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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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学年ランキングですが何か?前編

学園の生活が始まり。早くも一月が過ぎようとしていた……、間もなく学年ランキングが開催されるのだが……、

プロローグ




西大陸━━パレストア帝国。



━━15年前まで……魔王の六将が1人。ダークと呼ばれた、暗殺者がいた……、



誰一人気付かれることなく。痕跡一つ残さぬ業は、だーくと呼ばれた者。ダークと呼ばれた男は、一枚の手紙を携え……。久しぶりの登城である。



……ピアンザの執務室に気配なく入り込み。僅かな気配に気が付いて、書類を読んでたピアンザは顔を上げ、懐かしそうに笑みを浮かべ、出迎えた、

「ダレーク!久しいな」

帝国の礎を築き。公私供に支えてくれた忠臣だ、



中央大陸事件の中、ギル・エバーソンの計らいで。妻娘を比較的安全だった彼の地に避難させた。その時警護を頼んだが彼であり……、事件後……、行方が解らなくなっていた、再びこうして、会えるとは思わなかった……、

「これを姫様から。頼まれてね……」

錆びのある優しい声。苦笑を称えるダレークの。差し出した手紙の名前を見て、驚きが勝る。

「姫様に。ある子を密かに守るよう。頼まれてたが……、その任も終わった……」

憂いを含む眼差しに、胸が突かれた、

「ダレーク……」

ふっと寂しく笑い。 彼は儚く……、決意を込めた眼差しを残して、何もかも理解した顔をして、無言で執務室を後にした、彼は優しすぎた……、恐らくはもう……、

彼の平穏を祈り。

娘の我が儘を聞くれていたことに感謝した、残された手紙を開き、娘の近況を目にして、再び微苦笑を深めた━━、




━━━休日。


アレイ学園に通う生徒には、週一休みがある。


━━中央公園の西。通称職人通り……。沢山の店が並ぶ通りに。外観はこじんまりした店がある。


━━黒髪の寝癖を頑張って直した、シンクの休みは、お世話になってる伯母さんの経営する。小間物の店番に立つ事にしていた、



━━店の表は、こじんまりした建物で、店の奥は、伯父さん自慢の温室ガーデンになっていて、様々な花を季節に関係なく愛でる。カフェテリアになっていた、その為常連だけに解放している。

━━今日のお勧めは、自宅で作ったハーブティ、ハーブを使ったお菓子である。先週伯母さんに習ったからと、疲れて寝入ってた伯母の代わりに早朝から、1人でお菓子作りを始めていたのだ、驚いたミリアが一つ味見して、呆れていた。以前少し作り方をレクチャーしたのだが……見事に味を再現していた、

「そこは似たのね。あの子も料理は、得意だったのよ?」

意外なお手伝いに。嬉しそうに話す伯母の笑みは、父に似ていた、

「父さん、誕生日に一度だけ。ケーキ焼いてくれました」

懐かしかった……、父は母さんとシンクの為に。必ず手料理を作ってくれたのだ。それが嬉しくて、大切にされてると思えた……、

「ニイ~おはよう♪」

眠そうにしていたが、シンクの足にしがみついて来て、作りたてのお菓子をねだるように。あんぐり口を開けているリナに。クスクス微笑み、欠けたクッキーをそっと。口に入れてあげると。目をキラキラさせて笑顔になっていた。二人は思わず微笑ましい光景に、優しく微笑み、「良かったねリナ」

「うん!」

娘の頭を撫でていた、

「今日わ~ミリアさんいる?」

お客様だろうか?、まだお店を開けたばかりで、随分早いと思うが?、ミリアを伺うと、

「多分フレアね。お茶の用意、お願いするわ」

了承に頷いた、リナは母ミリアに付いて行くと、歩き姿まで、母を見上げ、その真似をするから、それがおかしくて可愛らしくて……、なんだか微笑ましいのだ、

「いらっしゃいフレア」

艷かに微笑するフレアは、夏休みを、中央大陸で過ごす事になった、それはシンクの父、オーラル王の招待を受けて、輝きの都プロキシスにて、姉妹はコンテストの演目を披露することになった。姉妹はその時着る衣装の相談に来ていた。

……因みに。昨日の昼頃。妹のシアンが、昨日の夕方には、別の理由でシルビアさんが、来ていたが……、

「カフェテリアで伺うわ、丁度クッキーを焼けたの、食べて行きなさい」

パッと目を輝かせ。

「はい!」

嬉しそうに頷いた。ミリアお手製のクッキー、お菓子は、他所では食べられない特別な味がするから人気で。常連はお茶を楽しみに来店することが多いのだ、

ニコニコ上機嫌で、ガーデンテラスに足を踏み入れ。運ばれてきた香しい香りに、口元を綻ばせた。

「フレア先輩。いらっしゃい」

ハーブティを伯母さんの分と用意して、苦労して二人の側に座ったリナに、冷たいお茶を置いて、専用の小皿にクッキー数枚を置いた、

「ニイ!ありがとう」

早速クッキーを食べ出した、それからフレア用のクッキーと、蜂蜜の入った坪を置いた、フレアもクッキーを嬉しそうに食べて。幸せそうに微笑んだ、

「シンありがとう♪」

顔馴染みになって気付いた、フレアは人見知りが強く、親い人にしか、自分を見せれない人だ、ようやくシンクにも。笑顔を見せてくれるようになった。

「伯母さん僕は店番してるから、用があれば呼んで下さい」

「うんお願いねシンク」

こうして朗らかな1日は終わり。また学びの日々が始まる。



毎月ある学科試験が終わり、明日から学年ランキング前期が開催される。

昨年までの学年ランキングとは……、

━━擬似国内・学年ごとの順位付けだけであった、


━━今年学園から、中立国傭兵ギルドの参加を表明したことで、当初困惑した生徒達だが、傭兵ギルドメンバーを倒した時に貰えるボーナス特典を知り、誰もが息を飲んでいた……、



それを踏まえて、学園から後日。詳しい傭兵戦について、内容が発表されて、

一般生徒の補助である傭兵と。部隊の隊長を任せられた生徒は当然困惑した。



━━傭兵ギルド戦のルールと日程、報酬とは……。


ランキング初日の午後から3日間。

野外授業後、月末試験前の後半3日間の午後に行われる。


゛擬似国の中から、各学年傭兵ギルド戦にエントリーすることが可能である。ただし試合毎に。1学年からは1小隊4名を選び、傭兵ギルドメンバー1人と戦う。すなわち傭兵は最大4小隊16人と戦わなければならない。傭兵には過酷で、エントリーする生徒に有利に見えた。そして……勝利した学年には、


━━次回、来年の『学年戦争』にて、倒したその傭兵を、通常の半額Pで、雇う権利と、その者を優先的に雇う。予約を有すると言うものだった。あれだけ凄まじい力量のあるS級傭兵を、格安で雇える特典はかなり魅力的であった、詳しい内容を見てくと、誰もが気付いた。早い話が、早い者勝ちと言うわけだ………、


いかに優秀な傭兵だろうと苦戦必死。擬似国側の勝機も見出だせる。そうなると……戦略と、くじ引きによる。順番が重要になるのだ、それはあくまでも運の要素が強いが……、それを踏まえても俄然燃えた━━。



対して傭兵ギルドのメンバーにも恩恵はあった。1小隊倒す毎に50Pが貰えるのだ。何かと学園生活にはお金が掛かる。Pは学園内なら通貨と同等の力があるから。傭兵側にいる学生にも旨味はあった。フレア=カレン・ダレスは、

「暇潰しに、なるかしら?」

鼻でせせら笑い。殺る気満々だ、妹シアンは、

「どの魔法使おうかな~」

新しい魔法を作ったからと、にこやかな笑みを浮かべたが、気分は人体実験だろうか?、


ほっそりした顔立ちのレイラ・バレスは、

「…………………」

無言を貫き、

クルミ・アルタイルは、やたら凶悪そうな武器の数々から、どれで叩くか悩み中で、

一番まともなリーザ・カーベンは、義母の悪ふざけに頭痛を覚えた、シンクにとっては、チャンスである。リルムと戦う機会が増えるのだ、俄然張り切っていた。



━━━片や

『特待生』

四年生教室。四年擬似国の将軍だった、コルト・アルベルトは、雪辱を誓う……、来年は卒業である。国に帰るから『学年戦争』参加は望めない。それだけにランキング戦に掛ける思いは強い。「狙うは……」

シンク・ハウチューデンただ一人。

棒を用いた技で、あの……クルミ・アルタイルを倒し、『総合武術大会』優勝した、


もしも自分ならばと……、何度も歯噛みした、父は槍のエドワルド公と呼ばれた猛将である。コルトは父の武名に憧れていた、だから余計にエドワルド流槍術で、クルミに勝ってたら……、願わずには要られない。しかも同じ王族でありながら、剣の一族である、クルミのアルタイル王家と、エドワルド公のアルベルト公爵家には、数百年に及ぶ確執が存在していた、幼き日より母に言われ続けていたコルトは。クルミに対抗心を燃やしていたのだ……、


何分コルトとシャイナは、エドワルド公の遅くに。出来た子供達であり。甘やかされてた節がある。子供の頃より、勝ち負けに。凄まじいばかりに敏感で。負けず嫌いであった。普段は気さくな男気ある性格だが、ひとまず勝負ごとになると、熱くなるのは性分で、常々。

「自分は、誰にも負ける訳にはいかない……」

鼻息荒く。意気込むのだ……。

「例えあの英雄王オーラル・ハウチューデンの子息だろうと……」

譲れない教示はあった、


━━━三年、シャイナ・アルベルトはと言うと……、

母に似た。燃えるような。赤髪を耳元で切り揃え、憂いを帯びた瞳で隠微な微笑を浮かべ、

「レイラ・バレス……可愛いな……、クスクス」

クラスの女子は身を震わせ。青ざめていた……、シャイナは変わった性癖をしていて、レイラのような、優等生をギリギリまで追い込み、自分の物にするのが趣味である。兄のような熱血漢は苦手だ、可愛い女の子が大好きと言う、そんなシャイナ部隊のメンバーは………、彼女の毒牙に掛かった、供物である。

「二年のリルムも良いけど……」

鼻息も荒く。頬を赤らめた。流石に身の危険を感じて、ズザッとクラスの女子は後ろに下がる。



……二年の『特待生』教室では……、


美し過ぎると噂高いリルムの背を、溜め息混じりに見詰める。男子生徒が多いことか……、そのような視線にまるで気付かず。可愛らしい笑みを浮かべて、

「エルマ!チャンス到来よ」

意気込むリルム、クラスの異変に気付いてたエルマは、苦笑を滲ませながら、

「お嬢……、うちはシンク・ハウチューデン狙いですか?」


リルムは可愛らしくクスクス笑ってたのに、ス~ウっと氷のような眼差しを浮かべ。傍らのエルマに向けられ、思わず顔をひきつらせていた。

「勿論そう言いたいが……。邪魔なクルミ・アルタイル!」ゾクリ寒気を感じていた。そう……リルムの本性を垣間見たのは、エルマだけだが……、クルミ・アルタイルに同情した。

「フフフ……、私のシンクに近づくなんて……、身の程知らずなんだから……」

「お嬢……」

シンクに会ってからのリルムは、悪い意味で抑えが利かなくなった気がする。恋する乙女の暴走が、いかに怖いかと……感じずにはいられない。




……様々な波紋を呼ぶ、学年ランキング前期は、こうして……始まりを迎えた……、



━━北区画、通称貴族街と呼ばれる。城から北東には。重鎮の住まう大きな屋敷がポツポツとある。



……郊外に。古い外観ながら。無骨な造り。いかにも武人らしい気風が感じられた屋敷。質素だがやたらと広い庭。凛とした、清楚な出で立ちで、フィア・ガイロンは、ポールアクスを、息も尽かせぬ素早さで、一つ一つ型を確かめるように動かして、汗を流す。

「朝から~、精がでるわねフィア♪」

黒髪を後ろに束ね。ピッチリした自分の肢体を見せ付ける。革の服を妖艶に着こなし。目元の泣き黒子がなんとも扇情的だが、本人はまるで……、自分の魅力を理解してないヒナエ・バウスタンに、フィアは苦笑を浮かべた。

