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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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最終決戦ですね何か?

ようやくわかった魔人の狙い……、赤の民の秘宝『太陽の石』を探すためであった。この世界で再び。世界の支配者をと目論む魔人の王レイアス、各国が誇る勇者、英雄、猛将が一堂に介した。

プロローグ



━━ギル・ジータ王国。地下にある神殿。



王族のみ、入ることがゆるされた……、神域の台座。緑に見える美しい髪の女が、小さく寝息を立てる。



足音。気配すら消した闇を纏う男は、驚いたように目をしばたかせる。

「彼女……、ラグラドは生きてますよ」

ハッと驚き身構えるのは、ダークと呼ばれた元六将が1人。



現在は、エバーソン国王の友人で……、古代の民。白の民の一族である。西のパルストア帝国王妃シレーヌ、皇女リムルの護衛をしている男だ。彼自身も黒の民である。

「………何故だ?」

無音の2つ名を与えられた暗殺者、彼の声は……、錆びのある優しい声をしていた。「オーラルは知ったんだ、彼女ラグラドが死ぬことで、新たな赤の民を生み出すことを……」

押し黙るダークは、小さく黙礼して、足音もなく。消えた。

「憎んでたんだが……」やりきれない思いを抱え、何故彼が……、オーラルに似てる目をしていたのか、理解した。

「彼は……、まあいい…、決めるのは僕では無いだろ………」



━━北大陸、南のターミナルの村。


北のレオール連合は、ケンタウルス族との戦いを制したが、多くの将兵を失っていた……、



部族議会の強固な命とはいえ。竜騎士団の参戦にリブラは難色を示した。よってリブラから一時的に指揮権を奪い。竜騎士団長レダ・アソート、副官プラ・カードラ両名にケンタウルス討伐が命じられた。



しかし部族議会の思惑とは違い。ケンタウルスの王は話の分かる人物で、対話による外交にシフトしていた。

レイナ宰相の強固な姿勢により。レオール連合の総意になって、北の平原をケンタウルスの土地と認める代わり。レオール連合の民として、生きること説得した。

……当初難色を示した、各部族の長を、リブラが説き伏せ、ケンタウルス族と、同盟と言う形に落ち着いたはの昨日のこと。



手傷もあり。南大陸の調査隊には参加しなかったリブラは、暴君の背をブラシしながら、

「レイナの話では、調査隊が、来週にも来るそうだぜ、なんかよ~楽しみなんだな~、訳が解らないがな」

相棒の左の爪は、理由は思い出せないが二本欠けていた。鼻っ面をリブロに押し付け、甘えるように目を細める。

「お前も嬉しいのか?、そうか……」

鼻歌混じりの優しく、大好きだった彼の声を聞きながら、洞窟に背をもたらせるレイナ・フォルトは、困ったような笑みを張り付ける。

「オー君……」

切なく囁き……、


ギュッと手を握って、胸に当てる……。

先日……手傷を負った、リブラの姿に、衝撃を受けたレイナは……、


深夜に。彼を見舞い。想いを伝えた。しかし彼は……、優しく抱き締めてくれて。

「済まないな……レイナ、記憶は無いが、俺には大切な家族がいると。確信がある………」

首から下げてた稚拙な銀のペンダントを取り出して見せた。土竜に見えなくもない……。泣き笑いの顔のレイナは、リブラに抱きつき号泣した。でもレイナが気の済むまで、優しく頭を撫でてくれたのだ。



彼のこと諦めた……、でも……、いずれ結婚する事が求められる立場。どんな形でも後悔は、残したくなかった。

「オー君……」

踏ん切り付けるために彼に想いを伝えると。小さな覚悟を決めていた。




━━北大陸、平原の遥か地下。


青い爬虫類の皮膚。背に蝙蝠の翼を畳み。埃舞う。古い町並みを眼前に、不機嫌に睨み付けた。

1000年以上の遥か昔━━。

太陽神アセードラの怒りを買った……赤の民は、中央大陸ごと、地下に堕され。赤の民は2つに割れた……、


赤の王プロキシスは、大陸を棄て、新たに地下で生きることを宣言したのだ。それに反発したのが、赤の神官長レイアスである。矮小な人間の足元で、生きることを良しとしなかった……、


━━赤の王プロキシスは、堕ちた中央大陸から離れ。北大陸の地下に、新たな街を建設した。新たに土竜どりゅうを産み出して、プロキシス自ら。額に汗を流し働く道を示す一方で、


レイアスや赤の7神官達は、兄を、兄を選んだ人間の女を呪った……、

『裏切り者が、一人もいないとは……』朽ち果てた古き都市と、老人の骸が残されただけだった……、いくら街を破壊して、探そうと、赤の王プロキシスが残した秘宝が。見付からないのだ……、


苛立ち、幾度壁を破壊したが……、7神官の1人ダイランは、腹の虫が収まらない。



元々ダイランは、武芸に秀でた剣士であった。数年とせず王を警護する任に就いて7神官に選ばれた。腰に差してある二対の剣、はっつちつちはビスタスの武器であったが、海底に沈んでたのを回収して、その足で、旧き宮を見付けたが……、

『赤の宝玉は何処だ……』

乱切り歯を剥き出しに、唸り声をあげる。



1000年以上遥か昔。中央大陸の都市のエネルギーを賄っていた『太陽の石』のことで、中央大陸を、この世界に安定させる装置の核である。



同じ7神官のマローダが、擬似的に死者の神アレビスの心臓を用いて、核として、こっちに抜け出したが……、神の結界を抜ける時に。膨大な力を消費している。

『現世に留まるのも後二月と持たぬ……何としても。赤の宝玉を手に入れなくては……』

暗い眼差しを、地上に向けていた。

『人間を皆殺しにしようとも……』

空気の漏れたような唸り声を、絞り出した……。



━━━南大陸。ファレイナ公国。王座の間。


主だったファレイナの重鎮が集まり、オーラル達調査隊による。報告書がを議題に会議は白熱した。ほんの僅かな間に。大国ダナイの滅亡、軍国ローレンの受けた災害。危機的な状況下。三体の怪物。様々な困難から、ようやく脱した南大陸は、これからが困難であると、誰が目でも明らかである。

そこで……、ファレイナ公国女王ミザイナは、国を上げて、南大陸の平定を宣言した。軍国ローレン。ファレイナ公国二国による統治を意味する。多くの難民の為に、土竜ギルドの助けを依頼。地下に住む住民の力を借りる為であった。


幸い。南大陸ターミナルの地下には、はぐれワームの作った、迷路が、広範囲に広がっており。軍国ローレンの王宮まで、続いていて、地下を通って、物資を運ぶ事が可能だった。まずはローレンの首都復興から、再建を開始された。



会議を終えて調査隊である。オーラル達面々。剣将ルルフ、エフィ、元女神メルディス、バローナが旅装で現れた。

「バローナ様、後はお任せを」

ローレンの軍師デーア・オルトスと、国防を任せる。副将のグレビー・アスナルが、深々一礼する。

「お前がいる。俺は安心して赤の民討伐に動く!。『瞬く扉』の建設。頼んだぜ」

「はっ……」

半月前になるが、オーラル達調査隊が、魔人マローダ討伐に成功した事を踏まえ。


八ヶ国の首都に、魔法の通路を繋げる事が、正式に決まった。アレイク王国筆頭魔導師ケイタ・イナバが、パレストア帝国宰相ゼノンと会合を重ね。二国のみ有する技術であった、『瞬く扉』の建設に踏み切ったのである。これによって、情報交換が容易になること、片道だけなら、帰還魔法が使えるようになり、人命を助ける。手段を得る毎になると信じての事だ、無論不安もあるので、扉は小さな物になるだろうが……、大変な変革なのは言うまでもない。

「オーラル……、本来私が行きたい所だが……」憂いを瞳に宿す。友人ミザイナに、小さく首肯して、ミザイナの服装で、気が付いていた。

「今は、自分を大事に、ジンベイ……、隊長をお願いします」

ジンベイは妻を気遣い、優しく肩を抱いて、ぼくとつと朗らかに笑う。それから弟子である。二人の若き剣将に目を向け、信頼を込めて頷いた、二人はちょっと涙ぐむ。

「カール、エル後を頼む」

ムムムっと不貞腐れたように唸るエル。パタパタお気楽に手を振るカールは、ケイタ・イナバに代わり、『瞬く扉』の調整の為に残る毎になったのだ。

「あっあの……、本当によろしいのですか?」

元女神メルディスは、不安を隠せない。無理もないエルの調べでは、彼女に残った女神の能力。絶対防御リフレクターは、制御可能な能力であり、女神の姿は、自分で少しずつコントロールしてくしかない。

「だっ大丈夫だ、お前ならな……」

鼻息荒く。赤くなりながら励ますバローナ。さっきまでの精悍さは、どこにいった?、子供でももうちょっと……。ミザイナは、夫ジンベイと目を合わせ。苦笑した。

「まあ~エルが大丈夫と言うから、大丈夫なんだろうよ~」

ポンポン気安く頭を叩くと、真っ赤になってアワアワ動揺したエルは、訳もなくポカポカカールの背を叩いていた。微笑ましい光景だが、カールの奴。わかっててやってないか?。思わず首を捻オーラル。ニヤニヤ愉しげに笑うカールとエルを、羨ましいそうに、ルルフ、エフィの二人が見ていた。

「オーラル……、気を付けて行くんだぞ、相手は得体のしれない。怪物だ」

心配が隠せないミザイナに、素直に頷き。

「次に来るときは、子供用の玩具を、土産にするよ」からかう一言に、赤くなりながらも、フッとオーラル、ピアンザを認め嬉しそうにはにかむ。

「ああ……、ピアンザその時は……」

意表を突かれて。ピアンザは照れくさそうに笑いながら、

「妻子を連れて来る」

「そうか……、楽しみだ」

彼女は、出会った時から変わらない……、本当に強い女性だ、別れを惜しむが、時間は限られている。

「皆さん。準備は整ってます」

サミュ・リジル宰相は相も変わらず。神経質そうに眼鏡を直した。朝からちょっと様子が可笑しいギラム、落ち着きがない。




━━深夜未明……。

レオールの首都アージンで……、

突如大地が隆起する。天変地異が起こった。事態を終息すべく。レイナが命じたのは、住民の避難である。

「レイナさん!、化け物だ、化け物が、天変地異を起こしてる!」

頭から血を流して、青白い顔で駆け込んで来たイ竜騎士の1人で、唯一の女性であるイノワ・ミササ。彼女は竜騎小隊長として、今夜の見廻りをしていたはずだ。

驚いたレイナは彼女の手当てをしながら話を聞いた。



ミササは部下二人と夜半から。明け方までの哨戒任務を行っていた。何時ものように空から、街を見下ろしていると……、不気味な影を見つけ。直ちに警戒に当たったと言う……、

