きを済ませ。一定の税を納める代わり。用意されてる商店を借りて、商売をする仕組みにしていた、王都以外の町、村での商家には、三年の商業ビザを発行して、税を納める期日を設けていた。


国の外から、様々な物資を売りに来る商人は、新しく開港した。港に設けた税関で、輸入品を全て国が買い取り。商売をするものに、僅かな税を課して買わせる方式をとってるため。極端な増税もなく。比較的安定的な暮らしを行えるようにしていた。



その為。貧富の差はあまりなく。飢える者も出さぬ細やかな政策は……、民の暮らしを豊かにし、さらに国内の財政も豊かにした……、まさに良政を課す。オーラル王の元。年々優秀な人材を育てる助けとなっていた、



━━白銀に輝く城の裏手……、民は知らない王族専用の厩舎が作られている。

それには2つの大きな理由がある

一つは厩舎の地下に、巨大な土竜が一匹なら通れる地下通路が造られてる。一方で━━、

厩舎の上部分に、一匹の巨大な白銀竜が暮らすためだ、



竜の名をシンクレア、勇猛な竜王の娘であり、美しいルビーアイの瞳をゆっくり開いた姿は、まさに竜の女王である。知的光を瞳に宿し。ゆっくり首をもたげ。入ってきた者物憂げに見ていた……、強い魔力に反応したシンクレアは、精悍な面立ちの癖ある黒髪を見て、小さくため息を吐いた、

「すまんなシンクレア、シンクと誤解させたか?」

ブスリ男から顔を背け、翼に顔を埋めると丸くなった、これにはオーラルも苦笑隠せず。眠そうな目を細め。白銀竜の首筋を軽く撫でる。チラリ目を開けて、何よ?、的な目をするから、

「シンクレア、シンクが戻ってくるぞ」クワリ目を開いて、オーラルを覗き込むよう、慌てて身体を起こした、随分な変わりように、優しく微笑む、

「夏休み、君に会いに戻るようだよ」

『本当に?……』

喉を鳴らすような幼い音が響く、不思議と土竜騎士、竜騎士にしか竜の思念は聞こえない。シンクレアが放つのは、幼子の思念だった。

「ああ、先ほど連絡があった」

『嬉しい……』

まるで微笑するように。目を細める白銀竜に、オーラルも優しい気持ちになる。━━もう四年になる。生まれて間もない卵だったシンクレアは、シンクと出会った瞬間。卵から孵った……。本当に不思議な縁である。それからシンクレアはシンクを本当の兄として慕い。シンク一人でしばらく世話をしてたから、竜と騎士というよりも。兄妹のような関係であろうか?、



竜だから身体は直ぐに大きくなった、でもシンクレアは、まだまだ子供である。仲の良い世話係のセナが、先だって北大陸に行ってしまい、誰からも構って貰えず。拗ねてたのだろう、急に機嫌良くなったシンクレアを、構いながら。シンクがどう成長したか、楽しみになっていた、




━━西大陸、パルストア帝国。


日差しの強くなる午後。幼い皇子が、すやすや寝息を立てる横で、シレーヌ王妃は、優しい笑みを讃え。我が子のために、扇で扇ぐ。サッと……爽やかな風が、水辺にある別邸を流れる。

「……寝たようだな」安堵のため息を吐いた夫に、思わずクスクス笑みを深めると、ピアンザはばつが悪そうに頭を描いた。皇子のクライムは、甘えん坊だから、父が1日遊んでくれて、終始ご満悦であった、来年で5つになるが、内気な性格は、少し心配になる。

「あなた……」

妻の気遣わしげな眼差し。真剣な顔をしていて、小さく大丈夫だと頷く。

「リルムならば、大丈夫だ……」

端的にしゃべる。口下手なピアンザに、相変わらずだわと小さく苦笑して、つい意地悪に。

「シンクもおりますしね」

グッと息を飲んで、表情を取り繕うの失敗して、嘆息した、あまりに早く手が離れてしまった、愛娘リルム……、ピアンザにとって、愛する妻に似た風貌ゆえ、口下手ゆえに、素直に声をかけてやれず。もどかしく思ってることを、シレーヌは知っている。

「大丈夫ですわ。あの子なら……」

夫に似た鋭い先見性。私に似たのか……、行動力ばかり良くなって、それは不安に思うが、

「エルマがいますし………」

最近━━娘の手紙に書かれてる。友人。ライバル達のことは……、シレーヌとリルムだけの秘密である。それに旧友ギラムも……。小さく笑みを浮かべ。夫の腕に甘える。変わらず美しい妻の笑みに。照れ臭そうに目を細めた。




━━夏休み週末。


シンクは明日の朝。中央大陸に向かう。魔法討論会・本選出場のアレイ学園の『院』生と共に。しばしアレイク王国を離れるので……。仲のよい。タイチに別れを告げるため、アレイ教の大聖堂を訪れた。

「タイチしばらく中央大陸に戻るから、数週間留守にするな」

「シン兄………」

グッと唇を噛んだタイチは、拳をつきだしてきて、シンクは笑みを浮かべ、そっと拳を合わせた。グイッと目をこすりつつ。

「シン兄!、いってらっしゃい」

「タイチ、行ってきます」

幼い友人の優しい気持ちが嬉しく。シンクは笑みを深めた。



挨拶回りを済ませ。伯母夫婦の店に帰宅したのは、夕方である。店に入り話し声が聞こえたから。ガーデンテラスを伺うと。赤みかかった髪を耳元で揃えてるシアン。腰まで伸ばし。丹念に手入れされた髪を、後ろに流すフレア。姉妹の母で、ボーイシュな髪形に変えた、切れ長の目が、鋭い印象を与えるが、シンクを捕らえ小さく笑みを浮かべた、



明日は伯母夫婦、リナも同じ船で行くから。シルビアさん達も明日の話に来たのだろうか?。

「お久しぶりですシルビアさん。素敵な髪形ですね」

「あら~ありがとうシンク♪」

少し照れ臭そうにはにかみ。姉妹に小さく笑われ。お茶目に叩くふりをして、みなの笑いを誘う。みんな楽しみなのだ、

「ところでシン。貴方竜を飼ってるそうね?」

じろりフレアに睨まれてしまい。理由が分からず少々……戸惑いながら、

「シンクレアのことですか?」

やっぱりね……、つんと拗ねた顔を見せる。訳もわからず首を傾げてると、

「シン、お姉様は、竜が好きなのよ」

姉の気持ちを代弁するよう口にした、妹の発言に慌てた様子だが、チラリ伺うような目をしていたから、ああ~少し考えて、優しい笑みをフレアに向けていた。「フレアさん。シンクレアはまだ子供で、甘えん坊なんですが……、良かったら会ってくれませんか?」

優しい申し出に、小さく手を握り。喜びを隠しながら、そ知らぬ風を装うと。

「シッ、シンクがそこまで言うなら、会ってあげるわ」

つんとして言うが、喜びは隠せず。頬が緩む姉に、

「素直じゃないんだから……」

「なっ、いいじゃない!」顔を赤くした、思わずシンクまで楽しさが伝播して、口元綻ばすと、フレアはますます赤くなって……、笑いを誘った、賑やかになりそうで。帰郷が楽しみになっていた。




━━翌朝……。伯母夫婦と供に。乗り合い馬車で、交易の港町ドマーニに向かい。早船でギル・ジータ王国に向かい。海中船で、中央大陸に向かう旅路である。


━━順調なら明日の夜には、中央大陸の南洋港なんようこうの町に着く。

「ニイ!お魚さん」

目をキラキラさせて、船の推進力に、波が生まれ、朝日の光にまるで……誘われるように、小魚が跳び跳ねていた、幼いリナの素直な言葉に。普段厳めしい、海の男達は相好を崩し。仲の良い兄妹の姿よと見ていた。「久しぶりにリブラに会えるな……」

夫の嬉しそうな呟に、小さくクスリと笑い、

「そうね~。あの子ブライアンも連れて来るようだし。楽しみだわ~」

艶やかに微笑する妻。思わず横顔に見とれてると、視線に気が付いたミリアは、ほんのり頬を赤くしながら、夫に寄り添う。

「お母さん~、お父さん~」

仲の睦まじい姿が、嬉しいのかリナは、満面の笑顔で、二人に走り寄り。抱き着いていた。リナのそんな姿を見てると、シンクレアの白銀の美しい姿と、愛くるしい赤い目を細め。甘えて来る姿を思い出す。

「元気にしてるかなシンクレア……」

右腕がピクリ動いて、左手に触れた、

「ありがとう~ラケル。心配してくれて」左手で、優しく右腕に触れた、心配性な右腕は小さく脈打ち。また普通の腕に戻る。右腕の義手をラケル、左の義足をクエトと呼んでいる。二匹は意思を持った疑似生命体でもある。シンの使い魔。違うな……、仲間である。予備の義手、義足に意思は無いが……、デーアさんや、ケイタさんから……。二匹の存在を内緒にするよう、言い含められていた。珍しい存在だ……、狙われ兼ねないからだ。シンクが義手、義足だと知ってる者は少ない。意思を持った義手、義足なのを知ってる者はさらに……、父を含め僅か5人だけである。