━━ヒナエの母ミラ・バウスタンは、フィアの母と同じ部隊に所属してた元同僚で、あの英雄王オーラルが、学園に在籍した時代の先輩にあたる。後に元王族護衛ロイヤルガーディアンに所属してたが、結婚を期に、職を辞していた……、

現在は学園のある南通りで道場を開いていた。

そんな母親同士の関係もあって、ヒナエとフィアは幼馴染みで、もう一人。リーザ・カーベンの三人は、子供の頃からいつも三人一緒だった……、

「珍しいなヒナエ、こんな時間に……」

朝が極端に苦手なヒナエを、毎朝迎えに行くのは、他でもないフィアの担当だったからだ、

「ん~、ちょっと気になる男の子が出来て、フィアに一番に知らせようとね」

ほんのり赤くなって言うのだ、僕念人のフィアだって、恋する乙女のような眼差しのヒナエに。ようやく気付き流石に驚いた、


意外に思われがちだが、ヒナエは見た目と違い。純情、真面目、奥手と、三拍子揃った、生真面目な女の子なのだ。見た目のギャプのため。いくら主張しても、周りの誰もが信じてくれない……、本人は普通に接したり、笑ってるつもりだが、魅惑の肉体と、扇情的な眼差しで、誤解を産みまくり……以外と苦労していたヒナエは、本来頭も良く、寝坊せずに。入試をまともに受けれていたら、

『特待生』は間違いない。武芸に関しても、一年ではフィアと並ぶ実力者である。月末試験と、入学式に行われた『総合格闘大会』ベスト8が考慮され、今日から『特待生』に編入された、これで……、フィア部隊の8人目のエースとして、来年の『学年戦争』には、正式に出られると安堵してたのに……。

「相手は、誰なのだ?」

嘆息していたが、フィアも女の子なので、俄然興味が沸いた。ちょっと困ったように、もじもじしながらヒナエは……、 驚きの名を告げた。「え~とね。傭兵ギルドに参加してるシンク♪、言っちゃた」

テヘ的な。舌を出して照れ笑いするヒナエ、流石に顔をひきつらせながら。天を仰いだ、

「モテモテだなおい………」

舌打ちしながら思わず唸る。どうしたものかと考え悩むが……、傭兵ギルドメンバーとの対戦では、シンクを避けるべきか?、困惑が消せず。ただひたすら。悩むフィアであった……、



━━翌朝……。



……昨夜は季節外れの霧雨が降り。朝から肌寒い陽気。

午後から晴れると言われたが……、

太陽は大きな雲に隠れ……。薄暗い中でのランキング戦、

参加する生徒のテンションは、下がりぎみである。




……しかし将来を見据えると、常に天候の良い日などあり得ない。増してや悪天候の戦場では、混乱の中に身を置くこともある。さらに自分ではなく魔導兵の欠点。視野が狭く。ぬかるみ等で、足を取られ離脱したり。遅れたりと。新兵士が陥り易い不足の事態━━。

今日のような日こそ……。軍としては望む。学生の内に魔導兵ゴーレムを用いた訓練をさせるならば……、うってつけなのだ。



その為学園側は、裁定として、小隊リーダーの力量もつぶさに見ていた、今回の傭兵ギルド戦とは、生徒達は無論、傭兵ギルドメンバーの対応まで、細かく学園側、さらには各国の学園、軍部の新たな判断材料にするための試金石となる。こうした不足の事態を、この力で抜けた傭兵側・小隊側がいかに上手く使い。駆け引きで騙し、作戦にひっ掛ける方法を考えれるか。頭脳戦の要素が強いのだ。



……午前中。

通常のランキング戦が行われた。それから授業が始まり。午後の授業が終われば、


各学年の疑似国に所属する部隊は、それぞれ集まり。話し合いが行われた。

全部でチャンスは6回あるが……、参加するからには、確実に特典を手にしたいのが心情、話し合いも熱を帯びる。



結果234年は、ランキング昨年の上位メンバーのいる部隊が優先的に。投票することが決まった。相手を選ぶのは将軍が決め。6戦に振り分ける。

ついでどの小隊を誰にぶつけるか……、運の要素もあるため。エントリーの予約が開始ギリギリまで頭を悩ませていた━━。



学園側は、学生の不安を和らげるため。疑似国が賭け屋を運営しやすいように。エントリー申し込み数に応じた。人気を発表した。一般学生はこれを見て。疑似国が運営する賭け屋で、どの国が傭兵ギルドメンバーと戦うかを確認して。Pを賭けて行くのだ。ランキング上位メンバーのいる。参加が決まった部隊としては……、誰を出すか、それにより賭け率が変わるため。学生は息を詰めて、ひたすら日程と、さらに順番を確認して、どの傭兵に、どの部隊がエントリーしてるか、確認に余念がない。



傭兵ギルド長リーザは、内密にお小遣い稼ぎとして。予想新聞を発行していたが、意外な収入にほくそ笑んだ。

1番人気レイラ・バレス。

2番人気フレア=カレン・ダレス。

3番人気シアン・イナバ。

4番人気リーザ・カーベン。

5番人気クルミ・アルタイル。

6番人気シンク・ハウチューデン。


有力小隊は、上位人気に参加が集まっていた。唯一有力小隊の中では、四年のコルト・アルベルト小隊だけ、シンク戦にエントリーしていた、

「くっ……、予想外だ…」

人気は、シンクに集まると予想していただけに、苛々と爪を噛んでいた、コルトのこうした癖は、母似の繊細で打たれ弱い一面があり、不安で、不安で仕方ないのだ、

「よりにもよって何故……1番なんて……」

自分でくじ引きしたから、文句も言えず涙目である。

シャイナ・アルベルトも1番を引いたが、こちらはご満悦である。毒々しいマニキュアを塗りながら、恍惚と笑んでいた。無論相手はレイラ・バレスを選択。同じ小隊の女の子達は、ガタガタ震えていた。同じくレイラ・バレス狙いのフィア・ガイロンは、四番手といまいちな順番に渋面を浮かべた、

隣のヒナエは、溜め息ばかりと、心此処にあらずな様子。これにはフィアも苦笑を隠せない……。ムフフと冷ややかに笑うのは、銀の髪をなびかせた。リルムで、断腸の思いで、クルミ狙いを捨て去り。フレア狙いに変えていた。姉妹は魔法の使い手と知られてる。



一般的にあまり知られていないが、魔導兵は前衛、後衛機に分けられている。後衛機の中でも魔法を使う機体は、通常以上の魔力を必要とした。さらに強い魔法は、機体にまでダメージを与えるため。後衛機体の中でも魔法を使う機体の耐久性は高いが、学生の機体故に。魔力供給制限と、回数制限が、設けられていて、通常の前衛に比べると、後衛は不利だと言われている。



しかし背に腹は変えられない。ニ連覇を狙う来年……。

『学年戦争』で有利な立場にいたいなら、傭兵ギルドは必須である。今はリスクを避けるべき時と、判断である。

良くも悪くも『総合武術大会』優勝、準優勝者とは戦いたく無いのが心情だ……。

気持ちでは、シンクと直接戦い、自分の伴侶としたいのだが……、相手が強すぎた。シンクは単調な人ではない。良くも悪くも好敵手。今は少しでも技量を上げて、シンクの隙を誘うのが、最良である。



学園側から、傭兵ギルドとの試合が発表された。午後から行われる試合、1番人気レイラ・バレスが登場する。


━━学園の広大な敷地の西にある。『学年戦争』の舞台は、中央に。古代の建造物を模した物が、新たに作られていた。


━━古代の建物の中は、中央大陸の太陽神アセードラの神殿地域を模していて。四方の疑似国は、四大陸を表していた。

新しい催しに、興味をもって見に来たのは、生徒だけではない。各国の大使館・勤めの職員、軍関係者が、興味深く見詰めていた。


普段忙しい彼等が。わざわざ学生の催しを見に来るなど、背景に……深い理由もあった……。


一見世界は、平和になったと。そう思われがちだが……、

中央大陸事件の後。数多の死滅したと考えられた魔物が復活して。世界中に群生したのだ、



その為……各国では、南大陸で作られた、魔導兵を操る技術を導入した。

まだ新しい技術である、各国は優秀な魔導兵を操る。人材を、常に求めていた。


余談ではあるが……、自国の優秀な人材を鍛えるべく、アレイ学園に入学させた背景もあり、大使館職員がわざわざ足を運んだのは……、彼等の成長を見守る理由もあるのだ、

一番の理由は………。他国の優秀な生徒をどうにかスカウト出来ないか。目的があるのだが………。そうした政治的背景も見え隠れしていた、



コロッセオ中央。神殿を模した。擬似傭兵ギルド国の魔導兵リンク施設に。金髪を後ろで纏めた。ほっそりした顔立ちのレイラ・バレスは、早速、魔導技師達のリンク作業を見ながら、ゆったりと物憂げな眼差しで、右手を見ていた、

レイラの父は、バレス家と言う。下級貴族の出で、兄カレイラが『オールラウンダー』の称号を得て、政治の中核を担う重鎮となった頃には、妻に先立たれていた、



そんな父を密かに思っていた女性がいた……。政治的争いに巻き込まれた父ハウリ・バレスは、少しでも自分の利益にしたい貴族達が連日訪れ。対応に疲れ果てていた……、



レイラの母親は、腹違いの兄カレイラの幼馴染みだった。

マリア・ソベルだ………、



━━母マリアの父と、父ハウリは友人だったと、母から聞いている。


━━母マリアは、幼くして父を亡くして、母も重い持病を抱え。途方にくれていた……、

僅かに蓄えた財産まで、底をつき……、日々の糧にも苦労していた……、そんなマリア母子を密かに援助して、陰ながら助けていたのが、マリアの父の友人だった、ハウリだった……、

マリアの母が、亡くなる直前━━━。

真実をマリアに語って。この世を去った……。


マリアの母は、マリアの仄かな気持ちに、気付いてたのかもしれない……。レイラはそう考えていた。


━━その時母は、ハウリの優しさを初めて知って、レイラの前で、涙ながら感謝を述べていた、

だけど……、母の仄かな想いが、恋心に変わるのに。時間は掛からなかった……、


苦労して、何度も挫折しかけたがマリアだったが、ハウリと同じ近衛連体に配属され。ハウリの後押しもあり。同じ小隊に所属が決まって、━━それからのマリアは、敬愛する父ハウリの為に献身的に、時に影ながら支えた。不器用な二人は苦楽を供に続け、時間は瞬く間に過ぎていった……、




何時しか……マリアの献身的な姿勢と。強い想いに気付き、ハウリは胸を打たれた。


ハウリもマリアを1人の女性と見ていたのだが……、親友の娘である。葛藤はあった……、それでも二人は、徐々に惹かれ合い……、苦難を乗り越え。



数年後………。



結婚した。



無論苦労も沢山あったと思う。マリアに対する強い風当たり。父に対する誹謗中傷……、だけど二人ははね除け幸せだったと笑い会う姿に。レイラまで嬉しくなったものだ。

『だけど~』

母曰く歳の離れた夫婦の悩みは、仲良く出かけると……、度々親子に誤解されるのだそうだ、夫婦仲は娘のレイラが見ても睦ましく。口下手な母の気持ちをつぶさに見抜く。父の優しい眼差しが大好きで、レイラの自慢でもある。レイラ自身口下手なのは、承知してた、それがマイナスなのも………。



あの時感じたのは……、父と同じかそれ以上に、レイラの考えを先読みした男がいた……、兄カレイラと同じ『オールラウンダー』の称号を得た、オーラル・ハウチューデンの子息。シンクである。不思議なえにしを感じた……。