「まさか……あの」

先日南大陸で、猛威を振るった怪物の話を世界連合議長エバーソンから聞いていた。

様々な情報は、ケンタウルスとの戦いに埋もれてしまってしまい詳しく見てはいなかった……、

「みんな……」

ミササの沈鬱な表情から、交戦したと気付いた。「そう……」

ギリっと歯を食い縛る。魔人と呼ばれる存在は、通常の武器では、勝てないと聞いていた。

「至急全竜騎士を召集。リブラ将軍に知らせて!、私の竜装を準備してちょうだい」

リブラ昨夜から、ケンタウロスの王と会談で、出かけてる今。戦える者は限られている。一瞬で判断して、

「一般兵。市民は、魔人を見つけても逃げるよう、厳命して」

目端の利く。部族の若長が頷き。伝令兵を探しに走る。

「イノワ、部屋に来てちょうだい」

「はい」怪我を理由に、戦線から外れるよう言われるかと、身構えてたイノワは、安堵と嬉しそうに微笑していた。



レイナは今まで……、宰相の地位にいるため。前線に立つことは叶わなかった……、それは人間相手では個の能力は。集団の物量の前には、敵わないからだ。様々な奇策を得意としたリブラ将軍がいたからこそ、必要と考えることもなかったのが現状だが、


もしも魔人相手だとしたら……、そうも言ってられない。物量こそ邪魔になり……、個の力量こそが必要である。16部族最強の拳士がやるしか無いのだ……、幸い先だっての異変の時。竜の巣で殺された竜を持ち帰り、竜鱗りゅうりん竜骨を加工した鎧を造らせたのは、他でもないリブラである。二対ある竜装は、一つをレイナ専用に調整していた。リブラの進言による。念のためだった……、

「本当に……実践で使う日が。来るとはね」

リブラの予知とも言える進言は、殆ど神がかっていた。首から顎に掛けて、すっぽり隠すタイプの兜を被ると、竜が、人になったように見えるホルム。


竜の鱗は、あらゆる攻撃魔法に対して耐性を有する。効果を持っていて、鎧、盾だの武具には、竜のブレスすら、防ぐと伝説にはあった。



レイナ用の全身鎧に、身を包むことで、特集な効果を得ることが出来た。それが竜の耐性(毒、幻術、闇、光、炎、氷、雷)と。

微力な体力回復リジェネである。リブラは竜鱗の剣、竜槍を造らせたが、レイナは武術家である。拳を用いた戦いを得意としており。魔法も肉体強化に特化と補助の回復魔法までマスターしていた。

だけど……、リブラに言われて、竜爪かきづめを装着出来るよう。腰に竜爪が、飾りのように揺れてある。

「レイナさん……」

竜装を着たのは、二度目。一度はリブラと腕試しで。負けたが、かなりの手応えを感じていた。今日のような事があるなら。武器を作って正解だった。

「結局必要になるのよね……」

やになるくらい。頼りになるんだから……、口内で呟いた。

「ミササ私を、魔人の元に運んで」

一瞬……、顔色が変わる。

「分かりました……」レオール連合最強の戦士は、他ならぬレイナ自身なのだ、止める言葉を飲み込んだイノワを、そっと抱き締めて、

「私は大丈夫……、それにね。オー君が来るから、少しでも格好付けなきゃ……」

哨戒任務前……、レイナから聞かされていた。リブラにフラれたこともイノワだけには話したのである。二人は幼馴染みでありイノワはアレイク王国にいるジーナの腹違いの妹である。

「はい……」

そっと涙を拭い。不敵な笑みを浮かべるレイナに、力強く頷いた。



━━城と言うより。大きな屋敷を4つ繋げた造りの総統府。中庭には、鍛錬場があり、二人は、中庭を通り西側の竜厩舎に向かう。


イノワの騎竜は、身体中傷だらけの荒くれと呼ばれる。短気な竜で、竜王に喧嘩を吹っ掛けては、負けを繰り返す。が、まるで諦めない。不屈の竜と知られていた。そんな竜が1人の少女を選んだ。

「レブラント……、レイナさんを、あの魔人の元まで運ぶから、力を貸して……」

強い。怒りの光を宿す。眼差しを受けて、傷だらけの竜レブラントは、信頼を込め。イノワの身体に頭を刷り寄せる。

「仲間の仇……、取らなきゃね……」

伝令に戻ったイノワ以外の部下は、みんな死んだのだ……、竜レブラントは、真新しい傷から。血を流すのも構わず。身を起こした。

「悪いわね……。時間が無いから、簡単な手当てだけで、済ませるわ」竜の鋭い嗅覚に。竜の匂いを真下に感じて、少しだけ驚きに眼を見張るが、

「レイナさん……」鋭くも労る眼差しを認め。レブラントは我が身に触れることを許した、

「ありがとうレブラント」

レイナは元々、医師を目指してた。簡単な手当てはお手の物。補助の回復魔法まで使えるから、大怪我で無ければ、執務が無いとき、率先して医療に関わるひとである。

「これで……少しはマシナはずよ」

グォオオオオ!!。

痛みが和らぎ、竜を纏う。強い目の人間に、信頼を込めた眼差しを送り。自らの意思で、背を託していた。




━━━殺戮は突然始まった……。


日も登らぬ早朝。寝静まる人々を容赦なく、襲う……。レオールの首都アージンから1日程度南西にある小さな町に降り立ち、はっの剣の能力を発動。刺した範囲数メートル四方崩壊させる力。


もう一つのつちの能力は、剣の形状とは関係なく。叩き潰す力。決まった範囲の重力変化である。逃げ惑う人々を、血肉に変えながら、人間の街を破壊して行く快楽に、ニタリ魔人タイランは、哄笑した。

『なんと脆弱な生き物だ……』

竜は、まだ歯ごたえはあったが、

『所詮は……、脆弱な人間に屈する下等生物か、竜など物の数ではないは!』

槌を、叩き付けた瞬間。大地は隆起して、地割れを起こした。巻き込まれた家屋、人間の断末魔、泣き崩れた様に、ただただ哄笑した。

「そこまでよ!」赤い閃光と殺気を感じて、破で凪ぎ払う、ギャリン。

火花が散った。思わぬ強い抵抗で、逆に破が跳ね上げられた。咄嗟にタイラントが後ろに跳んだ刹那。凄まじい打撃をまともに腹部に受けて、弾き跳んだ。


崩れた家屋の壁に叩きつけれ。瓦礫に埋もれた魔人タイランは、怒りを顕に。素早く立ち上がって、槌を振るう。

『人間の分際で……、潰れてしまえ』

赤い鎧を纏う人間は、最初こそ重力変化で、体重が数十倍に感じて、膝を付いたが、すぐさま立ち上がり。凄まじいスピードで、迫ってきた。

『バカな!?』

唖然と惚けてる間に。右手に竜爪かきづめ装着して、連続の蹴りから、下方からの振り上げ、アッパーカットの斜め下からの軌道に、僅に反応が遅れて、頬をザックリ切り裂かれ、痛みに驚きを隠せない。

『何故だ……、神の祝福を受けし我が身に……』

油断のならない強敵と……、タイランは気を引き締めた。


゛今ので、仕留められなかったのは、痛いわね゛

内臓を圧迫した痛みに、顔を歪めながら、鎧に備わる回復魔法を使った。竜装には、攻撃と回復それぞれの魔法が6つ取り付けられている。普通の魔法には耐性があり。僅かながら体力回復もされるが、受けた傷は自分で回復させるしかないのだ、その点竜装の兜にある牙。魔力消費しなくても、魔法が使えるアイテムである。

竜の牙には、強い魔力が残像していて、加工を施すと、魔法を一つだけ、ストック出来る効果をもたらす。


バキン……、兜に付いてる。牙の1つが壊れた。高価な竜の牙は、そうそう手に入らず数に限りがあるため。そうそう作ることは出来ないのだが……。



身体の痛みが消えた瞬間。一気に加速して、魔人に、連続の攻撃を与えた。

『人間の癖に……、やるな』

タイランは忘れていた……、堕ちる前は、

強敵と剣を交える。高揚を糧に研鑽を積んだ、赤の民最強の武人だった━━━、



だから堕ちたタイランは、強欲な笑みを浮かべる。この人間に苦痛を与え。赦しを乞うまで痛め付け。生きたまま殺してやってこそ、タイラントの欲望を満足させる。



━━レイナは久しぶりの高揚を覚えていた。ギリギリの攻防。一つ間違えば、死ぬかもしれない危険を背に。懐かしさすら覚えていた。



タイランの連撃。上下のコンビネーション。身体を回転させながら、紙一重でかわした。

素早く迫り。タイランの膝を足場に、弧を描きながら、レイナの蹴りが、顎を掠めた。


再び対峙するレイナは、肩で息をするが、タイランの方が、余裕すら伺える。長引くと不利は否めない、臍を噛みながら、大技を仕掛けるタイミングを測る。


━━上空では、竜騎士が集まりつつある。一際大きな竜、青い鱗が、朝日に映える美しさは、まさに竜王である。


背に。竜王の鱗で作った、竜装に身を包み。槍を手にして、戦況を静観するリブラやきもきしたイノワが、

「リブラ将軍!、レイナさんが……」

刹那の攻防に、一喜一憂。まるで百面相である。

「まだだ、あの魔人とレイナは、本気を出してない。力量は魔人がやや上まるが……」

「将軍……」

非難の眼差しに晒され、苦笑したが、動く気はまだない。

この先。リブラが大陸を離れてる間。あのような化け物と、闘える者が居なければ。自ずとリブラに依存してしまう。それは国として考えれば、良いことではないのだ。

「あの程度の相手。レイナ1人で、倒して貰わなくてはな」

非情と言える一言に。顔色を無くした。



レイナは竜の気配を感じた、眼前の魔人は、驚いたように、目を細めレイナではなく上空の竜を見ていた。

「舐めるな、魔人が!」

決死の覚悟を決め。ただ一撃に賭ける。

━━怒りが限界まで集中力を高め。一瞬で魔力を全身に巡らせ。独特の呼吸方により。肉体強化魔法を自身にかけて、一気に加速。魔力の弾丸となって、猛然と魔人の下に入り込み。慌てた攻撃を潜り込んでかわして、烈迫れっぱくの攻撃、

