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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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学年ランキングから何故か?中編

突然観察官に選ばれたシンクは、何故かギル・ジータ王国に向かうことになったのだが……、エドナ学園長の思惑と誤算に巻き込まれることに……。

プロローグ




━━傭兵部隊戦……最終日。

最低人気。シンク・ハウチュウデンとの対戦だ、


四年生……、コルト・アルベルトは、失意の底にいた。そもそもが可笑しいのだ、まだ一年生で……、野外授業だって、初めてだったはずなのに。いきなり観察官に選ばれたとか……、そうかと思えば。特別枠で、『院』の学生しか、出場出来ないはずの。魔法討論会・予選に。飛び入り参加なんて、あり得ない……!。だって……、普通はどんな天才だって不可能な筈なのだ!?。




真っ青な顔のコルト部隊の面々も涙目である。いくら英雄王の子供だからって……、




━━━時間は少し遡る。アレイ学園の『特待生』一、二年生徒は、港街ドマーニの近郊にある。近衛連隊訓練施設で、野外授業を行っていた。小型船舶が停泊する。桟橋のがある浜辺では、沢山の生徒が、夕食の準備で苦心していた、シンクは観察官に任命され、さっそく夕食の準備してる他グループを回り、請われればに助言して、どうにか全員が、合格をもらい。ほっとしたのも束の間。



みんなと夕御飯食べようかと、自分のグループに戻ろうとしたシンクは……、教官の1人に呼び止められ、訳もわからず。教官と迎えの馬車に乗せられていた━━。



━━夜の街道を、猛然と、王都カウレーンに戻る車内━━━。

同席した、中年の教官も、異例のことに。苦虫を噛み潰した顔をしていた。


……途中……、


町に寄ったかと思えば。馬と御者が替えられ。ひたすら時を惜しむように。馬車を走らせる強行軍。何かあったな?とシンクも考えた。



王都カウレーンの城門━━━、

御者が、何かを見せると、あっさり門が開けられた。通例では、翌朝の開門時間まで、城門は閉められるのだが……、それを押し通したのだ、嫌な予感はぬぐえない━━。


━━程なく馬車は、東大通り━━、


商家やアレイ教の大聖堂のある。通りでようやく止まった。


慌ただしく。馬車を降りて、先を急ぐ教官とシンクは、その足で学園に戻った。



学園長室に通されると。艶やかな美女と差し支えない。エドナ・カルメン・オードリー学園長が、目を輝かせ。待ち構えていた。

「初めましてシンク君」

「初めましてエドナ校長」

逸話にこと欠かさない人物で、シンクも。父が『オールウンダー』になれたのは、エドナ校長の人力があってのことだと聞いていた。

やや緊張が隠せないシンク。それでも眼差しは力強く。目線は自然に、胸元から離している。ほんのり耳を赤くして……、

クスリ思わず笑いが込み上がる。可愛らしい気遣いと、懐かしい……、あの才能に勝るとも劣らない魅力を、目の前の少年から、見出だしていた、

「急な呼び出し。申し訳ないわシンク」悪戯ぽくウインクされ。目を白黒させたが、目はエドナの表情や。仕草を注意深く観察されてると感じ。見た目と違う。思量深さは、流石は王族と感心した。


「エドナ先生、僕は、何をすればいいんですか?」

表情から読み取るのをあっさり諦め。正攻法で攻めて来た。僅かな邂逅だが、十分に楽しめる有意義な時間に。本当なら性急と、嫌われる行為だが、

『これは、シンクの人柄かしらね……』

小さく微笑を浮かべた。

「観察官になった貴方に……。早速で申し訳ないのだけど、バレンタイン教頭の補佐として、ギル・ジータ王国に行って欲しいの」本当に急な話だな……、呆れが混じったため息を。そっと口内で消して、素直にひとつ頷き。

「承知しました、向かうのは明日で宜しいですか?」

伺うような眼差し。あっさり了承されるとは思わず。エドナにとっても予想外だけど、


━━考えたら王族である。突発性な出来事に馴れてるのだろう。

「今すぐ『瞬きの扉』を使って、向かってちょうだい」

それでも予想外過ぎたエドナの言葉に。目を丸くした。



━━『瞬きの扉』とは、


世界議会の加盟国に設置されてる。非常移動手段である。僅か数名だが、行きたい加盟国に、僅か瞬きする間に行く事が出来る。最重要機密である。

「それは……」

シンクの心配そうな顔に、クスクス小さく微笑み。

「それは無いから安心して、ギル・ジータ国王とは、お逢いしたことはあるわね?」

「はい……、プロキシスで二度」

「シンク今現在ギル・ジータ王国では、魔法討論会・予選が、開催されてるわ、我が学園の今年の実力では、正直厳しいのよね……、でもね……」

国内の重大情報を。シンクに聞かせて良いのか?、不安になった、



━━今の世界議会、議長は……、アレイク国王レゾン王である。政治的背景を考えれば、なるほどと納得した、シンクは楔なのだ、英雄である父の名を使ってまで、国内外に。アレイク王国の威信を、高めなければならない理由がある。



━━それは次代の若い国王夫婦の為であろう……、理解の光を見出だして、苦笑を滲ませる。

「貴方には……、言いにくいのだけど……」

「補欠ですね?」察しの良いシンクと話してると、

全ての『オールラウンダー』候補者、称号を得た者に共通する。煌めきを、感じずにはいられなかった。

「本当に、似てる親子ね……」

愛しい才能の煌めき。我が子を見るような優しい。眼差しをしていた。

「何が出来るか解りませんが、みんなの料理番でもやりますね」

クスリからかうように笑いながら、自分が置かれた状況を、楽しむ気だと感じ。図太さを頼もしく思い。

「クスクス♪それは良いわね~、うちのリーザたら……、誰に似たのか料理ベタでね~。お願いするわ♪」

思い出した……、学園長に言われてようやくだ。傭兵ギルドマスター役のリーザは言ってたな……、


エドナ学園長が、リーザの義母だったか、

「……成る程……」確かリーザのお父さんは、バレンタイン教頭と聞いた、すると……リーザは父がお世話になった。リリア先生の娘さん……、案外世の中狭いなと感じた。




━━この15年で……ギル・ジータ王国は、財政が豊かになって。例年国内の人口は増え続けていた、すると数年とせず。土地不足問題が起きた。そこでオーラル陛下の誘致で、昨年から中央大陸に、新たな街を建造中で、同時に近隣の土地を開拓して、新たな香辛料の農園を試作中である。



━━別邸、執務室。

国政に勤しむエバーソン国王の元。妻サミュ王妃が慌てて入ってくる姿が、目に入りしみじみ。

「変わらんな……」

小さく苦笑する。

「あなた……、アレイク王国から連絡が入りました。あの子。シンクが……、バレンタインの補佐として、アレイ学園の補欠登録されていたからと、『瞬く扉』を使って来日すると……」

「それはまた……、先程思ったことだが……」

「あの方の子らしいかと……」

呆れた口調のサミュ王妃は、やれやれ首を振り、18年前を思い出していた。



━━その後、中央大陸事件の時も感じたが、世界を救った四英雄を海中船で南大陸。さらに北大陸に送り届けた経緯もあって。オーラル達の偉業をつぶさに見てきたからこそ、驚きよりも呆れが勝る。

「あの方自身が、規格外でしたし……、久しぶりにシンクと会うのは。とても楽しみですわ、そうですわね私の王様?」

眼鏡を直しながら、愉しそうに。ようやくクスり笑う。

「そうだな、あの事件以来か……」

世界議会が、中央大陸で行われたのは、今から6年前。未だ堕ちた赤の民、魔人王レイアスは、倒されていない。それだけ強大な力をまだ秘めている。



それでも………、表面上だけは、平和になったと。印象付けさせる必要があった、その為中央大陸で、世界議会は開催された……、


闇の女神カーレルが封印されて。堕ちた赤の民は力が失われたが……、翼は残された、それゆえ赤の民は。翼人と呼ばれていて。中央大陸の北方に。都を構えている。


頑なな翼人と。人間の間に深いしこりはあるものの。7神官、魔人王レイアスの悪行を知り。人間との対立は無くなった、あくまでも表面上ではだが……、


彼等にとって、人間とは、手足と同義の意味だった、堕ちた大陸に千年も隔離され。今まで自分たちこそ正義だと思ってたのが、違った……。

理解はしてるが、理解をしたくない……。複雑な心理と、自分たちの悪行を。見たくないと考えて、頑なになってるのだ。



オーラルは、とても繊細で、難しい外交を抱えていた、現在も世界中の国王から、信を買い続けオーラルは多忙を極めていた。



━━その為。魔人王レイアスの動向を、見れなくなったのも、仕方ないことだった……、


四年前に一度だけ……、唇を噛み落ち込む姿を、エバーソンは見た。

「……後数分早く……。レイアスの目論見を見抜けてたら……」

後悔を口にしたのも、後にも先にも。あの一度だけである。

「あんなハンデがあるのに……、優しい子だよ」

「そうですわね」

にっこり微笑むサミュは、愛しそうに腹部に触れた、来春には、二人目が産まれる。

「ライラは元気にいるかな……」

二人の娘ライラは、今年10歳を迎える。国王の名代となり、使者として、北大陸に赴いてるのだ、心配ではあるが、しっかり者のライラのこと、不安はあるまい。



━━━━アレイク王国、王城、地下……、



広いガラントした部屋。床には魔方陣が描かれ。奥に鎮座された。クリスタルがゆっくり明滅を繰り返していた。青白い魔法の光瞬く不思議な輝き溢れる部屋、



薄い明かりのランタンを上げ、学園の地下から。秘密の通路を案内するエドナは、やや驚きを隠せないシンクを連れて、

「驚いたかしら?」「かなり……、いいのですか勝手に秘密の通路を僕に教えても」

ニンマリ人の悪い顔をしながら、方角的にだいたい城の地下まで歩いた感覚はあった。

「ここ城の地下ですよね?」

『瞬きの扉』は城で管理される施設である。

「そうよ~。もっとも秘密の通路使うの許されてるの私くらいだけどね♪」

あっけらかんと説明して、『瞬きの扉』の施設の部屋に入り。中には一抱えある水晶が、魔方陣を経由して、明滅した光が集まる様子を、初めて見るシンクは、興味深く観察していると、エドナ学園長自らカーソルを操作して、『瞬く扉』を調整していた。

「シンク頼んだわよ」

「はい、行ってきます」

光がゆっくり明滅し出して……。魔方陣が起動。魔力の巡回が始まった………。シンクは意を決意して、魔方陣の中に入る。明滅は激しく。強くなり。魔方陣内に爆発的な光が広がって……。

一瞬で吸い込まれ━━消えていた……。



━━━ギル・ジータ王国。城の一室。



落雷が落ちたような凄まじい音、眼を射る閃光が広がり、遮光グラスで、眼を保護していた少女は、目を細めた……。空間に歪みが現れ……。伝令の通り。転送されて来たようだ。徐々に肉体が空間を飛び越え。現れた男の子を、静かに見つめた。笑みを浮かべながら。