棺桶かんおけに入り、徐々に感覚は……、肉体から、魔導兵ゴーレムにリンクして行く━━━。



視界はクリアとなって、自分の意思で手足の先から、感覚を通して行く……。

最初の部隊は、何かと逸話が堪えない、エドワルド公の御息女。シャイナの部隊である。レイラは相手を侮らない。だから奥の手を使うのも躊躇ためらわない。



レイラは迷わず後衛機と魔法兵のスタッフを選び。機体に装備させていた、

シャイナ……、彼女の狙いを、レイラは正確に読んでいた、レイラには兄に似た。彼女だけの才がある。



━━それは……。女性ながら『オールラウンダー』候補になった。レイラだけの特技、あの……魔王の愛娘リルムには、通用しなかったが……、レイラには相手を観察してる内に。僅かな癖や、所作で、思考の些細な変化すら予測出来る。予測の天才である。体力・筋力は普通の女性生徒並みでしかないレイラは、それを逆手に武器にする。



今回の試験でも、学科、模擬訓練込み。全科目AかAAを取っていた、

レイラが、予測の天才と呼ばれる。もうひとつの隠された努力がある。レイラの諜報活動のレベルは、最早学生レベルでない。黒衣が知ればその高さに目を剥くレベルにあった。その全てを使って、シャイナを調べあげていたのだ……、



━━シャイナ・アルベルトの部隊全員が、容姿は可愛らしいと、学力優秀な評判の女の子達である。それがシャイナ・アルベルトの毒牙に掛かって、まるで所有物のように扱かわれると聞いていたが……、噂通りだった。

彼女は自尊心ばかり大きくなった、ただの世間知らずなお嬢様だと結論した。

「貴女は、本当の戦いを知らないから……、仲間にそんな態度がとれる。」

静かに……、開始の時間を待った━━━。



『傭兵ギルド戦。開始となります』

魔導技師から、レイラに連絡が入った、ゆっくり、ゆっくり気持ちを高める。



━━シャイナは、子飼いのスカウトを駆使して、レイラの事を調べあげた、それこそ恋愛経験から、好みの下着、食べ物、癖まで………、


嫌らしい笑みを浮かべた。シャイナは舌なめずりした。


ただし……、レイラがわざと作り出した、癖や情報だとは……、シャイナは最後まで、気付くことはなかった……、



レイラは小さく口元を綻ばせ。魔法を唱えた……、好都合である今日のような天候なら。得意の霧の魔法を……。



━━傭兵ギルドの機体搬入口付近━━。



シャイナ小隊は、違反スレスレの罠を張って、レイラの機体が出る瞬間を、待ち伏せしていた……。


傭兵ギルド戦とは、基本的に。人数の多い疑似国側が、先にスタンバイするのだが……。シャイナは、始まったばかりの傭兵ギルド戦。穴を突いた戦法を選んだ。

『いきなり入り口で、奇襲受けるなど、誰も考えないわ!』

自分の才能に絶対の自信を持ってるシャイナは。笑みを深め。恍惚と舌なめずりしていた、獲物レイラが出てくるのを。今か今かと武器を構え待っていた、自ら出てきた瞬間。仕留めるつもりである。



三人の部下は、シャイナを中心に。弓に矢をつがえ構えていた。時間だ……。弓を引き絞って、レイラが現れるのを待った……、


突如だった……、視界が真っ白になったのは、

『ん……、これは……何事!』

『シャイナさん、霧です』

いち早く。報告が上がった、

『まさか……、嫌な予感がするわ……』

槍を構えた瞬間━━。


━━霧を裂いて、炎の矢が、仲間の機体が破壊されたのを見て、嫌な予感が、当たったことを理解していた……、


事前の情報で、レイラは魔法をあまり使わない………、前衛機体での訓練ばかりしていた、いつも細身の双剣を獲物に選ぶ。通常訓練でもだ……、レイラは非力な女の子だ、訓練でも弓、槍、棒、体術、どれも非力で苦心していた、持ち前の敏捷さと技術で、非力の差を埋める努力と、兄譲りの頭の良さは、流石と言わざる得ないが……、それだけだ……、所詮はお上品な子女に過ぎない……、


だから単純な奇襲に弱いと結論して……。シャイナはほくそ笑んでいたのだ……、スタッフの先に。炎の槍を作り出して、炎の槍を投擲、山なりの軌道は気配もなく。二体目の機体が、早くも討ち取られた……。

この時ようやく小隊の残ったメンバーが、矢を放ったがあっさりかわされ。緑の機体は素早い回避運動で、霧の中に消えた、

『まさか……、この霧も……』

歯噛みした、



レイラの真骨頂……。それは……、ゲリラ戦に尽きる。非力故に。どんな相手だろうと、罠に掛ける策略を、常に用意していた。例え仲間であろうと……、友達だろうと、絶対に自分を見せない、周りからポーカーフェイスと呼ばれるが、それすら逆手に取って、相手に気付かせず。何十にも罠を張る。再び緑の機体が背後にいた。仲間の機体が突然氷の氷柱に貫かれ……、シャイナを残して、小隊は全滅した、狩る側から……狩られる側に変わった瞬間━━。

シャイナは、今まで感じたことがない恐怖に震えた、いかに自分が甘かったか……、思い知る。



━━突如攻撃魔法が、視界を覆い。シャイナは慌てて回避を行うが、魔法が次々とシャイナの機体を掠め襲う。

『クッ……』

ようやくシャイナも理解した。レイラの魔法は……、わざとシャイナをいたぶる為だ……、決して止めは刺さない……。嫌らしい戦い方に、戦慄に戦き、寒気すら感じた。



……最初はこれも魔法かと、身構えたが……、ゆっくり……。霧が晴れだしたのだ……、途端シャイナは魔法兵の特性を思い出し。高らかに笑い出した、

『馬鹿が!、魔法の制限を考えないからだわ』

狂ったように喋りだしながら。シャイナは自分の優位に安堵してすがっていた、可笑しいとはこそりとも考え無かった……、ただ……自分が勝ったと思い込み、むやみやたらと棒立ちのレイラ。緑の機体に、槍を突き立て、高らかに哄笑した。


『ブー』

違反をしらせるブザーが、棺桶内に鳴り響いた。

『シャイナ・アルベルト、自軍機体破壊の違反で、失格』

『えっ……』

魔導技師から宣言されて、伝えられた意味が。まるで理解出来ず……。訳が解らぬまま、リンクが強制的に切断された━━、



学生が魔導兵ゴーレムを扱う上で、厳しいルールがある幾つかあった。違反を犯した生徒はいかな理由があろうと、直ちにリンクを強制解除されるのだ、シャイナは痛みに頭を押さえる。訳も解らず。上半身を起こして。痛みが引くのを待ってた、

━━やけに冷たい眼差しが、シャイナと小隊メンバーに。向けられてるのに気が付いた、視線が背に刺さる……。なぜ?訳も解らず。シャイナが顔を上げると、エドナ校長が急いで来たのか息を上げて、呆れた顔をしていた、

「先生……、いったい何が……」

シャイナ達の不安そうな顔を見て、ゆっくり呼吸を整えてから、一瞬考え理解してないようだから。彼女達の為にも……。魔法の鏡を取り出して、魔導兵の額についてる。魔法水晶に内臓された、リプレイ機能を引き出すワードを唱えた。



写し出され場面は、霧が現れた所から、すると━━シャイナ以下、全員が同士討ちを始めた驚くべき映像に、我が目を疑った。最後に仲間の機体に槍を突き立てて。シャイナの哄笑まで残されていて、シャイナは青ざめた、

「シャイナ……、残念だけど、貴女には、部隊長の任を解きます。それから……、参加者四名には。数日の謹慎を命じます!」

小刻みに震えだしたシャイナは、素直にエドナに従った、憑き物が落ちた顔をしていた……、狐につままれたような一同に変わり。




何があったか……エドナだけは理解したが。それが可能なのかと?、自問自答して、皮肉気に笑い。首を振っていた、




種明かしは簡単で。レイラが、傭兵ギルドのある。神殿から出たのはたった一度だけ。しかも使用した魔法は2つ…のみ…、


霧の魔法と、

幻影の魔法を組み合わせて、使っただけである。

レイラが一度だけ、神殿から出て行ったのは、霧の魔法を使った直後。シャイナ小隊の機体を、一度転ばせただけで、後は勝手に同士討ちをしたように。映像が残されていた。「恐らく幻影魔法……、恐ろしいまでに高度な」そんなことエドナ他。宮廷魔導師達でも。不可能に近いが、レイラはやってのけた。しかも魔導兵戦でだ……、


普通に考えれば不可能だと言えるが、一つだけレイラが使ったとしたら可能な魔法がある。それは幻影魔法である。しかし本来知られている幻影魔法とは、視覚的魔法と認知される魔法であり。相手の目を通してしか、幻影を見せれない弱点も抱えているが、使い方によって人を殺せる恐ろしい魔法だ、しかし魔導兵とリンクした状態では、視覚魔法は通用しないはずである。それは魔導兵に搭乗時に、機体とリンクしているがあくまでも意識だけだからだ。最初レイラが使った目眩ましの霧の魔法は、軍でも良く使われる。ただそれだけに過ぎないのだが……。



今までは……、魔導兵を操る相手に。幻影魔法を見せることは、不可能と言われていた……、それをレイラは可能にした……、

「幻影魔法であり、幻影魔法ではない、もうひとつの使い方によってね……。」

面白そうなと笑みを口元に張り付け、再び映像を食い入るように見ていて、やはりなと確信した。



そもそも霧とは、水が体積を。小さくした物質だ、元を正せば水は光を通す液体であり。レンズの役割をもこなすのだ、

ここで知ってもらいたい、元々幻影魔法げんえいまほうには二種類の使い方があると言われている点だ。視覚的投影しかくてきとうえい視覚的錯覚しかくてきさっかくである。


通常魔法理論の上で理解してはいるが、幻影魔法を、投影目的に使うことはまずあり得ない。普通は視覚的錯覚を使って、幻影を見せることで、認識を誤認させる。それこそ相手の眼を通して、魔法を使い。幻としてではなく。使い手の力量で、本物と認識させる。それが本来幻影魔法と呼ばれてる魔法である。



対して、投影とは非常に、技術が難しく。不安定な魔法と言われていた。恐ろしく魔法のセンスが問われる反面。魔法の範囲が狭く。使い方の難しい魔法とされてる。使い手自体も少ない……。



それを可能にしたのが、霧の魔法であろう。レイラが霧に映像を投影する事が出来ると知ったのは、幼少期の頃で……、教えてくれたのは母だった、



母は、生まれつき体が弱く。幼い頃は、しょっちゅう風邪をひいては、寝て過ごす事があった……、父が悲しそうな母に、こっそり訪れて見せてくれたのが……、窓の外に、霧を作り出し。投影で演じた拙い物語……、母のために。一生懸命な父の優しさが、本当に嬉しかったと語っていた、母は懐かしそうに笑いながら。幼いレイラに語った。

「父さんには、内緒よ……」

見せてくれたのだ、レイラの母は、アレイク王国有数の幻影魔法の使い手となり、今までは父に代わり、小隊長を兼任していたが、年齢を理由に。今は母が近衛連隊の小隊長を引き継いでいる。代わりではないが父の剣の腕と、人柄が買われて、今は戦士養成学校の講師をしている。

二回戦、三回戦、レイラが圧勝したが……、真っ向勝負のフィア・ガイロンと、変幻自在のヒナエ・バウスタンに苦戦して、持久力に劣るレイラが負けた、こうしてレイラを優先的に雇う権利と、レイラを雇う時に発生する。学生ポイント半額の褒美を得て、俄然一年は燃えた……、来年こそ優勝するのだと……、



因みに『学年戦争』優勝した擬似国の部隊全員には、1人100ポイントが与えられる。傭兵に与えられる参加者には15~30ポイントなので、来年のこととはいえ。優勝がちらつき。俄然やる気に燃えた。


翌日━━━、

午前中、通常学年ランキングが行われた後。学園長エドナから、昨日違反を犯した三年シャイナ他部隊所属の三名が、明後日までの3日間。ランキング戦を棄権することが、発表され多少なりと。学生に混乱を与えた、



午後の授業が終わり、すぐさまコロッセオに生徒が集まっていた。傭兵ギルド争奪戦と密かに呼ばれだした催しに。登場した彼女を見るためである、コンテストの女王こと、財務の天災フレア=カレン・ダレスである。密かに有力部隊が集まる中。魔王の娘リルムの名を目にして、俄然燃えるフレアは、気合いが入る。妹のシアンが呆れるほどで、