『甘い!』

読んでいた、タイランは、紙一重で身体を回転させながらかわして、遠心力を用いた上下からの斬撃。

『避けた瞬間が、人間の最後よ……』

「はあぁああああ!」左右の腕に取り付けた、竜爪かきづめで、あっさり受け止められて目を剥いた。

『なっなに!?』

注意散漫だったタイランは、自らの怠慢で、大きな隙を作った……、

剣を弾かれがら空きになった胸に、両手をそっと添えて、溜め込んでた魔力を、一気に解放する。レイナの必殺技。双掌破そうしょうは


波に波紋を広げるよう……、タイランの全身を何度も衝撃が駆け抜け。目、鼻、口、耳、ありとあらゆる場所から、血を流しながら、タイランは絶命していた。北の部族に伝えられた肉体は水との思想から生まれた。千の打撃を与える。独自の技である。


バサリ……、

巨大な竜は、ゆっくり旋回しながら、着陸した。竜王ブライムは、レイナを誉め称えるように咆哮を放つ。ごっそり魔力を使って、全身は限界まで酷似したため疲れ果て……、崩れ落ちるように座り込んだレイナは、喘ぐように兜を脱いで、貪るように空気を吸い込み。獅子に酸素が回るとようやく安堵で倒れ込み。温かみある朝日の光を浴びて、ようやく輝く笑みを浮かべた。




━━━西大陸。元商人の国セロンの首都。


パルストア帝国の財務のトップである。ローレイ商会の若き長ハーミュアは、魔王ピアンザの命に従い。セロンの商人と会合を重ねている。先だって、王宮を襲った魔人の襲撃を受けて、各地の警備強化に掛かる費用の捻出の為である。

「ハーミュア殿……、しかしそれでは…」

難色を示すのは、同じローレイ商会の商会長である。

「セロンの町を守る毎に繋がる投資です。兄は理解を示しました。この金額ならば、セロンの元国庫の余禄で賄えると」

グッと息を飲み。冷や汗を浮かべながら、ガックリ肩を落として、

「ハーレス様には敵いませんな……、分かりました、魔王ピアンザ様には……」

「私も商人です。商人の利益は守ります」

にこやかな笑みに、安堵の顔を浮かべ、握手をかわした、商談成立である。細かい内容を後で話し合うとして、後数人の有力者と、会合重ねなければならない、商会長が退室して、間もなく隣室で待ってた。同僚のトロン・バーン騎士団長、ミューア・サリアン両名が入ってきた。ミューアはピアンザ陛下が、いないから仕方なく。仕事してる感が否めないが……、苦笑含め見ると睨まれた。

「貴殿魔人を、見つけて暗殺したらしいな?」

悪びれる訳もなく。問い詰めるようトロン・バーンが口火を切る。それはハーミュアにとっても聞きたいこと、話すよう促すと、仕方ないと口を眇ながら。

「ピアンザ様の障害ですから、当然です」

つんとトロンの言葉に、当たり前の事聞かないでよ。顔に浮かべ、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「六将もランバスター将軍以外は、新参者が増えたため国内の情勢に、目を配らなくてはならない、ミューアその辺はどうなっている?」

元六将が1人闇ギルド長だったダレーク・アートから、全権を受け継いだミューアの元に、様々な情報が集まってる筈だ。 「ゼノンの奴には注意を促してるけどさ~、新任のパルストア学園長ゼーダ・ソロン、彼奴は危ういわね」

やはりか……、ハーミュア、トロンが見合う、アレイク王国の王宮魔導師筆頭ケイタ・イナバ主導で『瞬きの扉』建設に難色を示していた。権力に固執するゼーダは、二人から見ても危険だと感じていた。

「なんだとあの男は……」

思わず唸り、嫌悪感すら覚えたのは言うまでもない。同じ六将である二人とは年齢が近くミューアとしても話しやすい。二人もまた何かと相談する相手にミューアを選ぶのは、ダークと違って話てて楽しいからだ。

「動くとしたら、ピアンザ様が居ない今だわね」誰しも考えていた……、




━━南大陸から、海中船を使い、北大陸の玄関口。セランの町に入ったのは、13日後の夕方……、

町から北大陸全土を巡る。土竜馬車で、レオールの首都アージンまで3日、何処までも続く草原の景色に飽きた頃。ようやく着いた。出迎えたのは、金髪を左右から編み上げ後ろに束ね上げた。美しさに磨き掛かったレイナと……、思わず顔が強張った……、

「父さん?……」

美しさに磨き掛かったレイナと……、思わず顔が強張った……、

「父さん?……」

オーラルと歳が変わらぬが、シニカルな笑み。赤み掛かった寝癖のある黒髪は、オーラルが子供の頃見た。姿そのまま……、

「お久しぶり~オー君♪」

あえてリブラから遮りニッコリ日溜まりのような、優しい笑みを浮かべ、意思の強そうな目が、いっそう美しさを際立たせる。色々聞きたいことがあるが、今は外交が必要だと意識を切り替えた。「無事で……良かった」

素直なオーラルの優しい言葉に。ついニヘラ嬉しそうに笑いが込み上がる。そして傍らのピアンザを認めて、表情が一変。

「ピアンザと、また顔合わせる機会あるなんて……、思わなかったけどね」

昔はピアと愛称で呼んでいただけに。冷たい声色で顔はあくまでも笑ってるが、目が真剣で、怒りの深さを物語る。ピーンと張詰めた空気が一斉にピアンザに向けられていた。憤りを抱える人間は多いと物語る。

「そうだな……」

寂しげに笑うが、弁解はしない。魔王を名乗った以上。決めた事である。「うっうう……、胃が」サミュ宰相が、キリキリ痛む腹を押さえた。



すると突然リブラが、ガシガシ頭を掻きながら、オーラルと一瞬目を合わせたが、何の色も出さず。シニカルな笑みを浮かべ、

「まあ~面倒ごとは残り一体の魔人を探して、倒そうや、んでもって……、まずはあの大陸をどうすればいいか話さなきゃな~」

全く持って彼が言う通りなのだ。後一体と聞いてピアンザは眉をひそめ。オーラルと目を合わせる。

「後一体と、言いましたか?」

疑問を口にしたのは、サミュ宰相で、困惑を浮かべてる。

さてどう説明したらよいか…、

━━ことはパレストア帝国の六将が1人ランバスター将軍の右腕、リーロン・カレス准将から急報が届いたのは、5日前のこと……、六将が1人ミューア・サリアンが、魔人を倒したと聞いたばかりで、戸惑いが浮かぶ。「どうも俺が狙われたんだよね~」シニカルに笑いながら、あっけらかんと言うリブラの口にした内容は聞き逃せない話である。


逆にレイナ側からも……町を襲った魔人のこと以外に。世界連合に知らせていない話があった4日前━━。

リブラは何時もの如くフラリいなくなっていた。


リブラは時折竜王ブライムに乗って、気ままに北大陸を旅するのが好きで、この日の数日前から。出かけていた。

「北方の町ラグノア近くの森で、休息してる所を、いきなり襲われてな~。理由は判らんが、とりあえず倒しといた」

何でも無いように言われて、レイナは不満そうに唇を尖らせた。魔王ピアンザなどピクリ眉をひそめる一方で、オーラルだけは、懐かしい想いに捕らわれていた。

「お聞きしたいのですが、貴方は?」

問うとぴしゃりおでこを叩き。にかりと笑いながら、

「わりいわりい。俺はリブラ、将軍なんて面倒ごと押し付けられた気弱な男だ」

「嘘を言うな嘘を……」 ボソリギラムが呟いた。普段無口な男に突っ込ませるとは、妙な感心をするピアンザである。

「俺に向かって、赤の秘宝は何処だ、なんて言ってたな~」

ザワリ……、場が蒼然となる。

「失礼ですが、貴方は魔人の言葉が?」

オーラルが改まって、訪ねると、パタパタ手を動かしながら、

「あいつらの言葉は判らんが、俺は昔から、動物の考えが分かるんだ……。昔?、いつ……」突然頭を押さえて、真っ青になり、膝を着いたリブラに慌ててオーラルが支えた。

「済まねえな……、此所んところ強く打っててよ~。俺は記憶がねえんだわ」

シニカルに笑いながら、何でも無いことの様に。自分の身に起きた不幸を気楽に言うのだ。ハッと息を詰めて、伸ばしかけた手を止めたレイナと目が合った。ちょっと困ったような目を見て、理解した。

「リブラ将軍……、詳しい話は後で伺いたいので、しばらくお休み下さい」

オーラルに支えられながら、安堵を感じたリブラは、

「お前の言葉に甘えるわ」

珍しく素直に従っていた。その珍しい出来事に誰しもが驚きを隠せずにいた。



何よりこの場にいたレオールの部族議会のメンバーである族長達は、真摯な眼差しをオーラルに向けていた……。レイナだけは気が付いた、あのリブラ将軍が認めた男……、

それが北の勇者達の認識で、否応なしに二人が似てる事を気付かせた。レイナは感じたこの時の気持ちを表すならば、自分の予想が当たってた事を強く理解した。


━━ひとまず会談は、明日の朝となり。解散となった。

「オー君後でちょっといいかな……」

レイナから話があるからと呼ばれ。こじんまりした寝室に招かれた。二階にある部屋に入ると、軽装に着替えたレイナともう一人女性がいて、「初めましてオーラル准将!、私はレイナ様付き、竜騎士小隊長のイノワ・ミササ、サラス族の出です」

生真面目な出で立ち、北大陸では珍しい黒髪の女性である……。

「もしやジーナさんのお身内ではありませんか?」

ハッと息を飲んだイノワに、レイナはコロコロ声を上げて笑い出した。

「む……レイナ様。オーラル准将、慧眼恐れ入ります」

渋々そうですと答え。笑ったレイナをにらみ。咳払いしてから。

「ジーナは私の姉です」 やっぱり……、

「オー君。良く分かったわね~」

肩をすくめながら、

「顔立ちは似てないが、目が同じだからかな……」

「目ですか?」レイナから手鏡を受け取って、マジマジ目を見ながら、憮然とした顔が、写り込むだけだった。

「ああ~君は真摯に、レイナを守ろうと考えてる節があり。ジーナさんも同じように真摯に姫様を守ろうとしている。そんな目をしてるから、同じなんだと思ったんだ」

にこやかな笑みで言われてしまい。真っ赤になって、わなわな唇を噛みしめていた。

「あっ、ありがとうございます」

嬉しそうに笑う。イノワがこんな顔をしたのは実に久しぶりのことだ。部下二人を失い塞ぎ込んでいたので同席させて良かったと安堵した。

「丁度良いわ。イノワも聞いてね。後で知るよりもいいから」

「はっはい……」

最初から話すわね」

レイナは先ほどのことを見て、素直に全て話す決意をしていた。数年前にリブラと出会った経緯を語りだした。なぜ今さら将軍のことをと。訝し疑問を抱いたが、昔のことを思い出すのは、何だか懐かしいと時折イノワが補足して、なるべく詳しく聞かせ終わったのは、深夜に近いだろう……、「そうか……、レイナ……、父を助けてくれてありがとう」