「ニイ!」

天真爛漫な笑みで。リナはシンクの右腕を迷わず握り。しきにり引っ張り、指差した先に━━━。「ギル・ジータ王国が見えてきたね」

「うん!」

船に乗るのは、物心付く前である。リナにとって見る物全てが、光輝いてることだろう。

「リナ。あっちに着いたら、妹を紹介するよ。お友達になってくれるかな?」

「えっ……、うん!、リナお友達になるよ」

キラキラした可愛らしい笑みで答えてくれた。リナならシンクレアと、きっと仲良くなれる、そう考え安堵していた。



━━ギル・ジータ王国。港街。東大陸最大の交易港には、毎日沢山の船が入港していた。大小様々な国々。街から訪れる商人により。商会のある港の検疫所は、人出が凄まじい。



伯母夫婦と、海中船の乗り場になる。交易ギルドの受付を済ませ。乗船が始まるまで、少し時間があると分かり、伯母さんの提案で、早めに食事を済ませることにした。

「いらっしゃいませ~」

かっぷくの良い。朗らかな笑顔が目を引く。看板娘に惹かれ。早い昼食をこの店でとることに決めた。店内からえも言われぬ香辛料の香りと、地鶏を焼く。香ばしい香りに強く食欲を刺激されたからだ。一番の理由は鳥を店頭で、焼く様子が見れる造りになっていて、リナが楽しげに見ていたのがきっかけである。

「何が、お薦めかしら?」

テーブルに着くと。直ぐにオーダー取りに来たので、悪戯ぽく伯母が問いかけた。するとニッコリ人好きする笑顔を浮かべて。

「だったら鶏の香辛料焼きと、言いたい所だけどね~。お粥だよ」意外なお薦めに、意表を突かれ。目を丸くする伯母に、意味ありげな眼差しを向けて、

「うちのお粥は、香辛料たっぷり染み付いた鳥の骨を━━出汁にして、コトコト半日じっくり煮込んだスープを使っててさ。うちの国で取れた米から煮込んだお粥は、絶品さあ~」

今にも。よだれを垂らしそうな女性の様子に。伯母さんまで思わずゴクリ。唾を飲み込んでいた。

「じゃそれを3つと、鶏焼きを2つ頼むわね」

「ハイよ~。お嬢ちゃん用に、小さい器と匙を持ってくるわね」

心得た物で、言わなくても察したようだ、思わず感心していたら。

「シンク覚えておきなさい、こうした店には、食べてもらいたい料理とは別に、とっておきの料理があるのよ」伯母の世間慣れた処世術に。流石だと舌を巻きながら、感心してるとチロリ舌を出して、

「本当は旦那の受け売りだけどね」

クスクス笑いながら種を明かして、お茶目な一面を見せる妻に、困ったようなそれでいて優しい眼差しに、目を細める伯父を。好意的に見ていたシンクは、リナと目が合い思わず笑い合う。



間もなく恰幅のよい看板娘が、見た目より軽やかにテーブルをすり抜け。大きな椀にたっぷり入った白濁した粥、中にナッツを煎った粉末。黄色に輝く鳥の油。鶏のほぐし身が入った、大きめな椀が3つがデデンと乗せられ、こんがり鶏の半身が飴色焼かれ。食欲を刺激する香辛料焼きが二枚、大皿に乗せられテーブルにドンと置かれた。早速ナイフを入れると。ジュワリ肉汁が溢れていた、鶏肉を小さく切り分け、食べやすい大きさにしたものをリナの小皿に乗せる。

「ニイ!ありがとう」

満面の笑みで、早速鶏肉にかぶり付いた。ぷりっとした噛みごたえ。香る香辛料。皮がパリパリだから一瞬肉は固くなってるかと思えば、そうではなく。とても柔らくジューシーに焼かれていた。

「うわぁ~美味しいよ♪」

「リナお口は、これで拭いてね」

水で濡らしたタオルをリナの前に、用意する。流石に呆れた顔をしたミリアは、

「用意が良いのは、リーラに似たのかしら?」小さく嘆息されてしまい、思わず苦笑したシンクを、首を傾げきょとんとリナが見上げていた。美味しい昼食を済ませて。先に海中船乗り場を確認し。乗船まで時間があるので、お土産店をリナと見て回ることにした。


「あっニイ、これ見て!」

リナが掲げたのは、双子を思わせる熊の人形である。じっと思案するリナに、欲しいのかな?、そう考え。価格を見て、比較的安く。シンクのお小遣いでも買える金額で、

「リナ、シン兄ちゃんが買ってあげるよ」

「あっ……、大丈夫!、自分ので買うの!」

珍しく強気に言われて面食らう。それを見ていたミリアは、はは~ん意味ありげな顔で、理解を示すが、隣の夫オリバーさんは首を傾げていた。僅かにお手伝いで貯めてた。自分のお小遣いを、一生懸命数え。店番のお爺さんに渡して、包んでもらっていた、

「ニヒヒ♪」

大切に胸に抱くリナ、訳も解らないが、拘りがあるのだろう……、再び手を繋いでお土産店を見て回り、シンクは蜂蜜漬の金柑きんかん。蜂蜜飴を沢山買って、魔法のリックに仕舞う、

「そろそろ乗船しましょうか?」

「は~い」

伯母さんに促され。元気一杯にリナが返事をして、終始ご機嫌に笑いながら、シンクの手を引っ張っていた。そんなシンクとリナを終始、微笑ましく見ながら、

「リナたら、よっぽどシンクの妹白銀竜を、気にしてるのね」

「あっ……、しかし……」難しそうな顔で言い淀む夫は、そうか知らないのだったと思ったが、あえて教えずに。彼方で驚く姿を楽もうと密かな楽しみに決めていた、だから訳も解らないオリバの腕を掴み。クスクス愉しげに笑っていた。



━━海中船とは、18年前……、ギル・ジータ王国エバーソン王が、秘蔵していた、白の民の海中都市で発見した、脱出船を元に、機械の国ジエモンの協力を経て。ラトワニア神国の神官による。加工された資材を、聖別してもらい。魔の存在には。触れることすら出来ない船を造っていた、当初誰もがそのような金の掛かる船など無意味だと、声高く言われたが━━、

そんな声など。歯牙にも掛けず決行した。



中央大陸事件のおり。汚染された海を物ともぜず。安全に、海中を航行した実績は。全ての異論を封じた。さらにその性能は、予想以上に素晴らしく。例え嵐でも海中は、比較的安全に航行出来ると証明するや。評価は一変したのは言うまでもない。



……しかも普通の船と、決定的にスピードが異なる。航行が早く。通常の船が、中央大陸に行くのに順調なら3日、西大陸に行くのに10日程であるが、海中船なら中央大陸まで1日と少し、西大陸まで6日で航行可能である。


しかし……。海中船の造船には、莫大な費用が掛かるので、今まで造船されたのは僅か15艇。現在━━公式的に12の海中船が、四大陸から中央大陸を繋いでいた、



シンクが中央大陸から……、聖アレイク王国に向かった時は、通常の船を使い、ギル・ジータ経由で5日がかりであった、此度世界議会。魔法討論会・本選が、中央大陸で行われる。世界各国の重鎮が集まるため。



エバーソン国王の温情により。シンク達は、国賓待遇で海中船に乗れたのである。帰りは父次第になるが、長い夏休み、それに……、リブラ爺ちゃん、ララ婆ちゃん、ブライアンも来ると言う、

「シン~久しぶり」

聞き覚えのある声がして、いきなりリナごと抱き締められ、目を白黒するリナ、後ろを見ると鳶色のキラキラした目で。嬉しそうに微笑まれたら……。照れるシンクを、嬉しそうに微笑みようやく納得して解放された、

「アム、久しぶりだね……」彼女アムール・ステファンとは、ギル・ジータ王国で出会って。ちょっとした事件に関わってた、お別れの日にアムールのスキンシップを思い出して。懐かしいよりも赤くなっていた、

「あれ?、シンクの子供」

とんちんかんな呟き、なんとなくアムール・ステファンと言う。少女の性格を理解したミリアは、

「初めましてアムさん、甥と友達かしら?」

「あっ……お母さん」

母を見つけ。強烈なスキンシップに怯えてリナは、あっさり母の背に隠れた。物怖じしないリナを怯えさせるとは……、妙な感心をしながら。

「リナは、僕の姪だよ。アムだけかい?」

「ん~違うけど探検中」なるほど……、シンクとの間に何かあったと理解していた、

「あっ初めまして、アムール・ステファンです。シンクのお陰で、父が助けられました」

あっさり……、理由を話だし。初めて出会う変わった少女アムの。自分を飾らない明け透けな性格は 、嫌われもするが、ミリアは嫌いではない。そう……タイプは違うが、ミレーヌ皇女に似ている。

「よろしくねアムさん、リナ挨拶して」

「……よろしくです」

おずおずと言った感じで、ミリアさんの後ろから、ちょこん顔を出して、恐々挨拶した、途端に満面の笑みでアムはリナの前に、グイグイ近付き。

「よろしくで~す。リナちゃんて言うのね~、私妹いないから、こんな可愛い妹いたら、良かったのに」

何とも困った顔をするリナに、苦笑を隠さず。

「アムさん。後で良かったら。ゆっくり遊びに来てくださいね」

「あっ、是非お願いしたいです♪、シンまた後でね」

アムは、初対面でも物怖じしない、強い心搭載の。女の子のようだ。

「さあ~少し休みましょ」

伯母のあしらい方に感心しつつ。その意見に賛成した。



━━中央大陸に行けば、伯母さん夫婦は皇族扱いとなるから、ゆっくり休めるのも今の内である。

だけど……そう考える一方で、海中船の出港まで船内を見て回る。アムの気持ちも分かる。ギル・ジータが誇る海中船の中でも。王族専用の特別船内は、かなり広く。船尾に海中を見ながら。食事が出来るレストランがあったり、船内に様々な施設があって。小さな海中船と決定的に違うのは。小さなホテルのような、三層になってる造りだろうか、部屋で荷ほどきして、固定されたシングルベッドにリックを置いて、早速着替えを取り出して、パンフレットにあった船内浴場で、汗を流すことにした。



━━━海中船が出港したのは、シンクが戻って間もなく、部屋に入るや。見覚えのある。赤い髪を後ろで束ねてた姉と、肩口で綺麗に揃えてる妹、切れ長の目が特徴的な。姉妹の母シルビアさんが、伯母さんと談笑していた。