「お姉様……、やり過ぎ無いかしら?」

シアンは不安を覚えた、



コンテストの女王vs美し過ぎる女生徒リルム小隊との対戦である、注目度も高い。さらには後衛機体であるフレアの機体は、魔法を使った戦いで、無論制限がある一方で、その実力をしるからこそ。リルム小隊の苦戦が予想された、



雪月華せつげっかのような。冷たい笑みを浮かべるリルムに。エルマは身震いして、幼馴染みの横顔を恐々見ていた。


勢いに乗る一年生。来年こそ優勝するのだと決意の三年、四年の順である。美し過ぎる魔王の愛娘リルムvsコンテストの女王フレアの好カードは、各国の大使・軍関係者からも注目が高く、誰しも固唾を飲んで、その時を楽しみに待っていた。



━━ざわざわ……、ドヨドヨ会場全体が、驚愕の声として響き渡る。なんとフレアと相対したのは、リルム小隊での対戦ではなく……、一騎討ちだったからだ……、これには観覧する誰もが、驚いた……、


普段隠してるが、リルムは、人一倍負けず嫌いで、シンクが何でも。直ぐに上手くなるのが、面白くないから、弓の技術だけは譲りたくなくて、一度も負けることはなかった、それは女の子としての、弱さを認めたくなかったから、歯を食い縛っても。シンクに頑張った姿は、見せたくない。

『シンクの傍らに居るのは私だけ……』チョピリ……、スレンダーな胸なんて、気にしない!。弓と魔法。どちらも中、長距離からの遠距離攻撃を得意としていた。勝負は一瞬で決まる。その可能性が高い……。誰しもその時を食い入るように見ていた。スタッフを構える緑の機体のフレア。弓を構えないリルム。だけどピーンと空気が張り詰めていた。

『何よ!、動かないつもり。ならこっちから行くわよ』

お気に入りのシンクとの出来事を見ていた、だから鼻息も荒くなる。初戦で、いきなり大魔法を使うのはしゃくだけど。全力で行かないと殺られる。そんなピリピリした感触を捨てきれない。



魔法を使う魔導兵には、一度だけ使うことが出来る。大魔法が許されている。魔力のチャージに。時間が必要で、しかも一度使えば、機体能力が著しく半減するため、個の戦いでは使うこと事態希である。かわされた場合。大きな隙を生むからだ、しかし………、流石はフレアだ、僅か数瞬で魔法を収束。巨大な火玉を無数に浮かべていた、

『ほっーほほほ。残念ですわ。私の実力を読み違えてたようね』

高らかに笑うフレアに合わせて、魔導兵がしなを作る。

『まあ……、その程度よね』

クスリ笑うのはリルム……、魔導兵は弓を構える様子もなく。指を鳴らすような仕草をした、

『何の真似ですの?』

真意が図れず。フレアが戸惑ったのも束の間、

『さあ~焼け死になさい。魔王の愛娘よ!』

猛然と魔法を放つよう、思念で命じる。………………………………………………ピシリ……、

『へっ?』

異音が響き、フレアの機体は、意思に関係なく膝を着いて、魔法を放つ事がなく。自分の魔法に焼かれ自滅したのである。ざわめきが上がった、訳も解らない観客の為。スロー再生が写し出された、



どよどよどよ……、

それは二人が相対した瞬間の映像で……、魔導兵の動きが、スローでも霞むほどの。神速の速さ、矢が放たれていた、狙いたがわす、両膝の駆動部、両肘の駆動部を射ぬいていたのだ。

「うっ、うそ……」

恐るべき技量に、静寂が漂う。棺桶が開き、魔法の鏡に釘付けだったフレアは、やや呆然としていた、シアンも青ざめ呻いた。姉妹を震撼させた、リルムはと言うと……、銀の髪を掻き上げながら、美しくはにかみ。夢見る少女のような、物憂げな眼差しで、

「シン見ててくれたかな?」

エルマは苦笑しながら、冷たいタオルを差し出して。小さく頷いていた。



噂のシンクはと言うと……、最初に相対した瞬間に。笑みを深めて。足早に教室に戻っていた、

「リルムちゃんまた腕上げたな~。早く戦いたいなリルムちゃんと」

鼻歌混じりに。『特待生』教室に急いでいた。




……夕方……、



ミリア叔母さんに頼まれ。足早に学校が終わってから、孤児院にリナを迎えに行った……。



孤児院に着いたら、砂場にいて。タイチと遊んでたリナをすぐに見付けた、安堵の笑みを深め。二人の所に向かおうと、一歩踏み出したシンクだったが、突然の珍入者が、二人が作った砂山を壊したのだ、近所の子達だろうか?、一瞬固まったが、止めるべく声を上げようとした。

「もう少し様子を見ましょう、シンさん」

聞き覚えのある声に、ビックリして二人から目を放し。いつの間に隣に立っていた老婆に。やや驚いたような顔を向けた、おや?以前此処で会った老婆だと気が付いた、優しげな笑みが印象的だった、柔和に微笑する老婆の意味ありげな顔を見て。シンクは小さく頷き。今しばらく……、様子を見てることにしたのだ……。



ゆっくり立ち上がったタイチは、強い眼差しで、三人の少年の前に立っていた、鋭く睨み付け、「リナに謝れ!」

強い口調のタイチに、ややたじろいだ三人だが、リーダー格の少年は、手下の手前。鼻息荒くどんとタイチの胸を突いた、転んだタイチを、泣きそうなリナが、心配そうに見ていた、タイチは無言で立ち上がって、リナを優しい目で見てから頷いて、

「リナに謝れ!」

ぐっと唇を噛んだ面差しは、男の顔をしていた。まるで怯まないタイチに、突っ掛かって来た少年達が、浮き足立ち、

「バーカバーカ」

「馬鹿タイチ!」

捨て台詞を残して、走り去る三人を、悠然と見ていた。

「タイチ!」

リナが心配そうにしてると、リナにだけには優しい目をするタイチの姿に、シンクは酷く感心した、

「タイチは、孤児院に来たときは、手の付けられない子だったのよ」

懐かしげに語る老婆に、シンクは驚きが隠せない。

「そうは……見えません」

「そうね~♪。貴方のおじいちゃん。リブラちゃんも、今のタイチ君と同じようだったわ」

驚くことを言われて、戸惑っていたら、クスクス悪戯ぽく目を細めて笑い、

「義娘のリーラは元気?」

「えっ……」

一瞬呆気に取られたが、ようやく相手の素性に気付いた、

「もしかして……、エレーナおばあちゃんですか?」

エレーナは目を丸くして、直ぐにコロコロ鈴を転がしたように、愉しげに笑い出していた。

「そうですよ~シン君♪」嬉しくて仕方ないとエレーナ大司教が見せた慈愛に満ちた。優しい笑みは、母が時折見せる。顔に似ていた、

「あっ!ニイ、エレーナおばあちゃん!」

タイチと手を繋ぎ、二人が、走って来たときだ。エレーナ大司教は、意味ありげな眼差しで、タイチを認め。

優しく頭を撫でながら、肩に手を起き、目線を合わせた。

「さすが……、私の子です」

満面の笑みで、タイチを褒め称えた。クシャリ顔を歪め、声を上げず泣きだして、男の子の仮面を脱ぎ去り。1人の子供として。母に甘えた姿は、シンクの胸を打った、グイッと涙を拭ったタイチに、シンクは拳を出すと、一瞬困った顔をしてたが、照れ臭そうに、シンクの拳に。小さな拳を合わせた、



━━━傭兵争奪戦3日目、


ランキング戦が終わった午後。


通例になりつつある。傭兵ギルド戦に登場するのは、3番人気のシアン・イナバ、父は、元宮廷魔導師筆頭ケイタ・イナバで、父の血を、色濃く受け継いだ、魔法の天災は、


姉以上に攻撃魔法に関して、知識、スキル、センスが遥かに上だと、フレアも認めている。

肩で揃えた髪はシアンの艶やかさ、活発さをさらに引き出していた、

「早く終わらせて、ミリアさんのお店に、行きたいですわね♪」

楽しみを前にした、子供のように笑うシアン。それと言うのも先ほど姉が、ミリアさんに頼んでた生地が、届いたと聞いたからだ、後2ヶ月程で夏休みになる。姉妹は師であるオーラル・ハウチューデンの誘いで、中央大陸ただ一つの人間の国、輝きの都プロキシスで、プロのコンテスターとして、招かれている。至上の喜びと、身が引き締まるプレッシャーが、心地よく、シアンの気持ちを、高揚させていた、

「それに……、ミリアさんたら」

口元が緩むのも仕方ない━━。



以前母と一緒に。北大陸の竜鱗を加工した、スタッフを見たのだが……、あまりに美しい竜鱗に。魅了されたシアンとフレアは、何時しか自分たちも竜鱗で、スタッフを作りたいと思った。だが竜鱗はあまりに希少で、高価なため。二人は半分諦めていたのだ、



それが……、姉妹の誕生日に合わせて、二対のロッドを作ってくれていたと、知ったのは、夕べ……、

姉の試合が終わった後。お店に寄った二人が見たのは……、美しい赤と白の竜鱗を加工して作られた二対のロッドだった、あまりに艶やかな細工。魔力の放つ美しさに目を輝かせて、つい釘付けになっていると、ミリアさんは柔らかく笑って、

「ケイタちゃんに頼まれてたの。見つかっちゃたわね♪」

驚き目を丸くした姉妹は、ミリアさんから理由を聞いた。

━━すると大切な約束を話すように。姉妹の父が……、中央大陸に向かう日に……。二人の為に二対の竜鱗ロッドを頼んだことを教えてくれた……、それは8年も前の話だ。



ミリアさんの両親は、現在北大陸のレオールに住んでいて、リブラさんが、将軍職にあることは聞いていた、

「伝があったからね♪」ミリアは朗らかに笑う中。シンクがこっそり、二人に耳打ちして、

『爺ちゃんを。半分恐喝して、竜鱗を集めさせてたよ』

「まあ~……、ミリアさんが」

驚いた姉妹は目を合わせると、対照的な印象を与えたが、楽しそうにクスクス笑う姿はとても似ていた。



ようやく二対のロッドの加工分の竜鱗が集まったのは、去年の秋で、スタッフを作るには足りないが、ミリアは予感に導かれ。竜鱗の加工を始めていた。竜鱗の加工は難しく。非常に手間暇が掛かるので、夫婦で少しずつ。コツコツ加工してたと聞かされた時は、感激のあまり泣き出してしまった……、あれが遂に完成したのだ、そう思うだけで……、




竜鱗は姉妹のカラーに合わせた鱗が使われていた、竜鱗を手に入れるのも大変だった筈なのに……、

『なんて幸せなのかな~クスクス』

シアンは悠然と、魔法の天災と呼ばれる意味を、見せ付けた。


一言で斬るならば、嵐。魔導兵の姿をした。災害である。


通常機より劣る。傭兵機体で、ありとあらゆる魔法を使い、小隊を次々と全滅させる光景は、悪夢だった、まだ……、武器での戦闘ならば……、そう後悔させた時間である。一方的な殺戮を、青ざめながら見ていた生徒は、あの子を怒らせるのは止めようと、誓わせたのは、言うまでもない……。



これにて今月の傭兵ギルド戦はひとまず終わった。『特待生』は恒例の初夏の月始に行われる。野外授業があるため。ランキング戦は、野外授業が終わるまで休すみになる。



各学年の授業の内容は違い、一、二年生が5日掛けて、交易の港町ドマーニで、船の操船を学ぶ三年生は国境の街、城塞都市ベセルで、馬の扱いや乗馬を学ぶ。四年生になるとターミナルの街で、実際に地下迷宮を探索する。クエストが待っていた。シンクは操船が初めての経験なので、船の操縦を楽しみにしていた、

