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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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冒険者ですが何か?

南大陸で起きた異変。三体の怪物を倒し調査するため。四人の神々の遺物に選ばれた英雄達が向かう。一方軍国ローレンの秘密兵器が動き出す。

プロローグ



……朝。


突如として、神々に冥界アビスに落とされた中央大陸が、デスホールを抜け。現れた━━。


世界では、次々と異変が起こる。



僅か一月……の間で。



━━南大陸。軍国ローレンの首都を含めた。多くの都市や村の多くが、



謎の怪物に襲われ。壊滅させられたと、世界中に知らされたのは間もなくのこと……、

同盟国ファレイナ公国に救援に赴いてた。土竜騎士団長ボルド・ホウリーからもたらされた。



━━ことの起こりは、隣国ローレン。バローナ将軍から、救援を求められた事から始まった……、


ファレイナ公国ミザイナ女王は、快諾した。それと言うのも。地下迷宮から突如現れた。はぐれワームは、非常に獰猛で、多くの民が犠牲になったことを知ったからだ。


━━━しかし……ファレイナ公国と、軍国ローレン間で、一年前まで国境を争う戦が行われていた。


だが……前国王の崩御。ミザイナの父であり。パライラ騎士団長アルタイトが、怪我を負って戦線離脱。なし崩し的に。停戦と相成ったが、ファレイナ公国ミザイナ女王の胸中は、複雑であった。


……異変が報じられる中。同盟国の聖アレイク王国に、念のためと……。救援を求めてたのも、項をそうした。


ファレイナ公国に救援に来たのは、計らずも地下迷宮で。数多のはぐれワームを狩って来た実績のある。土竜騎士が小隊を率いて、救援に来ていたのだ。女王ミザイナは、天命すら感じた。バローナ将軍の頼みを、ミザイナは土竜騎士で、冒険者だった。土竜騎士団長ボルド・ホウリーに相談。願いを快諾して。直ちにはぐれワーム討伐に赴いた。



首都まで無事にたどり着き。あらかたはぐれワームを狩った土竜騎士団長ボルト・ホウリー。軍国軍師で魔法使いデーアは、魔導師いの塔が崩壊する轟音を聞いて、顔を見合わせていた。

「いったい何事だ……」「デーア師!、魔導師の塔が崩れ落ちたと模様」

慌てた若き魔法使いが報せてきた。

「ボルト団長!、なんかやばそうなの来ますぜ」先に物見に出ていた土竜騎士が、魔法で報せてきたとのこと。二人は顔を見合わせていた。


その頃……、三体の怪物が、首都に向かっていた


ボルト・ホウリーは、嫌な予感を覚えていた。

「直ちに荷を捨て、退却する!?」

「なんと退却ですと?」「そうだ、俺の冒険者としての危機感が警鐘をならしてやがる。それに部下がやばそうなのって感じたんなら。はぐれワームなんて問題ならねえのが現れたと思え」