「シンお風呂どうだった?」

「混浴ではないよね?」聞けばフレアが寝坊して。出港間際に滑り込んだとのこと。しっかり者なイメージだが、

「朝は、苦手でね」

ばつが悪そうに、照れ笑いしていた、

「結構広い浴室でしたよ。数人入れますし。因みに男女別でした、船員の話では、地下迷宮の温泉水を使ってるそうで、気持ち良かったですよ」

それを聞いて、嬉しそうに頬を弛緩させていた。

「シアン。髪を洗うの手伝って!」

「しょうがありませんね。お姉さまたら」

呆れたように言うが、温泉があると聞いて、シアンの頬も緩む。



━━コンコン。ノックの後、返事を待たず遠慮なく入って来たアムは、目を丸くして、しばらく立ち尽くし。美しい母子をマジマジ無遠慮に見ていた。何故か目を輝かせる。眉を潜めるフレア、困惑気味のシアン、驚いたようだが、面白そうと成り行きを見守る気満々のシルビアさん、

「あっ……」

「初めまして、コンテスターのフレア、シアン姉妹ですよね!、私ファンなんです♪」

いきなりフレアの手を握り、きらきらした目で見つめられて、戸惑いが、羞恥になり。嬉しそうに薔薇色に頬も染めて、

「ありがとう、えーと貴女は……」

「あっ、ごめんなさい、私はアムール・ステファン、ジータ学園の『院』生で、シンに父を救われてから、ただいま、片想い中で~す♪」

「そっ……え~!!」

シンクは寝耳に水と仰け反るが……。キラン目を光らせ。シアンは何やら姉に耳打ちした。虚を突かれた顔をしていたが、

「……ちょっとアムール……、アムと呼ぶわね?」

「はっ、はい」

シアンとフレアと言う。本人の言葉通りならば……、憧れの姉妹に囲まれ。頬を赤くした、満更でもないようだ。



妙に大人しくなってるから、何だか可笑しい。アムも美人の部類に入るが、二人が綺麗過ぎる為。緊張を強いられている。

「アム~一緒にお風呂行こうか」

「えっ……、それはとても嬉しいです…」

「じゃ決まりてことで、お母様行ってきます!」

二人は、がっちりアムの腕を左右で抱えた。アムを逃がさないためである。

「ほどほどになさいよ……」苦い笑みを張り付け、姉妹を見送る。残されたシンクはどう反応していいか、困ったような笑みを浮かべるだけだ、



それから……、姉妹は、中央大陸に着くまで風呂から上がらず。シルビアさんのほどほどと言う理由を、身に染みて理解したアムである。



……最初こそ。アムールの爆弾発言に。波乱の予感を覚えたシンクだが、夕飯を食べに後尾のレストランに向かう。そこでリーザとバレンタイン教頭。戻らない姉妹を見捨て、シルビアさんも同席する。

「シルビアさん。二人はまだ?」

「ふう~、あの子達、温泉だと長いのよ……、前の事だけど。旅行先で、3日も入りぱなしだったんだから……」「うわ~、それはまた変わった趣味ね……、ふやけそう……」

リーザの率直な意見に、くすり楽しそうに目を細め。

「リーザさんその眼鏡……、リリア先生の?」

びっくりしたように。リーザは目をパチクリ。

「はっはい……、えーとシルビア様は、もしかして?」

戸惑いながら、確かめるようなリーザに、柔らかな笑みを浮かべ。

「そうよ!。私もリリア先生の生徒だったの」

懐かしそうに目を細めた。ちらりシンクを意味ありげに見詰めてから。

「私の上のエルもお世話になった、いい先生でした」

思いやりあるシルビアさんの言葉に。リーザはギュッと胸で手を合わせ、潤んだ目をこすり……。小さく唇を噛みしめていた。

「あっ、ありがとうございます……」

しっとり時間は過ぎ……、夕食を終えたシンクは、早々に休むことにした。





━━━時間は少し戻る。



━━ギル・ジータ王国。港街………。


豪奢な貴族向けの高級宿。玄関口……。緑かかった髪を、後ろで束ね。見事な髭を蓄えた武人らしい出で立ち。されど右目の下には。刺青があった……。不思議な紋様は、何らかの封印のようだ。



中央大陸に向かう海中船が、間もなく出航する……、男は慌てる様子はない。小さな海中船を個人的に借り受けていた、

「おっ、お父さん?」

ゆっくり顔を上げたギラムは、柔らかく口を綻ばせた。

「久しいなエルマ……」ハンサムそう表現するのが似合う。男装の麗人エルマは、恥ずかしそうにはにかみ。嬉しそうに軽く手を振りながら入って来た。

「久しいなギラム殿」

白銀の髪が跳ねた。ザワリ……。


天使が舞い降りた……、一瞬……、幾度も顔を合わせてるギラムとてそう思ったほど、美しく成長したリルムに。驚きを隠せない。

「これは姫様……、お久しぶりでございます」

片膝を着いて、歴戦の武人らしい。長身の美丈夫がかしずく様を見て、店の者は、大国の姫様がお忍びで、来られたと直ぐに察した、

「お客様よろしければ部屋を用意してあります。そちらで……」

店主の申し出に、ようやく周りの目に気が付き。ばつが悪そうに苦笑して。

「頼む……」

店主の提案に頷いていた。直ぐに三人は案内され……。普段従業員の居住に使われる。その奥に、豪奢な造りの部屋があって、三人はそこに通された。店主に幾らか心付けを渡し、改めて自分の娘と、リルムを見詰め。感慨深く呟いた。

「姫様……、大きくなられましたな」

「ありがとうギラム。あなたもご健勝でなによりだわ~」

こうしてギラムと直接会うのは、二年振りである。

「この度のこと、骨折り忝ないわね……」

「構いませぬ。我が国女王ナターシャ様からも、了承を得ました……。かの白の民の住まう。海中都市を訪れ。シレーヌ様の代役、無理を為さらず遂行を……」「フフフありがとう、そう心配はしてないわ。一部の強硬派が、再び管理者を選出するなど、赦せる事ではない。母のような存在を、作るなど許す訳にはいけないわ!」

毅然とした真っ直ぐな眼差しを受け。懐かしい気持ちにさせられ。小さく唇を綻ばす。

「護衛に数名同行すること、了承ください姫様」

「そうね仕方あるまい。いかに私でも学生の身。不足の事態に対処出来る自信はないわ」

「まったくですよお嬢……。シンクに助けを求めれば良かったのに」

「うぐ……、それを言うな!、シンは何かと忙しいのだ……、あちらも大変だからな……」まさか娘から、仇敵であり、戦友の子息の名が出て来るとは思わず。複雑な面持ちとなるギラム。

エルマも父の様子に気付き、済まないと思う気持ちもあるが……、シンクはエルマにとっても。信頼出来る仲間であるのだ。急を有しなければ、父の手を患わせるのもお嬢はためらっていた。



━━事の起こりは、10日前になる……、


西大陸=中央大陸を封じた扉に。自ら封印システムに組み込まれていたのが、白の民と黒の民達で。黒の民は、帝国の民となることを選び。白の民は、王妃シレーヌが魔王ピアンザの妻になってたことに驚いたが、素直に祝福した、されど海中都市に戻ることを、切に願う多くの民と。一部移動国クラウベリア、機械の国ジエモン、ギル・ジータ王国の漁村など、住まいを決めて行った。



問題は━━海中都市を選んだ者逹。白の民の多くは、神世の時代より生きて居た者が多く。人間に嫌悪感を抱く。多くの白の民は、海中都市に住むことを選んだ━━。


そもそも海中都市とは、中央大陸の神々のシステムを元に、技術者である。白の民が造り上げた。独立都市である。魔力の強い。王族をシステムに組み込んだ、自分勝手な非人道的な物だ。それをいまさら復活させようとする。その自分本位な考えは……、許す訳にはいかない……、

「それにしても……お嬢を、管理者にしようとは……」

怒りを顕にするエルマ。同じ古代の民の末裔でありながら、赦せない気持ちである。

「そうだな……」

娘の憤る横顔は、ハッとするほど妻に似ていた。娘の能力はとても弱いから、緑の民と言うよりは、普通の人間に近い。聡明さは、親の欲目から見ても。なかなかの物だ、

「姫様……、ダレークはいないようですな?」

少し寂しそうに目を曇らせ。小さく頷き。

「彼は……北大陸にいます。1人の男として、竜騎士の女性と、幸せに暮らしてますよ」

「なんと……ダレークが、それは良かった……」

旧き友の幸を願うため。軽く目を瞑り。微笑していた、

「姫様……我等も行きますか?、あまり時間も在りませぬゆえ」


……そう、世界議会の始まる。7日までに。この件を片付け……。

懸念なく。シンクと夏休みを過ごすために……。残された時間は、3日だけ……、厳しく顔を引き締め。リルムは決意を新たにした。



━━━輝きの都プロキシス。

━━ただ一つで城であり、


━━無敵の軍勢である。


━━王を守る、ただ一本の剣は……、


大陸の浄化を少しずつ進め。沢山の人が住める土地を増やしていた……、

……北南を繋ぐ都から、街道が整備され。魔の山を安全に迂回出来るよう。白銀騎士団が、小さな駐屯所を造り。馬車の駅舎と隣接して、商人の往来を可能としていた、日々目覚まし発展をしているが……、まだまだ喉かな風景が広がる土地が多く。植林事業により。森や川が増えて、気候が安定。田畑が増えたお陰で、輸入に頼ってた国内事情も。今年は、国内生産が増えたと聞いていた。一歩港街を出れば、まだ危険な場所はあるが、内外的にも平和になりつつあった。