「お姫様の言う通りの人だったら、お父さんの失敗……、助けてくれるよね?」

北大陸に行ってる。友人を思い嘆息した。



……凄まじい吐き気と目眩に苛まれ。光から現れたシンクはうずくまる。

「シンクですね?」

「うぷ……」

「ああ~無理に、返事はしないこと~、それテレポート酔いだから、これを飲みなよ~」

すっきりした香りの。冷たい飲み物を渡された、吐き気に。躊躇したけど、意を決意して一口飲むと━━━。


嘘のように吐き気が収まった、

「蜂蜜の味と酸味が強いな……、何かの果物か……」「喋れるようなら、君がシンク・ハウチューデンかな?」

改めて顔を上げると、男の子のような。格好した少女が、ギル・ジータ王国の魔導師が持つタクトを手にしていた、どうやら彼女は、『瞬く扉』の管理者のようだ、

「はい。シンでいいですよ」

ほう……安堵した顔を見せる。なんかヤナ予感が……、

「良かった……、管理見習いの私しかいないから、不安だったの……」

それはかなり危険な……顔がひきつる。

「まあ~何わともあれ。ギル・ジータ王国にようこそ♪。私は『瞬きの扉』管理者見習いのアムール・ステファン、アムって呼んでね」

「よろしくアム……」「とりあえず管理者の詰所で、今日は休んでね~、明日早朝━━馬車の用意するから、私が魔法討論・会場に案内するわね」

ぐいぐい捲し立てられ、頷くしかない……。押しの強い子人らしい。

確かに色々と今日は疲れた……、お言葉に甘えるか、



━━漁村の村、魔法討論会・予選……、会場。


魔法討論会とは、そもそも、東大陸のラトワニア神学校、リドラニア学園、ドヴィヤ学校、アレイ学園、ジータ学園の『特待生』『院』生が、自分たちの技量を見てもらう為の公式の場として、毎年行われていたが、



━━世界議会発足を受け、加盟国の各国の学園・学校で、選ばれた優秀な『院』の中から、6名づつ選び。予選会に参加させることになった。



魔法討論会の基本概念として、参加学生は、自分たちが選んだ研究テーマから。独自な解釈、自分独自の新たらしい理論。論文、さらには新たなる魔法を試み。発表する公式の場所としているのだが……。


新たにルールが改正されたのは、今から8年前である━━。


━━魔法討論会では、予選と本選の二回に分けた理由があった、表向き優秀な生徒には、多くの学生と交流してもらう意味あいがあったが、本質は違う。各学園、学校の優秀な生徒が集まっている。彼等は未来の外交官、宮廷魔導師となる可能性がある生徒同士。次代の重鎮の交流会と言う意味合いが強くなっていた、



━━改正された新たな討論会のルール、夏休みに行われる本選出場するには、最低限の決まりごとがある。各学園の参加者5名の内。2名以上の参加生徒は、結果AかAAを与えられた場合のみ出場資格えるが、細かい規定が用意されていて、最低規定では二名+補欠1名を含め。3名が━━本選出場出来ることになる。



すなわち最低規定がを下回る。参加グループ5名の内。1名だけが、AやAAをとった場合、そのグループの敗退が決る厳しい裁定が下る。ただし参加生徒5名全員がA以上ならば、補欠含め6名が本選出場となるが、Aをとれる学生は、それだけで宮廷魔導師に推挙されるレベルのため。かなり厳しいルールである。



━━━日も昇らない早朝。シンクはアムと供に、国王夫妻の別邸がある漁村まで馬車を出してもらった、緩やかな水平線を左手に、開拓された街道を南下していく。隣に座るアムに腕を取られ赤くなっていた。

「それよりも……、昨日聞けなかったけど、シンは王族なんだよね?」

朝から元気にニコニコ、照りつける太陽のような笑みに、シンクの顔がひきつる。

「はい、そうです」

「私、ライラ皇女様と学年一緒なんです~。ライラ様のが年下なんですけどね」

「ライラちゃんと……、元気にしてますか?」「あっ、シンのこと姫様から聞いてました、ライラ様は、あの通りのしっかり者ですから、元気ですよ~」

ぐいぐい自分の話や、返事も聞かず。あれやこれや色々聞いてくる。朝からこのテンションは……、

「ライラちゃんが小さい時。何度か、三人で遊んだんだよ~(あいつは友達ではないからな)」

「うわ~、知ってます~その話。ライラちゃんから色々聞いてたんですよ~。今年の夏━━ライラ様も。中央大陸に行くって言ってたし、プロキシスで、あのコンテスター姉妹が、レセプションで、演目を披露してくださるそうなの♪、私も頑張って予選突破しなきゃ」

聞き逃しかけたが、気になった単語が幾つかあって……、

「もしかして……、アムはジータ学園の?」

ニッコリ輝くように微笑み。うんうん頷いた。

「そうそう~あれれ?、シンに言って無かったけ」

「うっうん……、でも昨日は…」

「ああ~見習い管理者のこと?」

素直に頷くと、パタパタ手を振りながら。

「あはは、私バイトバイト~、本当は、学園の先生が居なきゃ駄目なんだけど、帰って来ないから、参っちゃたわよ、あはは~」

あっけらかんと言うが、それはどうなんだろ……、段々心配になってきた、

「シンが寝てるとき、ようやく帰って来て……、学園長からめちゃくちゃ怒られてたわ~」機密扱いの内情を、べらべら喋るアムに、シンクの顔は凍り付いた、シンクが無事だったからいいが、事故でもあったら……、仮にも王族……、国際問題になってた可能性がある。今頃エバーソンさん。頭抱えてるかも……、サミュさん胃腸弱いけど大丈夫かな?。違う不安に、頭を悩ます。



━━その頃、別邸では……、シンクの予想通り頭を抱えるエバーソン国王と、真っ青な顔の王妃・宰相サミュは、おろおろしていた、まだシンクが到着するまで、かなり時間が掛かる……、

彼女の苦悩は、まだまだ続きそうである。



━━エバーソン国王の別邸があるのは、小さな漁村だった、王都から近く、また街道の側にある、小さな漁村ではあるが、そもそも漁村は、王族だった父の所領で。別荘があるだけの村だった、今は街道が近く交易中継の村であるため。美しく整備されていた。



━━魔法討論会・予選の舞台は、村の広場を会場にしていて、村の広場に大規模結界を張っており。魔方陣が何重にも描かれた中で、魔導師達が最終調整を行っていた……。その様子を近隣の子供達や、漁師が、物見遊山に見に来ていた。



━━朝食後、顔色の悪い国王夫妻が急遽現れて、驚いた生徒達の中にリーザ・カーベンもいたが、見覚えのあるシンクが国王夫妻の隣にいたから。あんぐり口を開けて、闖入者をマジマジ見ていた、

「皆さん……彼は、アレイ学園の補欠でシンク・ハウチューデン、『特待生』ですか……、観察官の権限で昨夜合流いたしました」


━━ザワリ……。驚きの声と、好奇な視線が集まる中。リーザは父バレンタインを伺い見た、天を仰ぐ様子から、シンクが訪れることを知ってた感じである。

「お義母んの仕業ね……」

今年のアレイ学園。魔法討論会に出場者する生徒は、確かに諸事情で、小粒だけど……、(フレア、シアン姉妹が欠場したからだ)



━━まさかここで補欠のシンクが……、微妙な空気が流れていた。そこには色々と理由があった。


━━アレイ学園の『院』生達にとって……。複雑な面立ちであろう……。たまたまなのだが……、アレイ学園の代表生徒5人の内1人が、風邪でダウンしていたからだ、小さく微苦笑しながら、どう切り出そうか、親子は小さく唸っていた。

「シン~!、そちらのチーム大変ね。代表が病気なんだって?」

いきなりバレた……、

「えっ?そうなのアム……」

戸惑うシンクの腕に抱き着いて、ニッコリ活発に笑いながら。

「うんうんそうなんだよ~。それよかシン~。ご飯一緒に食べようよ♪」

「えっ、あっうん」ぐいぐい押しきられ、仕方なくアムの後に続いた。複雑な顔のリーザは、父と顔を見合せ苦笑していた。



━━朝食終えたシンクを、コホン咳を一つして。バレンタイン教頭が歴戦の戦士のような巨体に、神経質そうな顔を乗せ、済まなそうに眉を寄せると。「既に聞いてると思うが……、代表の1人が風邪で、肺炎を患ってな……」

実に言いにくそうである。

「代打ですね」

「うっ、うむ、そうなのだ……」

それでは仕方ない。そもそも驚く話しではないし。ただ予想外に早くなった結果を聞いたに過ぎないのだ。

「構いません良いですよ~。バレンタイン教頭、確か魔法討論会の決まりは、新しい解釈。実戦。論文でしたね?」

バレンタインではなく、困った顔が隠せないリーザが答えた。

「そうよシン。言いにくいけど、宛はあるの?」

それが大事と心配そうな顔をした、他の代表三人も不安そうな顔をしていた、それはシンク次第で、参加が資格すら失う瀬戸際だからである。小さく嘆息して。「魔法なら。オリジナルや改良でもいいんですよね?」

意味深な発言に、訝しげな顔の二人に、小さく笑いかけ。

「我が、王家独自の魔法とぼくのオリジナル改良魔法━━━、とくとご覧んにいれましょう♪」

扇形にいい募り、一礼したシンクに。二人は戸惑うばかり。

「えっとシン……、中央大陸独自の魔法てこと?」

「はい、一つは父とぼくしか使えない、まさにハウチューデン家の魔法ですね♪」

父が学生の頃。独自の解釈で、一つの魔法理論を偶然産み出した。考え方としては、現存する魔法に別の因子を、ワードとして組み込み、『放つ』のトリガーを唱えることで、2つの魔法が、一度の魔法を使うだけで使える。画期的な理論を発表して、世界中の魔導師達を震撼させた。そう……新たな魔法の新時代を担ったのだ、



その後……、父は軍に入り、もう一つ独自に編み出した魔法がある。理由は馬鹿馬鹿しいことから作った魔法だが、叔父のブライアンは、その魔法をヒントに、飛行魔法を編み出した、

「そんな魔法が……」

「他に2つありますが、それはぼくしか使えないから、発表するのは。それと使い勝手のいい改良魔法にします。あれは少し勉強すれば、誰でも扱えるから、魔法討論会に向いてると思いますよ♪」

「そんな大切な魔法を……」

「あっ大丈夫です。父からもしもエドナ学園長に無理やり。魔法討論会に出させられたら、これは見せても構わないと、言われてますから」

「そっ……そうなんだ」

うわ~真っ赤になって、とても済まなそうなリーザに、ニッコリ優しく気遣うよう顔で笑いながら、改めてバレンタイン教頭向き直り、シンクは改めて小さく頭を下げていた。戸惑うバレンタイン教頭を真っ直ぐ見詰め。