「……承知しました」

歴戦の冒険者の直感に従い、首都から逃げ出したのだが……

逃げる馬車の荷台からデーア他魔法使い達が見たのは……、



城と見まごう巨大な黒竜が、物凄いスピードで飛んできたかと思えば、首都に降り立った。

禍々しい気配を放つ黒竜は、血を思わせる目を細め━━ブレスを吐いた。


一撃で元ダーレンの城が、融解する凄まじい熱量のブレスである。


黒竜の背には、美しいブロンドの女神。

道化ピエロ

が、明らかに通常の大きさではあり得ない重量と、それぞれが巨大で……、禍々しい力、悪意を感じた。



ただならぬ雰囲気を感じたボルト・ホウリーは、魔法を使い。直ちに本国とファレイナ公国ミザイナ女王にことを知らせた………。



━━世界連合が、発足されたのは、それから間も無くのこと……、



中央大陸出現に脅威を感じて、中立国のギル・ジータから発足された連合は八ヶ国が、名を連ねた。

北のレオール連合、

西のパルストア帝国、

東のアレイク王国、 ギル・ジータ王国、ドヴィア国、ラトワニア神国、

南のファレイナ公国、軍国ローレンである。



━━そして……ギル・ジータ王国に、神の遺物に選ばれし四人と、アレイク王国、第1師団から、2人の将校が選ばれ。王国に集まったのは……、10日が過ぎた頃━━。



━━それは南大陸に出現した怪物の調査。討伐の為である。


一行を輸送するのが、ギル・ジータが誇る。海中船を使い。ファレイナ公国を目指して……、

南下したのは、その日のこと。

━━予定では約数日で、ファレイナ公国に到着予定である。


航海は順調だが、船内の空気は重い。いや殺気すら孕んでいた。その人物が鋭い眼差しをオーラルに向ける理由があった。緑眼の騎士と呼ばれしギラムは、魔王ピアンザの元六将であった。無言を貫く魔王ピアンザ、飄々と弓を磨くオーダイ、まるで気にした様子がないオーラルなのだが……、見てる方が苦痛を覚えた。


祝福を与えられた特別な海中船を預かるのが、ギル・ジータ王国、宰相になったサミュ・リジル。生真面目だからではないが、真っ青な顔をしていて、お腹を押さえ呻く。「オーラル~何で、俺が呼ばれたのさ?」

カール・シタイン中佐は、お気楽を絵に書いたような気安さで、馴れ馴れしくサミュの肩に手を置いた瞬間。

━━ドス、鈍い音がして、痛みに悶える。

「カールの癖に偉そう」「エル……、スタッフの先は……」

脂汗流しながら、涙目で訴えた。対してエル・フィアン中佐は、鼻を鳴らして、冷たく睨んでるが、

「それはそうとオーラル、使えないカールは解りませんが、私を選んだ理由を、聞かせて下さい」ジロリ、やや不機嫌そうな顔だが、カールと一緒で、ちょっと嬉しいそうなのは隠せない。

「なっ……」

オーラルの心を読んで、真っ赤になっていた。すると今まで無言だったピアンザが、興味深そうに、目を細め。

「もしや彼女は、心を読めるのだな?」

僅かなヒントで、答えを導く観察眼は、世界を席巻した魔王。と言うことだろうか……、オーラルは一つ頷き、

「断片的な。情報では、どのような状況か分からない、ただ……例の怪物のことは、赤の民か件の魔人が関係してる可能性が高い、俺の見解としては古代の施設が、魔導師の塔の地下にあったか……、怪物はその施設から産み出されたとしたら……、そう考えている」