「えっ……、父ってまさか!?」

二人の笑みに、ミササは顔を凍り付かせていた。ハッと息を飲んで気が付いた。

「ええええー!」

イノワが落ち着くのを待って、もう一つ大切な事を聞かねばならない、

「暴君は、無事なんだね?」

「ええ、ターミナルの村にある洞窟に住んでるわ」

「そうか……、明日、暴君に会いに行くか……」

ホッとした優しい笑みに、レイナは見とれていた。やがて決意を固めた横顔とギュット手を胸に握る姿に、イノワも気が付いて。

「明日早朝で、構わなければ、私の竜で、送りましょう。レイナ様は案内を頼みます」

虚を突かれたレイナは、ハッと潤んだ目をイノワに向けて、彼女の優しさに感謝して艶やかに笑う。

「済まないが、頼むよ」それに気が付かないオーラルを、ミササは軽く睨むように頷いた。



━━朝靄が掛かる早朝。竜厩舎を訪れたレイナは、竜が一斉にオーラルを見てることに気が付いた、まるで竜王ブライムやリブラが、現れた時に似ていた、イノワが騎竜荒くれ(レブラント)を連れて来ると、レブラントは驚いたように目をしばたかせ。息荒くオーラルに鼻を付けた。

「あっちょっとまってレブラント!」

予想外の反応に慌てるミササ、まるで言うことを聞いてくれず。なにかあれば大変だと顔から血の気を無くして、今にも泣きそうな顔をしていた。「やあ~君は、レブラントて言うのかい」

オーラルは慣れた手つきで、竜の耳の下を掻くと、うっとり目を細めさせ。自分以外に見せたことのない甘えた声を出した。

「えっ?、エエエ~どどどどどどうしてオーラル准将が、私の竜の名を?」

驚き過ぎて挙動不審なミササに、小さく吹き出しながら。種明かしをしていた。

「彼レブラントが教えてくれたんだよ、俺が多分土竜騎士だから、土竜と契約してるの理解してるようだよ」

右腕の裾を捲ると、赤い手甲が覗く。北大陸で見掛ける事は無いが、リブラ将軍が同じ物を着けてるのは、見たことがある。竜は匂いに敏感である。空と地下。生息は違えど、竜を家族とする。土竜騎士は竜にとっても相棒と同じくらい、信頼を寄せる理由となってるようだ。

「そうでしたか……」

北大陸には、リブラ将軍以外の土竜騎士は存在しない。御者が大陸を土竜馬車で走るだけである。本来土竜は、あれほど小さな生き物では無いのだから……、

「朝から済まないが、頼めるかいレブラント」

グァアアアアア!

竜は任せろと言わんばかりに、鼻息荒い。



━━空を駆け巡る爽快感は、魔法で空を大ジャンプするのとは大違いで実に楽しい経験だった。三人を背に乗せたレブラントは、首都アージンから昼前には、ターミナルの村に着いていた。



事前にターミナルの村が、土竜ファームを経営する部族の村だとは聞いていた。村では、若い土竜の訓練、子土竜を育てたり、北大陸の土竜馬車を運営していた。村の若者の多くが土竜馬車で大陸を旅してるため。村に残るのは、老人と女子供ばかりだった。

その為竜が村に降りたっても、最初驚いた村人だったが慣れたもので、直ぐに竜厩舎に案内してくれた。

「私はレブラントの世話をしてますね」

「そうか、済まないが帰りもお願いしするよ」

竜の首を叩き労を労ってから、レイナとオーラルは、子供達に案内されて。ターミナルの小さな洞窟。遥か昔地下迷宮の入り口だった洞窟を降りて行く。



入り口は小さいが、奥に行くにつれ、かなりの広さがあった……、壁に置かれたランタンを一つ借りて、火を点けて辺りを伺いながら、無言で歩いてく。



どれくらい歩いてたか……、徐々に洞窟の壁が水晶を含むようになると。ランタンが無くても伺えるように……、どうやらここらが最奥だろう。かなりひろい空間にでると。ランタンの明かりの先に巨大なシルエットが浮かんだ。

もぞもぞ明かりから、顔を背けた巨体の土竜のため。ランタンの明かりを消した途端に。特徴的な鼻をひくひくさせながら、入って来たオーラル達に向けた。

「判るかい暴君……」

赤い手甲を差し出して匂いを嗅がせる。目を細めた暴君は、戸惑い……、ハッと目を見開いた。

゛家族゛

チクりとした思念。年経た土竜は、独自の魔法を使い、契約者と会話する。

「そうだ君は、父の土竜で、僕の家族だよ暴君、君の子は、僕の相棒だ」

失っていた記憶が、巨大な土竜の頭を駆け巡る。幼い子供……、小さな手を広げて、守ろうとしてくれた、大切な家族……、はらり……、しばたく目から涙を流して、懐かしそうに、鼻をオーラルに擦り付けた。



何れくらいそうしてたか、レイナがそっとオーラルの肩に、頭を乗せて、抱き締めてくれた温かな温もり。

「オーラル……、私は貴方が好き。学生の頃から大好き、私を1人の女として見てほしい……」

息が止まる程。驚いていた。呆気にとられたオーラルを振り向かせ唇を奪っていた。甘やかな吐息照れ臭そうに笑うレイナが真摯な目でオーラルを見詰めていた。優しい眼差し癖のある髪、いつも眠そうな顔をしてるのに、大切な時。何時も守ってくれた私の愛した人。

「ありがとうレイナ、とても嬉しいよ」

強く抱き締められ。息すら止まりそうだ、だから分かってしまった……、

「僕は、来年結婚する。レイナは大切な友人で仲間だ、それは……死ぬまで変わらない」

涙が溢れた優しくも残酷で……、不器用な断り文句。オーラルらしいと泣いた。一生分の涙がでたのでは?、その時感じた。



レイナが落ち着くのを待って、オーラルは暴君の傍らに、魔方陣を描いた。

「我が契約せし友よ……、汝の名は、暴君Jr.」

召喚の魔方陣より。土竜が現れた、

「召喚魔法……」

驚くレイナに片目を瞑り。久しぶりの相棒は嬉しそうに、オーラルに鼻を擦り付けていたが、ピタリ動きが止まる。暴君Jr.の背を優しくつつく懐かしい匂い、

「君の父さんだよJr.……」

澄んだ目を丸くして、Jr.はおずおず振り返り。懐かしい匂いを力一杯嗅いだ、土竜は家族を忘れない。鼻をくっ付け合い。喜びを分かち合う、




━━━西大陸、パレストア帝国、学園長室。



髪に白い物が混じる。ゼーダ・ソロンは、陰気な眼差しを暗く、苛々と親指の爪を噛みながら、

「何を考えてるゼノン……、せっかく魔王がいない今を使わず、何故かしずく?、あんな若造を敬うとは愚かにも程がある!」

魔王の役割を知らぬ。ただ己の欲望を内に秘めたゼーダは、魔人すら従える自信があった。

「俺に任せれば、あんな大陸など、消し去ってくれるのに……」

ゼーダが専門とするのは、大量破壊兵器の製造、100名以上の魔法使いを使った、大規模魔方陣を完成させていた。理論上は時空すらねじ曲げると、自負している。いっそのこと……、城の地下にある封印ごと、消えてくれれば、良かったのに……、ゼーダの権力に対する執着心は、際限はない……、



━━━レオールの竜厩舎を、昼過ぎに顔を出したリブラに。若い竜達が、注目したが、すぐに視線を。竜王ブライムの厩舎に顔を向けていた。おやっと首を傾げるリブラは、プライムの厩舎に入って、理由が分かった。

━━確か昨夜会ったアレイク王国のオーラル准将……、竜騎士見習い。竜騎士まで、惚けてオーラルの様子に見とれていた。



普段の竜王プライムは、悠然と佇み。王者の美しさのある。青き竜で、リブラ以外。あまり誰も近付けようとさせないのだが……、

驚いたことに信頼を込めて、オーラルに頭に触れることを許していた。

゛君から…。リブラと同じ匂いがする゛

「それはそうですプライム、僕はリブラの子ですから」

゛おおー!、やはりな゛

目を細め低く唸る。驚いたのは周りである。リブラ自身も驚き目を見開く。

「父の名はリブラ・ハウチューデン、母の名はララ・ハウチューデン、姉の名はミリア・ハウチューデン、父は土竜騎士で、20年前行方不明になった。土竜の名は暴君」ゆっくり振り返ったオーラルの眼差しを受けて、リブラはガツンと、頭をぶん殴ぐられたような衝撃を受けていた。

……幼いオーラルは、暴君を助けに、地下迷宮に迷い込んだ。

……親友のオリバーの小間物屋で、ミリアは嬉しそうに銀細工のネックレスをくれた。

……美しく……幼なじみの妻ララの顔が、全ての記憶が戻った………、

「そうだ……、俺はリブラ・ハウチューデン、土竜騎士だ」

照れ臭そうに笑う息子の顔は、幼い日と同じである。

「父さん暴君に会って来たよ」

「そうか……」

そうとしか咄嗟に言えない。なんともしまらない気恥ずかしさを感じて、リブラが右目を隠した仕草は、オーラルと同時で、みんな納得していた。二人は紛れもなく親子だと。だって……寝癖まで同じだから、木陰で見てたレイナは、また泣いていた、イノワがレイナの背を優しく慰める。


━━━その夜……。新ためてリブラが、オーラルの父であること、20年前……、デスホールの近くの坑道で見付けた。赤の民の街。

「リブラ殿それはおそらく。赤の王の街」

今まで無言だったピアンザが、意を決意して、赤の民の王と弟の物語を語り、場が騒然となる。

「貴方は一体……」

「俺は魔王ヒザンの子で、黒の民の長。神の封印を守る一族だ」

傍らのギラムを促した。暫く迷っていたが、

「俺は、各地に隠れ住んでた緑の民の一族」

ギラムが追従した。全てを知らされたレオールの長老達は、顔色を変えた。

「一応聞いてはいたが、改めて言われると感慨深いの~」

懐かしそうに目を細めたオーダイ将軍が、髭をしごいた。

「まあ~なんだ、俺は見付けた古い街で、老人と出会った。じいさんは赤の民を止めてくれと言って、巨大な魔方陣……、あれは街中はあったな。んでもって20年後に飛ばされて、頭を打ってさっきまで記憶喪失、思い出したらでかくなったガキと同い年とは……、やれやれだ」シニカルに笑う。余りに重い現実に。人々は沈黙したが、顔色一つ変えず魔王ピアンザは決意する。今全てを話すべきだと。