「遅くなりましたが、父から、バレンタイン教頭に伝言があります」

まさか自分が呼ばれるとは思わず。少したじろいだ、娘のリーザに押され、仕方なく前に出る。

「ゴホン、『我が生涯において━━、リリア・カーベン先生と、バレンタイン教頭に出会えたこと、神に感謝してます。二人の生徒オーラル・ハウチューデン』」

突然のことだけに、バレンタインは戸惑う、

「父は、リリアさんが亡くなられたと聞き、見送りにも来れなかったこと、今も申し訳ないと、悔やんでます」

顔を上げたシンクはギョッとした、厳めしい顔のバレンタインが、ぼろぼろ涙を流し。膝を着いて泣き出したからだ、慌てたのは、良い話を聞いて。ほろりとしてたリーザで、子供のように泣きじゃくった父を、どう扱えばいいか、オロオロした、

「シンク……、ありがとう……、君の伝言は、私と妻の長年の苦悩を癒してくれた……」

弱々しい父の姿に、リーザは困惑した、一体父と母に何が……、

「これはこれは、我が国の皇子シンク様。お久しぶりでございます」しっとりした空気をぶち壊すような。やたら尊大な物言いは、明らかにシンクを敵視した。口調の少女の物で、辺りを侮蔑した顔を向けていた。

「………だれ?」

神聖な場所を。土足で踏み荒らされたような、不快感を露に、リーザが眉をひそめた。


ピクリ……、二人の少女はにらみ合う。暴言に近い侮蔑を吐いた少女は、紺のローブを着ていた。あの制服はパレストア帝国の魔法学園の……、コホンとイライラを隠すように。顔を繕い。虚勢の笑みを浮かべる。

「私のことお忘れですか皇子。アレンザ・ホウネリアですわ」

もの凄い聞き覚えがある名前。顔を上げたシンクは、

「アホウネ?」

「誰がアホですって!」

思わずリーザは、おお~と手を叩く、キッと睨まれ。手は後ろに隠した。

「まったく……、幼なじみに、気付きもしないってのは、どうなのかしらね~シン?」

忌々しそうに鼻を鳴らした。これには済まなそうに、頭を描き。

「済まないネリア、存在感無いから、気が付かなかった」

ニヘラ意地悪く言う。キッと睨み付け。

「相変わらずですこと、元気そうね。ヘタレシン」

ぴきり青筋たてるシンクは、表情が怪しい。

「わざわざ挨拶ありがとう……、似非お嬢様」

ぴき……、ホウネリアの顔に。険悪な色が走る。

「ちょっ、ちょっとシン!」

慌てるリーザ。すっかり泣き所を見失い。珍妙な顔をしたバレンタインを他所に。二人はにらみ会う。昔から二人は、会えば喧嘩ばかりする。犬猿の仲であり。輝きの都プロキウスでは、有名な話しだ、それを知らない周りは。

「ホウネリアお姉様が……」

「僕のホウネリアが……」

なんて声が聞こえ。頭を抱えるパレストア帝国の代表達を尻目に。二人は散々。お互いを罵り合いを続け。ようやく気が済んだから、

「私を、失望させないでね」

「ふん君こそ。失敗癖。出すなよな」

二人同時に鼻を鳴らして、そっぽ向いて、スタスタ歩き出した、訳もわからないその場に残った人々の反応はそれぞれ。リーザだけが、

「ふ~ん成る程ね~。いわゆるライバルてやつか……」

1人納得顔である。


懐かしい出会いはさておき、アレイ学園の順番は二番目。シンクは最後の出番にまわされた。バレンタイン教頭の気遣いだろう。

「シンク皇子……」

みんなに続き外に出ようとしたところ。サミュ宰相こと、王妃に呼び止められた。

「リーザ先に行ってて」

「うんわかった……」

サミュの傍ら。青白い顔の中年男性が、顔をひきつらせながら、立っていたのを見たからだ、促され隣室に通されて直ぐに。

「あの……申し訳ありませんでした」

すがり付かん勢いで、シンクに土下座する中年魔導師に。訳が判らず。訝しげな目をサミュに向けていた、

「挨拶が遅れました、昨夜『瞬く扉』の責任者の……、ハリファ・ステファンです」

「…ん?、ステファン」

聞いた名だった、しばらく熟考して、はたと思い出した。


「失礼ですが、アムールは貴方の……」「はっ、はい我が娘にございます」

バイトとして彼女が『瞬く扉』の見習い管理者として、あの場にいた訳がわかった気がした、

「この度は、皇子様が使われるとは知らず……。実験に没頭しており、誠に申し訳ありませんでした!」

気の毒なほど、血の気を失い青白い顔をしてたかと思えば、再び頭を下げるハリファに、なんと言うべきか黙考して、小さく笑みを浮かべていた。

「ハリファさん。一つお伺いします。アムールは良い娘ですよね♪」「へっ……、まあ~、あれは妻に似て、押しの強い所がたまに傷ですが……」

狼狽するハリファに、柔らかく笑いながら、父が思うほどなんだから、よっぽどなんだと苦笑いした。

「彼女は……、僕の友達です。友達が、たまたまあの場にいて、出迎えてくれた、ただそれだけですよ。サミュさん♪」虚を突かれたサミュだったが、ああ~成る程と感心した、笑みを広げ。

「でしたら……、何も問題はなかった、そうですわね?」

クスリ小さく笑みを作り。シンクに小さく頭を下げていた。粋な裁定に感謝したのだ、

「ハリファ、貴方に命じます。アムールの友人が、討論会に訪れてるのです。貴方は父として見て行きなさい」真っ青だった顔に。赤みが差して、クシャリ顔を歪めながら、

「ありがとうございます!」

寛大な処置に、ハリファは涙した、一つ間違えれば、彼は死罪を言い渡されても。仕方ないのだから……、


冷静にハリファの白髪を見ながら、サミュは小さく嘆息して、

「素直に、人を思いやれる方で良かった……」

ギル・ジータ王国の重鎮達にも……、シンクの爪の垢、飲ませたいと。本気で考えたサミュであった、



━━別邸の外に出ると、裏庭に回る途中から、崖のような場所がある。階段が造られていて、海岸に直接降りれるようになっていた、



海岸には桟橋もあって、小型の海中船が繋がれている。あまり知られてないが、この漁村は、光の民が多く住んでいて、海中都市に行ける港でもある。王族や一部の有力者のみ知らされた秘密だ。まだ海中都市の復帰作業は、終わらないが、パレストア帝国の地下にある。封印の扉のシステムに、自ら捕らわれていた、光の民は、自分たちが生きてることに。当所戸惑い、困惑してたが、魔王ピアンザの妻が、光の民の女王の娘シレーヌだとわかると、海中都市の復活を。魔王ピアンザに嘆願したのだ、困ったピアンザがオーラルに相談した事がきっかけで、機械の国ジエモンとギル・ジータ王国の援助を受け。海中都市は、ようやく都市としての機能を、回復してきていると、聞いている━━━。

この漁村は言わば、海中都市とのパイプラインを担っていて、さらに普通の生活を願う。白の民の受け入れを快く受け入れてくれたのが、たまたまエバーソン国王の元領地の漁村だった。



━━━快晴の空の下。小さな漁村に、沢山の人が集まる。多くは、魔法に携わる仕事の者や、ジータ学園の関係者であろう。無論白の民も内緒で混じってるが……、



最初の組は、南大陸━━軍国ローレンのレノン学園で、最先端のゴーレム製造と、三賢者に挙げられる。魔導兵の創造者デーア・オルトス学園長が、厳しくも自由な学風で、未来の魔導兵製作者パペットマスターを育てている。

「アノン・ファン」赤髪を後ろで纏めた女生徒は、小豆色のベスト、肩に軍服にあるようなヒラヒラが風に靡く。目を引く目力と、強気な顔が印象的な美少女である。

「我が、魂の灯火よ、我が産み出しし、機械の体に、新たなる息吹を与えん」

ザワリ……、


彼女の足元に。召喚魔方陣が浮かび上がり、小型の召喚の門が開き、現れた少女……、嫌……、銀色のフォルムと女性を模した、美麗な機能美、太陽の光を受け、とても美しい光沢を輝かせ、大きさはシンクの腰くらい、リナと背は変わらないか、機械人形……、

「聖なる兵!?」

誰かの呟きが、爆発的に広がった、シンクとて驚きが隠せない。見た目は小さいが、輝きの都の聖騎士団にフォルムが似ていたからだ……、しかしシンクは知っている。あの銀の兵が、聖王の剣の一部であることを……、



さらにシンクが驚いたのは、今の魔法は。誓約……、すなわち自分の分身。使い魔を選別する。魔法であることだ。

使い間の契約は今まで……、生きた動物しか成功令がない……。

━━ギルルルルル、ウィーン━━、魔力のスパークが走り。

使い魔自動機械人オートマイータそう表現出来そうな人形は、ゆっくり動き出して、

『モウカリマッカ?、ぼちぼちでんな、さよか~、頑張り~な、ニャハハハハハ』

ギョとした、あまりのことに人々は静まる。

「何でやねん!」

思わず突っ込んだシンクに、

『オオ~、エエ突っ込みドスですな~』

「チャウチャウ、なんでジエモン語やねん」

『それは~ワテノ製作者が、機械の国ジエモン主審やからや~』

「主審、あのたま蹴りで笛を鳴らす?」

『そうや~アタックするやつや!』

「それは競技が、チャウチャウ」

パタパタ手を振るシンク、あたふたしてる製作者である。アノンの制御を無視して、シンクの前にやって来た、すると突然、

『ぼくと付きあってください!』

「それは完全にちゃうやろ、もう君とはやっとれへん。もういいわ」

『失礼しました』

1人と一体。息もぴったり頭を下げるではないか。呆気にとられてた参加者一堂も。一人が急に吹き出して、笑いが起こる。

「ああ~」

頭を抱えるアノンに、惜しみ無い拍手が送られた、でも戸惑いながら立ち上がり、困ったような顔で、頭を下げた。

━━顔は真っ赤になったが、アノンは、鼻息荒く、つかつか勢い良くシンクの前に立ったかと思うと、

「あっありがとう……、そのなんや、キラのジエモン漫才付き合ってもろうて……」

もじもじする彼女は、お礼を言おうとしてるのかな?、

『なあ~ワテノ製作者。可愛いからってナンパスナヨ~』

いきなりアノンの前に割り込み。器用に肩を竦めながら断言するキラ。魂の一部を得たとはいえ。実に面白いなと。感心して見てると、ヨロリ銀色に輝くボディの身体を。隠すようにくねらせ。

『まっまさか……、アノンのエグレ胸では飽きたらず。ワテノの豊満ボディがめっ、目当て……』

めちゃくちゃ悪のりするキラに、にっこり笑みを向けながら。

「サノエさんのところの自動人形オートマイーターに似てるね」

ピクリ真っ赤で怒りにプルプルしていた。アノンがハッと息を飲んで、

「あっ貴方は、サノエおじいちゃん知ってるんですか?」

キラン目を煌めかせるや。シンクでも目で追えないスピード、がっちり手を握られたシンク、女の子の手にしては。ゴツゴツしてるな~。そう思っていると。視線を感じる。アノンはかなりの美少女である。いきなり親しげにしてれば……、そう考えればちょっと周りの目を気にした、