━━海中船が、南洋港なんようこうの港に着いたのは、翌日の昼近くである。

「到着したわミネラ!。私達の王子様よ」

興奮した面持ちの同僚ラシカに。苦笑浮かべていた。それもしたがないな……、まだ数ヶ月とはいえ。長年お世話していた王子様が、アレイク王国に留学なさってたのだから……、それに……僅かな期間に、あのアレイ学園で、『総合武術大会』優勝さらに一学年一人だけ選ばれる。観察官に選ばれたと聞いた。それだけでも驚きだが……、各国の優秀な学生が出場する。魔法討論会・予選に出場して、優秀な成績を収め。凱旋なさるのだから……、



二人は日も上らぬ早朝。南洋港まで馬を飛ばし。朝から飽きもせず。こうして待っていた……、


━━ミネラは竜騎士であり、シンクの竜騎士の先生で、ラシカは、オーラルと旧知。土竜師オリベ・ゲンジの孫娘であった、またラシカは土竜騎士でありオーラルの弟子として、オリベに押し付けられた経緯があった、



━━ラシカの当時を知る人なら、今の彼女の姿を見て、とても驚くだろう……、当時のラシカは男勝りで、喧嘩早く。恐ろしく腕っぷしが強く。ターミナルの街で、知らぬ者がいない有名な女の子だった━━、



……ほとほと孫娘の気性に愛想つかしたオリベ老は、オーラルに泣き付いた、もともと女性の土竜騎士など。片手で数える程珍しい存在である。しかし技量は超一流とくれば、男社会やっかみを買ってしまうのは仕方ない、オーラルは快く引き受け。プロキシスの土竜騎士団に配属した、しばらくはボルト・ホウリーの下、大人しくしてたのだが……、



案の定大暴れ、沢山の怪我人を出した不祥事に。いささか呆れた、ラシカの対応に悩むオーラルに、

「あなた……、如何でしょうか?、彼女にシンクを見てもらっては」

くすり愉しげに笑う妻に対して、オーラルは渋い顔を隠さない。

「シンクならば、大丈夫ですよ」

妻はそう言うが、正直不安である。産まれたばかりの子息を、任せて大丈夫なのかと……、

それに16になったばかりのラシカには。兄弟姉妹はいない。無論子守りの経験なんて、在るわけがないのだ━━。



━━数日後……。



ラシカに子守りを任せることになったのは……、王妃リーラのごり押しであり、オーラルが折れたのは━━、それから間もなくであった……、



当初……、やはりと言うべきか━━、

ラシカは難色を示した。シンクに会うまでは、

「何で私が……、子守りなんて」不貞腐れたのだが、リーラ王妃に連れられ、すやすや寝息をたてるシンク皇子を見た瞬間━━。

「天使……」

思わず呟くほど、無垢な可愛らしいお姿、頬を赤く染め、息すらすることを忘れ。見入るラシカ、やっぱり彼女なら大丈夫と確信していた。

「ラシカさん、これから先。息子には、多くの苦難が待ち受けております。どうか力を御貸しください」

王妃様が私みたいな無骨者に頭を……、衝撃を受け。たじろいでいた━━、



仮にも一国の王妃様が、一介の土竜騎士に頭を下げるなど……、

「頭を……、お挙げください。王妃様」ラシカが慌てて声をかけるが、頑として頭を上げる気配がない、強い信念を感じて。息を飲みながらラシカは、王妃と赤子のシンクを見比べて……。自分の内に生まれた何かに促され。ラシカは素直に首肯していた、生まれて初めて信念を抱いたのだ、

「王妃様━━私なんかで、よろしいのですか?」

ゆっくり顔を上げたリーラは、安堵してニッコリ柔らかく笑い、

「ラシカがいればこの先シンクは、大丈夫です」

虚を突かれていた、ラシカは真摯な王妃様の眼差しを受けて、胸がカーッと熱くなり、自然と涙が溢れていた、

「私は……」

そう……、誰かに必要とされたかったのだと……、気が付いた。



……それから大変だったが、幸せ日々をラシカは忘れない……。シンクが成長するに連れ。赤の民の暗殺に幾度もさらされた。ラシカは幼い王子を守るため。身を呈して守った。一度ならず怪我を追ったこともあるが、シンクはこんな自分を姉と呼んでくれて……、慕ってくれる。本当に優しい皇子様である。



━━大変な仕事だけど、充実した幸せな日々を過ごした。あの事件が起こるまでは……、


ラシカが久しぶりに休暇を貰い。帰省してるときに起きてしまった大事件、私の大切なシンクが、手足を失うなど……、聞いた瞬間。世界が終わったと。言われた気がした。あまりの怒りに身を震わせ、当時は怒りをぶつける相手として。赤の民を襲撃するつもりだった……、なんの罪もない翼人の村をだ、今は自分のしようとしたこと。恥じる気持ちがあるが、



━━後にも先にも……、あれ程の怒りに。身を焦がしたことはない。

「ラシカ姉!」

戦く(おののく)。力ない翼人よくじん達の前。義足で立って、義手を広げた、シンクは翼の民を守るよう。毅然とした顔をラシカに向けていた。

「ラシカ姉……、ありがとう……、僕は幸せ者だね。こんなに愛されてるんだから、僕なら大丈夫だよ。だから帰ろう」

「シンク………」

分かってた……、全ての翼の民、悪い訳ではない。

「…………ジング!、うわぁああああ」

大切なシンクの姿を見て、胸にわだかまってた不安から解放され。ラシカは涙に崩れ落ちていた、




それから半年とたたず……、シンクが竜の卵をもらい受け、ミネラが、シンクの先生として来てから、ラシカは変わった。

二人は出会ったその瞬間。意気投合。昔からの親友のように打ち解け。再び楽しい日々が続いた、



━━私の……、私達の大切なシンク。弟のようで、可愛い私の王子様、シンクが下船してきた瞬間。様々な思いが溢れる。二人を見つけて、元気そうな顔を綻ばせた。嬉し涙を拭い。ミネラとラシカは皇子と、手を繋いで降りてきた女の子を見て、頬を緩ませていた。

「ラシカ姉、ミネラさん!、わざわざ出迎えありがとうございます」

「ありがとうございます」シンクを真似て、黒髪で、癖っ毛の可愛らしい少女が頭を下げる。

「お帰りなさい若様!」

「お帰りなさい若様……、見ない間に逞しくなられて……」姉のように慕うラシカと、竜騎士の先生であるミネラ、二人に出迎えられると。なんだか照れくさい気持ちが隠せず。小さく笑いが込み上がる。

「ありがとうございます」

素直に返事ができた。

「ところでシンク、この子は……」

「初めまして、リナ・シタイルです!。今度6歳になります♪」

ぴょこんと頭を下げると。お下げにした髪が跳ねた。成る程とこの子が、オーラル陛下の……、

「お世話になりますね」

柔らかなアルトが、二人の耳打を打って、ハッと振り返り、何時の間に。やや身を引き締め緊張の面持ちを浮かべた、

「ミリア・シタイル様ですね?」

「ええ。こちらは夫のオリバーです」

「お世話になります」

人好きのする。何処にでもいそうな初老のオリバーと、子持ちとは思えない若々し。黒髪の美しい女性ミリア、二人が夫婦と言われても。ピンと来ないが、見る限り夫婦仲は良さそうだから、男女とは不思議な物だとラシカが考えてると、ニッコリ悪戯ぽく微笑みミリアは、

「貴女がミネラさんね。滅多に女性を誉めない父が、べた褒めしてましたよ」

「えっ!、リブラさんが」

ボン音がしそうな勢いで真っ赤になる。

「そちらが、ラシカ・ゲンジさんね」

真摯な眼差しを受け。同僚の変わりように、苦笑してたが、唾を飲み込み。

「はっ、はい……」妙な迫力があるミリアに見られてると、徐々に緊張して。声が上擦っていた。いきなり抱きしめられ。身体を強張らせていた。

「……オーラルから聞いてます。シンクの姉そうお呼びすること、許してくださいね」

「いえ……、そんな……、私など……」

自分でも信じられないくらい。声が震えた。

「シンク答えなさい。あなたの姉は?」

伯母の優しさを理解して、ゆっくり顔を上げたシンクは、ニッコリ優しく笑い。

「ラシカ姉さんです」

「あっ………」

「ありがとう……ラシカ。シンクを守ってくれて」

伯母は一目で見破っていた。ラシカの強い後悔を……、オーラルから経緯は聞いていたから余計に。もしも会うことがあれば、彼女に伝えたかった……、シンクがこんなに素直な、少年に育ってたのは、貴女のお陰であると、

「……はい」

大粒の涙を流し。ホッと肩の荷を降ろした、なんだかホッコリした気持ちで、同僚を微笑ましい気持ちで見ていたら。

「お姉さんは、シンニイのお姉さんなの?」

リナはちょこんと首を傾げて、疑問を呟く、

「ええ、そうよ」

今なら言えた、シンクの姉は私だと、

「なら。私のお姉ちゃんだね♪」

ニッコリ天真爛漫に笑うリナに、思わず皆笑い声を上げていた。

「シン~……」

「シンク」

「シン」

三人の女の子達が、慌ただしく下船してきて、此方に手を振っていた。後から三人の保護者らしき、切れ長の目が特徴的な、貴婦人が呆れた顔をしていたのが何とも三人の現状を物語る。