「成る程の~嬢ちゃんは、鍵かい」

オーダイは、別の切り口から、答えを導き出したようだ、オーラルは一つ頷き、

「怪物による直接的被害が、民に無いのは幸いでした」

そこは歴戦冒険者ボルド・ホウリーの機転が良い方に向いた。

「しかし~土竜騎士団は、何故逃げたのかな?」軽薄そうに、カールが呟いた。オーラルもそこが気になっていた。

「実際に相対してませんが、それが最善と判断したとしか言えません、しかし俺は先輩の判断を信じます」

オーラルの言葉に。なるほど相槌を打った。先ほどから、無言のギラムが殺気混じりに睨み付け、「一つ聞く。何故貴様が俺を選んだ!」

殺気が膨らんで、今にも『聖騎士の剣』を、抜きそうな剣呑な雰囲気に、益々胃が痛くなるサミュは呻いた。

「貴様こそまだ、気付かないのかギラム?」

答えたのは他でもない。魔王ピアンザだった。

「ピアンザ!、今のはどういう意味だ?、まさか………」

よろり青ざめるギラムを、鋭く見詰め。

「ラグラドは、狂喜の女神ルグワイトの生まれ変わりだった。緑の民なら分かるな?」ギラムは……驚愕に、眼を剥いて、力なく座り込んだ。

「そんな……ラグラドは……、この剣の中に?」

静かに頷くピアンザは、ちらりオーラルを見て、もう一度小さく頷いた。仕方なく。頭を掻きながら。

「ピアンザ。面倒だからって、はしょるなよな~」

気安さだろうが、一応釘を刺す。改めてギラムを見下ろして、諭すように口にした。

「まあ~正確には、俺は、女神の魂だけ封じ込めた。その為ラグラドは力を失い。今はギル・ジータの神殿で、ずっと寝てるよ」

「なに……」

驚き眼を見張るギラムは、信じられないと首を振る。

「しかし……ラグラドは、首を跳ねられたと……」

ハッと息を飲んで、

「俺に、聖騎士の剣を使わせる為か……ピアンザ?」

優し過ぎたギラムでは、ラグラドを殺すことは、最初から出来ない。そんなこと言われなくてもギラムは理解していた。



だからナタクとピアンザは、内々に一計を案じていた。『聖王の剣』と『聖騎士の剣』の候補者は、最初から二人いたのだから……、

ピアンザとて王の重責を背負う者。最悪の事態を想定するは、王国を預かる者として、正論……。喩え仲間であろうと。ギラムは膝を抱え俯き涙した。

「そうか……、ラグラドは生きてた……」

そっと剣を抱き、小さく嗚咽を漏らす。サミュは何故か、貰い泣きしていたが……、



━━南大陸。魔導師の塔踪……。三体の怪物。『黒竜』『女神』『道化』を前に。毛皮を袈裟懸けに着た背に翼のある魔人。マローダは、何らかの魔獣の骨で作られた。禍々しい杖を構えて、三体の怪物に、新たな命令を付与した。

「これで良い……。今一度。人間の国を焼き払え。人造神じんぞうしん共よ」

道化は観客を、前にした演者のように一礼して、

黒竜は、血に餓えた眼をして、したなめずり金眼を細めた。


女神は苦悩に顔を歪め……。苦痛に身を悶えさせた。



三体の怪物。人造神は、元は人間だった。



━━━今から600年前。



魔導師の塔が建てられる以前━━。


地下に、マローダの研究施設があったのだ。

マローダは千年前まで、真面目な研究員だった。━━━最初は、世界の発展の為と、理想に燃えた、優れた人物だった。


━━おかしくなったのは……、魔導師の塔を、研究施設の上に建設した頃からだ……、


実験体を集めるのに都合がよい方法を論じ。容易く人間を集めるために、魔法を教えると広め。若い男女を集め。その中でも優秀な人間を、マローダの人体実験に使っていた………、最初は……、病を治す為や、人間の能力を増させる為である。


マローダは、アビスに落ちてからも。魔物を素材に。様々な新種を作り続けた。


やがて……。


力ある魔獣の骨。毛皮に、マジックアイテムと同じ効果のある。個体が発見された。マローダは考えた……、もしも神の骨を使い。新たな道具が作れたらならば……。そう考えるだけで身震いするほどの興奮を覚えていた。



マローダは不変の死者の神アレビスの死体が、闇の神殿に安置されていた神殿に忍び込んで、死者の神アレビスの肉体から、8組の骨の武器を作り出した。

そして……マローダは、闇の女神カーレルに、自分が作った、闇の武器を捧げた。

……すると女神は、マローダのしたことを赦して、さらには……魔人の王レイアス、7神官を呼び出して。こう信託した。

『死と闇の遺物せいなるかみのいぶつを与えよう……』

恍惚として、闇の女神カーレルは笑うのだ。マローダは純粋に喜び恍惚の顔で笑った。狂ったように笑っていた。

「そうだ……、私は、神を作りたかったのだ、あははははははは、あははははははは」

狂った妄想を垂れ流して、マローダは下半身を固くした。



━━━ファレイナ公国。王座の間。

「女王陛下。世界連合議長ギル・エバーソン殿より。至急の連絡が入りました」

遠距離の通信を可能とする。魔法通信は、軍国ローレンの軍師である。デーア・オルトスが一手に引き受け。新しく設置された機関である。父に一生消えぬ後遺症を与えた憎き男だが、今は個の感情を圧し殺して、表面上は、平素を装っている。

「ご苦労。先方はなんと?」足の悪いオルトスは、立ったまま。一つ頷き。

「海中船で、早ければ明日の夜。聖アレイク王国から、オーラル准将、オーダイ将軍他部下二名、ラトワニア神国から緑眼の騎士ギラム、ギル・ジータよりサミュ・リジル宰相。パルストア帝国から魔王ピアンザ陛下が、到着すると……」