「ええ~まあ、祖父と昔馴染みで、父の兵を見に、しばらく我が国に逗留してました」

「ああ~、あのそれで、おじいちゃんは元気ですか!」

とても切羽詰まった勢いに迫られ。シンクは仰け反る。

「まあ~落ち着いて、その話は、僕の番なので、終わってからで良いですか?」

ハッとして周りの目にようやく気が付き、あわてて手を放して、カーっと真っ赤になってアワアワしながら走り去っていた。



安堵した審判に促され。シンクは、魔方陣の中に入ると。

「シンク・ハウチューデン」



ザワリ……、

英雄の子息、しかも王族の登場に。否応なく観戦者からざわめきが上がる。違う理由で鼻息荒い。ホウネリアの姿に苦笑しつつ、ゆっくり目を閉じて魔力を高め━━、

「多重魔法直線飛行!!(ラジカルロケット)」

素早く魔法を自分に展開。シンクの足元に無数の魔方陣が現れた。結界を張る魔導師はギョッとして、各国の『院』生誰しも顔色を無くしていた。



━━シンクの足元に。耳鳴りがするほど強大な濃密度魔法力が集められた。誰も見たこともない小型の魔方陣が現れ。しかも魔方陣が5層もある。恐ろしく複雑な多重魔方陣に組変わるではないか。



途端に……フワリ……、魔方陣の効果か。シンクの身体が浮いた、

「うっ嘘……、まっまさか!?飛行魔法なの」

リーザは顔色を無くしていた。魔法の国と名高いパレストア帝国、魔法学園の学生まで、衝撃を受けたように息を飲み見守るなか、

「シンク行きまーす♪」

軽快に宣言すると。足に溜めを作り。連動するよう魔力に点火した、すると魔法が足元の魔方陣に叩き付けるような、凄まじい爆発が起こる、

しかしシンクの足元は、風の魔法で、結界強化してなければ、消し飛ぶような凄まじいもの、シンクは真上に凄まじい勢いで飛んで行った。

バスって音がしたかと思えば、あっさり強化された魔方陣を突き破り上空に飛んで行くから。



防壁を張るギル・ジータ王国、宮廷魔導師をも唖然とさせ。シンクの姿は小さな豆粒位になる。

浮遊レビテーション

風の魔法で、さらに全員の耳にシンクの声が伝わる。

皆が見てる間に。緩やかに落下が始まる。ただそれだけに見えたが……、




「今の魔法は……、飛行魔法では無いようだけど……、次に使った魔法あれは……」

使いようによっては、かなり使える魔法である。



ざわめきが収まらない中。シンクは爽やかな笑みを浮かべ、着地を決めた。

複雑な顔をしてる結界を張る魔導師達、顔をひきつらせる宮廷魔導師を尻目に、手を振りにこやかな笑みを浮かべていた。

「今の魔法が……」戻った。シンクに問うように聞くて。一つ頷いて。

「最初の多重魔法は。父のオリジナルです。他にも種類はありますが。使えるのはぼく位です。で次に使った魔法は、制御こそ慣れるまで難しいですが、誰でも覚えれますし短時間なら、滑空しながら、他の魔法が使える。そんな改良魔法です」

あっ、意味に気が付いた、

「そうか……、シンの言ってたオリジナル魔法って、今の浮遊魔法を、改良したやつね?」

察しのよいリーザのことだ、色々と含む理由にも気付いたようだ、

「そうです。あの魔法は、少しなら物だけでも浮かせる魔法に改良したんですよ、それはね……」

「やっぱり……、長時間浮遊出来るためと、さらに使い方を限定すれば、制御が楽になって、今シンクがやったように、別の魔法まで使えるようになるよね!」

驚いた……、あの僅かな説明だけで。感心したシンクに。ちょっと顔を赤くして、

「わっ私だって、『院』の生徒なんだからね!」

「凄いねリーザは、流石だよ!」

素直な賛辞に、珍しく照れた顔をしていた。そんな素の表情を見せた娘に。バレンタインは優しい笑みを向け。目を細めていた。

「妻に似てきたな……」

しみじみ物思いに耽る。バレンタインの元。

「バレンタイン教頭、宜しいですかな?」

「はっ、はい」パレストア帝国、魔法学園の先生を筆頭に、各国の魔導師が集まっていた、訝しげに眉をひそめるバレンタインは。みんなに招かれたまま。別室に赴くと。ギル・ジータ国王夫妻まで、待っていた、



━━緊張孕む会合に、何かしら粗相したのか、不安になっていたら、

「質問しても宜しいですかな、バレンタイン教頭!」

「はっはい……」

厳めしい顔が、話を聞いてく内に……。驚愕に歪む。

「親子揃って……全く……」

めっきり白髪が増えた頭を掻いた。各国の魔法関係者が、気にしたのが、シンクの使った浮遊魔法である。



一般的に。普及している知識として、魔法を使ってる間。違う魔法が使えないのは当たり前の理論、大前提だ。

シンクはこの大前提と言う部分に。メスを入れた、一見彼の魔法は、父と同じような理論に思われたが……、全く違う理論。もっと単純で簡単な方法を用いているとバレンタインも気が付いた。簡単に言えば。浮遊魔法を単純な動き、自由制御出来るように。魔法にパターンを組み入れた点だ。



これにより幾つかのパターンをこの方法で、魔法に組み込んでいれば、わざわざ魔法を制御しなくても済むため、別の魔法も使えると言う利点と、考えである。今まで誰もが様々な考えから。アプローチしたが、不可能だった技術、それを簡単にまとめ。可能性のまさに盲点を突いた感じであろうか?、ようやくこの場にいた皆の興奮を理解したと同時に。バレンタインも魔法関係者の感じた。可能性を見出だしたのだ、



━━無論制限はあるだろう━━、


シンクの見せたのは盲点という。新しい魔法技術である。最初に見せた魔法。あれは高度過ぎて、手が出せないが。浮遊魔法は初期の魔法で、誰でも使える。あれだけの時間。浮遊しながら制御が楽なパターンに組み換えれるなら、物を浮かす魔法としても扱える……。しかも複数同時に制御して、展開可能な魔法だ、すると様々な技術が上がる可能性がある。


例えば、事故現場で……、


地震などの天災で……、家屋倒壊の危険ある場所でも、脅威の力を発揮できるだろう。物を浮かす魔法として使えば……、家が倒壊する時間が稼げる。

例えば崖崩れしやすあ現場の調査や、救出活動にと幅広く使える。バレンタインならばこう思う。水難事故現場……、時間が限られ複数の救助者がいても。例えばロープに浮遊魔法使えば。一度に救助者を、自分の命を危険にせず渡せる。それだけでも。十分魅力的な技術で……、各国の魔法関係者としては、是非欲しいと言うのだ。

「シンクに聞かねばならぬでしょうが……、話は解りました」

「では、良い返事を期待して、採点結果を見に戻りましょうバレンタイン教頭」

エバーソン国王に促され。一堂は会場に戻った。



━━予選結果……、総合得点トップは、予想通りパレストア魔法学園だった、



次々発表さる最中。バレンタイン教頭が戻ると。結果を聞いていたリーザが、父の姿を見つけて、感極まって抱き付いていた、戸惑うバレンタインに、

「お父さん……、私とシンクが、予選突破しちゃった……」涙ぐむ娘の顔を見て、不覚にもバレンタインも泣いていた。


シンクとは言うと……、

「あれれ……、てことは、夏休みは帰郷かな……」

苦笑を浮かべていた。卒業まで、帰るつもりは無かったのだが……、どうしたものかと悩む。

「シンク~一緒に行けるね~」

パタパタ走りながら、アムールがいきなり抱き付く勢いで、周りの目も気にせず手を握る。相変わらずのようだ、その後ろには、

『シンクはん~ワテを捨てる気なんですね』

よよよ~しなを作る。自動人形に、製作者たる。アノンが何か言いたげな顔で、待っていた。

「何か聞こえたな~、多分空耳やな~」『ガ~ン……、ワテノ渾身のお笑いが、スルーされた』

膝を着いて、泣き真似をしだすキラを、

「へ~面白いねこれ」

物怖じせず。ペタペタ触り始めるアムール。

『うっ、うわぁ~、せっセクハラや』

悲鳴を上げて、逃げ惑うキラを面白がって、アムが追い掛け回す。苦笑滲ませ、見送りつつ。アノンはもじもじ。上目遣いにシンクを見上げていた。

「アノンさっきの続きだけど、サノエさんと連絡してないの?」

「うっうん……」ちょっと顔が赤い。あの人らしいと言えば、らしいかも……。機械の国ジエモンの人は、100%何らかの職人である。中央大陸事件前までは、地下迷宮か、ギル・ジータ王国が主な仕事場所だった、中央大陸が世界に戻り。海中船が、世界の大陸を繋いで、船の国まで復興。ジエモンの職人は、世界中で求められている。

「確か祖父からの手紙に、レオールの竜に似せた。魔導兵製作してると聞いたけど?」

「れっレオール……」

今にも泣き崩れそうなアノン。ふっとその可能性を考えて。「アノンちょっと待ってて」

「えっ?、あっはあ……」

エバーソン国王夫妻見つけた、二人もシンクに気が付いて、

「シンおめでとう」「ありがとうございます。少しお伺いしたいことがあります。お時間宜しいですか」

「ええ、貴方には色々世話をかけました。構いませんよ♪」すっかり顔色が良くなったサミュ宰相に、安堵して、アノンを指して、詳しい事情を話すことにした。



━━呆れた顔のサミュは、苦笑滲まして。夫のエバーソン国王と顔を見合せる。

「確かに、オーラルは大々的に、レセプションをやるつもりらしいかも……、シンの考え通り。サノエが同行する可能性は高いよ。私からオーラルに聞いてみようか?」

「はいそうしていただけると、助かります」

「分かった、サミュ彼女を呼んでくれるかい?」

「はい王様♪」サミュ宰相が、アノンに声を掛けてる間に。

「シン先程。各国の魔法学園関係者が、集まっていてな……」

どう話したものか……、思案顔を浮かべる。

「ああ~浮遊魔法の改良版のことですね」

既にその可能性は考えていた。

「構いませんよ。あの魔法なら、その可能性を考えて作ってた魔法ですから、アレイク王国に、貸しを作るのもありです、僕が国王になった場合はですが。我が国として損はありません、以前父がした方法をとるつもりです」

そこは政治の中心にいたシンク、察しが早く。また先を見通す言動は、12歳の少年ではあり得ない。風格が備わっていた。

「それなら、皆も納得されるだろう」感心して口元だけ綻ばせた。

「王様、彼女と話しましたわ。随分戸惑ってましたが、喜んでましたよ」

シンクが二人に聞いたのは、サノエが竜の魔導兵製作で、レオールに今もいるのか、夏休みのレセプションに、竜の魔導兵を出すのかである。恐らく……万全を期する父のこと。生きた竜騎士を配するよりも。兵の安全を考えれば、ブライアンの考えも考慮すると判断したのだ。