「あっフレアさん、シアンさんと……、アム?、久しぶりだけどまさか?」

ヨロヨロしてたアムは力尽き、シンクに抱き付いたまんまで、

「ようやく風呂から生還したよ~」

肌は艶々だが、妙に疲れはてた顔をしていた。強ち嘘ではないようだ。

「だっ、大丈夫アム」

「なっ、何とかねあはは……~」

乾いた笑いを上げた。流石に呆れた眼差しを。姉妹に向ける。ばつが悪そうにそっぽ向いたフレア、気にした様子が無いシアン姉妹。スコン。

小気味良い音を立て。姉妹の頭を叩く。

「痛いしお母さん」

「イッタ~、手加減してよ」膨れる姉妹だが。シルビアにジロリ睨まれ。慌てて口をつぐんだ。

「もしかして貴女達は、アレイク王国の……」

口を開いたミネラだったが、じろりシルビアに睨まれ。迫力のあまり口をつぐんでいた。

「シルビアさん。彼女は僕の竜騎士としての師ミネラ、こちらは姉のラシカです」

おや?首を傾げたシルビアに、伯母が耳打ちすると、成る程と優しい眼差しをラシカに向ける。

「え~!?。シンクのお姉さんですか」

さっきまで、息も絶え絶えだったアムールは、シャキリ立ち上がり、ガバリラシカの手を握り。

「初めまして、私シンクの彼女候補。アムール・ステファンです~テヘ。言っちゃた」爆弾が投下された。




━━━その頃。リルムは小型の海中船で、白の民の住まう都。海中都市を訪れていた。


━━海中都市の大きさは。大きな村程度で。今は僅か二百に満たない住民が暮らしていた……。多くは年経た。見た目若いが、神代の時代より生きていた民ばりで、古い考えの者達だ、出迎えも早々に。リルムの前にかしずき訴えだした。

「どうかリルム様。我等が管理者になって下さい……」

「なっ………」

「どうかお願いします。リルム様……、我等を管理してください……」

わらわら集まるのは、自ら困難に立ち向かい。考え。そして答えを導く気概が、全く感じられない者達。全ての責任を、一人に押し付ける。盲信的考えで訴える。

「リルム様……」

ギラムの鋭い眼差しに頷き。嘆息を漏らした。

「それは出来ぬ」

キッパリ毅然と言われ。

ピシリ……、亀裂が入ったような空気が流れた、

「……リルム様……それは、何故にございますか?」

海中都市の長を勤める男は。蒼白に血の気を失い、よもや自分達の訴えが、一蹴されようとは考えもしなかったのか、唇を震わせ目を剥いた。

「そなたら、分からぬのか?」

呆れた口振りのリルムに、はいと口を揃える民達。いささか呆れを通り越し。憐れを感じたが、鋭く。集まってる民を見回し。

「それは誰もが、幸せにならぬ。逃げだからじゃよ」ピシャリと言って退けられ。クシャリ……、顔をひきつらせた。

「どうしても……、お聞き願えぬと、言うのですね?」

ジットリ……、全てに絶望した虚無を瞳に宿す長に対して、

「当たり前であろう?」

強気な顔を崩さないリルム。今にも泣くのではないか、顔をひきつらせていた長は、急に立ち上がり、

「我等が管理者を。塔にお連れしろ!!」

「「おおお!!」」

集まってた民全員が蜂起して、一斉にリルム達に押し寄せた。慌てる兵士に手を上げ。ニヤリ不敵に笑う。誰も動かないことを良いことに。リルムを逃がさぬよう取り囲んだ。そして捕まえ……すう……、手がリルムをすり抜け。ギョとした民達に。「当たり前であろう?、そなた等の考え。読めぬと思うか」

「なっ、何故でございますか……」

長の問いは、既に理解していた、

「お前達に。愚かな幻想を抱かせる元凶。母を捕らえていた、牢獄を破壊するためだ」

「なっ……」

ズン!!。都市を揺らす地響きを、体感して動揺が広がる。

「さて、私の用は終わった、私を恨んでも構わない。自分たちで考え。生きてくがよい」

呆然とした白の民達が見守る中。リルム達の幻影は、幻のように消え失せていた。




━━海中都市を、

一望出来る。高台に。古い塔がっあって、その地下に管理施設はあった……。

リルムは後々の憂いを絶つため。自らの手で破壊するため。海中都市を訪れた、どん!、遠く施設が破壊される爆音を聞きながら、海中船に乗り込んでいた。



━━時間は僅かに戻る……海中船が、海中都市に到着した瞬間までは、


そう……、確かにリルム達は、民の前にいた。ギラムの能力で、都市に住む全ての民、いやリルム達をも。幻影の世界に引きずり込み。リルムの幻影を本物と信じた。それと同時に別の幻影を施設の中に入り込んでいて、破壊活動させていたのだ、

━━ギラム・ロドラ、四英雄の1人、騎士の剣と呼ばれる神の作りし遺物に選ばれた。緑眼の騎士と呼ばれし英雄には、狂喜の女神ルグワイトの祝福が与えられていた。

その姿、半裸半蛇の姿。別名幻獣と呼ばれし女神である。ギラム自身強い幻影魔法を得意としていた。左目を失ったことで、本当の力に目覚めた。神の遺物である。騎士の剣の力を用いれば、魔人であろうと。幻影の世界から抜け出すことは不可能であった。


━━そう……。最初からギラムの作り出した。幻影の世界にいたのだ。無論そのような状況である。ギラム以外意識を保てた者はいない。皆ギラムの操る幻影に運ばれる間。リルム達は自分たちの幻影を操っていたに過ぎない。



━━ゆっくり意識を、幻影から引き離し。呆れた顔を崩さず目を開けていた、幻影の瞳の力によって、あの場に確かにあった、目眩にも似た、鈍痛をコメカミに感じたが。

今思い出しても白の民の妄信的発想に。吐き気すら覚えていた。

「これであの愚か者達も。少しは考れるようになれば、良いのだがな……」

根は、深そうな予感は拭えない。残念だが……、懸念は上手く消えなかった……、後味の悪さを感じていた、

「お………」

声を掛けようとした娘を。押し止め。静かに首を振る父に。唇をきつく噛み。自分の弱さを静かに。噛み締めるばかり……、

「私は……、なんと弱いのか……」

エルマとて、緑の民である。父程では無くても神の奇跡を僅かだが受け継いでいた。だが……あまりに弱い能力である。

「目を……、一瞬瞑らせる能力など……」腕を掴む手が白くなるほど、力が入っていた、




━━その頃シンクの身に……、とんでも無い事が起こってるとは、リルムとて、予想だにしていなかった……。



━━シンクを出迎えた二人。爆弾が投下された……、アムと言う自由奔放な女の子によって、

「えっ、エーーー!!、またシンクの彼女候補」

叫ぶラシカに。憮然とするシンク、

「シンクは、リブラ様に似たからな……」

ミネラの何気な~い一言に━━━。


……ピクリ、ミリアの頬がひきつる。ブラコン気味が強いミリアに、長年家を空けていた父リブラのこうした話題は危険である。素早くミリアの変貌を探知したシルビアは、

「二人とも退避よ!」慌てる母に。訝しげな顔をしていたら、二人を置いてさっさと逃げたしていた、姉妹は顔を見合せ。なんとなく唾を飲み込み。急いで母の後を追いかけていた、



━━━ちょうどその時、リーザとバレンタイン父娘、生徒の一人が。下船してきたのだが、シルビアが血相変えて、街とは反対に急ぐと言う珍しい姿に。父娘は首を傾げた。



後にリーザは語る。

「鬼神でした……」

遠い眼差しで、地平線を見ながら、渇いた笑みを浮かべていた。

「ミネラさんでしたわね……」

突然地の底から聞こえてきそうな固い声。ゾワリ……冷気を感じて、寒気を覚えたミネラは、らしくもなく血の気を失っていた。

「……ひゃい……」怖さのあまり首をすくめていた、妻の変化を敏感に察して、リナを連れて、遠巻きに離れる伯父の素早さに驚き。目を丸くしてる間にシンクは逃げるタイミング失っていた、

「伯母さん……、あっあの~ミネラさんは、リブラじいちゃんの弟子なんだよ」一瞬何を言われてのか、意味が分からない様子だった、

「何が……ん?」

なんとなく我に返り。辺りを見回して……。ハッとしていた。

「あら……、またやっちゃったのね……」

恐怖に震えるミネラの腕を掴む手を、ばつが悪そうに放し。

「コホン……。驚かせてごめんなさいね」

何時もの伯母に戻って、ようやく安堵したシンクをジロリ睨み。

「女の子達を泣かせたら、許さないからね?」もっともな正論に。シンクは素直に頷いていた、

伯母を絶対怒らせないように。肝に命じた一同であった。

「ミリア……」

落ち着いたのを見計らい。リナを連れて戻ったオリバーさんは、軽くコツンと伯母のおでこにくっ付けて。柔らかく、それでいて、優しい眼差しで伯母さんを見詰めていた、徐々に顔が赤くなる伯母を、人好きする笑みを浮かべ。

「みんなを怖がらせては、駄目だぞ?」

「……はっ、はいあなた……」

恥ずかしそうに、首を竦める。可愛らしい仕草に、ようやくみんなの顔から安堵が浮かんでいた、そしてミネラ、ラシカの二人は悟った。見た目不釣り合いな夫婦だが、思わず羨ましい気持ちを抱くほど。間違いなく似合いの夫婦であると心からそう思った。



━━南洋港から、都まで沢山の乗り合い馬車が出いたが、プロキシスに向かう人々で、ごった返していた。リーザとバレンタイン教頭他魔法討論会・本選出場する学生達は、南洋南で一泊して、明日の馬車で、都に向かうため。しばしの別れとなる。

「シ~ン~またね~」

元気一杯にアムに見送られ。ミネラの操る馬車は走り出した。

「一緒に乗せてもらい。助かるわ」

シルビアさんは、安堵で口元を綻ばせる。

「いえいえ……。ケイタ殿の妻子と気付かず。失礼しました」

二人の顔に緊張は隠せない。相手はプロキシスと同盟国である。アレイク王国の重鎮で、財務を司るあのカレン・ダレスの名を受け継ぐその人である。緊張するなって方が難しい。

「……あまり気を使わないように。私はアレイク王国の重鎮として訪れた訳ではなく。夏休み子供達と夫と過ごす。1人の妻として来日しておりますから」

「そう言って下さると、助かります」

ラシカはホッとした顔をした。あまり人に気を使う仕事に。向かない性格である。流石はシルビアさん。見抜いたようだ、フレア、シアン姉妹はいつの間にか、リナを抱いて、寝入っていた。道理で静かな筈だ……。リックに入れてた、毛布を取りだし。三人に掛けてやる。