「ニイ……、早く帰って来てね」

甘えたリナに抱き付かれて、不覚にも泣きそうになった、




一二年の『特待生』が、ドマーニの近衛連隊が訓練で使う砂浜に。到着したのはその日の夕方である。

「こうして外で、顔を会わせると気分が違うなシンク」「そうだねフィア」

シンクは顔馴染みのフィア・ガイロンと、見覚えのある女生徒……、『総合武術大会』で対戦した、「貴女はヒナエさんでしたね」

声を掛けると、嬉しくて堪らないと、妖艶に笑うのだ。フィアは小さく苦笑していた、

「まだグループが決まってないなら、どうかなシンク?」

操船は、小隊毎に集まるのが決まりらしいが、8人だとグループ分けで2人余る。

「僕で良かったら」

心良く了承した、

「まて!そのグループ。私も入れて貰おうか」

やたら尊大な物言いに、フィアとヒナエはキョロキョロ、声はすれど姿はない。シンクは慣れた物で、下から上目線のクルミ・アルタイルを見付けていた、栗色の髪を短目にした、可愛らしい風貌、一生懸命大きく見せるが、ちんまいクルミを見ると、実に微笑ましくなった、

「要するに友達がいないから、仲間に入りたいと?」

からかう口調で言うと少し天然で、可愛い性格のクルミは、羞恥で頬を赤らめさせ。シンクを睨む。フィアは怪訝な顔をして、

「お前は……、この間も見たな、ここは子供が来る場所では無いぞ?」

真顔でさらりと、酷いことを言うフィアに悪気はない、ワナワナ怒りに真っ赤になったクルミ。その頭を気安く撫でながら、

「先輩小さいから、誤解されてますよ」

からかうように言うのも。シンクは意味ありげな目でフィアを見た。いかにフィアとて。シンクの先輩と言う言葉の意味に気が付いた、気まずそうに、渋面となったが、あわててクルミの前に来て、頭を下げていた。

「知らぬ事とはいえ。失礼なことをいい、傷付けたこと申し訳ありません」

誠心誠意頭を下げていた、あっさり謝るフィアにやや毒気を抜かれて、

「まっまあ~誤解されるのは、慣れてるから……。そこまで言うなら許すわよ」フィアを気に入った様子で、クルミも満更ではないようだ、ちょっと安堵したフィア、二人はにこやかに笑い。和やかなムードに包まれた。「ちょっといいかしらシン」

悠然と現れたのは、銀髪を美しく輝かせ。可愛らしくシンクにだけ笑みを向ける。魔王の愛娘リルムで、彼女の信望者による。騒ぎにも気付いた様子がなく。彼女にとって、シンク以外は目に入らない様子だ。

「リルムちゃん!?。リルムちゃんも野外授業に来たんだね」

気安く呼び合う二人、まともに顔色を変えたのが、クルミとヒナエで、クルミは不機嫌そうに。珍入者を睨み付け。ヒナエはオロオロ挙動不審に陥る。リルムの後ろに部下のように控えるのは、ハンサムな女性エルマと生真面目なフィアは、訳知り顔で、目が合った瞬間。お互いの事を理解して、二人は苦笑をかわしていた。


学園内でも。何かと目立つ面々に、好奇な眼差しや、俄然注目が集まった。

「リルムちゃん、この間の傭兵ギルド戦見たよ。弓の腕……、また上がったね。僕でも二発しか、かわせないかも」

手放しに褒め称えた、だけど二人の会話から。聞き逃せない内容を耳にして、まともに顔色を変えたフィアとエルマで、思わず聞き耳を立てていた、二人もフレア戦の結末が不可解で、スロー再生を何度も見直した、思わず見合い。あれがかわせるのかと戦慄した。

「ありがとうシン、君ならならそう言うと思ったわ、でもシンだって『総合武術大会』では、魔法を合わせた奥の手。使ってないのに~『総合武術大会』優勝したじゃないの♪」

ピクリ……、

眉をハの字にして、ムムムっと複雑な顔をしたクルミを、わざとチラ見して、挑発するように、シンクの腕に触れて、リルムは笑む。

「あれは……、そんな余裕なかっただけだよ」ばつが悪そうに、頭を掻いてシンクの言葉に、意外そうな顔を浮かべた、

「リルムちゃんは、試合を直接見てないから、解らないと思うけど、棒術の秘技。虚実を使ったのに、クルミ先輩には、かすり傷すら、付けられなかったと言ったらどうする?」

ハッと息を飲んでいた、理由が解らないエルマは問うように、リルムを見つめていた。クスクス雪解けのような、春の日差しを思わせる笑みをクルミに向けて、

「やるのね。クルミさん♪」

嫉妬を含めた。冷気すら漂わせた空気に。思わずクルミの肌が粟立った、シンクがクルミを認めてるのが、感情的に許せないのだ。「そうそうリルムちゃん、彼女はヒナエさん体術の技量は僕以上で、前回勝てたのはまぐれだったんだよ」

突如矢面に押し出されて、真っ青になるヒナエだが、逆にリルムはたじろいだ……、目の毒……、ピチッとした革の服を着こなして、身体のラインがわかってしまう……。あまりに蠱惑的な肉体……、扇情的な泣き黒子が、妖艶漂う女性と見せ。リルムも目が釘付けに。

「クッ……」

顔から血の気が引くほど、青ざめさせたのは。特に胸を見たからだ、リルムは胸が薄いことを、ちょっと……、いやかなり気にしてる節があった、


惜し気もなく肢体を晒すヒナエが、羨ましくもあり。同性から見ても。目の毒であるから。一方でヒナエはヒナエで、クルミの可愛らしい風貌に驚き、お姫様のようなリルムにマジマジと見られ。羞恥に真っ赤になって固まっていた、クルミとてまさかこんな伏兵が現れるとは、とパニック状態、わなわな震え。妙な三竦み状態が生まれたのである。

周りの生徒は、殺気すら漂い始めたシンクグループから、危険を感じて、遠巻きに離れた、



そんな三竦み状態を。すり抜けるように。

「シン……」

金髪を後ろで束ね。ほっそりした顔立ちのレイラ・バレスが、口元を綻ばせ、手を上げた、

「やあ~レイラ」

二人は手を打ち合わせる。

「一緒していいかしら?」

「構わないよ」即答である。しかも二人は、和やかに笑い合うのだ。その様子にクルミ、リルム、ヒナエは慌てた、

「私たちも一緒ですよ!」

ヒナエには珍しく勇気を出して声を上げていた、結局グループとして人数が多くなったが、教官を任された近衛連隊の仕官は、押しきられるように。特別に認めるしかなかった、決して恐怖したからではないと。本人は言い訳したが、誰もが信じなかったと言う。



……野外授業が始まると、リルム、クルミ、ヒナエの三人は、レイラの登場で、危機感を煽られ。必要以上にシンクを構うから。気苦労が耐えず。疲れが見えたところに。レイラがさりげなく、シンクの手伝いをするもんだから、余計に三人は、レイラに対抗心を燃やす悪循環。端で見ていたフィア、エルマは、レイラの見事な策手に唸っていた、二人は似たタイプだからか、その日の内に。打ち解けていた、

グループの端で見てるだけの二人は、友人達の恋の鞘当てを、静観していた、

「フィア・ガイロン、君のことフィアと呼んで構わないかな?、私をエルマと呼んで構わないから……」

ハンサムな笑みを浮かべ。友好的な眼差しを向けていた。

「ああそうさせてもらうよ。長い付き合いになる。そんな予感がしたんだ」

二人は小さく笑い合っていた、ハンサムな麗人エルマと。自分に厳しく人に優しいフィアは、同性からモテる点も同じである。とても似た境遇ゆえ、気安さも出る。

「そうそうエルマとリルム殿とは、付き合い長そうだね?」それに小さく頷き、

「ああ~父同士が友人で、姫様とは、姉妹同然に育ったからな」

成る程なとフィアは唇を笑ませる。

「そっちも付き合いが長そうに見えるね?」

チラっとヒナエを見ていた、

「ああ母親同士が、友達でね。幼なじみて言うやつさ、もう1人、リーザ・カーベンと三人でいつもつるんでたのだが……」

聞き覚えのある名である。それに気付いて、フィアはほろ苦く笑い。

「同じ一年なんだが、傭兵ギルドのマスターをやってたから知ってると思う。あいつは『院』に在籍してるから……」成る程と頷いた、

課外授業の時期は、『院』の生徒の大きなイベントがあって、以前は『特待生』の出場もあったが、四年生までは、様々な野外授業が、行われるようになって、魔法討論会・予選は『院』に在籍する。学生に限られるようになった、



━━今年はギル・ジータ王国で、行われていたな……。懐かしい場所である。


━━午前中の野外授業は、船の座学と基礎を学んだ、


午後からは……、3人一組で、小型船の操作を実地で学ぶのだが、人数が多いシンクグループは、くじ引きで組分けした━━結果。シンクはフィア、エルマと同じ組になった、


残された四人の内。リルム、ヒナエ、クルミが羨ましそうな顔で、恨みがましい眼差しを二人に向けられ。フィア、エルマは居心地の悪い思いをした、



残された四人の。何とも複雑な空気に、怖さ半分、好奇の目が集まった、水着に着替えた生徒は、上から薄手のパーカーを羽織るのだが、シンクも健康な男の子である。綺麗な幼なじみや、蠱惑的な肢体の同級生、可愛らしい風貌の先輩、戦友と思ってた女生徒の、輝く水着姿は、目の毒である。その点失礼だが、フィアやエルマとの操船授業は、安心出来た。


そもそもこうした訓練は、生徒の長所を見る基準である。人の上に立つことに慣れてたシンクは、軍の基準で、上官タイプに分類される。フィアとエルマの二人は、どちらかと言うと、副官タイプに分類されていたから、がっちり歯車が噛み合って、息の合った見事な操船を見せていた、



生徒を見守ってた、教官役の近衛連隊の仕官は、思わず唸る。もうひとつのグループ。目を向けて、苦笑を滲ませていた、それが……、時間を追う毎に代わり始めていた、




元々反りが会わなくて、対立してた三人である。息が合うはずかないのだが……、

そこに策士がいた、次期『オールラウンダー』候補の1人。レイラ・バレスである。レイラは三人の性格を見抜き。人心を上手くくすぐり。三人を手玉に取りつつ。癖の強い三人をまとめ。教官を感心させた、

「今年は粒がそろった、当たり年だな……」

にんまり。嬉しそうに笑っていた。



━━午後になって、突然教官が言い出した。

「グループ毎に、夕飯を作って貰う。勿論グループごとの料理は、教官おれたちが味見する。無論採点対象になるから、そのつもりで頑張るように」

人の悪い笑みを生徒に向けた、ギクリ顔色が変わるリルムとフィアの二人、教官達は悪戯ぽく。小さく笑うとさらに。

「ただしだ……、お前達にはグループ毎に支度、準備、調達の仕事に別れてもらう、自分達で何をするか、考えて行動するように、各自の行動も採点対象になる。仕事はくじ引きで行うこと」安堵した生徒もいるが、馴れ合う空気は一変。ピリピリした空気になった。

━━全て、グループ内で引く、くじ引きにより。その日の命運が決まるからだ……、



案の定と言うか……、料理が苦手なリルム、フィアが、料理担当になって、二人は呻いた。各グループ、野菜の山を、最低限の食料として受け取り、クルミが代表して受け取り、仮の調理台に並べた。料理が苦手な二人は。野菜を前に途方に暮れていた、リルムは呆然と立ちすくみ。不器用なフィアは、何度も玉ねぎを地面に転がして。生き物のように逃がすから、遅々と皮剥きが進まない。外見からは想像出来なかったが、料理がわりと得意なクルミが、

二人をせせら笑いながら、慣れた手つきで、玉ねぎの皮を剥いて、二人に見せつけてから、スライスするのを見せつけてたが、なんだかつい気になって……、野菜を切る手を止めて。