ガタリ驚きのあまり立ち上がり掛けたミザイナ女王を、意外そうな顔をして、デーアは見ていた。そして嬉しそうに涙すら浮かべる姿に、噂を思い出す。

『確か……魔王ピアンザ、オーラル准将、北のレオール宰相レイナ・フォルト、ミザイナ女王は、アレイ学園の同じ部隊の所属で、友であり、仲間であったとか……』

「魔王ピアンザ……、一度話したい人物だ」それにあの狂気の双子を配下にしていた、理由が知りたい……、

「あの双子は、何処に行ったのか……」

最後にバローナ将軍と話した後。行方や生死も分からないこと。それから参謀アルマン・ソゲルは、毒気を抜かれて、憔悴していた。あまりに多くの人々が死んだのを見たからだとデーアは考えた……。



……三体の怪物━━。


デーアは、魔導師の塔の書庫で、借りたままの古書を手に。

「あれが……本当に存在してたとは……」

古書の題名は、『人造神』とあるデーアはこの本に書いてあった理論を用いて、ゴーレム製作を行っていた。もしもバローナ将軍と出会わなければ……、肝が冷えた。

「デーア……、調べは、進んでいるのか?」フラリ王座の間を訪れたバローナ将軍に、皆が驚きミザイナは目を細めていた。何故街を離れて来たのだ?、訝し気な顔をした重鎮もいたほどだ。今は最前線である国境の街ローンに詰めていたから。わざわざい来る理由が分からない……、しかしミザイナは違う内々に。エドワルド公と会談をすること。何やら策があるとか、その打ち合わせと聞いている。

「閣下」

一つ頭を下げ。笑みを深めたデーアに。小さく頷いて。

「世界連合の面々に、意見を求めますが、あまり時間は無いかと考えます」

「その意見に賛成だ、その為に俺はエドワルド公と共同作戦を張るのだからな、だからミザイナ女王陛下に。その許しを貰いに来たんだ」

やはりこの方は……、信頼の眼差しを主バローナに向ける。

「バローナよ……、エドワルド叔父上からも聞いているが、何故叔父上なのだ?」

困惑の色を表情から読み取り、敢えて不敵に笑いながら口を開いた驚くべき内容を伴って。

「南大陸、最大の国。大国ダナイが、僅か一月の間に滅んだのは記憶に新しいな、しかしダナイの民には僅かな生き残りがいた」

それは初耳だったのか、目を見張り、続けるよう頷く。

土竜騎士団どりゅうきしだんが、三体の怪物の報告を行った後、オーラルの命に逆らって、数人がパーティーとなり、ダナイ各地を巡ってたのは知ってるな?」

土竜騎士団長ボルド・ホウリーより聞いていた。「昨夜。ボルドからエドワルド公に連絡があって、セドの対岸の街セドールに。生き残りを連れて、逃げ延びたそうだぜ」朗報だが……、それがエドワルド叔父上と意味が繋がらない。訝しむミザイナに、またもや頷き。「デーアの調べでな三体の怪物は無理でも。竜には弱点を見付けた。それにはうちの秘密兵器魔導兵と、竜殺しと知られてるエドワルド公の知識と。槍の技術が、必要になってね」

意味ありげな眼差しをデーアにむけていた。逆にデーアは目を見開き驚いた顔をしていた。

「まさか!バローナ将軍。魔導兵とリンクを考えてるのでは」正解だと大きく頷く。慌てたのはデーアである。「あれはまだ試作段階ですぞ!、それに使えるのは、数人だけです」

話が見えないミザイナは、問うような気難しい顔を二人に向けた。

「デーア、説明しろ」

「……バローナ様が、そう願うのなら……」

軍国ローレンが、ファレイナ公国を一度とは言え、退ける事が出来たのは、魔導兵ゴーレムの技術があってのことだと、ミザイナは考えてる。実際強大な力と、鈍重そうな外見とは違い、驚異的なスピードと攻撃力を侮っての敗戦である。さらに僅かながら。学習能力を持った。厄介なゴーレムだった……、