「シンク気を使わせるわね。ありがとう」

にこやかなシルビアさんに一つ頷くと。伯母には呆れた口調で、

「本当準備万端なのリーラに似たのね~」

伯母に小さく笑われてしまい。思わず照れていた。

「よく父さんにも。言われました」

なるほど……、アレイ教中央教会。大司教を兼ねる。あの聖女として知られた……。シルビアも中央事件の折り。何度か顔を会わせていた。窓の外。流れる風景、街道沿だが、まだまだ喉かな風景が広がる。

「随分と中央大陸……。変わったわね」

「ええ。陛下の植林事業が、上手く行ってますし。人も増え。翼の民との関係も良好です」

「でも未だに、赤の王は、捕まっていないわね……」シルビアの不安も判る。ラシカから気遣わしい眼差しを受け、小さく頷き。

「大丈夫ですよシルビアさん。父も祖父も考えがあるようですし。僕達はもう無力な子供ではないですから。それに都は聖王の剣の力で護られてるので、そうそう危険はありませんよ」

シンクが懸念を晴らすように。心強く請け負う。

「シルビア様。私達が住む周辺は、危険区域も、狭まりましたし、魔物の勢力地から都は、遠い地にあります。絶対とは言えませんが、白銀騎士団は精強ですご安心下さい」

自信に満ちた目をラシカも浮かべていた、二人にそこまで言われて、シルビアは小さく頷いていた、確かに不安はある。


それは中央大陸に限ったことではない、まだまだどの国も懸念や不安はあるものだ。未だに思うことがある。もしもあのままオーラルが国を興さなければ……、世界中は、戦乱にあった可能性を感じていた━━。



━━時が進むにつれ……。

シルビアも理解していた、オーラルが即位したことは、世界の均衡を保つ上で必要だったのだと……。

「次の宿場で、馬を替えますので、プロキシスに着くのは、夜ですね」




━━城下町を。グルリ高い塀で囲むように。魔物の襲撃から町を防衛する目的で、城壁の建設が始まったのは二年前になる。



都から少し離れた街道沿いに。白銀騎士団の守備兵が詰める詰所が、城壁の近くにあって。見張り台から任についていた兵は、一台の馬車を見付けていた。しかも御者を勤めるミネラが、見張りに気が付き。手を上げるのを忘れない。兵は心得たもので、瞬く間に。王城のオーラル陛下に。報せるよう。伝令が走る。と同時に。民にも知らされた。



━━━輝きの都プロキシス。



広く作られた城門から、白銀の城までは大通りになっていて、馬車が10台並んで走ろうと。余裕のある道作りがされていた。主に商会が並ぶ大通りだが。通りの真ん中だけ、ロープで封鎖されている。



━━ロープの内は別名。白銀道プラチナロードと呼ばれ。急使。他国の貴族、王族登城時に、使われる理由もあって。

ざわざわ……。夕方から夜に変わる時間帯━━。

沢山の民が、王子凱旋の一報を聞いて、集まって来ていた、


城門を抜けた瞬間から馬車をゆっくり走らせたるから。シルビアが外を見て、

「これは……」

国事でも無ければ見たことがない現象を前に。驚きが隠せない。

「若様!、お帰りなさい」

「お帰りなさい!」馬車に気付いたら民が、大歓声で出迎えた、

「ただいま!」

シンクは満面の笑みで声に答える。

「ここまで慕われる王族……」

財務筆頭ならでは、ゴクリ唾を飲み込む母に。豪胆な姉妹はお構い無く。シンクに習い。民に手を振り返したのが、美しい姉妹だと分かり。更なる歓声が上がった。

「ニイ!、凄いね」

興奮したリナを膝に乗せて、リナにも手を振らせると、楽しそうに頬を高揚させていた。伯母であるミリアはいささか驚きはあったが、悠然と微笑すら浮かべて、楽しんでる様子が手に取るように伝わり。シルビアは舌を巻いていた。



━━城に続く。平坦な道のり、かなりの長さがある。住民総出の出迎えではないかとさえ思えた……。やがて兵士が騒ぎを聞き付け。警護に集まって来て、騒ぎは徐々に収まりつつあった。住民は知っている。気さくな王子のこと、明日にも顔を見せてくれることを、だから兵士が現れた時点で。騒ぎは収まる。兵士の方もそれをよく理解していたから、直ぐに警護に現れなかった、つぶさに見ていたシルビアは、国政を預かる者として、感嘆たる思いで、民と強い繋がりを感じ取り。吐息をついていた。

やがて白銀の城を、守るように。左右に大きな建物を見掛け。眉を潜めるシルビアに。

「あれは商業ギルドと、土竜ギルドの建物なんです。商業は、我が国の重要な政策であり。土竜騎士は、地下迷宮の魔物の防衛と、長年疎遠になっていた、種族とのパイプ役として、大切な機関ですから、国の象徴たる白銀の城の左右に、建てさせたそうです」

話には聞いていたが、改めて見ると、城の前にあれほどの建物があるのは、違和感を感じた。しかし理由を聞けば、なるほどと納得出来る部分はある。

「ここから見えませんが、城はあくまでも国の象徴です。重要な会議以外ほとんど使われません。あれは大地を清める機関ですから、住居、通常の業務は、城の左右ギルドの建物に隠れた位置に。屋敷が建てられてます。こちらから見て、お客様は左側のゲストハウスに。部屋を用意するのですが、ケイタさんは、城の近くに屋敷があるので。後程誰かに送らせますね。本来僕が送りたいのですが……、お客様の出迎えで、バタバタするとおもいますから……」

済まなそうな顔を見て、それは仕方ないと考える。

「あ~シンク……」

わざとらしい咳払い。フレアの表情に、気が付き、笑みを深めて。

「フレアさんが、お疲れで無ければ、妹のシンクレアと、お会いしませんか?」

「ええ。是非とも」嬉しそうに笑うフレア。シアンと姉妹の間に座ったリナは、目をきらきらさせて、

「ニイ!、リナも行きたい」

珍しい主張に、目を丸くしたシンクだが、フッと柔らかく目を細め。

「リナも一緒に、会ってくれるかな?」

「うん♪」

リナは、自分の小さなリックを、大切そうに抱きしめて。嬉しそうに頷いた。

2つの建物を馬車が通り抜けると、白銀の城を頂点に5角形に、建物が建てられてるのが分かる。馬車が三台並んで通れる広さの馬道。中央に庭園があって、それぞれの建物は、馬道で回れるように、考えられて作られていた。

「城の裏手に、王族用の竜舎が作られてます。シンクレアはそこにいます。父に会った後にも。案内しますね」白銀の城前に、馬車は停められた。

「シン、私は馬を戻したら。先に竜舎で、シンクレアの機嫌見てるから、急ぐのよ?」

ミネラに手を貸して貰い。シルビア、フレア、シアン姉妹。伯母夫婦。リナと続いて降りた。

「そうですね。父もシンクレアの為なら……、仕方ないと言うでしょう」

苦笑を滲ませる。



━━━皆を連れ、王宮を進む一堂だが、人は驚くほど少なく。すれ違うことも希で、不思議そうに首を傾げるシルビアと姉妹に、

「先程言った通りで。白銀の城は、あくまでも国の象徴です。父と僅かな重鎮が謁見を待つ。大きな部屋でしかありません」

一面の白銀の空間に。リナは終始圧倒されたように。ポカーンと口を開けたまま見入り。シンクと手を繋いで無ければ、飽きることなく。城を見ていただろう。


━━正面の階段を上り。二階のテラスの前に。巨大な扉が、開かれ。幻想的な風景が広がっていた。

「うわぁあああ~あ」

驚きの声を上げた、

「この王座の間に続く回路の美しさは、見慣れた僕でさえ。時折感動してしまいます。あの方向から朝日を受けると、それはもう……、言葉に出来ぬ美しい光景で、各国の重鎮は、必ず見に来てますよ」

「クスクスそれは楽しみね~♪」

「はい。ケイタさんの邸宅から、城を見れる絶好ポイントです。朝、夕の風景を見るだけに。近隣の住人が訪れると聞いてます」

なるほど……、あの人らしいとシルビアは相貌を崩した。

「これは若!。いつお帰りに?」

入り口の騒がしさに気が付いた、中年将校らしき。強面の武人が、目尻を下げ現れた、彼は父がアレイク王国にいたときより、信任厚い部下だった人物で、

「ジン・ゲルマン右将。今戻りました。お元気そうで」

「オオ~そうでしたか、……えーとそちらの」

可愛らしい風貌のリナに気が付いて、雪崩の如く。子供好きなジンは相貌を崩していた、理由を知らないみなは、急に人好きするような変わりように。顔を見合わせる。

「僕の姪で……」

「リナ・シタイルです!」「オオ~これはわざわざ、挨拶をありがとうございます。我が名は、ジン・ゲルマン。気楽にジンと呼んで下され」

「は~い。ジンさんよろしくお願いします♪」

人見知りしない性格のリナはにっこり。天真爛漫に返事をしていた。これにはいたく感激して。

「オオ~なんとも可愛らしい。我が子に見習わせたいものですな~」

ツルリ反りあげてる。頭を撫で上げ、楽しげに笑い声を高らかにあげていた。

「ま~たお前か……」

呆れたような声を掛けたが、相手がシンクと客人だと気が付いて、無表情な顔に、小さな笑みを浮かべる。

「ロート・ハーレス左将。今戻りました。お元気そうで良かった」見事な髭を蓄えるロートは、いかにも実直そうな武人の印象を与える。彼はシンクの槍の師である。

「若様もお元気そうで、なによりです」

人情に厚いロートの。実直な人柄を、父は買っていた。 二人はオーラルが、職を辞する時。何も言わず付いてきた、建国の苦楽を供にしてくれた、忠臣である。

「二人が居るってことは……、父さん仕事終わった頃だね?」

「はい」

「先程の伝令は、若様の凱旋を報せるものだったか」

「では若様、我等はこれにて失礼します。また明日にでも」

リナの可愛らしさに、でれでれだったジンを、引き摺りながら、ロートはおいとまを告げる。シルビアは目元を和らげ。

「相変わらずのようね。ジンは……」

ジンは……」

シルビアさんはジンを知ってたようだ、

「もう二年前ですが、アレイク王妃のミレーヌ様。側仕えのジーナさんと結婚して、昨年娘さんが産まれて、幸せそうですよ」

「なるほど……、どおりでミレーヌ様が、張り切ってた訳ね」

訳知り顔の伯母に、シンクはもう驚かない。追従したシルビアは、

「確かレヴァ王と、世界議会前日の2日前。夜会には参加されるとおっしゃてたわね」

儀状兵二人が、王座に続く入り口で、シンクを認め。素早く1人が、王座に入り。オーラルに耳打ちされる。程無く。数人が謁見の間から出てきて、中の恰幅の良い商人と若い商人が、シンクに気が付き、