「シン明日の閉会式、パーティーがあるんだけど出れるのか?」

「パーティー?、今初めて聞きました」

苦笑隠さないシンク、察したエバーソン国王は、妻のサミュ宰相に目配せして、

「衣装はオーラルのが残ってる。丈を直させるから、サミュと衣装合わせてきなさいシン」

エバーソン国王の心使いに感謝して、シンクはサミュに案内され、別邸に戻った━━━、




その夜━━。



魔法討論会・予選を終えた、学生達の労を労うパーティーが行われた、毎年の行事である。予選に参加していた。少女達は美しく着飾り。少年達は自分を勇ましく見せるためカッコつけた━━。



あまり大平にされてないが、魔法討論会後のパーティーは、一つの出会いの場でもある。過去閉会式のパーティーで、結ばれたカップルは数知れず。未来の英雄がこの中に、いるかもしれないのだ、シンクは父の衣装から、スタンダードな黒を貴重に、すっきりしたタキシード、最近の流行りをそつなく着こなしていた。さすがに……ズボン丈は詰めてもらったけど、癖髪を後ろに撫で付け、バイキング方式の立食を楽しんだ。途中アムールに誘われ。ダンスパートナーを勤め。対抗心燃やしたホウネリアとダンス対決になって、自動人形のキラと製作者のアノンまで巻き込み、大騒ぎになったが、また別の話である。



翌朝━━シンク達は、船で聖アレイク王国に戻ることになった、

「シン……」

すっきりしたギル・ジータ王国の民が着こなす。サムエ姿のアムールが見送りに来ていた、しっかり手を握り。

「シンがライラ様の言ってた。人柄で良かったよ、ありがとう♪」赤みの差す柔らかな瞳。そばかすの残る頬に、優しい笑みを張り付けてる。

「何のことかな?、アムは僕の友人として、出迎えてくれただけ、そうだよね?アム」

潤った目を拭い、小さく頷き、周りを見てから、シンクの頬に口付けして、シンクを慌てさせたが、手を握りるては放さず。

「また夏に……」

照れくさそうに赤くなるアムは、走り去った、

「本当に……。参るよね」

赤くなるシンクは、頬に手を当て、出向する様子を見ていた……、まだ部屋に戻る気にはならない……。


昨夜の騒ぎで、調子に乗った『院』の生達が、酒を飲んで酔っぱらい、二日酔いの上、船に揺られる二重苦、船室はアンデット巣窟の如く。呻きと酸味に。埋め尽くされたような、惨憺たる有り様。酒の席になれてたシンクにとって、大した量では無かった……、ほんのワインを樽で開けた程度では、酔うはずは無いのだが……、本気で不思議に思うシンクである。



━━船は、一度北上してリドラニア公国で、一晩過ごした。ドヴィア学園の生徒と、ラトワニア神学校の生徒を降ろしてから、船は北回りで、西下する航路で、7日程度は掛かる。ようやく……、長い野外授業は終わりを告げたと安堵する。問題は……、

「何て、説明するかだよな……」

予想外な事がありすぎて、

「説明がおぼつかないよね……」学園側も何らかな説明は、あるだろうから大丈夫と。楽観視するシンクである。




━━━シンクが消えた……、


一切の説明がされぬまま、不安を募らせ、野外授業は終わりを告げた、リルム・アオザ・パルストアは、不安を隠せず。おろおろするばかり、お目付け役で、親友のロドラ・エルマは、珍しい物を見たと苦笑を滲ませた。普段が沈着冷静、先見性の塊である少女と、同じ人とは思えないほどの慌てぶりは、何処にでもいる恋する普通の女の子である。


━━「はあ~……」幸せが裸足で逃げ出しそうな溜め息を吐いた。ヒナエ・バウスタン、今にも泣きそうな顔をしている。やれやれ首をふる。親友で幼なじみのフィア・ガイロン、祖父はあのヴァレ・オーダイ元将軍である。二人の幼なじみがもう一人、現在魔法討論会に出場中のリーザ・カーベン。三人でつるむことが多い。生真面目なフィアは、恋愛に関して、興味はあるが無頓着ゆえ、困った顔をして、肩を竦める。

同じグループだが、少々孤立気味のクルミ・アルタイルとレイラ・バレスの二人、無言でお互いに仏頂面……、普段と変わらないと言われればそれまでだが、手際よく。朝食の支度を整えて行く姿だが……。どちらも視線を軽く合わせ。目にある心配そうな光を認め。苦笑する。自分を見せることが苦手なクルミと、ポーカーフェイスばかりしてたから、自分を見せる手段を知らないレイラ、何となく二人は似た者同士で、シンクが消えた日から、グループをまとめる作業を、共同で行っていたのだ、どちらも素直ではないからか、奇妙な友達関係が、築かれつつあるようだ。



━━朝食が終われば、野外授業は終わりなのだが……、


一向にシンクが戻る様子もなく。教官から説明もなかった、不安は募るばかりである。

「なあレイラ、みっ、みんな心配してる教官に聞いてこようか……」

ほっそりした面差しのレイラは、金の美しい髪を。後ろで束ねていた。

「そうね……、彼のこと心配はないと思うけど……、説明が無いのは不安だわ……」

珍しく愚痴をこぼした、



━━帰り仕度を手早く済ませ。女性教官に、二人でシンクのこと訪ねると……、

「まさか……、誰からも聞かされて無いとは……、済まないことをしたな」

渋面を作り、同僚達を睨む女性教官、中年教官は、ばつが悪そうに首を竦める。苦手なのだろう……、確かあの教官は、シンクを送ったはず……の。

「いや~悪い、エドナ学園長の急な命で、シンクは学園に戻っていてな、学園長の頼みで、今頃ギル・ジータ王国にいるよ」

意外な答えに、二人の目も丸くなる。詳しい話は省かれたが、二人の教官はシンクに同情するよう苦笑する。何かと逸話がある。

━━あの学園長のこと。教官達の反応は凄く理解出来た。二人はようや安堵と。複雑な吐息を吐いていた。



━━リルム達が、野外授業から戻って、3日遅れで、シンクが戻った、


━━先触れで、エドナ学園長は、アレイ学園が、本選に進出したと伝えられていた、

「それで……」

ビジョンに浮かぶ厳めしい顔のバレンタインは、酷く嬉しそうな様子に驚き、経緯を聞いて、思わず苦笑した。それから……シンクが、発表した改良浮遊魔法と、結末について聞いて、

「やれやれ親子揃って、無欲なこと」

嬉しそうに呟いた。



━━西の通称職人通り。小さな小間物屋を営む。伯母さんの自宅に戻ったシンクを、ミリアがにこやかに出迎えた。

「シンお帰り~」

「ただいま伯母さん」

にこやかな挨拶しながらも視線は、伯母さんの傍らにいる。リナの姿を探していた。流石に夜も遅いから。寝たのだろうな……。

「フフフリナね。……あの子さっきまで頑張ってたんだけど……」

それと察して、優しい眼差しを甥に向けていた。

「それより大変だったようね……、シルビアさんが文句言ってたわよ」

クスクス愉しそうに。笑みを深める。

「ええまあ~、かなり驚いたかな……」困った顔はしたが、嫌そうな様子もなく。ニッコリそっと微笑んでいた、

「エドナ学園長の話は、父さんから聞いてましたが……、予想外でしたよ」

「そうね……、オーラルはシンが『院』に入るの。凄く嫌がってたものね……、シルビアさんも『あれは、反則です!』って、本人に喰ってかかってたわ」

「もしかして?」

「ええ、二人が顔を合わせるなんて無かったのに。たまたまね」

苦笑浮かべる伯母さんの様子から、何となく目に浮かんだ。

「明日休みだから、ゆっくりなさい」

伯母の優しい気遣いに、有り難く思ったが、

「いえ。明日リナとタイチを連れて、夏至祭りに行くつもりです」

にこやかに言われれば、確かに約束してたの思い出して。優しい甥の頭を撫で、癖のある黒髪、父の……、そして弟と同じ髪質に、目を細めていた。



━━「にい!、起きて、朝だよ」シンクの背に乗り、しがみつきながら、嬉しそうに、笑い声を立てるリナ。

「ん~、おはようリナ」

「にい!お帰り」

起きたシンクに抱き着き、胸に頭をグリグリ。まるでマーキングのような行動が可愛くて、リナを抱き上げ、高い高いすると、

「キャハハハ。もっともっと♪」

目をキラキラさせ、喜ぶ声が、家中に響き渡り。何事と伯父のオリバーさんが顔を出して、成る程と笑みを深めた。


━━それから朝食も早々にリナに急かされ。可愛らしい。新しい服を見せびらかす様子が、とても微笑ましく。シンクはリナを連れて、東通りの奥にある。孤児院に向かったう。



━━今年も中央公園では、毎年恒例の夏至祭りの準備で、人出が沢山出ていた、

「にい~、タイチ喜ぶね」

「そうだねリナ」

タイチと会うのは久しぶりである。タイチは正式に、エレーナ大司教の養子となった、

今は行儀見習いとして。教会内の簡単な仕事を手伝っているようだ。



毎年夏至祭りでは、孤児院の子供達が総出で、クッキーや、畑でとれた野菜を販売するのだが。リナ、シンクは、タイチにお願いされ。

快く手伝いを了承した。あれから……少しだが、リナにしか心を開かなかったタイチが、シンクにも心を開いてくれ。不器用に甘える姿は、可愛い弟のようで、頼られたことが無い。シンクにとって、悪い気はしない。「晴れて良かった」


━━孤児院のシスターから。タイチが大司教と一緒に住んでること聞いて、再び大聖堂に戻って来た、沢山のアレイ教徒が、大地の女神アレを詣でる大聖堂入り口で。顔見知りの見習いのシスターと目が合って声をかけた。孤児院の手伝いに来たと用向きを伝える。

「リナちゃん。可愛く着飾ってもらって、良かったわね」

「うん!」

元気一杯に答えるリナの可愛らしい天使の笑みは、自然と相手にまで。優しい気持ちにさせる。シスターは微笑みつつ。シンクに片目を瞑り。

「タイチたら、朝からそわそわしっぱなしなのよ」シンクより少し年上だろう、微笑ましいことを見たと、内緒で教えてくれた。


━━大聖堂内・一階奥はフロスト騎士団所属の見習いの居住区になっていて、シスター達女性のアレイ教徒しか入れない。生活スペースが二階にあって。



シスターと供に。大司教と息子夫婦が居住に使っている部屋に案内される途中。軍服を着た、金髪の軽薄な笑みを浮かべた将校が、タイチを連れて、奥の扉から出て来るではないか。