一生懸命に、いかにも不器用ながら、真面目に奮闘する二人を見ていて、少し考え方を変えた━━。



シンクとエルマは、くじで、調達が当たり、色々と考えた結果、二人は無難な魚釣りを選んだ、教官に聞いたら、

「じゃ、道具から揃えろや」

中年の教官は、ニヤニヤ意地悪に笑う、困惑したシンクだが、釣りを選んだ生徒は、各自走り出していた、

どうやら調達の中で、釣りを選んだ生徒は、道具から調達しなければならないのは同じようだ……、


……悪戦苦闘しながら、危なかしい二人の様子にクルミは、嘆息しながら仕方なさそうに、小さく笑みを浮かべて。

わざわざ二人の間に立って、手本を見せ、教えるように二人を指導していた、それはクルミにとって初めての経験であり。照れくさそうな横顔を見てる内に。頑なだったリルムと、不器用ながら一生懸命なフィアの顔にも。小さく笑みが浮かぶ。ちょっとした和やかな空気が流れた、フィアとリルムとクルミはお互いの顔を見合い。何だか照れたように笑い合う。少しだけ仲良くなった気がした……。



準備のくじを引き当てた生徒は、グループの為に。調理用のかまどや、焚き火を起こす場所と、主に薪の拾いが仕事で、比較的楽である。ヒナエとレイラは海岸で、流木を集めていた、砂浜から丘に上り。風避けに植えられた木々の開けた場所に決めたここかなら。野菜を切る三人からも近い場所で、大き目の石を組み合わせ。海風で炎が消えないように、砂を掘ってかまどを設置、手頃な石で、補強するため。グルリ囲んでから。焚き火の準備まで終わらせた。細かい作業が山ほどあったが、そうした仕事になれてたヒナエと。野外訓練を受けてたレイラは、てきぱき準備を整えていた。



━━砂浜を一望出来る丘の上。教官をしている中年仕官の元。ヴァレ・カルバン近衛連隊長がお忍びで顔を出した、驚く部下に、人差し指を唇に付けて、片目を瞑った。ここからなら生徒達が、何をしてるか、つぶさに見ることが出来る。カルバンが、ハラハラ心配そうに見たのは、娘のこと、妻に似て、不器用なフィアが、心配なのだろう……、長年の付き合いである。部下は察した、

「良かった。何とかやってるようだ……、ところで……、例の二人はどうかな?」

誰がと言わなくても気付き、優しい笑みを浮かべて。

「流石は、と言ったところですな……」

教官を勤める中年男は、懐かしそうに目を細めていた。

男は以前……、オーラル直属の配下だった……。

十数年経ったが、未だに第1師団の兵士の中には、オーラル陛下に。信望に近い感情を持ってる兵士が多いのだ、


だが……、不思議なことに、そうした感情が強く持ちそうな、直属の配下ほど、そうした話をしない、微塵も態度を変え無いのだ、意外なことと思われるだろうが、カルバンや軍上層部では、それが一番重要なことと捉えていた。

軍部にとって、命令に従う兵士を育てるのが一般的だった。


しかしオーラルが、見出だした、国の兵士とは、命令だけを実行するのではなく。自分の考えで動ける。貴重な人材ばかりだった……、

オーラルが、アレイク王国に残した最大の功績とは……、そうした人材だと、カルバン達重鎮は痛感している。オーラルが王国を去って、15年経った未だに、アレイク王国はオーラルの残した、数多の遺産の恩恵を受けていた。

「面白い育て方をしてますな~シンク殿は、将来オーラル陛下以上の人物になり得ます」

「其ほどか?」

普段寡黙な男が、手放しで誉めるとは、非常に珍しいことだ、一つ気になったのがシンクの隣にいる女生徒で、上官の視線に気付いた教官も。苦笑を滲ませながら、

「彼女はギラム殿の1人娘で、エルマですよ」

「なんとま……」

奇妙な縁を感じて唸る。

「要人の子息、淑女だらけか……」

部下の気苦労を思い、軽く肩を叩いて、カルバンは、仕事に戻った。


━━カルバン隊長を見送りながらも。中年教官は、小さく嘆息して、1人ごちる。

「女性の吉備に疎いところまで、似てるとは………、予想外ですが……」

ほろ苦く笑うのだった、


そんなことを、噂されてるなどつゆとも知らないシンクは、雑木林の背の高い葦の草を集めていた。何に使うか分からないエルマだが、シンクに頼まれ。適当な長さの葉付きのままの枝を拾って、手早く葉を落とし、手近な石で、枝の皮を扱き、ささぐれを削り取ると戻ってシンクに渡した。



その間にシンクはポーチから、ソーイングセットを出して、中から、針を数本抜き取り、平たい石の上に置いて、針を魔法で加熱しながら、石を巧みに使い。慣れた手つきで針を加工してゆく。

「こんなものですね」見事な返し針まで付いた、釣り針を造り、同じくソーイングセットの中にしまっていた、釣糸を出した。

ようやく何を作ってたか理解したと同時に。驚きを隠せない処か。妙な感心すらしたエルマは(よく持ってたわね)内心考えてると、シンクは視線で汲み取り。苦笑を浮かべて、

「父から釣糸と、ソーイングセットは、肌から離すなと、言われてたので、持ってたのが、役に立ちました」

なるほど……、確かに役に立つな納得した。エルマの用意した竿に。簡易強化魔法を付与して、



ある程度の長さで切った、釣糸を繋ぎ。手近な樹木から、樹液を釣糸と竿の繋ぎ目に塗り込み。滑り止めに使う。落ち葉を合わせ。枝で浮きを作った。



━━短時間で、二本の釣具を用意すると。今度は集めていた葦の葉を編み会わせ。仕掛けを作っていた、不思議そうな顔のエルマに向かって、笑みを向け理由を語る。

「多分だけど、訓練である以上は、明日の朝食も込みと考える方が自然だよね。あくまでも念のためだよ」

楽しそうに説明したシンクに。なるほどと感心するばかりである。



二人は、近衛連隊が所有する船舶を、停泊させる桟橋を釣り場に選び。釣糸を垂らした。それは船の側の方が影が出来て、魚が集まりやすい環境になってるからだ。



━━ようやく野菜の皮剥きに慣れてきた、リルムとフィアに、クルミは野菜の切り方をレクチャーする。おっかなびっくり、指を切りそうな手つきで、野菜を切る姿は、なんともハラハラした、



━━水汲みから戻ったヒナエとレイラは、やることが無くなり、クルミ達を見ていたが、二人が、わざわざ手や口を挟まず。あのままクルミに任せた方が良いと判断、ニッコリ笑いあい。シンク達の釣果を見に行くことにした。


他のグループが苦労してるなか、シンクとエルマが、それぞれ4匹づつ魚を釣り上げた、シンクはまだ続けるつもりのようだから。エルマが問うように見た、

「もう少しのんびりしませんか?」

「どうしてだ?」

「多分ですが、エルマは知ってますよね?。リルムちゃん料理が壊滅的に苦手なの……、時間掛かると思うし。急かすとプレシャーに弱いので……」

良く見ている。感心して。ハンサムな笑みを深め。

「そうだな」エルマは釣りを再開した、途中ヒナエ、レイラが見に来たので、二人に釣りを教えて、四人は楽しみながら釣りをした、結果……仕掛けの分合わせて、15匹近い釣果を上げた。



━━四人が戻ると、腕組みして待ち構えてたクルミが、下から上目線で不敵にニヤリ笑う。隣ではやや緊張した、リルム、フィアが待っていた、

「なかなかやるじゃない……」

バケツの中身を見て鼻を鳴らした、腕捲りするクルミとシンクは、手慣れた手つきで早速魚を捌いてく。

「自分も料理は得意な方ですが……、あの二人……、プロ並みですね。お嬢」気難しい顔のリルムは、プーと膨れたままだが、

「そこも好きなんだけどね……」

何とも恥ずかしいことを、さらりと言ってのける。驚いたのはヒナエで、赤い顔をして、もじもじ。

「クルミさんのことが……」1人だけ完全に勘違いをしてた。なんとも羨ましそうな顔のフィア、不器用過ぎて、料理は壊滅的な腕前だから余計だ、母もフィアと同じく不器用で……、変な所が似たらしい……。小さく嘆息していた、



━━各グループ。苦心しながらようやく。夕飯が出来上がる頃になると。教官達が。生徒の作った料理と準備までの時間。何をしてたか等。試食しながら採点を、生徒に直接伝え回る。教官達を待つまで、シンク達は緊張で押し黙り、ようやく……シンク達グループの番になって、

リルムとフィアの苦心した野菜スープ。皮はパリパリ野草で、臭みを無くした魚料理を食べてニンマリ。

「なかなかだ!」

親指を立て。お褒めの言葉を頂いた。

「ここの代表は誰だ?」

一斉にシンクを見たので、本人が戸惑っているが、皆は納得しているようだ。

「なるほどな……、ならシンク、何故このグループだけ、余分な材料を揃えてやがる?」

魚料理が、二品余分に作られていたからだ、しかも保存用に調理されて……、教官は疑問を聞くだけに見えるが、明らかに面白がった顔をしていた。だから素直に自分の考えを述べた。「教官は言いましたよね?。材料や道具も自分たちで調達しろと」

「確かに言ったな」

「作るのは夕飯だけですか?、自分たちグループだけの分ですか?、言われませんでしたので……」こいつは一本取られた。ニンマリなるほどと笑って、他の教官を集め。シンクグループの行いを解説した、なるほどと好意的な目が向けられた。


軍と言う場所は、上官の言葉を汲み取り、行動出来る兵士を、優秀な兵士と呼ぶ。だが本当に軍が欲しいのは、同じ命令を与え。予想以上の結果を出せる兵士を、精鋭と呼ぶ。シンクの考えは学生ながら、精鋭に該当する。

「お前がしてた仕掛けは、その為だったのか?」しっかり観察されてたことに驚いたが、静かに頷いていた。「意図がないなら、一品多く出せば良いだけですからね」

いけしゃーしゃーと言ってのける。こいつは……、教官達は思わず感心して、唸りながら舌を巻いた、全員の顔を伺うと了承があった。

「シンクお前のグループにだけ、合格をやる」

にやり中年仕官は不敵に笑い、シンクの肩を叩き他のグループを巡り出した。結果シンクグループ以外。不合格の嵐を与え。頭を抱える生徒を他所に……。シンクだけは首を傾げていた、



そんな中で……、レイラだけが顔色を変えていた、直ぐにポーカーフェイスに戻ったが……、シンクはレイラの様子に気がついたのだ、まだ今のところレイラ以外。合格の意味をする。あまりに重い言葉と、理由は分からなかった……、



野外授業2日目……早朝━━。


シンク達グループは、教官に呼び出されて。ドマーニの港にある。近衛連隊の外洋船に。いきなり乗せられた、さすがに不安を覚えた頃……。


小さな島の近くに船は停められ。ボートに乗せられた7人を乗せて。島に上陸した━━、


不安そうな7人を見渡しながら、中年教官は、鋭く射抜くような、視線を投げ掛け、突き放すように言う。

「お前達グループは、教官全員の合意で、野外授業を合格した……、よってお前達には特別に……、試練を与える。島の奥にある洞窟のダンジョンの探索を命じる」それだけ言い残し。教官は船を出して、外洋船に戻り。船は直ぐに見えなくなった……、



呆然としてたシンクだが、自分の持ち物が、ソイングセットだけなの思い出して苦笑浮かべる。他の6人など着のみ着ままである。

シンクは様々な可能性を示唆して、仲間の力量を考えた。何とかなるか……。

「リルム、この場所で、材料を集めて、弓と矢は作れるか?」

周囲を見回し。ようやく置かれた状況を飲み込み、リルムは肩の力を抜いて、頷いた、

「エルマと二人で、弓を3つ。矢を3本づつ用意して」

「分かった、任せてシン!」

艶やかにウインク残し。颯爽と材料探しに森の中に入った。

「クルミ、食料調達を、ヒナエ、フィアを連れて頼めるかい?」

フンと鼻を鳴らして、下から上目線のクルミは、子供ぽい顔を高揚させ。強気に笑いながら、

「このクルミ様に。不可能は無いわ」

二人を引き摺るように、灌木の中をズカズカ入って行った。

「レイラ、君はどう思う?」

金髪を後ろで束ねたレイラは、意外そうな眼差しをシンクの横顔に向けた、

「何故……、私?」面白がる眼差しして首を傾げる。仕方なくシンクは肩を竦めて、

「君は得意だろ?、こうした状況は、それに……、何かを知っているはずだ」

意表を突かれた思いを抱いた。

「あら……。どうしてそう思ったのかしら?」

顔から色を消し去り、素知らぬ風を装う。シンクにとってお馴染みの駆け引きである。優秀だからレイラは隠す。自分の手札をなるべく見せない、それはある意味正しいが……、時として無意味だ、彼女はまだそこまで、理解出来ていないのだろう……。