「若様。お久しぶりでございます」「ええお久しぶりですね。カルさん」

若い商人は、シンクが、自分の名を知ってたことに驚きを隠せない。

「このような未熟な商人を……」

「ええ確か、ローレイ商会の将来有望な商人と、お伺いしております」

「そんなこと……、滅相もありませぬ。王子様……。ではまた……」

にこやかに笑うカル、足取りも軽く。立ち去っていく。

「若様。お帰りなさいませ」

残った、恰幅の良い商人風の中年男性は、ドジョウ髭をしごきながら、一同に柔和に笑いかける。

「ただいまマサユキさん。先日ギル・ジータで、ホーウネリアと会いましたよ」

「おお~そうでしたか、あの馬鹿娘は元気でしたか若様?」「相変わらずでした、でもパルストア魔法学園の『院』代表になってたから、数日後にも、国の代表として来日するはずですよ」

「おお~真ですか?」

「ええ~詳しい日程は、マサユキさんの方が詳しいですよね?」

「確かに、こうしては要られませぬ。妻にも知らせなくては。若様良い話。感謝致しますぞ」

慌ただしく巨体を揺らしアレンザ・マサユキ財務大臣は、立ち去っていた。ああ見えて商業ギルドのマスターを兼任している。切れ者だ。

「若様、皆様お待たせいたしました。オーラル陛下がお会いになるそうです」

儀状兵に扉を開けてもらい。皆が王座の間に入るや。オーラルは素早く王座から立ち上がり。

「皆さん。よくおいで下さいました」

自ら皆を出迎えるべく。王座から降りて、にこやかに笑みを浮かべる。

「我が、国にようこそ」

長年の政務は、眠そうと表するにピッタリだったオーラルに。威厳を与え。癖のある黒髪を苦心して、後ろに撫で付けた様子だが、目が離せない。王者の風格に満ちていた。

「元気そうねオーラル」

伯母の元気そうな顔を見るや、優しい笑みに変わる。

「ええ~大変ですが何とか、姉さんも相変わらずのようで、安心しました」

意味ありげな一言に思わず。目を丸くした伯母だが、ニヤリ不敵に笑い。

「それだけ私に言えるんだから、まだこの国は大丈夫そうね」手厳しくも姉の激励に。思わずオーラルは吹き出していた。

「やっぱり姉さんには、敵わないや」

「当たり前よ~私を誰だと思ってるの?、あなたの姉なんだからね」

妙に説得力あるコメントに、シルビアとシンクは唸る。そんなシルビアに気が付いて、

「シルビア、ケイタが、朝からそわそわしっぱなしで、政務に支障を来しかねないので、今日は。自宅に戻らせてありますよ」

そんなこと言われて、嬉しい気持ちはあるものの。

「まあ~あの人ったら……」

口調は厳しいが、顔は満更でもない様子で。姉妹はこぞって悪戯ぽく母を笑う。姉妹の楽しげな笑みを。懐かしく思い、柔らかく目を細めて。

「フレア、シアン……、よく来たね。二人は━━我が弟子として、鼻が高いよ」

慈愛に満ちた優しい眼差しを受けて。二人の顔がパッと華やいだ。

「あっ、ありがとうございます。オーラル先生!」

「私達、頑張りますから、演技見てて下さいね」

真っ赤になって、緊張した面持ちのフレア、にっこり笑みながらも。自信に満ちた顔のシアン、二人の姉妹を見詰め。

「エルに似て、二人は綺麗になったね」

最大の賛辞を掛けられた二人は、真っ赤になって見合い。花が咲いたように、喜びを全身から放つように。

「「はい!」」

華やかに笑い合っていた。



1人1人話ながら。オーラルは一歩引いた位置に立ってた、もう1人の父のように慕う。中年男性に目を向け、親しみを声音に黙礼する。

「オリバーさん、わざわざご足労。ありがとうございました」

人好きする伯兄となったが、長年苦労したオーラル達を、陰ながら支えてくれてた恩人だ、優しくしい朗らかな笑みを見れるだけ、嬉しい気持ちになり、自然と笑みが深まる。オリバーはと言えば。肩を竦めて。

「な~に構わんよ。リブラの奴は、いつ頃来るのかい?、あいつは親友に会いにも来ないから、説教してやらなならんな~ミリア?」

姉を思っての苦言に。ミリアは頬を赤くして、

「あなたったら、あなたが怒れば、父さん逃げ出してしまいます」拗ねて、口を尖らせた伯母に、シンクは思わず吹き出していた。シンクの手を離さないリナに気が付いて、

「リナ良く来たね。元気にしてたかな?」

「は~い。オーラル叔父さん今晩ゎ~、リナ元気にしてたよ~」

天真爛漫に笑顔で答えた。

「それは何より。シンク元気そうだね。うん……。少し強くなったか……」

シンクの肩に手を置いて、真っ直ぐ目を見られると、透かして見られてる気分になり。落ち着かないが。父の言葉は何よりもシンクを認めていた。思わず嬉しそうに父を見上げ、

「はい!、ライバルが沢山いますから」

キッパリと言い切った、なるほどと目を細める。

「シンク。朝からシンクレアがそわそわしてるから、直ぐにでも会いに行くといい」

「はい父さん!」

「さあ皆さん。隣室にお茶の用意してます。休まれてから、それぞれの宿に案内致しましょう」

「あっあの~オーラル先生……、私はシンクレアに会いたいです」

「あっ私も私も」

「リナも!」

元気な女の子達は、勢い込む。なるほどとオーラルはシンクに目配せして、

「シンクみんなを連れ、行ってきなさい」

素直に頷き。三人を促し。

「では、こちらから行きましょう」




━━三人を連れて、王座の間に入って来た通路ではなく、儀礼兵の立つ、右側の通路を。奥に向かう。



先頭をゆっくり歩くシンクは、物珍しそうに城の中を。キョロキョロする三人の為に。外に見える景色や、飾られた絵画、大事に置かれ飾られてる古い武具。それらについて買いつまんで語りながら、皆を飽きさせない話術を披露する。

「この奥は、城の裏側に出れるようになっていまして、中央事件の折り。魔王ピアンザ陛下が、召還魔法を用いた場所を使って。記念石碑があります。その時参戦した。英雄達の名前が彫られてます。確かエル・フィアン筆頭の名もあった筈ですよ。良ければ見てきますか?」

二人は驚いた顔をして、うんうん頷き合って、目をキラキラさせていた、二人の姉エルさんとは、直接お会いする機会はなかったが。夫のカール・シタインとは、何度か顔を合わせていた。あまり知られていないが、無論カールの名もあった、



四人が外に出ると、辺りはすっかり真っ暗になっていた、城の裏側はひっそりとした、林になっていて視界が悪い。

「光よ」

素早く。光玉を飛ばし。辺りを照らした。

「足元樹の根が張り出した所があります。暗いので、気を付けて下さい」

三人は神妙に頷き。シンクの後に続いた。



━━城から、それほど歩かず。開けた場所に出ていて、未だに魔方陣が、僅かに遺された近くに。石碑が建てられていた。

「光よ━━あれ」

無数の小さな光玉が、シンクの制御で、四人の周囲を明るく照らした、フレア、シアン姉妹は、真剣な眼差しで、石碑に書かれた言葉を読んでいた。石碑には、

『世界を守るため。集まった。勇敢なる勇者達に……、我等は感謝を忘れない』

石碑の下に。参加した勇者達の名前が記されていて、二人の姉エルと義兄カールの名が、まるで最初から選ばれた夫婦のように隣り合わせで……、寄り添ってるのを指先で触れ。息を飲んで立ち尽くしていた。