この奥は、エレーナ大司教の住まいがある筈だけど……、何故将校が?、不思議に思ってると、

「あっ、カール准将様。お久しぶりです」

慌ててシスターが。頭を下げようとした瞬間、さっとシスターの手を取り。顔を上げさせ。手の甲に優しいキスをした。

「早い……」シンクが僅かに、気をとられた些細な隙。間隙を縫うような動き……。軽薄な顔をしてるのに、凄まじい力量なのがわかる。

「き~み~は~何時も言ってるよね~。カールで構わないと、そっちのは~オーラルの倅ちゃん~。彼奴は元気か?~」

お茶らけた口調だが、目は笑ってない、じっくりシンクの様子を観察している。油断が出来ない人物……、父と知り合いのようだ。

「はい、相変わらずです」

素直に答えると、虚を突かれたようにニンマリ。天を仰ぎながら高らかに笑う。

「なかなか面白く育って、何よりだ~、義妹のリーラによろしくな~、甥っ子、それからうちの義弟を、よろしくな」タイチの背を、優しく叩き。シンクにウインクした。

「あっ……」

シンクが何か言う前に、手をヒラヒラ、カールは何事も無かったように、真っ赤になってる。シスターに何か耳打ちして、肩を叩かれるや、軽薄な笑みを浮かべながら去っていた。「あの人がカール伯父さん……、父の右腕だった人か……」

僅かに息を飲んでいた、



15年前━━四英雄と知られてる━━。

オーラル・ハウチューデン、

ヴァレ・オーダイ将軍、

緑眼の騎士ギラム・ブライト、

魔王ピアンザ、彼の四名と供に。苦楽をした人物がいた、カール・シタイン中佐=現第一師団長、

宮廷魔導師エル・フィアン少佐、ケイタさんの義娘で、現宮廷魔導師筆頭。二人は昨年結婚していて、夫婦でもある。もう1人がサミュ・リジル宰相だ、カール伯父さんは、シンクの母リーラの義兄でもある。

「タイチ!、似合う?」

「うっうん……、リナ可愛いよ」

真っ赤になるタイチ、少し見ない間に。色々成長したようだ……、タイチの前に拳を出すと、嬉しそうに目を輝かせ。拳を合わせる。ちょっとした出来事から。タイチとの挨拶でもある。



それから二人を連れて、ボランティアのアレイ教徒と供に、中央公園に向かった、



……毎週末朝市が行われる並木通り。バザーの簡易テントが次々準備されている中。シンクもテントの支度を手伝い。女性が多いから、率先して力仕事を行う、タイチとリナには、品物を並べてもらった。



そうそう……こうしてると二人と同じ年頃を思い出す、あの頃はシンクも母を手伝い。まだ小さな街だった、プロキシスで、クッキーやお菓子を売ったものだ。あまり民は知らないだろうが国の運営には、何かとお金が掛かり、王族ならば質素倹約に心掛けていたのだ、華やかに見える裏で、つぶさに苦労を見てきたシンク。自分が出来ることは、率先することが、人心把握に繋がると知っていた。

「人が一杯だね。にい♪」

頬を赤くしながら、楽しそうに働くリナ、頭を撫でてやり、

「そうだねリナ、今日は一杯売れると良いね」

「うん!」おずおずタイチが立ってるから、手招きして、分け隔てなくタイチの肩にも手を置いて、

「タイチ頑張って売ろうね」

「うん!」

嬉しそうに頷いた、その三人の様子を、孤児院の先生達が、微笑ましく目を細めた、

「シン兄、おはようございます」

迷いつつ声を掛けてきた三人を目にして、

「おはようコウ、レンタ、マイト」

三人の子供達に気が付いて、タイチとリナが顔を強張らせる、安心させるように二人の肩に手を置いて、

「大丈夫……」

優しくポンポン頭を撫でてから、三人に目配せすると、

「タイチ……、俺達が悪かった」

「リナごめんなさい」

「二人ともごめんな……」戸惑う二人に、目線を合わせて、

「三人はタイチと遊びたかったのに、いつもリナとばかり遊んでたから、二人が羨ましかった……、意味は解るねタイチ?」

驚いた顔のタイチだけど、大きく頷いた、

「でね三人は、この間のこと、リナとタイチに謝りたくてね……、僕としては、三人にチャンスをあげたくて。販売のお手伝いを頼んだんだよ」

迷いと不安が、三人の顔に浮かんでいた、タイチはまっすぐシンクの目を見つめ。ニッコリ笑顔を見せてくれた。

「レンタ、マイト、並べるの手伝って、コウ力あるから、シン兄と荷物運び。リナ店番頼む」

「うん!」

子供達はニッコリ笑いあい。元気に走り始めた。

「シン兄!早く早く」

「おう」大柄のコウは、シンクと一緒に率先して、力仕事を手伝い。また自分からシスターに聞いて奔走する姿。

「吹っ切れたようだね……」

安堵の吐息を吐いていた。コウの父は、人足のきつい仕事をしてたが、体調が思わしくなく、人足の仕事を諦め……、昔から甘い物好きだったから、カフェ・ブルーで見習いパティシエとして、下働きをしている。自慢の父が、自分より年下の奴から怒鳴られ。苦労してる姿、コウは悩んだようだ……、楽しそうに遊ぶ二人が、羨ましくて……、コウは涙ながら教えてくれた、レンタとマイトはコウの気持ちを汲んで、バカをやってくれてた、友達思いだけど、自分達が悪いことをした、それは理解していた、だから機会を設けてみた、

「良かったなコウ」

「……ありがとう、シン兄」

照れ臭そうに。元気に笑う五人の子供達。釣られて沢山の人が、足を止め。また笑顔で帰ってく。シンクは楽しい休日を過ごす事が出来た。



━━翌朝、何時ものように財布を確認して、学園のある。南通りを歩いて登校する。途中で揚げパンを二個屋台で購入。一口食べて、冷たいお茶で流す。至福の時である。しっかり腹ごしらえを済ませ。練舞場に急いだ。



手で顔に当たる日差しを避けながら。日々日差しが強くなったように思う。チリチリ肌を焼くように感じた、間もなく夏だ……。

━━演舞場に入ると、直ぐに栗色の髪のチンマイ後ろ姿を見つけた。小柄なクルミは、自身の背はある。巨大な大剣を背負い。下から上目線で、シンクを認め、口を尖らせる。

「遅いぞシン!」

豪腕一閃、烈風がシンクの髪を揺らす。不機嫌を隠しもしない、苦笑滲ませ。

「朝練やりますか、先輩」

気安くポンポン頭を叩くと、ちょっとだけ嬉しそうに、鼻を鳴らした。


━━クルミとの朝練が終わり、クラスに入ると目の前に、蠱惑的な潤んだ眼差しのヒナエ、困った顔のフィア、疲れはてたリーザが、珍しく教室にいて、机に突っ伏していた、

「おはようございますシン!」

目のやり場に困る。肢体がくっきり浮かぶ、革のピチりした服装。目元の黒子が魅惑的なのだ、自分の魅力に気付いてないヒナエに迫られ、ちょっと赤くなるシンク、

「シンの活躍、リーザから聞きました!、お疲れ様でした」

ガッシリ手を掴まれ。逃げるに逃げれない。困惑するシンクに、様々な視線が刺さる。拷問はもうしばらく……、続くようだ。



━━怒濤の1日が終わり、学年ランキングの中間順位が発表された、

一年生、総合1位、 フィア・ガイロン、

二年生、総合1位、

リルム・アオザ・パルストア、


三年生は、三名が並ぶ接戦。前期優勝が決まるのは、来月初頭の傭兵戦残り三戦後になる。



これから一月の間。学年ランキング後半は激戦になるため。初夏の陽気もあり、消耗で倒れる学生が増えるので、沢山の見習いシスター、侍祭が、研修で常駐している。その為華やかな声が聞こえていた。『特待生』の少年達は浮き足立ち、同じクラスの女の子から、冷たい目で睨まれる。



その頃になると。試験前で。忙しい先生の代わりに観察官の生徒は多忙となる。目が届かぬ先生の代わりに。雑務に追われるからだ。ようやく一息着いたのは。辺りが暗くなり始めた頃だ。強ばる首を伸ばして、二年生から使えるカフェテリア、観察官は教師に準ずるとされ。特別に使用を許可されていた。テーブルに突っ伏して、何時の間にか寝ていた。



━━ランキング戦を終えたリルムは、親友のエルマが、魔力の使いすぎて、保健室で休んでる間。一休みしようとカフェテリアに寄った、入室して一点を認め。息を飲んでいた、久しぶりに会う。愛しい人は……、無防備に寝ている。ドギマギ胸を高鳴らせ。小さな寝息を立てるシンクの寝顔を飽きるまで、側で見ていた。リルムにとって予想外の出来事だが、至福の時間であった。




「ん……、ん?、リルムちゃん……」

シンクの肩を枕に、何時の間にか寝ていたリルム、驚くシンは辺りを見て、すっかり暗くなってることに驚かされて、頭を掻いた。

「少し寝たらスッキリした~」

グッと身体伸ばした拍子に。シンクの肩を枕にしてたリルムの頭が外れ、カクンとなった。

「ん……、シン……、あふ……、寝ちゃってた……」トロンとした眠そうな目を擦り。幸せそうにシンクの腕に抱き着いた。

「あ~、ゴホンお嬢、そこまでに……」エルマが気配を消して、見張っててくれたのか、なんとなくイケない気持ちになって。いたたまれず声を掛けたようだ、ちょっと顔が赤い、二人を見ないよう。視線を外に向けている。

「ん~そうでしたわね。シン……、またね」

頬に口付けして、ほんわかポャポャ寝ぼけたまま、昔の癖を披露した。はっきり見てしまったエルマは、完熟トマトのように真っ赤だ、リルムとシンクにとって、挨拶なのだが……、二人を見送ってから。改めて首をほぐし。

「試験勉強しなきゃ……」帰路に着いたのは、それから間もなくである。



━━学園通りの先にある。繁華街の一角。


立派な門構えの道場がある。バウスタン流体術と看板掛けられ。中から、やたら気合い入った声と、なにやら……。生々しい打撃音が、外まで響いていた━━。近隣の住人は慣れたもので、またかと苦笑して、そそくさ立ち去っていた。



バウスタン流の道場主は、妙齢の美しい女性で、均整のとれた手足が、適度に締まり。胸を強調する革の防具に身を包ませ。大男相手に、圧倒していた━━、


まさに変幻自在、大男が力で押しまくると、川に流れる布のように、するりすり抜け、バランスくずした大男は、たたらを踏んだ、羞恥で怒りの眼差しを向け。猛然と道場主ミラの胴着に手をかけ。捕まえたと安堵して、嫌らしく笑んだ瞬間。どん!?、

「ぐっ……、がは……」

耳の後ろ。やや下を掌手しょうていで撃ち抜ぬかれ、グラリ大男は立って要られず。顔から堕ちていた、

「おっ、おい!、早く立て愚図が、いくら金を払ったと思っていやがる」

小太りのいかにもゴロツキ頭目、ケチな小悪党顔の中年男が、喚こうが怒鳴ろが、立ち上がることはない、子分はあらかた片付けた、

「さあ~て、ここまでしてくれた以上……、ただで済むと思わないように」

冷徹に。目を細めるミラ、青くなる小男は。わなわな恐怖に震えていた、この男こそ。最近巷で悪行を重ねていた。誘拐グループの黒幕で、ミラが調べたところ。孤児院の少女数人を唆し。違法に遊郭に身売り。子供のいない夫婦に赤子を高値で、売り付ける人身売買など、手広くあこぎなことをしていた。それを人知れず。邪魔をしてたミラに逆恨みして、襲撃してきたのだ、