こうした相手に、回りくどい腹芸は、反って邪魔になるのだが……。

「シャイナ小隊との駆け引きも見てましたよ。それに昨日……、教官の合格だと言った瞬間。僅かに顔色変えてましたよね?、見てましたから」

意外と思わない。彼ならば、レイラの僅かな所作から気付く可能性は考えてた、でも……、だからと言って、自分の優位を崩す理由にはならない。顔色すら変えないレイラに、シンクは嘆息した。

「質問を変えます。ダンジョンの地下に。何か居るんですかね?」

意外だった質問に、眉根を寄せるレイラ、シンクは小さく苦笑しながら、

「十分です……。レイラさん。貴女は腹芸を勉強してるようですが、まだまだ甘いですよ。その程度では、国に巣くう政治家を相手に。重鎮になどなれませんよ?」

ギクリ顔が強張る。眼をしばたかせて、顔を取り繕おうとして、失敗した、舌打ちしたが、

諦めたように小さく苦笑して、不安を覗かせる。



レイラと言う女性は本来。優しい普通の少女だ、ただ頭が良すぎただけで、常に……、不安を抱えている。

本当は……弱い自分……。躊躇ためらわないと言えば嘘になる。でも彼ならば、信じれる気がした。

「シンク……。気付いたことを教えたら。君が、甘いと言った理由を、聞かせてくれるかしら?」

ほっそりした顔に、処か無理をするような、苦し気な笑みを浮かべていた━━━。



━━レイラを誘い。シンクと二人で、島の奥に向かって歩いて。程無く。洞窟を見つけていた、

「魔物特有の気配がありますね……」

レイラのほっそりした横顔を見て。一つ頷き。

「そのようね……」レイラは真摯な眼差しをシンクに向ける。

「私が気付いたことは……、あまり多く無いわ、この無人島は……、私の兄と貴方の父親が、海の試練を受けた場所なの……」レイラの言わんとする意味に気が付いた、

「なるほど……」

『オールラウンダー』の称号を得るには、5つの試練がある。地、海、空、知、魔の試練。過去この島で海の試練が6度行われている。その内5番目の『オールラウンダー』カレイラまでは……、学生時代。島の洞窟で、何かと会っていると……、言われている。シンクの父は、既に空の試練で、高い力量が評価され。基本的な操船技術、航海術を学ぶだけで、十分であったと聞いている。他の『オールラウンダー』達は、学生の内に試練を受けていたから、父のような立場は、非常に珍しいと言えた。

「ここに父が……、ありがとうレイラさん」秘密を教えてくれたくれたことに感謝し、頭を素直に下げて。驚くほど屈託なく笑えるシンクに。

レイラは戸惑いが隠せない……、裏表なく素直な笑みを浮かべ、自分を飾らず。人に気を使えるシンクが、羨ましいとさえ感じていた……、


シンクとしては、ただ大切な情報を教えてくれたから。素直に対応したに過ぎない、だからレイラの為に考え。助言するべきだと。判断した「ゴホン……、レイラさん。貴女なら、女性初の『オールラウンダー』になれる可能性が高いですね。あくまでも望めば……、ですが……。貴女が望むのは、カレイラ准将と同等な権力と地位……、ではありませんよね」ピクリ僅かに頬が動く。

「貴女が、望むのは、恐らく自分意外のため、あくまでも僕の勘ですが、両親の幸せのためですよね?」

あまりにあっさり、自分の内に隠していた、思いを当てられてしまい。心を覆う鎧が一瞬で消え。レイラの顔から、作られた余裕が剥ぎ取られた。クシャリ不安が沸き上がり。素直な安堵から、ぼろぼろ泣き出していた、

「えっ……あっ、ちょ、ちょっと……」

慌てるシンクにお構い無く、彼の胸に飛び込み、レイラは泣いていた、恥も何もかもかなぐり捨て、自分がどれだけ不安だったか……、彼は気付いてくれた……、まるで父のように……、不安で、怖くて、堪らなかった……、真っ赤になって棒立ちのシンク、最初から見てた10の瞳の持ち主は。

わなわな涙目のヒナエ。不機嫌ながらチョピリ涙脆いクルミは、唸りながら睨み付け、冷たい殺気を放つリルムに、エルマは真っ青である。

「天然の女たらしだな……」

涙目のフィアは何とも言えない顔で、苦笑を漏らした。




レイラが落ち着くのを見計らい。優しく頭をポンポン撫でて、

「貴女は、頭が良すぎます。隙が無い人間は逆に、隙だらけなんですよ~」

「プッ……なによそれは……」

身体身体力みが抜けて、飄々と掴み所がなかったレイラからは、想像出来ないくらい、豊かな表情が浮かべ。可愛らしく笑うのだ、しばらく見てた5人は、足早に離れ。言い知れぬ思惑を抱き、砂浜に戻った……。



それから間もなくして、スッキリした顔のレイラは、鋭い眼差しをヒナエ、クルミ、リルムに向けて、気恥ずかしげに、愛しそうにシンクの後ろ姿を見ていた、不敵な笑みのクルミは相も変わらず下から上目線で鼻を鳴らし。リルムは氷の視線を送り。ヒナエだけオロオロ動揺しまくる。鈍感なシンクは、気付くことはなかったが、静かな戦いの火蓋は、こうして切って落とされた。



最初に動いたのはリルムで、みんなに見せ付けるように。幼馴染みの気安さを利用して、シンクの腕を掴み。抱き着くとにっこり可愛らしく。

「シンク見てみて~、弓作ったわよ♪」頑丈に作られた弓は、即席ながら、手に馴染むなかなか使いやすい物だった。

「流石はリルムちゃん、えらい偉い♪」

幼なじみの気安さで、みんなが見てるの忘れて、頭をなでなでしていた、流石に視線が気になったが、恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうにはにかむリルム。ムムム不機嫌を隠さず。負けじとクルミは、

「シンク!、旨そうな果物沢山見付けたぞ。喉渇いたろう食え」

リルムを押し退け、ムッとするリルムにお構いなしに。香しい香りのオレンジの原種を渡していた。

「先輩ありがとう。丁度喉が渇いてました」

シンクの手が触れた瞬間。真っ赤になるクルミに、冷やかな眼差しを向けるリルム。

「あっ!、……あの……シン、私も食べて~」

誤解されそうな言葉を放ち。豊かな胸を強調する。身体にぴったりした革の服を着てるヒナエは、蠱惑的な上目遣いでいて、とても恥ずかしそうにもじもじ。まだ青みが目立つが、甘い香りのバナナを差し出した、

「ありがとうヒナエ、沢山あるならみんなで食べようよ」

房から一本貰い。有り難く食べた。



当初固さが見受けられた女性陣だが、お互いを牽制するように目配してたが、段々馬鹿馬鹿しくなって、順番にヒナエからバナナをもらい、腹に納めた。よくよく考えたら。朝食もまだな内。無人島に連れてこられた7人だ、僅かでも食事をしたことで。ようやく頭が回転しだして、自分たちの置かれた状況を考えた。そこて六人も気がついた、シンクだけが、島に着いた瞬間から、自分たちが置かれた状況を先に考え。行動していたことに━━。



シンク達は、小川で水を確保してから、洞窟に降りた……。


先頭を体術の得意なヒナエ、シンクが、その後ろにフィア、クルミが続き、弓を持ったリルム、エルマ、レイラが並ぶ、エルマ、レイラは弓も得意としている。リルムはダンジョンに降りて、ようやくシンクの考えを理解した、

「なるほどね……。シンはだから……、すると奥には……」鋭い先見を持ったリルムだからこそ、気が付いたこと、訝しげなエルマに、

「シンクが、何を気にしてたか、判ったのよ。だから貴女に聞いたのね?」リルムの斬り込むような言葉で、レイラは苦笑を滲ませていた。

「視線を感じたのは、貴女だったか……、シンが何を気にしてたかは、私も分からないよ」

感情を消してた当初のレイラと違い。リルムに挑むような強気な眼差しで、いつしか二人はにらみ合う、挟まれたかたちのエルマは、二人の圧力に、やや青ざめて、

「お嬢に、対抗出来る人なんていないと思ってたが……」

間違いだったとの言葉を飲み込んで、

「そう……、貴女は私と似てるけど、予測の方だったわね……、なら目的の場所に着いたら、シンクが何故、貴女の予測を聞きたがったか、理解出来るわ」冷たく突き放すのではなく、リルムは認めた相手にだけ、ヒントを与える。意外そうな顔をしたレイラだが、クスリ意味ありげに目を細めていた。するとリルムは目元を赤くして、なんとなく膨れっ面をした、相変わらず好意をむけられると素直になれないな。エルマは小さく苦笑していた。



━━お嬢の不安、彼女達と関わりを持つこと。秘密をリルムが抱えていたから、それは二年もの歳月を……、眠りに着いてたからである、



リルムが目覚めると……、白銀髪の赤子と目が会った、驚いたリルムに、母が晴れやかに笑いながら、

「おはようリルム!、体調はどうかしら?」

ゆっくり……、身体を起こしながら、自分の身体を確かめつつ、視線が気になって見上げた瞬間。

「ね~、ね~」

改めて男の子を抱いてる母を見て、びっくりした。

「貴女の弟……。クライムよ。クライムお姉ちゃんに挨拶してね」

クリクリっとした可愛らしい顔に、興味深そうな眼差しを受けて、リルムはたじろいだ。

「小さい子なんて……、」

奇異な眼差しを受け続けた。幼少期がリルムのトラウマになっていた、だからこそ怖かったのだ………、それでも辛抱強く待った母に根負けして、割れ物を扱う気持ち。恐々弟の頬に触れた瞬間。ふわふわで柔らくて、弟はニコニコ笑ってくれた、

「温かい……」

不思議な。安堵を覚えていた、

「リルム……、父さんからの伝言で、来年の春……、シンクがアレイ学園に入学する事が決まりそうよ」

母の悪戯ぽい眼差しに、ちょっと赤くなりながら、

「お母様……私……」

こんなに怖くて……、ドキドキさせられるなんて……、あの時は思いもしなかった……、リルムの目は強力なライバル達に向けられていた。『…私……。アレイ学園に入学したい!』

シレーヌ母さんは、会えないで間も。こうして成長してゆく。我が子の頭を胸に抱き。

「国のことは気にせず。貴女の思うまま生きなさい。それが父さんと母さんの願いだから……」胸を突かれた気がした……、リルムの我が儘を二人が赦してくれた……、それだけで胸が一杯になって、母の胸で涙した。

「絶対……、シンクは渡さない。」

新たに決意する。




……ここに至り……。リルム達の様子から。

ようやくヒナエも、もしかしてシンクてば……、凄くモテるのでは?、気が付き始めた。そう考えれば、女の子達の眼差しが、すっごく好意的なのも解る。負けたくない……、泣きそうな赤い顔で、真摯にシンクの横顔をちらちら見ていた、



面白くないのがクルミである。生まれてから剣一筋だったから、この中では、一番の役たたずで。悔しく歯噛みする思いである。体術も使えるが、このメンバー内では、足手まといになりかねない。それに……、自分の後ろで弓を持つあの女……、ずるいのよ。あんなに綺麗なんて……、不安は増えるばかりだ……、



━━━途中。

モンスターに襲われたが、弱いモンスターばかりで、弓矢で脅かせばほとんどが……逃げた。その後。何事もなく。7人は。洞窟の奥に辿り着いた。



洞窟とは思えない。明るいちょっとした広間。壁には、光苔の一種が群生してるからか、思った以上に明るいのだろう……。洞窟は地下のさらに奥に続いてるが、それを塞ぐように。巨大な土竜もぐらが、寝息をたてていた。