ミザイナの父アルタイト、夫のジンベイそれぞれが苦戦の末一体づつ倒すに至った。しかし……魔導兵は、次々に現れた。

「ミザイナ女王陛下、実は……あれは、まだ未完成なのです……」

驚愕の内容が語られた。本来の魔導兵とは、手足が不自由になった魔法使いの為。介護目的で造っられた技術と言われていた。



━━魔導兵と呼ばれる主な種にはアイアンゴーレム、ストーンゴーレム、ウッドゴーレムなどがある。これ等は基本的に札やオーブを媒体に、魂を模した。擬似的生命体の総称である。



そもそも魔導兵の技術が生まれたのが数百年前と言われ。そのの間に技術は発展していて、魔導師、魔法使いが軍事目的に転用していた経緯がある。理由としては、疲れ知らずな兵として、利用価値を見出だしたからだ。


……一見無敵のような。魔導兵だが、簡単な命令以外。実行出来ないことが知られ。衰退していった。その一番の理由が、動きが遅く。歴戦の戦士ならば、時間を掛ければ一人でも倒せてしまうこと。コストが高く壊れると代えが効かない。ならばまだ人間の兵士を育てた方が有用せいがあったから。今では宮廷魔導師がモンスター討伐に。用いられる程度であった。


それ故に歴戦の勇者が住まう。ファレイナ公国の剣士達は、侮っていた。魔導兵等と……、

「魔導兵は通常。簡単な命令しかこなせまんが、私は、優秀な戦士の一部。髪の毛、血を媒体に使うことで、通常では考えられない。学習能力を持った、特別なゴーレムの生成に。成功しました」

━━構想は、以前からあったが、行き詰まってたデーアを救ったのは……、なんと狂気の双子だった……、


突如現れた双子は、デーアを散々からかった後で唆す。

「魔王は、前に言ってたよ」

「魔王は前に言ってたんだ」

二人同時に、喋り出して。デーアを惑わせる。

「「優秀な兵の血を媒体に使うことで、面白い魔導兵が、出来る」よ」

クスクス笑いながら、現れた時と同じように、双子は消えていた。デーアは狐に摘ままれたような気持ちを抱く、例えば酒場で酒を一口飲んだ時は、冷たいエールだったのに、二口目飲んだら。酢にすり替えられたような気分を味わう。あの双子を信じた訳ではないが……、確かに魔法生物の核に力を与えれる。可能性を見出だした。