「俺は……、来たるべき赤の民、中央大陸が復活する日までに、世界を統一するつもりだった」

ザワリ……、魔王となったピアンザの思いを知り。事の重大性を感じた。



レイナにとっても。この場に集まった皆にとっても。決してピアンザのしたことは、許されることでは無い、が、間違ってると……。誰も言えなくなっていた。「ナタクは赤の民。最後の生き残りだと言ってた、リブラ殿が会った老人はもしや……、赤の王プロキシス本人でしょう」

ピアンザはそっとオーラルを見て、小さく頷いた。

「オーラルは、隠された出来事を全て1人で調べあげ。この日が来るのを密かに準備してました。我らを運んだ海中船も彼が密かに準備していたもの……」

「なんとま~あれをか?」

隅に隠れていたサミュ宰相に視線が集まる。

「はい、実は我が国が中立国となり。こうして皆さんに連合の同盟を組む下準備をされたのは、間違いなくオーラル准将の頼みでした。さらにドヴィア国の難民を受け入れる準備もね」

今度こそ……。誰もが言葉を失っていた。いや……魔王とて、オーダイ将軍、ギラムまで愕然とした。

「父さん気付いてるよね?。赤の民の生き残りが……、実はまだ沢山いることに」

「やっぱりか?」

やれやれと肩をすくめていた。訳が解らずピアンザは眉をひそめる。

「ピアンザ不思議に思わなかったか?、俺が普通の人より魔力が、高過ぎることに」

意味ありげな顔を見て、ハッと息を飲んでいた。

「だからナタクは、オーラルに拘ったのか……」

ふっとオーダイは考え込むような顔をして、語り出した。

「これはアレイク王国の王族のみ伝えられる。秘密だが、レゾン王より土竜騎士の話が出た場合。皆に聞かせよと言われていたことがある」そもそも土竜騎士とは、地下に残った赤の民だったと。

「アレイク王国の建国の父と呼ばれている。聖アレイが実は、白の民だったとか、ピアンザは知らないよね?」

顔をやや青ざめさせて、驚きながら頷いた。

「まさかそれで……ナタクは、ミレーヌ姫に手を出すなと怒ったのか……」魔王ピアンザの口から生々しい戦略の裏側を語られると言葉を飲み込み。静まりかえる一同。ピアンザは静まりかえる会議室に集まる一同を見回して、ただ嘆息した。

「それで……、どうするのだオーラル?」

誰もが其処が問題だと、うんうん頷いていた。

「最後の鍵は、父さんだった……、僕は探してたんだ、中央大陸を世界に戻して、全てを終わらせる為の手段をね……」

にこやかに笑いながら、とんでも無いことさらりと言うのだ。我が子ながら、面白い育ち方をしたと膝を叩いた。

オーラルが、ギル・エバーソン王に頼んだことの二つ目。赤の民の伝承を探すこと、同じことを黒衣の一族に。さらにレイナ、ファレイナ公国のミザイナに調べるよう頼んでいた。



━━僅かな情報から、正確な神話を紐解くために。しかし……神話を調べていくうちに多くの矛盾点に気が付いた。

魔王ピアンザが先ほど口にした説明からも。地下迷宮に赤の民の街があったことを知っていたことから。ラトワニア神国、アレイク王国など王家に秘匿されたと思ってよい。



━━そして禁書とされた『魔王の書』にヒントが書かれていた。



中央大陸は元々、神々の大陸『ヴァルハリア』と呼ばれた次元を越えた神々の船として建造された大陸であり。

魔力エネルギーで、この世界に固定された大陸。異世界であると考えるとしっくりくるだろう。中央大陸がこの世界に留まったり別の世界に移動する力が存在した。魔人が探していた物こそ『赤の秘宝』であった……、



そこで問題なのが赤の王プロキシスが、赤の秘宝を持ち出したことで中央大陸が冥界に落ちたとすれば、自ずと答えは出た。

「恐らく『赤の秘宝』とはプロキシス自身か自身に宿した力。そう考えれば父を襲った理由が分かる」

「まさか土竜騎士だからか?」

「それもあるでしょう、しかしプロキシス王が最後に会って渡された可能が高い。だから過去の施設。古代の民を狙ったと考えればしっくりかますよね?」

「確かにオーラル殿が言われること。子供の頃聞いたことがありました」

部族議会の長老の1人が口を開けば、確かにと頷く者が何人かいた。

「太陽神アセードラの神殿に、赤の民の王が座る王座があるそうです。恐らくプロキシス王が座する事で、中央大陸は、この世界に止どまれていたのではないでしょうか」

「ほほ~うそれは興味深いな」

髭をしごき楽しげに笑うオーダイに、ギラム、ピアンザが一つ頷き先を促した。


レイアスは怒りを露にして。多くの民の命を使って、どうにか地下に止まれたが、世界に混乱をもたらした。

赤の王プロキシスは……、嘆き悲しみ。神に最後の願いを、世界に平和をと……願い。

神は、プロキシスの優しさに感銘を受けて、神々の大陸ヴルハラを、異世界の狭間、冥界アビスに沈めた……、

それが世界の隠された真実である。


「父さん赤の民が、神々の赦しを得るには、最後の鍵が必要になるそれが『赤の秘宝』だ、そして僕達が勝ち全てを終わらせる方法は一つだけ」

あまりに壮大な物語と真実は、想像を絶していた。

「やたら壮大だな~オーラルよ。要するにだ、どうにか中央大陸にある太陽神アセードラの神殿に出向いて、王座にリブラ殿が座れば、中央大陸がこの世界に固定されるんだな?」不敵に笑むバローナ、不安そうな元女神メルディスを安心させるように、手を握る。

「簡単に言えば、そうだ」

肩をすくめ認めた。世界を救う為に、不安を残さない方法は中央大陸を戻すしかないのだ。オーラルの考えを誰も疑わず。皆が力強く頷いた。



翌日━━世界連合に加盟してる国々に。真実が告げられて。……3日後。



各国の王、軍部の重鎮にオーラル、ピアンザ両名がたてた作戦が知らされ度肝を抜かれていた。

「ではレイナ貴国の竜騎士団の力を借りて、中央大陸に攻め込む事で決まりだ」オーラルにそうまで言われたら嘆息して。呆れた顔を崩さず。

「相変わらずねオー君てば、でも有用せいは納得するしか無いわね」

昨日遂に。世界連合加盟国を『瞬く扉』が繋ぎ、否応なしに気運が上がる。

各国の王を交えて、中央大陸に攻め込む。メンバーが発表された。

オーラル、オーダイ将軍、ピアンザ、ギラムの四人が中核を成すが、バローナと元女神メルディス。二人の剣将ルルフ、エフィ、リブラ将軍の9名。

「『聖王の剣』の力を使いますから、拠点は手に入ります。しかし……中央大陸はあまりに大きくて広い、拠点の防衛をしながら、召喚魔法をピアンザと行います」

会議に参加して、残される事が決まったレイナは不機嫌そうな顔で、不貞腐れ気味だ、魔人クラスの襲撃を予想すれば、仕方ない事である。


各国は準備を急ぎ整える。



そして━━━。

決戦の日が……、訪れた。

竜王ブライムにリブラ、オーラル、ピアンザ、

イノワのレブラントに、オーダイ、ギラムが乗り込み、バローナ、メルディス、ルルフ、エフィが、それぞれ竜騎士の後ろに乗って。中央大陸に乗り込むメンバーを守るように。三個小隊9体の竜と騎士が、周囲を守る。

━━世界を救う為の戦いがこうして始まった……、



首都アージンから足の早い竜で、中央大陸の空域までは半日と掛からないが、戦いが控えてる以上は、そうは無理をせず。アレイク王国で一夜過ごし。中央大陸に向かうことに決まった。この先厳しい戦いになるのは目に見えてる。やはり無理は出来ない。



━━その日の昼に。城塞都市ベセルに到着。翌朝出発した。

暗雲に阻まれながら。微かな朝日に照らされ、影を海に作る竜は、高度を上げすぎないように。低空で飛行していた。ベセルで待っていたケイタが、魔人を解剖して調べた結果を知らせてくれた。やはりと言うべきか長き時。暗黒世界の冥界世界で暮らしていたため。視力は人間と変わらないか、やや劣る事がわかった。また遠くを見ることを苦手としており、強靭な身体を別にすれば、人間と同じ弱点を備えた。生き物であることが分かった。ただ魔人はあらゆる毒、麻痺を受け付けない特殊な血清を有してるため、苦戦が予想された。


海上から見上げたかなり先に。中央大陸の全貌が見えてきた。大陸の遥か上空には、魔物が群れを作って飛ぶ姿が、斥候に確認されている。恐らく竜を用いた奇襲は一度しか通用しないと、オーラルは考えていた。

「オーラル……、魔物に気付かれた」

目の良いピアンザが皆に注意した。一つ頷きオーラルが、他の竜騎士、突入部隊のメンバーに風の魔法を使い知らせた。「さて、早速鷲の出番かの~」

並んで並走するレブラントの上で、首をコキコキ鳴らしたオーダイは、好好爺と笑うと、『聖弓』の力を解放。数百もの魔物を、一瞬でロックして、数度矢を放つや。ドサドサ魔物が雨粒のように海に落ちていく。こうして初めてオーダイの実力をその目で見てしまうと。呆れるほど凄まじい能力である。

「むう……100ばかりうち漏らしといた。準備運動がてらに、まあ~頑張れよ」

実にオーダイらしいハッパの掛け方。誰しもが苦笑した。

「ちぃ~やるか」

楽しそうに笑うバローナの背に、抱き付きながら、メルディスが頷いた。

「来ました!」

迎え撃つべく。護衛の三個小隊が三方に旋回を開始。



その時、上から急下降してきた顔はコンドル、ライオンの体、背に翼を持ったグリフォンに向かって、左目の力を解放する。周りから見るとグリフォンは勝手にギラム達の竜の横を通りすぎ、そのまま海に墜ちていくように見えたが、