「ただいま~」

軽快な音立てて。引き戸を開け。娘が帰って来たようだ、

「タイミング悪いわね………」

困った顔のミラ、頭目の近くに顔を出した瞬間、嬉々として、ヒナエを後ろから羽交い締めして、ナイフを突き付け、嫌らしく笑った瞬間、ヒナエの身体がすっうと沈め。男の手から抜け出して、

「うご……」バキッ、ドス、

ナイフ持った手の甲に、一指拳いっしけん中指の第二間接を尖らせた握りから、親指をピンポイントで砕き。ナイフ落とした瞬間、凄まじい体当たりの勢いで、肘うちが弧を描くように、首筋から鎖骨、胸に突き刺さる軌道で、打ち抜かれ。端から端まで転がって行った、

「あちゃ~、あんた相手が悪いよ」

苦笑が浮かぶ、諦めたように手で、顔を被いながら。小さく吐息を吐いていた。

「お母さん!、また内緒で動いてたの?」

対して娘のヒナエから、避難する眼差しに、軽く肩をすくめ。仕方ないわねと嘆息した。



━━今から数年前。ヒナエの母ミラは、王族護衛ロイヤルガードの職を辞して間もなく。近衛連隊長の1人となった元夫。ブルー・ファミイユに、内々で頼まれ。密偵の仕事の真似事をしていた。同じ王族護衛の一員。妹レイカの建前。断りきれず。危ない仕事をしていた、ヒナエには何かあった時の為に。話してたので、お怒りのようだ……、

「あんたもやり過ぎだよ……、まったく」

泡を吹いて倒れてる小悪党が、憐れに思えた。

「ヒナエあんた見境ないから、学園でも、苦手な男相手だからって、暴れないでよ~ね!。死人が出かねないから」

「うっ……、だっ、大丈夫だもん!」

疑わしいものだ……、

「それより久しぶりだねヒナエ。学園にはなれたかい?」

姉のノルカと一緒に内偵に奔走してたから……、道場は、娘に任せっきりだった、ようやくそれも終わったから、元気そうな様子に。笑みを深めた、

「何とか『特待生』になれたよ母さん♪」

久しぶりに母に会えたのだ、嬉しかったのか殺伐とした暴力の場なのだが……、母子には関係なく。抱きついたヒナエを優しく抱き締めた、

「そうだお母さん!私ね。好きな人が出来たの」

「へっ……、あんたが?、それってまさか……」

女の子とか口にしかけ。怖くて飲み込んでいた、母の不安を他所に。夢見る女の子の顔をして。

「彼ね……」

あっ、一応男なんだ、安堵したのもつかの間。

「すっごくモテるから、競争率高いけど……」もじもじ赤くなる娘に、不安が過る。まさか……、カールのような軽薄男では?、

「私ね体術で、初めて彼に負けたの」

「えっ……、あんたが、負けた?」

驚愕に価する言葉を耳にして、唖然とした、それもそのはずだ。道場でミラとまともに組み手が出来るのは娘だけだ、しかも3本に1本は取られる力量は、ミラが知る限り。最高峰の拳士である。娘が?、体術でと耳を疑っていた。

「うんその子、『総合武術大会』で、昨年優勝したクルミ・アルタイルさんを圧倒して、優勝したんだよ♪」

「えっ……」

信じられない話である。クルミは、親友のミザイナの娘で、昨年懐かしく思い。見に行ったのだ、

あまりに馬鹿げた力量、試合を見て、さすがミザイナの娘だと唸ったものだ……、

「剣の力量では、クルミさんが上だけと、彼ね……、決勝以外、全ての試合で、相手の得意とする獲物で戦って、私も負けたんだよ」

「なっ、なんて名前なのその子は……」

「お母さん彼ね。シンク・ハウチューデンと言って、中央大陸の王子様なんだよ」

落雷を受けたような衝撃に、ヨロヨロ娘の肩に手を置いて、

「オーラルの子が、アレイ学園に?」

「……そうだよ、母さん?」

見た目と違い。子供ぽい思考の娘だとは思ってたが……、意外と面白い子に育ったようで……、

「レイカも。ノルカ姉もわざと内緒にしたな?」

「………?」昔の同僚カール、エルは仕方ないにしても。段々不機嫌になった、

「失礼します。ミラは帰ってるかしら?」

聞き覚えのある友人の声に、渋面を向けた、


早速クエナ・ガイロンに噛み付くミラ。一通り文句を吐き出したの見計らい。

「ファミイユには、言ってあったんだがな……、彼奴はオーラルが苦手だったし、本気で忘れたか、忘れたくなったか、いい忘れてたかだな」

ありそうな話に、歯噛みする思いである。ブルーには思い出したくない思い出でも。ミラには大切な思い出なのだから……、ミラにとって、いや……ミラ達。黒衣の一族にとって━━。

オーラルには大恩がある。それを知ったのは、王族護衛の職を辞した後で、姉から全て聞かされた。自分の浅はかさを恥じたものだ。

「ヒナエ……、あんた知ってるかい?」

悪巧み抱くミラは、笑みを抱え。呆れるクエナを他所に。王族ならではの内情を教え込む、赤くなったり、もじもじしたり面白い反応に、周りの事など忘れる母娘であった。

「うっ……いっ、医者……」

呻き声が一日中響いて、近隣の住人は、真夏の怪奇現象と密かに噂したのはまた別の話である。



━━翌日から、試験が始まり……、学科、模擬戦、魔法、歴史、算術の五科目が、3日の間に行われる。試験が終わると、休みを挟み。傭兵戦が行われ。学年ランキングの佳境に入る。シンクは無事に試験を合格しての休日……、

前掛けして、小間物屋の店頭で、丁寧に埃を払ったり、道具を磨き、何時でも使えるように準備、それが終わったら、店の奥にある。ガーデンテラスの剪定を済ませ。店の前を箒で丁寧に掃きながら。近所の奥様方と世間話をしたり、顔じみの職人の準備を手伝ったり、何かと忙しい。一通り開店準備を終えると。伯母が朝食が出来たと呼びに来て、眠そうなリナは、伯母の前掛けを掴み、船を漕いでた、

「リナおはよう。抱っこしたげるからおいで」

「ん~」

瞼がくっついたまま、手を出す娘の横着な甘え方に。小さく吹き出しながら、

「昼に、シルビアさんが姉妹を連れて来られるから、ご飯食べたら、シンはマカロン作り手伝ってね」

「はい、伯母さん先輩達久しぶりですよね♪」

「そうね~。夏休み中央大陸で過ごすから仕方ないわね~、そうそう私達も呼ばれてるから、夏は一緒に中央大陸に行くわよ♪」

驚いたシンクだが、嬉しそうにはにかみ。寝起きで体温が高いリナの身体を抱き上げ。食堂に向かった。



━━日が高くなり、シルビア親子が訪れ。ミリア伯母さんは、先に姉妹の衣装の仕上がりをチェックする傍ら、シルビアさんに。お茶とマカロンを出してると、

「ミリアさん!、ありがとうございます」

「これなら先生、褒めてくれるわね姉さん」

家宅の方から。華やいだ女の子の声は、よく響く、リナにも専用の小皿に乗せ、ミルクのマグを持たせた。

「にい!ありがとう」

まさに無垢な天使の笑み。頭を撫で撫で、リナは嬉しそうに笑う。

「ニヒヒ~、美味しいよにい」

微笑ましい兄妹のような様子に、思わず小さく笑みを浮かべていた、

「大変だったようね」

労を労う眼差し。シンクはこの間のギル・ジータ王国での事だと気付く。

「彼処まで強引な。反則技されたら、逆に感心しました」

ほろ苦い笑みを浮かべるシンクに。シルビアは普段、国の財務を担う重責から、常に冷徹な面差しを浮かべ、貴族、商人、有力者を恐怖させている。その彼女がとても珍しいことなのだが、好意的な目を向けて、

「あの人、騒動は起こすけど、期待したい才能だけちょっかいかけるから……。大変だけど付き合ってあげてね。貴方が入学して、嬉しいのよ」

フレア、シアンから二人は犬猿の仲だと聞いてたが、少し違うようだ……、

「はい……、潰れない程度に頑張ります」

少年らしくない。しっかりした受け答えに、懐かしそうに、口元を綻ばした。

「お母様!、見てください」

二人が華やいだ満面の笑みを浮かべ、宝物見せびらかすように。ガーデンテラスに顔を出して、くるりと回る。フレアは春先のコンテストで着た、深紅の薔薇をモチーフにしたドレスを直して。肩と背中を出す。サマードレスとしたようだ。シアンのドレスはデザインが変わり。白薔薇から、白い百合をモチーフにした、清楚なイメージに直され、髪を短くしてるシアンにとても似合う。シンクに気が付いて、ちょっと照れたように、くるりと回る姉妹の様子を見て。チラシルビアの横顔をシンクは見る。こうした気付いは、オーラルに似たのね。小さく頷きが返され。素直に感想を述べることにした。

「二人とも……綺麗だから、見とれちゃいました……」

素直な謝辞に、フレアは当たり前よとツンとする。でも根が正直で、顔が嬉しそうに緩む。

「シンありがとう」素直な性格のシアンは、とても嬉しそうにはにかむのだ。

「二人とも喉渇いたでしょ?、お茶入れますね」

「ありがとう♪、ちょっと小腹もね」

母の前にある。色鮮やかなマカロンに、目が釘付けである。

「用意しますね」

「コホン……」

フレアが、わざとらしい咳払いをした、

「フレアさんのも。用意しますね」

「そっ、そう……」

素直ではない。フレアの扱いに慣れてるシンクは、優しく返事を返され、照れたようにフレアはそっぽ向いた。素直では無いのよね……、誰に似たんだか、義娘のエルを思いだし。色々心配そうな笑みを浮かべた、



━━午前中の授業が終わり。



傭兵戦人気4位、リーザ・カーベンが登場した、入学した時より『院』に在籍する。天才である。将来は学園の先生になるのが夢と、母と同じ道を考えてる。少女は……、母の形見の小さな魔法の眼鏡を外して、棺桶形リンク装置に入る。


夏休みは予想外だが、嬉しい誤算の中。中央大陸に旅行である。多少の不安はあるが、楽しみの方が勝る。



━━傭兵ギルドの機体は、通常魔導兵より。機能、耐久性が劣る。増してやリーザは魔法を得意とする。後衛機体で、シアンのような本当の天才には敵わない。だからと言って、負けるとは思ってないリーザは、自分なりの戦いをするだけである。