「土竜……」驚きを浮かべるレイラ、他の女性陣の反応は様々。土竜は匂いに敏感で、すぐさま目覚め。円らな目をパッチリ開き。きょとんと皆を見て首を傾げた、

シンクは何気なく古土竜エンシェント・モグラに近付き、左手を鼻の前に出した。しばらく匂いを嗅ぐ仕草をしてた土竜は、

『お前は……、我が一族の土竜と契約者か?』

「思念……」

シンクはにっこり微笑して、古土竜に触れながら。

「父と、祖父は、土竜騎士です。僕は残念ながら土竜には選ばれませんでしたが、竜と契約してます」

『ほう……それは我らと縁があるな、そこな娘と同じ古き民の血か?』

興味深く。シンの身体に鼻を押し付け。目を細めた。

「はい、僕は赤の民の血縁者。中央大陸にある輝きの都プロキシスの王族です。彼女は白の女王と黒の魔王が娘で……」

リルムが弓をエルマに預け。艶やかに笑いながら、土竜の前に立って、

「リルム・アオザ・パレストアです」

リルムはスカートの裾を摘まむような動作をして、宮廷で行うような華麗に挨拶する。見事な一礼をした。

『オオー!。我等が主の一族。我等を救いし一族と再び会えるとは』

興奮した土竜は身震いしながら、

『中央大陸が戻ったのは聞いていた。貴方達に会えたのも何かの縁だろう。我が名は、始まりの土竜ファーストアレイク王国の守護獣である』

リルムとシンクはやはりなと、訳知り顔だが、他の女性陣はきょとんと首を傾げた。


始まりの土竜とは、赤の民の王プロキシスが、地下迷宮で生きる為に産み出した。知ある土竜の王である。

魔王ピアンザ、父オーラルが、以前からその存在を唱えし土竜が、何処かにいるはずだと常々言っていた。

そもそも父の土竜と祖父の土竜が、知ある古土竜の血族であり。竜と契約してるシンクと会話することもある。祖父の竜王のような存在が、確かにアレイク王国にいたのだ、いち早く我に戻ったレイラは、ハッと目を見張り、シンクの背を見て、淡く微笑していた。

『……長い時を思い出し……、嬉しくつい長話してしまったが、そろそろ戻るがよい。我が名を答えれば、試練は合格である』

やはり……。アレイ学園が用意していた、秘密の海の試練だったのか、ようやく女性陣も理解した。

「始まりの土竜ファースト僕の父オーラルと祖父は、知ある血族の古土竜と契約者です。一度父や祖父ともお会い出来たら光栄です」

流石は王族……、シンクとリルムの気品を漂わせての一礼に。

『オオー!、それは楽しみである。君の竜とも会いたいものだ』

シンクの身体に鼻を押し付け。親愛を示した、



━━古土竜と会談を終えた7人は、

洞窟から出て。高揚した気持ちで、砂浜に戻る。みんなの予想通り人の悪い笑みを向けて、教官が待っていた。

「代表して、シンク答えろ洞窟には、何がいた?」小さく苦笑を、噛み殺しながら、

「はい、アレイク王国の守護獣。土竜王ファーストがいました」

「ほう……、あの気難しいファーストが、そこまで喋ったか!」

感心を浮かべて、うむ力強く一つ頷き。改めて一同を見回して宣言する。

「アレイク王国は、シンク他6名が、海の試練を己の頭脳で、潜り抜けたことを認める!」

「ありがとうございます」

皆に代わり、シンクは何のてらいなく満面の笑みで答えた。

「それはそれ。これはこれと言うことで……、帰りはお前達だけで、操船するように」

意地悪く目を細めて、からかうように言い。高らかに笑う教官を、一同は怨めしげに見てた、

が……、何かが好転するはずもなく……。シンク達は、肩を落とした、



━━━ヘトヘトになって、ようやく野外訓練所に使ってる。砂浜に戻った7人に。更なる試練が……、

「さて、恒例の一年『特待生』観察官かんさつかんをする生徒が決まった、シンク・ハウチューデン」

辺りは夕暮れ。一二年の『特待生』が何事かと集まって、教官役の仕官はシンクグループが、海の試練を見事クリアしたこと伝え。さらにシンクを前に呼んで宣言した。驚くシンクにただ命じた。

「貴様は、各グループを見て回り。生徒にアドバイスや相談を受ける。準教職にあたる。観察官を任命する」


ザワリ……、


驚くシンク、それ以上に。周りの生徒達の反応が変わった。観察官とは『特待生』の中でも、一学年でたった1人だけ。選ばれる特別な役職である。学園内で、準教育者の称号が与えられるため。学生ながら、扱いは教師と変わらない。僅かだが給料が至急される。れっきとした仕事である。

「慎んで承りました!」

自信に満ちた笑みを浮かべるシンクに、好意を持った女生徒達は赤くなる。ムッとして敵意を持つ者や、好意的な眼差しを持つ者。反応は様々。今回のようなことは非常に珍しく。教官達の満場一致でシンクに決まった。今年の生徒達は、粒ぞろいだ、



だが……。



一際輝き。奥を隠してる節のあるシンク。こんなにも成長を見てみたいと。思った生徒は初めてである。



━━それから間もなく。当初喜んでた女性陣の状況が一変した……、

なんと観察官に選ばれた瞬間から、シンクがグループから抜けたのだ。これには喜びも半減。それ処かマイナスである………。

女性だけのグループになったリルム達は、複雑な面差しで、夕飯を作っていた。食べさせたい相手、シンクは……、各グループを周り。的確なアドバイスをして、生徒達と交流を深め楽しげに笑う姿に、やきもきしていた。

「お嬢!」

リルムは、籠の横に落ちてた石をまな板に乗せて、ナイフを振り上げる。それを見ていた隣のエルマは真っ青になって、慌てて石と人参を入れ換え、うめき声を荒げた。

「ん?」エルマの言葉も上の空で、目はただシンクの背を追っていて……、エルマは目を押さえ。深々嘆息する、こうなれば仕方ない……。最後の手段に出た。

「お嬢。夕飯を美味しく作って、シンク殿に食べさせたら、誉めてくれるのでは?」

ギラリ……、不用意な一言、リルムの目付きが変わる。精気が失せていたヒナエはハッと目を輝かせ。地味に魚をさばいてたクルミの目の色が変わる中。既に完璧な手料理を1人で作ってたレイラは、余裕たっぷり、頬を綻ばせている。それを敏感に察した三人は目配せして、瞬時に手を組むことを誓う。ここに野外料理同盟が設立。奮闘が始まった……。



呆れた顔を崩さない。フィアとエルマは、お互いの顔に浮かぶ色を見て、苦笑し合う。こうして……レイラVSシンクに料理を食べさせる。同盟との料理対決が幕を開けた……、



残念ながら、シンクが戻ることはなく。燃え尽きた四人をなだめながら、エルマとフィアの奮闘は続く━━。


その頃シンクは……、学園長エドナに呼び出され。先に学園に戻ることになったからだ、



━━━話は、少し戻る。


ギル・ジータ王国は中央大陸事件から瞬く間に。香辛料の国としてではなく。世界中の国々を繋ぎ運行する海中船で、莫大な資金を有する。世界の銀行と呼ばれる国として定着していた。

莫大な財を一代で成した。ギル・ジータ王国。国王ギル・エバーソンと、眼鏡を直す仕草の女性。宰相で、幼馴染みでもあり、妻のサミュ・リジル、他国の王を前に。緊張するなとは言えまい……。



国王の前に並ぶ生徒達は、各国の学園・学校の『院』に在籍する。天才達である。その中でも。学園から選ばれた2~4名の代表生徒達は、明日から行われる。魔法討論会・予選の出場者だ、以前の魔法討論会とは。初日に論文の提出。2日目に論文の魔法を実技で発表して。各国から選ばれた。魔法関係者により、審査され順位が発表される方式だった、



現在では、15年前発足した世界議会に。端を発して、大陸全土。各大陸ごと毎年場所、国を変えて予選会が行われる。方法は以前と同じだが、予選会では、個人総合得点評価A以上得た生徒には、2ヶ月後の夏休み。中央大陸の輝きの都プロキシスで、決勝に参加出来る運びである。



一堂に会する。開会式の後。各国の生徒達は、エバーソン国王私的別荘で、予選の間、お世話になるのだが……、まさか国王自ら現れ。気さくに笑いながら、声を掛けられたのだ。緊張するなと言う方が難しいだろう……。

「私がギル・ジータ王国。国王エバーソンです。久しぶりに我が国での魔法討論会・予選の開催を開催出来ると。非常に楽しみにしていた!」

二人にとって。忘れられない思い出が……、魔法討論会にはあるのだ……、懐かしそうに目を細める。


━━二人は、幼き日……、出会った、古代の民。友人シレーヌを助ける為に……。あの頃は頑張っていた━━。


今では、各国の重鎮となった友人達……。


まさか……初めてあった彼等に。手助けを頼むなんて、今考えても解らなかった、あの頃……。オーラルを見た瞬間、感じたのだ、彼ならば……、助けてくれると、



あの日の直感は、世界中を巻き込む。大事件となって……、未だに信じられない出来事ばかりだ……、だからこそ……。エバーソンは原点を大切に。忘れずにいようと考え。思っていた。だからどんなに忙しくとも。


ギル・ジータ王国で、魔法討論会が行われるならば……、自ら出迎えることを止めないのだ。国王との対面に。緊張する学生達の中、1人だけ興味深そうな目をする少女に、おやっとエバーソンは首を傾げた。鼻の頭にちょこんとした眼鏡が、印象的な女生徒である。傍らには顔馴染みの大男。バレンタイン教頭と目があい黙礼した。何でも彼の妻は、早くに子供を産んで、亡くなったと聞いていたから、元気そうな姿に安堵した。中央大陸事件では、苦心した仲間でもあるのだ、国は違えど。知った顔があるのは嬉しいものである。



今年は何でも。オーラルの息子シンクが、アレイ学園に入学したらしいが……、さすがに今回は、

「来るわけ無いよな……」小さく苦笑を噛み殺して。妻と顔を見合せ。お互いの顔に浮かぶ、表情で、同じこと考えてたのがわかった、

当のバレンタインはというと……、厳つい顔に困惑した色を覗かせていた、国王夫妻に話すか、まだ迷いがある。

……エドナ校長から内々に。忠告があったのを思い出した。


野外授業で、シンクが観察官に選ばれる可能性をだ。その場合は……、観察官として、またバレンタインの補佐として、ギル・ジータ王国に向かわせると名言していた。



エドナ校長は、密かに次期国王レヴァ、次期王妃ミレーヌ様に『瞬きの扉』の使用許可まで取り付けている。流石にそれは……とは思ったのだが、一抹の不安を覚えた、あのオーラルの子供である。観察官に選ばれる可能性が、十分にあり得ると、そんな予感がしたからだ、




━━━野外授業2日後の夜……。アレイ学園。校長室。


教官の報告に、目を通しながら、シンクが戻るのをそわそわ待っていた。扇情的な胸元を開けたドレスに身を包み、楽しくて仕方ない、そう言わんとする眼差しである。義娘のリーザがいかに優秀であろうと、シンクが行った所で、アレイ学園の敗退は、ほぼ確実だと考えていた。それでもシンクと言う存在は。一石の波紋を刻むに。十分である。



魔法討論会の水準が上がったのは、


数年前━━。


正式に、パルストア帝国の魔法学園が、参加を発表してからだ……。パルストア魔法学園とは、その名に恥じず。優秀な魔法使いばかりを排出している。

「シンクの実力は、既に『院』レベルなのだけど……」

オーラルからきつく『院』には、上げないようにきつく言われていた。そこは不満だ、エドナの性格を把握してたからこそ、

『試練では、手を抜かずお願いしました』

なんて言われたから、準備だけは、沢山してあるけど……、蠱惑的に微笑んでいた。

「バローナの所の双子と、会わせるのは何時が良いかしらね?」

ほくそ笑んでいた。

課外授業に来ていたシンクは、仲間の手伝いもあって、海の試練を見事突破していた。教官はシンクの才能に感心し。満場一致で、ある役職が与えられた。だが……それこそが、父オーラルから固く固辞されたある約束を反故にする。エドナ学園長の策略であった。再びなんやかんや苦労を強いられるシンク。果たして学園長の思惑とは?。

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