幻の一刀により、グリフォンは斬られたと思わせた幻を見せただけである。

「ほう~腕を上げたな。あれは任せるぜ」

オーダイが顎をしゃくると。さらに二匹のグリフォンが、此方に急降下始めた姿である。

「承知」

不敵に微笑していた。




「壱の型奥義、月夜げつや

ルルフは刺突の構えをとる。弓を引き絞るような構えから繰り出す技は、エドワルド流槍術にもある『神を貫く』(グングニル)を剣の技として再現した技である。

━━グリフォンと交差した瞬間、眉間を貫かれ。大きな穴から血を吹き出し。絶命させた。隣では、エフィが同じ技で、一体を倒した。



無数に集まる魔物に向けて、バローナは次々に風の刃の魔法を放ち。グリフォンの翼を切り裂き落としてくと、留めとばかりにオーラルの炎玉が、落下するグリフォンを焼き払う、二人の息の合ったコンビネーションで、瞬く間に魔物の群れを減らす手際に。リブラは舌を巻いた。

リブラはオーラル、バローナの魔法を一目で記憶して、自分の物としシニカルに悪人の笑みを浮かべ。

「オーラル。バローナ今の魔法気に入ったから貰うわ」

そんなこと言われても意味が分からないから。二人は首を傾げていた。

「邪魔だ!魔物ども食らいやがれ、創作魔法風炎のドリル」左右に作り出した魔法を。二人の見てる前で合体させて、竜王ブライムの前に集まった数体のグリフォンに放つ━━、



無数の風炎のドリルが現れるや。魔法の矢のように、グリフォンに追尾して、全身を貫き。内側から燃やされながら、落ちて行く様子に。二人は唖然とした。

「なっなあ~今の魔法を創作って……」「昔からよ~。魔法なんて一度見ればコピー出来るのさ、最近はコピーした魔法を合成して使うのが俺の流行りな」

「いやいやいや流行りとかで、出来ないですから」

力一杯バローナが否定したが、リブラは肩をすくめシニカルに笑う、

「普通はな、お前達は知らないだろうが、魔法に使う魔力を等しくすると。わいと簡単に合成出来ちゃうんだぜ~」

我が子に負けられぬと、意気揚々と言われて、二人の顔がひきつっていた。



━━竜王は今までに感じたことがないほど高揚していた。相棒リブラと遜色ない勇者、英雄を背に乗せる誇らしさに。竜王は強引に中央突破して、遂に中央大陸上空にかけ上がる。

「ピアンザ行けるか?」

「オーラル魔力を借りるぞ……」

「わかった存分にやれピアンザ」

一つ頷きピアンザは魔王の杖を、いきなり暗黒に覆われた中央大陸に放った。

「魔王の杖よ。今こそ神々の封印を壊せ!」

魔王の杖が、結界に触れるや強烈な光が放たれ目を焼いた。まるで太陽の中に放り込まれたような。熱風を全身で感じたが、光は現れたと同時に唐突に消えた。



━━眼下に広がる。枯れた大地、赤く染め上げられ。爛れた腐敗臭すら漂う。



見える範囲に、木々一つ生えない。荒廃した大陸。

「父さん、あの山脈の麓に」

「任せろ!、お前も気を付けろよオーラル」

「はい」竜王プライムは、急降下して、オーラルが指した山脈の麓近くまで滑空。二人が飛び降りた瞬間。再び飛び立ち魔物の群れに飛び込んで行った。



『聖王の剣』を荒廃した大陸に突き刺した。

「我は王なり。汝一本の剣にして、堅牢な城、一本の剣にして無敵の軍勢を我に与えよ!」

白銀に輝く剣は、王の願いを聞き入れ。汚れた大地の力を浄化しながら、巨大な城を産み出した。



荒廃した中央大陸に。光輝く白銀の城が現れた。

騒ぎに気付いた、魔人や数多の魔物が、徐々に集まり始めた。

ピアンザは墜ちていた『魔王の杖』を引き抜き、魔方陣の準備を開始。

バローナ、女神メルディスがピアンザの護衛に付いた。



間もなくギラム、オーダイがついで竜から降りて、魔物の討伐を開始した。次に降りて来るエフィ、ルルフは、メルディスが張った絶対防御リフレクトの中に降りたのを見計らい。

「よしプライム俺を降ろしたら戻れ」

グアアアアア!?(承知)

リブラを降ろした竜王ブライムは、竜達を引き連れ中央大陸から離脱した。

「全軍整列!」

王であるオーラルの命に答え、10000の歩兵、10000の弓兵、10000の騎兵が現れた。「全軍。我が領内に入る敵を殲滅せよ」 王の命に答え。無敵の軍勢が、騎兵を先頭に、走り出した。



白銀の城が出現した。裏庭に当たる場所で、魔方陣を描き切ったピアンザは、三体の使い魔に、魔方陣守らせながら。ピアンザは大規模魔方陣を軌道させるため。魔王の杖に隠された、膨大な魔力を解き放つ。


息を切らせオーラルが到着する頃には、準備は整った、二人は頷き、同時に魔方陣を起動、安定作業をそれぞれがこなす。



━━━ファレイナ公国。中庭━━。

100名近い人員が、息を詰めて集まっていた。ミザイナ、ジンベイ、ようやく起き上がる事が出来た父。数多の民が、見守る中。巨大な魔方陣が現れ……、光の中に、兵が消えた瞬間、大歓声が上がった。

「やったなオーラル……」


━━魔方陣が、光を集め、拡散して、現れたのは、遥か南大陸にいた土竜騎士団と、エドワルド公率いる手勢。デーア他魔法使い、軍国ローレンの兵士達である。

「エドワルド公!、参戦ありがとうございます」

豊かな髭をしごきながら、カカっと楽しそうに笑う、同じく笑みを称えながら片足を引き摺りやってきたデーアとそれぞれ握手した。

「オーラル殿。我らは直ちに城に『瞬く扉』と魔導兵の準備を開始します」

「はい、そちらはお任せします。ボルト・ホウリー先輩。デーア殿の護衛お願いします」

すっかり日に焼けたボルトは、白い歯を煌めかせ。胸を叩く。

「任せて、貰おう」

「オーラル間もなく魔力が安定する。そろそろ次行ける」ピアンザの顔にある。笑みを見て、オーラルは一つ頷いた、



━━西大陸、パレストア帝国。封印の扉━━、


突然……、冥界の力が消え失せ……、封印に我が身を捧げていた。黒の民が解き放たれた。棺のようなシステムが、音もなく開く、

現場に居合わせていた六将が1人ロドラ・アグレドは、緑の民を集め。歓声の上がる広間に、目を細めた。

「ピアンザ様……、遂にこの日が来ました」

緑の民の優秀な戦士を、封印の扉の前に集め。扉を開くと、荒廃した大地が眼前に広がっていて、

アグレドが扉をくぐり抜け。しばし歩いてくと。一つの墓を見付けていた。

見覚えのある闇色の黒いローブが、虚しく荒廃した大地にゆれていた。

「これは……、一体誰が?」

墓に魔王ヒザンここに眠ると書かれていた。

「魔法で守られているのか?」

神の目を模倣した能力をもつアグレドだから。発見出来た。

「誰が魔王様を葬ってくれたか分からぬが……、感謝する」

敬意を込めて、頭を垂れた。そして清浄なる気配を感じて、顔を見上げると。白銀に輝く城を認め目を細めた。



同時刻━━、

東大陸、ギル・ジータ王国に集まった。ドヴイア国の元将軍。現アレイク王国第1師団所属キブロス・レダ、並んで息子イブロが率いるドヴィア騎士団、さらにラトワニア神国の太陽神アセードラの大僧正ルメージが、それぞれ100名を率いて、その時を待った。やがて……、巨大な魔方陣が現れ、連合の兵は光に包まれ、次々に消えた。



10回にも及ぶ大召喚で、多くの人々が、次々と中央大陸に現れ。白銀の城に向かう……。これ程多くの人間が、大陸に足を踏み入れたのは、1000年振りの事である。



━━一足先に白銀の城に入ったデーアは早速大広間に入ると『瞬く扉』の魔方陣を描き、ファレイナ公国にいるエル・フィアンに連絡を入れた。

「こちらの準備は間もなく終わります。そちらの方はどうですかな?」

タイムラグでの返信に数秒を有する。魔法の鏡の魔法は、白銀に輝く場内で、使いやすかった。

『問題は無いわ、試しにカールが使うから、道を空けて』

「解りました」苦笑しながら、若く優秀なアレイク王国の魔導師の言う通り。『瞬く扉』の魔方陣から場所を開けて下がる

「何時でもどうぞ」

金属音が城内まで響く中。魔力が設置した魔法石を経由して、強く輝きだした。光が収まり。青ざめた顔をしていた軽薄そうな青年が現れた。

「めっ目眩……、酷……ウプ」

慌て口を押さえるカール・シタインに、デーアの部下がバケツを差し出した。端にヨロヨロ歩いてくカールは座り込んで、バケツに顔を突っ込んでいた。典型的なテレポート酔いである。慣れた者でも目眩はする。いきなり飛ばされたのだ。そこが召喚魔法と違う点だろうな。「無事に到着した、直ちに連合議長エバーソン王に連絡を、我々は当初の予定通り、魔導兵ゴーレムとのリンク作業に入る」

『了解したわ』

通信が切れた。



━━その頃には、既に到着していた土竜騎士が、それぞれ自分の土竜を召喚していた。中央大陸を覆う黒い霧は消えたが、太陽はまだ厚い雲に隠れていて、土竜を召喚しても大丈夫な条件を満たしていた。ボルト・ホウリーは、久しぶりに会う家族の鼻を抱き締めて、

「最後の聖戦となろう!、皆我らが悲願を、今こそ」

土竜騎士とアレイク王国の関わりは古く。建国の父聖人アレイの時代まで遡る。当時……、排他的な土竜騎士は、亜人と地下迷宮に隠れ住むような生活を続けていた。そんな土竜騎士と交流を勧めたのは、初代国王クラウベリアの母であったとも言われていた。



土竜騎士は、ギルドに登録するとき、ある誓いを立てる。その始まりはある土竜騎士と。クラウベリア王の友情からであった。初代ギルド長になった土竜騎士はクラウベリア王の最後の手紙を読んで、ある誓いを立てた。『我が身を、友であり、仲間であるクラウベリアに捧げよう……』

現代ではアレイク王家に、忠誠を誓う儀式。土竜ギルドと王家は、深い絆で結ばれていた……。



━━西大陸……。パレストア帝国。中庭に1000近い兵士が集まる。六将が1人ランバスター・ラロバイン将軍は、ロドラ・アグレドからの報告を受けて、顔を引き締め。城内の隠された施設に進軍を開始した。当所クウデターかと騒ぎがあったが、中央大陸を繋ぐ通路が、地下施設に造られたと知らされ、安堵よりも驚きが勝る。