『傭兵戦。第4戦開始!』

意識がリンクして、自分の視野が、魔導兵の視界と誤差なくリンクした。


リーザが、魔導兵を操るのは。学園の西にある『学年戦争』の舞台で、義母はコロッセオと呼んでいる。コロッセオとは北大陸に実際にあった。闘技場のこと、北大陸に、今のような大国はなく。16部族それぞれが、小さな国を運営していた。複雑な様相の大陸であったのだ……、


魔王ピアンザの暗躍から、16部族は統一され。現在のようなレオール連合と呼ばれる国となっている。



それ以前は……。各部族同士、揉め事があるときは戦争ではなく。闘技場コロッセオで、代表による。対戦の勝敗で、揉め事の解決を図ったと言われる。世界議会が発足され。国同士の戦争は無くなった、あくまでも表面上は……。


外交的争いはやむ終えないが、



軍同士の演習を兼ねて、開催されたのが各国の軍同士の訓練。魔導兵による競いあいを、いち早く。学生の内から、魔導兵の操作に慣れさせる目的も兼ねて、エドナ学園長は導入した、ただ教えるのではつまらないと。『学年戦争』を開催したとたん、各国の軍・学園関係者は興味を抱いた。様々な思惑と重なり、アレイ学園の新たな催しに。素直に各国の学園・学校は支持を表明したのは言うまでもない。



順次━━全ての学園・学校で、『学年戦争』は行われる予定である。アレイ学園は言わばモデルケースなのだ。魔導兵の操作は、必須科目になりつつある。魔物。魔獣は年々新しい種が発見され。凶暴になりつつあり、被害も増えている。人的被害が減る。魔導兵を操る兵の確保は、世界的急務であった。



リーザの機体が、中央大陸にある。神殿を模した。傭兵国の陣地から飛び出して、二年生小隊と激突した━━。



魔法と障害物を巧みな計算で、間合いを図り、見透かされたように、リーザの思うがままに、試合が運び、優勢だった二年小隊は、気が付けば敗退、続く三年小隊も最初は優勢だった……、見応えある攻防に、観客は息を飲み、各国の魔導兵関係者は、目を見張る。

「リーザ……、侮れないわね」

ほっそりした面立ち、金の髪を今日は束ねてないレイラは、すっと目を細め呟く。

「そうだな……」栗色の髪、耳元で揃える可愛らしいチンマイ風貌、下から上目線のクルミが同意した、明日はクルミの番だから、傭兵戦を見に来たのだが……、チラリ……、レイラを不思議そうに見詰める視線に気付いて、苦笑浮かべた、

「彼女もライバルになる可能性があるからね」

「ああこの間のか……」

忌々しそうに舌打ちする。

「その心配は、杞憂……だけど……、厄介よね」

お互いの気持ちを理解してる二人は、肩を竦める。最後の一年小隊を、手玉に取って、傭兵戦四戦目は終了した、明日はクルミの番である。「クルミさん、明日クルミさんが負けたら、私シンクをデートに誘うつもりよ」グッと息を飲んで、一瞬目が泳ぐ。

「私が勝つ!、わっわたしがデートに誘うんだから」

かーっと真っ赤になったクルミ、ふふっと小さく笑むレイラ、二人はお互いの目を見るて、ふん鼻を鳴らして、レイラはそっぽ向いた、

「厄介よね~……」

小さく嘆息していた、自分のした、クルミを焚き付ける言動に苦笑した、そもそもレイラは策を労しないと、冷徹になれない優しい女性だ、自分が……、不利になると理解してても、嫌いになれない彼女。クルミに手を差し伸べてしまう。

「ライバル……、多いのにね」

シンクの前で、自分をさらけ出し泣いてから、お節介になったようだ、少しだけ……、素直になろうかな……、レイラはそう思っていた、しばらくクルミの横顔を眺めてると。珍しく考える表情をしてたかと思えば、

「なっなあ~レイラ……、みんなで遊ばないか?」

「えっ?……」

まさかクルミからそんな提案されるとは、考えもしなかった、意表を突かれ、まじまじ真意を覗くように横顔を見つめた。

「かっ、勘違いするなよ、お前や彼奴は……ライバルだが、別にお前達のこと、嫌いではない……」

口下手なクルミらしい物言いに、思わず口元を綻ばせた。

「そうだね。野外授業は、中途半端だったし。週末の休みなんてどうかしら?」「ああ~いいね」

再び顔を合わせ。二人見合い、気恥ずかし気に笑い合う。



━━━傭兵戦5日目、前年度『総合武術大会』優勝者、剣姫クルミ・アルタイルの登場に、観戦希望学生が殺到。ちょっとしたお祭り騒ぎである。



多くは女生徒、それも仕方ない一面はあった。本人は意識してないがクルミは可愛らしい風貌、男子生徒を圧倒した試合を見て、ファンになった女生徒が実は多く、押し寄せたのだ、明日の傭兵戦の準備に来ていたシンクに、レイラが野外授業でグループだったみんなで。遊びに行こうと誘うと。

「いいですね!。僕も気になってたんです。週末伯母さんの仕事も一段落して、ゆっくりしなさいって言われてたので、丁度良かったです!、レイラありがとう」

「うん……」

シンクの優しい笑みに。思わず見とれてたが、照れ臭そうにはにかみ。

「……本当は、この提案クルミさんなんだよ……」

迷いつつ昨日。クルミが提案してくれたこと、素直に言っていた。黙ってれば自分の手柄に出来たのに……、

「そうなんだ先輩にお礼言わなきゃ!、レイラもありがとうね、やっぱり君は優しい女性だね」

「あっ………」

カーッと耳まで真っ赤になった、次代の『オールラウンダー』候補は、もじもじ潤んだ目で、上目遣いをしながら、

「うん♪」

可愛らしく。素直に微笑んでいた。



━━━どよめきが上がる。大歓声が、此処まで聞こえて来た、二人は魔法の鏡を見上げ、息を飲んだ━━、




一撃………、



昨年の『総合武術大会』を彷彿させる。

一方的な戦い━━。


━━小隊を……、僅か一機で、



一度も剣すら合わせることなく………、

クルミは、一機一撃。僅かなインターバルの間で。

次々開戦されたが、

瞬く間に倒してゆく。衝撃的な光景━━、


……誰もが感動すら覚え。今見てる事が、夢ではないかと我が目を疑うほどだった……、



南大陸━━ファレイナ公国。ミザイナ女王は、アレイ学園に在籍中、幾つもの伝説を残している。三年連続剣の部優勝、

小隊戦無敗記録、

小隊最高ポイント獲得、


今はポイントの獲得方法が変わり、比較的ポイント獲得が、楽になったが、ミザイナ小隊の積み上げた最高ポイントを、うわまった部隊はまだない……、

剣に愛され。愛した者。剣の女王ミザイナ……、

クルミには母とまた違った強さと魅力があった、父の豪剣と母の素質を受け継いだ、剣の申し子に。誰しもが圧倒され。息を飲むほど目が離せなくなる、輝き。


近い未来━━━、

『瞬撃の女王』と呼ばれる。クルミ・アルタイルの片鱗が、開花した瞬間であった。



盛大な歓声に答えながら。クルミは神殿を模した。傭兵ギルドの棺桶で、魔導兵とのリンクが切られ。目覚めると目の前に、思い人シンクが待っていた。

「お疲れ様でした先輩」

柔らかな優しい笑み、柄にもなくときめいた、

「あっ、ありがとう……、そっそのどうだった?」

不安が頭を過る。

「凄かったです!?」

素直な賛辞に。目元を赤くした、

「そっそう……、ならいいよ」

満更でもなく、安堵の吐息を吐いていた。ポタリ……、

「えっ?……」

驚き戸惑い、自分に起きた変化。涙を拭ったが止まらない、

「あっ、あれ……、おかしいな……」

止めようとすればするほど、涙は止まらない、焦るクルミは、慌てて下を向いた、

「先輩……」

優しい声が、耳打を打った、

「あっ………」

自分がシンクに、抱き締められてると気が付いて、逃げだしたくなって、身動ぎした時だ。

「大丈夫ですか?、先輩は可愛いい女の子なんです。無理はしないで下さいね」優しく気遣う言葉。自分は……、女の子と見てもらえてない……。そう思ってた不安……。ちゃんと自分を女の子として見ててくれてたんだ……。安堵と好きになった人に、抱き締められてる。恥ずかしさ、嬉しいと思える感覚は、不思議と身体から余計な力が抜け、素直に甘える事が出来た。

「ちっちゃいから、気が付かないだけですよ」

「ぶっ……何よそれ……」

からかうシンクの目を見たら、いつもなら暴れてしまうとこなのに……、シンクに言われると許せた。何時の間にかクルミの涙は止まり、笑みすら浮かべていた、



━━━傭兵戦最終日、シンク・ハウチューデン登場に、観覧席は満員である。

四年生コルト・アルベルト小隊のメンバーは、緊張で真っ青になっていた。

「何で……、こんなことに……」

コルトは頭を抱えた、よりによって最初の対戦で、注目度も高い。

「クソ……、クソクソクソ!、僕は未来のアルベルト公爵だぞ!」

吠えたところで、劣勢は覆らず。健闘虚しく。早々に討ち取られ。シンクの圧勝で終わっていた。



……好評を泊した傭兵戦、無事に閉会した、

残るはランキング戦の行方、話題は早くも変わっていた。




エピローグ



━━南大陸、軍国ローレン、



三賢者の一人に上げられる。デーア・オルトス宮廷魔法使いは、新鋭の魔導兵。白銀の機体。最終チェックを行っていた、

「どうだデーア?」「これは陛下……」頭を下げようとしたデーアを押し留め。精悍な男臭い笑みを浮かべながら、気安くデーアの肩を労うように叩き。

「お前は俺様の片腕、畏まる必要はない……。ところで……あの双子ばかは?」

二人のこと聞かれて、デーアには珍しいことに渋面していた。

「エドナ学園長が、面白いことがあると、連れ出しました」

「なんとまあ……」

苦笑を隠さず。呆れたように首を振りながら。

「双子がいなくても、擬似神の連中を迎え撃つには、何とかなるとしても。つくづくあの国は、騒動の中心だな~」

バローナの呆れた物言いに、賛同する。

「アレイ学園に、オーラル陛下の子息。シンク様が、入学されていますから……」言いたいことに気が付いた、

「我が学園の生徒アノン・ファンが迷惑掛けたと聞いたとき、慌てましたが」

「まあ~そうだな、うちの姫様が、いなくて良かったよ……」

困り果てた顔で、新しい機体、娘のビーナが作った美しい。女性的なフォルムの白麗びゃくれいを見て、嘆息した。妻に似て、美しい娘だが、誰に似たか、魔法の素質が高い。 頑固な面はあるが、デーアに師事して、優秀な技術者になる勢いである。

傭兵戦も終わって、学年ランキング前編も佳境に入り。シンクを取り巻く状況が変わり始めていた。鈍感な王子様シンクと思いを寄せ始めた。クルミ、レイラ、ヒナエ、レイラ彼女達の出会いは。大きな物語の序章であった。また同じ物語か違う物語で、背徳の魔王でした。

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