━━リナは大人しく。何か感じいったか、待っていてくれた。

「ありがとう……シン。なんか嬉しいな~、こんな遠くに来たのに。私達の姉が名を残してるなんて」

「姉さん……。次は私達の番よ!、名を残して帰るのはね」

「ええそうね!?、姉さんには負けられないわ」フレアは不敵に笑い、目を生命力に溢れさせ。美しく輝かせていた。



━━それから三人が、竜舎に着いたのは、それからすぐのこと━━。

竜舎とは言っても。竜はシンクレアだけ、都の西に竜舎はあるが、隔離していた。それは━━シンクレアが竜王の子供であるため。他の竜が畏縮してしまうためである。

「シンクレア……、シンクが帰って来たわよ~。オーラル陛下と話されたら、直ぐに来るって言ってたわ」

━━━グルルル……。

大きな猫が、喉を鳴らすような音が聞こえてきた。

四人が入ると、喉を鳴らす音がピタリ止んで。

「シンクレアただいま~。お客様連れてきたよ」声を掛けた瞬間、騒がしく甘えた声が聞こえてきた。

『シン~お帰りなさい。早く早く顔を見せて♪』

シンクレアの甘えた思念が届き。思わず頬を緩ませていた。竜舎の入り口には、雑多に。見たことない機械が置いてある。物珍しそうな顔をしてたシアン。

「その辺りは、機械の国ジエモン。技師サノエさんが作った物です。使い方分からないので、端から見てるとガラクタばかりですが……」

竜舎の奥━━地下に降りる大きな入り口の前に、白銀の鱗を勇壮に煌めかせ、美しい竜が、ルビーアイの瞳を真ん丸にして、入って来たシンク達を心待ちに待っていた。

━━━グルルル!。『お帰り♪シンク、シンクレアは寂しかったよ』

グイット長い首を伸ばして、シンクの服に、額を擦り付ける。

「可愛い……」

端で見てても分かるくらい。シンクに甘えてる姿に。思わずフレアは呟き、プルプル身を震わせていた。

「シンクレア元気そうで良かった、ミネラさんに、我が儘言ってないよね?」

━━ピクリ……、グルルル……、

『いっ、言ってないもん』

ついっとそっぽを向いて、チラリミネラを見て、鼻を鳴らした。それを見て、シンクは苦笑を隠せない。シンクとシンクレア仲良しな様子に。我慢が出来なくなって、


「シンクレアちゃん!。初めまして、シンクお兄ちゃんの親戚のリナ・シタイルです。よろしくね」緊張した面持ちのリナだが、真っ直ぐシンクレアを見上げていた、

『シンクの親戚?』

クイット首を伸ばして、シンクレアはリナに鼻をくっ付け。ルビーアイの瞳をリナと合わせる。普通は身体の大きなシンクレアに驚き、怖がる子は多いのだが、リナは興味津々の様子で、じっとしていた、すう~っと目を細めて、

『本当だ~♪、リブラじいちゃまと、ブライアンちゃんと。同じ匂いがする~。リナちゃんよろしくね♪』

━━グルルル♪。 シンクレアは嬉しそうに目を細めた、リナはなんとなく理解して、ニッコリ嬉しそうに笑い、

「うんよろしくね♪」年齢が近いせいか、会話が成立してるようなタイミングに、シンクとシンクレアはびっくりして、顔を見合せていた、

「ちょっ、ちゃんと私達も!」

拗ねた声を上げるフレアに、面食らいながらも。

「シンクレア、フレアさんと、シアンさん、二人はケイタ叔父さんの娘さんだ、シンクレアに会いたいと、来てくださったんだよ」

『まあ~♪、本当に。嬉しいな~』

二人に鼻をくっ付け、臭いを確かめると。確かにケイタに似た臭いがした。

『初めましてフレアさんに、シアンさん♪』

シンクレアは竜に珍しく。人間が大好きで、寂しがりの甘えん坊である。愛嬌ある仕草に、緊張してた姉妹も優しくシンクレアに触れ、

「スベスベ~♪」ゴツゴツした肌の竜もいるが、白銀竜種と呼ばれるシンクレアは、滑らかな肌をしていた。

『ありがとう♪』


━━竜は数年で、身体こそ……、大人と変わらぬ個体になるが、年齢は卵から孵った年数と変わらない。リナとそう変わらない子供である。とにかくシンクレアは構って貰えると分かる相手に、愛想が良い。

「シンク触っても大丈夫かな?」

リナのこと羨ましいそうに見て、すっかり頬を緩ませていた、

「ええ大丈夫ですよ」

頷いてやると、それは嬉しそうに。二人はシンクレアに抱き着いたり、白銀の鱗を撫でたり、シンクレアはくすぐったそうに身体を震わせる。

「シンクレアちゃん!。これあげる」シンクレアの鼻面に。小さな双子を思わせる熊の人形の片割れを出した。

「あっ……、それはリナが買った」

シンクの言葉に。察しのよい双子は、見合い。

「リナちゃん、シンクレアちゃんに買って来たのね」

「うん!。シンクレアちゃんもらってくれる?」

ぱちくりルビーアイの目をしばたかせ。

『私に……、プレゼント?』

伺うようにシンクを見て、

「リナからのプレゼントだってさ」

━━グルルル♪

シンクレアは器用に。リナから熊の人形を受け取り。翼の翼元にある小さな手に持って、嬉しそうに眼を細めていた。

「シンクレアがリナに、ありがとうだってさ」

「うん♪、シンクレアちゃん。リナとお友達になってくれる?」『喜んで♪』

リナに鼻をくっ付け眼を細めた。

「良いな~、私もお友達になりたいな~」

「私も私も~♪」

二人に言われて、シンクレアは、終始ご満悦だった。



━━夜も遅くなり。先にシルビアさんは、邸宅に向かったと聞いて、二人は顔を合わせ。お互いの考えに頷き合った。

「シン……悪いんだけど、今日は二人だけにしてあげたいの……」

キョトンと首を傾げたシンクとは違い。オーラルは察した、

「ゲストルームを用意させる。今日はそちらに泊まり。明日戻られてはどうかな?」

「ありがとうオーラル先生♪」

二人は、安堵の吐息を吐いた。

「二人を丁重に。ゲストルームにお送りするように」

「はっ!」

「じゃシン。お休み」

「先生お休みなさい」

二人は儀礼兵に案内され。王座の間を辞する。

「リナは眠いようだな」

目を擦り。目蓋がくっつきそうだった、

「リナ叔父さんが、抱っこしてあげよう」

「ん~」抱っこしてと言わんばかりに、腕を万歳するようつき出した。オーラルは慣れた手つきで、リナを抱き上げ。

「子供は温かいな……、シンク母さん達が待ってる。帰ろう」

「はい!」

父と並んで歩くのは、久しぶりになる。普段国政で、国中を視察する時期など、三月会わないことざらである。リナを抱いてるオーラルに気が付く兵は、声を掛けず。二人に一礼するに止め。愛らしいリナと国王の姿は、普段の厳しさとかけ離れ過ぎて。優しい笑みを誘う効果となった。



別邸に戻ったシンクを、母リーラが満面の笑みで出迎え。オーラルが姪を抱っこしてると気付き、

「まあ~疲れたのね。リナお布団に行きましょうね」

オーラルからリナを受け取り、前髪を直してくすり優しい笑みを浮かべた、

「もう一人欲しくなりましたわ。あなた……」

悪戯ぽく父に言うと。

「そっそうだな……、ゴホン」

シンクの視線に気付いて、咳払いした。

「シンク。お帰りなさい」

「ただいま母さん」

「夕食の準備しますから、手を洗って嗽したら、着替えなさい。部屋に支度してあるからね、あなたもですよ?」親子は顔を見合せ。 素直に頷いた、リーラはてきぱき、リナを連れて行った。母さんは相変わらずのようだ、

「さあ~母さんに怒られる前に。な?」

「そうだね」

長く家を空けてたのに……。母の対応は変わらない。嬉しい反面。寂しい気持ちもある。久しぶりの自分の部屋は、埃一つ落ちていない。綺麗に掃除されてたようだ、

「空気の入れ替えもしてくれたんだ、母さん……」

何も言わないが、こうした然り気無い優しさが、母らしいと、ようやく帰って来たのだと、実感していた。

「明日は、飛ぼうかな……」

旅装を脱いで、ゆったりしたチェニックに着替え。母の手作りの夕飯を堪能したシンクは、早めに休むことにした。




エピローグ



━━晴天に恵まれた翌朝……。窓を開け。日も上らぬ乾いた風を全身に感じながら、早起きして、竜舎に急いだ。


初夏とはいえ。中央大陸はまだ肌寒い。耳を守るファーの顎紐を結び。マフラーを首筋に巻いた。空は地上よりはるかに。気温が低い。シンクレアはシンクが竜舎に入って来た途端目を覚ました。

『シンおはよう~♪、飛ぶのね?』

「そうだよシンクレア。行けるかい?」

『任せて!、私なら太陽までだって飛んで行けるわ』

大型の猫が喜びを表すように。喉を鳴らした。



━━竜舎の壁は。シンクレアの為に、閉会可能な作りになっていて、外に簡単にでれる。



地下に降りると。深い洞窟が広がり。父の土竜暴君Jr.その家族の住まいである。シンクレアの首の根元に。鞍を着けて。シンクは慣れた手つきで、自分の腰と鞍をロープで繋いだ。滑らかに輝くシンクレアの首を叩き。

「行こうシンクレア。僕達の空に」

『ええ!行くわよシン』

竜舎を出た途端、胸一杯に、新鮮な空気を吸い込み。ブルリ武者震いをした。

ゆっくり翼を広げ。確かめるように羽ばたき。シンクレアは、力一杯地を蹴るや。一気に空をかけ上がる。



━━頬に当たる。切るような冷たい空気を肺に吸い込み。吐く息は白い。シンクレアは全身から、歓喜を発して、力強く羽ばたく。するとみるみる城は小さくなり……。

まるで眼下に広がる町は、ミニチュアの玩具のように小さく。沢山の民が住むとは思えない……。



ゆっくり風に乗って、旋回したら、北上するよう。シンクレアに命じた。

『任せてシン♪』

二人で毎朝。空を飛ぶのを日課にしていて、北の翼人の国にある農場で、搾りたてのミルクと。産みたての玉子を買って帰るのが、二人のお約束である。



伯母さん達に。美味しい朝食をと。考えての行動で、フレア、シアン姉妹も誘い、みんなで朝食を食べよう!。朝日がゆっくり地平線を登ってきた。暖かな光。絶対的な存在、光に照らされ。小さく農場が見えてきた、

シンクの妹竜シンクレア。兄のようにしたうリナ。この日の出会いが、リナの運命を動かすことに……、また同じ物語か、別の物語で、背徳の魔王でした。

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