「これはどういう事だ!」

噛みつかんばかりのゼーダ学園長を、厳しい眼差しで睨み付けていた。

ゼノンは自分の見る目の無さに、恥じ入りながら、目を細め。

「貴様のしたことは、全て調べがついていた。ピアンザ様がもどる前に、愚かな謀略を謀った者の排除も兼ねていたが、まさか貴様がな……」

「なっ……」

青ざめて、ヨロリ後ろに下がっていた。

「あら……逃がさないわよ♪」いつの間にか、ゼーダの背後に、小柄な女の子が立っていた。何か声を発する前に、

「ゴメン殺しちゃった」

自らの血に沈むゼーダを、哀れに見下ろして首を振っていた。軽くミューアを睨んだが、まるで悪びれた様子はなかった。

「あ~あピアンザ様。早く帰って来ないかな~♪」

クスクス笑うミューアを、薄気味悪そうに見て、ゼノンは脱力感に見舞われた。



━━━中央大陸。闇の神殿。突如結界が消え失せ。地表を清浄な風が駆け巡り。嫌悪感に苛まれ、魔人の王レイアスは、怒りに震えた。

『まあいい……、我が手で直に殺してやる。人間共め……』

鼻息荒く、集まった魔人の民を見下ろして、

『人間どもに、誰が王か知らしめよ!』

『おおー!』

数百もの魔人が、武器を手に、翼を広げて、飛び立った。無数の魔物を従えて━━、


━━数万に及ぶ魔物の軍勢が、白銀の城を目指して、集まっていた。



周囲には、数千の魔物の遺体が転がる。膨大な魔物の群れを魔導兵が、次々倒して行く様は圧巻である。人間は疲れ、怪我を負えば、動けなくなるが、魔導兵ならば破壊されても替えが効く、疲れたら交代すれば良いのだから、


最前線の城に、次々と物質が到着していた。その中にアレイク王国宮廷魔導師筆頭ケイタ・イナバ、エドナ・カルメン・オードリーが『瞬く扉』を使い。白銀の城に着いたのは、夜も間もなくな時間であった。

「失礼ですが、ケイタ殿ですな?」足を引き摺りながら、デーアは緊張を隠せず訪ねた。

「はい、始めましてデーアさんですね。引き継ぎをしましょうか」

疲労困憊なデーアは、安堵の笑みを浮かべる。予想以上の猛攻。魔導兵の消耗が激しく。不安を覚えてた頃であった。



━━明日の早朝、ギル・ジータ王国に、竜騎士団が集まっていて、中央大陸に到着予定である。

負傷者は太陽神アセードラの大僧正ルメージ以下、優秀な司祭の手で、回復させているが、疲労は隠せない。

「オーラルに伝え下さい。明日ララ司祭が、フロスト騎士団を率いて参ると、僕はこのまま貴方と交代しますから、少しお休み下さい」

気弱に写る青年は、芯の強い眼差しを、デーアに向け笑う。だから素直に礼を述べて、ありがたく従った。



白銀の歩兵が国境を守るように。魔物の群れを押し返すなか、ガタイの小さな、魔導兵が、巨大なハンマーを肩に担ぎ上げ、

『どっせい!』

三首の巨大な蛇の頭を一つ潰していた。『はあ!』

ついでもう一機が、巨大な大剣を、渾身の力で横凪ぎの一撃を放ち、残った二本の頭を切り飛ばしていた。蛇はのたうち回りやがて動かなくなった。

『よし!、次行くぞ~い』

カカッと愉しげに笑う父に、苦笑しながらイブロは、

『はい!』

力強く頷いた。


赤いマントを翻す魔導兵は、槍を水平に構え、巨大な蠍と相対していた、一抱えある毒針が、エドワルド公を牽制しながら、巨体に見会わない早い動きで、岩すら切り裂く、鋏を降り下ろした。

エドワルド公操る魔導兵は、流れるような足さばきで、相手に遠く、自分に近くの間合いを取りながら、隙を見出だして、鋏を打ち払い、繋ぎ目を貫いた。勢い余り近くで戦ってた、青い塗料でコーティングされた、魔導兵は慌てて避けた。眼前を通りすぎた鋏に貫かれ、鰐の魔物は死んだが、ゾッと肝が冷えた、

『勘弁してくれエドワルド公……』

必殺の貫き技で、止めを刺したエドワルド公に。恨みがましく、思念を向けたが、

『アハハハあい済まぬな』

全然気にしてないのだ。やれやれ肩を竦めながら、次の獲物を探し狙う。

魔導兵の周囲では、白銀の鎧に身を包んだ、兵士が疲れを見せず。魔物を倒して行く様は、実に頼もしい限りだ。



城壁で、前線を見ながら、つい腕組みしをして、思わず唸るリブラ。

魔導兵あんなのあるのか、やれやれだ」

南大陸には、面白い技術があるものだと感心すらした。まさにわくわくウズウズしていた。

「このような日が来ようとなリブラ殿」まさか同じ陣営で、顔を合わせる日が来るとはな、剛健実直を絵に描いたような武人。そうとしか喩えようもない男が、腕組みして唸る。

「同感だ、まさか同じ陣営で、鞍を並べる日が来ようとはな」何だ、同じ事を考えてたか、笑いながら、

「明日は頼んだぜ」

「承知した」

力強く頷くランバスタ―とリブラは、一国の将軍でありながら、オーラルの策の要である。



━━白銀の城が現れて一昼夜、城の周囲は徐々に緑が、再生し始めていた。


城の周囲に土竜騎士が、厩舎や家屋を建設。交代で休憩を取りながら、徐々に家屋の数を増やしていた。



━━『瞬く扉』を用いて、ララ・ハウチューデン、フロスト騎士団長ブラレール・ロワイ率いる。70名の騎士と、30名の侍祭がついで到着した。太陽神アセードラの大僧正ルメージと会談をしたあと、ララはオーラルに呼ばれ。会議室を訪れた。中にいたのは………、



━━わが目を疑った。あの日……、見送ったままの夫が、立っていたのだ。

「よお~ララ。元気そうだな」

何ともばつが悪そうに、シニカルに笑う姿……、

「あなた……」

ムカムカ……、釈然としない怒りが込み上がり、つかつかリブラの前に近より夫を睨み上げて、渾身の力を込めてバチン涙ながら平手打ちしていた。避けるなんて考えず甘んじて受けた。痛みに耳鳴りがして……、目の端に涙を浮かべる夫は、それでも済まなそうに笑う、

「ばか……、生きてると信じてた」

そっと懐かしい温もりに。ララは大地の女神アレに、感謝の祈りを唱えた。



部屋の外で、背を壁に預けてたオーラルは、優しい笑みを浮かべ、最後の策に備えての準備に戻った。



白銀の城の大広間の食堂では、元近衛兵ブルー・ファミイユ少佐が、皆のために料理の腕を振るう、目があったので、軽く挨拶を交わして、


休憩の合間に食事を取る。イブロ、キブロス親子を見つけて。二人から満面の笑みで出迎えられた。「二人とも。初めての魔導兵の操縦はどうだった?」

問われてにやり不敵に笑いながら、

「一休みしたら、どんどん倒してやるわい!」

最強の運を持つ騎士はかったつに笑う。隣のイブロは苦笑気味だが、胸を叩く仕草。ドヴイア騎士が、敬意を示す所作に、オーラルは真似て、軽くイブロの胸を叩きながら、

「活躍は聞いてる。無理はするなよ」にかり虫歯が逃げ出しそうな、真っ白い歯を煌めかせ。

「任せろ、お前に受けた恩を返す時だからな」

意気揚々と言われたら、此方も悪い気はしない。



竜騎士が到着して、攻勢が徐々に変化していた。魔物の数が減りつつあるのか、魔人がついに現れたのだ。彼等は通常の武器は通用しないが、神の遺物を持つギラム、オーダイ将軍が、次々と魔人を倒してく、隙を見て、城に迫った魔人を、キブロス、イブロ、エドワルド公、バローナ達が魔導兵を操縦して、どうにか撃退した。



━━朽ちた、岩山に、動物の毛皮を纏う。魔人の王レイアスは、力任せに、拳を叩きつけた。

『おのれ人間め……、王に逆らうとは』

怒りの咆哮を上げながら、神の骨で作った。闇のスタッフを構え。闇の召喚魔法。死者の兵を呼び出した。数多の骨で作られた、呪われた死者の兵は、大地を埋め尽くす程の数である。



どよめく人々の中で、カールだけは小さく笑うと。太陽神アセードラの大僧正ルメージが、訳知り顔で苦笑していた。

「アレをやるつもりですな?」

悪戯ぽく笑うルメージに、カールは軽薄な笑みではなく。自信に満ちたいい顔をしていた。

「さて行きますかな。未来の将軍殿?」「ああ~俺はアレイク王国の将軍になるからね~」

不思議な物だとルメージは感じた、人の運命は分からない……、この数年でつくずくそう思う、彼ならばいずれそうなると思った。



━━荒野を埋め尽くす死者の兵。

強力な魔力増幅が掛けられた魔導兵が、配置に付いたのを。竜騎士が知らせてきた。

ルメージ大僧正以下、聖職者が、垣根を越えて手を取り合い、大規模の神の浄化の奇跡を願った。


最初は小さな波紋、なれど聖浄なる波動は、一滴の水滴が、大海に無数の波紋を広げるよう。大陸全土を覆った……、中心は浄化の力を持つ城であるそんな聖域で奇跡を願ったら……、爆発的に浄化が始まった。



━━突然動きが止まった死者の兵は、次々と砂に変わり果てた。


と同時に闇の呪いにより身を変じた赤の民は、急速に力を失い始めた……。魔人達は膝を着いて、訳も解らず涙する。

━━少しずつ姿が、変貌を始めた。凄まじい痛みを伴う変化にのたうち回る。



それほど数百年の呪いは……、そう簡単に消えることはない、あまりにも長すぎたのだ。

容姿はほとんど元に戻ったが、背の翼が残る。



その頃……。

リブラの操る竜王プライムに同乗したオーラルは、

「父さん、早く終わらせて姉さんに謝らなきゃ」

「そうだった……ミリア、綺麗になったろうな」

「そんな訳で済まないけどプライム、父さんを姉さんに会わせたいから頼むね」グアアアアア!。

任せろと竜はスピードを上げた。



━━やがて二人の視界に。巨大な神殿が見えてきた。

「さすがにこの辺りはまだ危険だ」

オーラルは竜王プライム、自身、リブラに浄化の補助魔法を掛けて、周囲に漂う冥界の毒素を中和した。

「おっ体が楽になった。今の補助魔法か?」

「うんそうだよ」

「使えなくはないが、魔法に妙な因子をつけてあるがあれは意味あるのか?」

「うん簡単に言うとね。魔法に因子を付けて放つと、ワードを唱えれば別の魔法として使えるようになる」

「ほほ~う。リサイクルかよ」

独特な言い回しだが、意味は分からなくはない。



━━竜王ブライムは、闇の神殿と化した太陽神アセードラの神殿前に。緩やかに降り立った。

二人が降りると竜王プライムには上空で待機してもらうことになった。

「行こうか父さん」「ああ~、何だか大詰めぽいな」


二人は、闇の神殿に足を踏み入れた━━。



浄化の奇跡も闇の神殿まで、浄化することは出来なかったようだ。圧迫するような息苦しい闇の魔力を。浄化の補助魔法で中和させる。さらに二人の抵抗力を上た。多少ましになるが、凄まじい威圧感を二人は感じていた。

「神殿内に、魔人は居ないようだが……」

シニカルに笑うリブラの頬を汗が滴る。見られている………。


神殿を守るように。左右に巨大な石像が立ち並んでいた。二人はその通路を歩いていた。

かつて……巨大な像は、神々を模した。雄壮な像だった筈だった。しかし灰色に染められた神々の像は、ズシン、ズシン、闇の女神カーレルの呪い(祝福)を受けて、侵入者排除に動きだした。

「おいおい……、あんなのが動くのかよ」

ゴガゴゴゴゴ、ズシン、明らかに魔導兵の数倍はある石像は、二人に岩が落ちてくる錯覚を与え。拳を振り落とす。

二人は咄嗟に飛び退くと、石像が落とした拳が、石畳の床を。まるでクッキーを割るように簡単に砕いていた。

思わず顔をひきつらせ親子は見合った。

「あんなの喰らえば一たまりもない」

オーラルは素早く。岩のスパイクを放つが、像は特殊な素材で造られてるのか、傷一つ付かない、反対側でリブラが竜鱗の剣で斬り込んだが、逆に刃が欠けた。

「恐ろしく硬いな……」

単純だが、石像を二人で相手するには、かなり危険な相手である。

「あれ俺達の攻撃は通用しないぞ、どうするオーラル!」

冷や汗をぬぐいながら、息子に視線を送る。迷いがあるが頷きがあった。目にある光から、何らかの手段があるようだ。「時間を稼ぐ」

「頼むよ父さん!」素早くオーラルの考えを読んで、リブラは像の注意を惹くよう。足元を必要に攻撃を繰り返した。


━━オーラルは数歩。僅かな距離をとって、白銀の剣を刺突きの構えをとった。学生時代一度だけ。ミザイナが用いた。ファレイナ公国━━━剣技の奥義。

風の魔法を剣付与してさらに魔力を剣に集める。


ミザイナの必殺技は剣の国の女王ながら。斬る技ではなく、物体に直接破壊力エネルギーを、叩き付ける剛剣!?、

「おら甘いんだよ」リブラを捉えきれず自分で破壊した床に足を捕られて、体勢を崩した。

「父さん、ハァアアアアアア!!」

「おうよ」

まるでオーラルと場所を入れ替わるように。石像の右に回り込むと。石像はリブラを追うように無理な体制を取っていた。

その瞬間オーラルの背に風の烈風が追い風となり。駆けるオーラルのスピードが上がり。

「うぉおおおおおおおお!!」

石像の懐に飛び込み。烈火の気合いを込めた一撃は、ガキン凄まじい打撃音を響かせ。像の胴体を砕くや上半身だけ。床を破壊しながら転がる。その度ピシリ、ピシリ不吉な音を響かせ、祭壇のある巨大な扉を破壊して、像は止まった………、

「ほう……、なるほど。魔力を純粋な力として、敵に叩きつけるかありだな……」

実に楽しそうにシニカルに笑む。肩で息をする息子を見て、凄まじい集中力を必要とするようだが……、

「試せるか?、あの奥に居るのに……」愉しげに笑っていた。

「父さん?」

戸惑いながら、父の迫力に思わず唾を飲んでいた。



二人が足を踏み入れたのは、祭壇のある。『祈りの部屋』と呼ばれる巨大な空間。その昔━━神を模した像が祭られてるはずだったが…、

オーラルが本来あった太陽神の像を破壊している。ならそこにいるのは……、闇を衣服のように纏う。闇の女神カーレル、闇を内包した蠱惑的に笑っていた。



女神の笑みは慈愛に満ちていると言われるが、カーレルの笑みは欲望に満ちていた。

『人間よ。良く来たな~』

美しく切な気な眼差しは、二人の人間を捕らえる筈だった。それが普通の人間ならば…、

「消えな闇の女神カーレル。俺達は赤の民である。ここは太陽神アセードラの神殿だ。直ちに退去を命じる!」

ハッと女神の顔が強張る。

『ばっバカな……、赤の民は最早……』「父さん!今だ」

動揺したカーレルが、動いた瞬間、禍々しい心臓が、祭壇の裏にあった。古びた椅子の上にあった。オーラルは白銀の剣をカーレルに投げ付けた、例え媒体の剣とはいえ。太陽神の加護を秘めていた。女神カーレルは咄嗟に払い除けた。

「太陽神アセードラよ!、汝の民が願う。祝福を与えよ」

カッと剣が清浄なる光を放ち。太陽神アセードラの浄化の光が、カーレルを襲う。

『クッ馬鹿な……そんなことが』

清浄なる光が、古ぼけた椅子に設置された心臓を貫き、焼き払い、死者の神アレビスの闇の呪縛から、中央大陸は解き放たれた。

『ギィアアアアア!?』

顔を焼く清浄なる光に。のたうつ女神を避けて、リブラは古ぼけた椅子に座った瞬間━━。



━━━世界の時は止まった。ありとあらゆる音すら消え失せ……。女神カーレルの時が止まっていた。

『何だこれは……』呆然と呟くリブラ。その胸の内側が急に輝きだして、赤い宝石が、コロンと手の上に落ちた。

『流石、我が子よな~』

ひょっこりリブラを覗き込んだ老人は、歯の欠けた口を愉しそうに高笑いした。

『じいさん?、じいさんは確か、失われた赤の民の街で……』

ニッコリ眠そうな目を、優しく笑みに顔をしわくちゃにして、リブラの手に……、

『じいさん……、あんたは』

儚げに笑う老人は、

『わしは既に死んでおる。お前さんに、迷惑を掛けて済まないと思っておる』

白髪頭を下げた老人に、リブラはシニカルに笑う、

『まあ~いいさ、わりと楽しかったからな』

驚いたように目を丸くして、ピシャリ額を叩くと、かかと笑い出した。

『面白い孫まで育って、善きかな、善きかな』

老人は、妻に似た黒髪のリブラ。そして……、曾孫のオーラルを見て、慈愛に満ちた優しい笑みを浮かべ、そして……最後の力を使い。闇の女神カーレルに手を向けて、赤の秘宝に、カーレルを取り込み封じた。

『これで遺恨はない。後のこと、頼んだぞ……』

今だから気付いた、オーラルに似た顔立ち、自分が捨て子だった訳を…。リブラは理解したのだ。『さらばだ……親父』

一つ頷き、赤の民の王プロキシスは、優しい笑みを浮かべ。双子の片割れリブラを見つめながら。消え失せた。

『ナタクすまなんだ……』

呟きを残して、



再び時が動きだした━━。

リブラは涙した、終わった……、ようやく終わったんだと……、


━━力を取り戻した中央大陸は、緩やかに、下降を始め……。

1000年の時。悠久の時を刻みようやく。

世界に戻った……。




まもなく各国に。報せが届き、人々は安堵した。


しかし……此からが大変である。新たな大陸について。各国が中央大陸の利権を主張しかねない状況。そうなれば数百年前のような、戦乱を招く恐れが高い……。それに……、生き残った堕ちた赤の民。沢山の魔物が未だに巣くっていた。




エピローグ



━━翌年……、アレイク王国にて。オーラル・ハウチューデン准将は、年明けに結婚した。



それから半年とたたず……アレイク王国から、職を辞して、中央大陸に新たな国を造る毎になったと発表された……、

人々は驚きを隠せない。彼は稀代の英雄である。


━━先日。度の中央事件の折り。魔王ピアンザの行ったことの理由が、発表知らされたばかり。大きな波紋を広げていた。


一方で━━。

オーラルの父が、北大陸の将軍職にあること、世界中の王が、オーラルの後見人として、名乗りを上げたこと。理由を知るにしたがい。それは素晴らしい判断だと囁かれるようになっていた……。



未だ中央大陸には、多くの赤の民の生き残りと、数多の魔物が巣食う危険な大陸である。利権を主張したとしても莫大な費用と現実問題があった。とてもではないが危険な土地に住まうことは難しいことだ。しかしオーラルには『聖王の剣』がある。大陸には浄化の時間も必要だ。それ故オーラルが王になることが許され。世界中から求められた理由である。難しい英断に世界中の王は同意したと……、



だがそれ以上の大きな異変もあった……。中央大陸が戻ったことで、地下迷宮は、全ての大陸を繋ぎ、土竜ギルドは、拠点を中央大陸に移した。

━━世界中で起きた事件。魔人の爪痕も甚大で、今しばらく……。平和な時を世界は過ごす毎になる……。



━━━ドクン……、


南大陸、華の国ダナイの地下、



はぐれワームが、作った巣の奥にある巨大な繭は、白く塊、ピシリ……、内側から、白い美しい手が、亀裂に手を掛けて、ゆっくり……、ゆっくり押し広げ繭を壊した……、



現れたのは全身真っ白い女の子、薄い胸、肢体を惜しげもなくさらしながら、少女は笑う。蠱惑的に、美しく。そして━━、


グチャリ、現れたはぐれワームを素手で殺して、体液をペロリ……、愉しげに笑うと、母なる女神アントンは、はぐれワームを食ら始めた。凄まじい食欲を満たす内に、不思議な事が起こった……、少女はみるみる成長して、妙齢の女となり、ぽっこりと妊娠した女の身体付きをして、苦しみだした、しばらくして女は黒いヌメヌメした、兵士を産んだ、兵士はゆっくり乾いて、黒光りした昆虫の身体を持った人形となった。

『行け、餌を集めろ』

兵は小さく頷き。動き始めた。新たな闇が再び動き出していた。

魔人王レイアスの企みを阻止して、闇の女神カーレルを封印することに成功した。リブラ、オーラルだったが……、再び世界を脅かす敵が生まれていた。また同じ物語か別の物語で背徳の魔王でした。

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