一つは双子の語った方法。

「もう一つが……、遠隔からの操作……」

魔法の理論を深く知ってるミザイナだけに、ハッと息を飲んだ。

「まさか……術者が直接。ゴーレムとリンクして操る?……」

可能なのか……、口にしようとして、はたと思いとどまる。先程デーアは何と言ってた……、

「俺は扱える。試しに。エドワルド公、ボルドの奴も扱えたぜ」

流石に。呆れたデーアに、不敵な笑みをむけて片目を瞑る。

「デーア俺は考えてたんだ。遠隔式魔導兵リンクへいはよ。ある程度の魔法知識と、それなりの武力が相まって、始めて、上手く動かすことが出来る。技術だとな」

「それは……」気が付いてはいた…、

しかし……、外交的不安を覚えたのだ。カードを切りすぎなのではと、バローナや国のことを考えてるデーアに。苦笑を滲ませる。

「政治を考えるのはよ~、平和な時で構わんだろデーア?。それにその為の連合なんだろ。出し惜しみなんてして、良いとこ見せなきゃ、逆に侮られるぜ?」

ハッと虚を突かれたのは、デーアだけではない。ミザイナまで、意表を突かれた形である。

「まあ聞けやお前達も。オーラルが動く以上。そのくらいはやっとかないと、あいつ等と対等に。渡り合えなくなるぜ?」

「はっ!、閣下調整はお任せを」

信頼を込めた眼差しで、深く一礼していた。

「当たり前だ。お前がいなくちゃ何も始まらないぜ。てな訳で、ミザイナ承認頼むわ」

空気がガラリと変った……、



先ほどまで不安に押し潰されそうな皆の顔に。光が差したように明るく笑みすらあったのだ。

まるでバローナ将軍の豪胆な雰囲気に、感化されたかのごとく。先ほどまでの殺伐としてたのが、嘘のようではないか……、ミザイナは複雑な気持ちで嘆息した。

「良かろうバローナ、貴様に任せる」

女王の顔から一転、学生時代いつもバローナが見てた。あの不敵な笑みを浮かべいい放った。



━━━国境の街ローン。

土竜騎士から。

連絡があったのは、今朝のこと………、

遂に三体の怪物が、動き出したと………。


その日の夕方。バローナ将軍貴下数名は、魔導兵とリンク作業に入る。


あの会合から数日━━。


。ミザイナ女王は、自国の製法で造られた。重ね造りの武器を。12体の魔導兵の為。6振りの大剣。6本の槍を、急ぎ作らせた。

『閣下……、感覚共有終了しました』

ゆっくり眼を開くと。魔導兵の感覚的視覚により。視覚情報が、脳に直接送られてくる。


……タイムラグ。誤差無し。手足の感覚も自分の物と認識出来るレベルである。

『デーア何時でも行ける!』

12の棺の一つに眠るバローナは、中枢のクリスタルを媒体に。魔導兵のナビゲーターと、念話で会話することが出来る。

『閣下。準備が整いました、出撃を』

『承知した!?』

バローナ貴下の機体は。右腕だけ赤でペイントされていて、バローナの機体だけ全身真っ赤にペイントされていた。まさに鬼神のような印象を与える。エドワルド公貴下の機体は左腕が青くペイントされ。エドワルド公の機体だけ、マントが装着されていた。

『閣下来ます!』

魔導兵の視覚に、竜の巨体と、竜に乗ったニ体の道化。女神の存在が確認出来た。

『エドワルド流、神を貫く槍!(グングニル)』

六機の魔導兵は、一斉に旗機を中心に。槍を中断に構え。槍の柄の半ば、手のひらで、軽く押し包み。一気に槍を引いた、その姿は、弓を引くようである。



ファレイナ公国の魔法は、肉体強化を、風の魔法で行う。また遠距離の射程を広げた技は、槍のエドワルド流のみに伝えられている奥義。

空気を切り裂く轟音が、一斉に放たれた。



━━神を貫くグングニルは、見える範囲の距離ならば、山をも全てを貫く。



━━無論竜の強固な鱗で守られていようと。身体を易々貫き。


竜は、地に堕ちた………。


もうもうと上がる土煙━━━。

驚いた女神は、飛び降りて、道化は、転がるように逃げ出した。12の魔導兵が、それぞれの獲物を手に、竜に襲い掛かる。

「グアアアアアアア!!?」

竜は、全身血を流しながら、怒りに燃えた眼を細め。息を吸い込み。業炎のブレスを放った。

『エドワルド流、流水閃りゅうすいせん

上流から流れる川の水を。槍の基本技、払うを用いた奥義。熟練者ならば、流れる川を数瞬。塞き止める事が出来る。



エドワルド公の放った技は、桁違いで達人の上。剣聖と並ぶ力量がある。魔導兵のパワーもあったが……、通常の数倍の破壊力は、竜のブレスを払っただけではなく。竜の体に切り傷を無数に与えた。


怯んだ竜に。バローナが先頭になって、大剣の一撃を与える。痛みを嫌がった竜は、全身を素早く回転させて、尻尾による攻撃を放つ、

バローナはかわしたが、後方のニ体が大破した。『ちっ……』

咄嗟に飛び込み。尻尾をかわしたバローナは、素早く強化の魔法を用いて、手近な尻尾の根元に、大上段から、切り落とし。ガツ鈍い感触。

『ちっ……固い』

バローナが、一瞬棒立ちになった隙を見逃さず。竜はブレスを放つ。

『エドワルド流。流水閃』

咄嗟に回り込んだ、エドワルド公が、バローナを救う。

『助かったぜ、エドワルド公』

お陰で素早く回避出来たバローナに、一つ頷き。

『気を付けるのだ。竜の鱗は予想外に硬い、尻尾より。足首か、竜の神経が集まる。爪付近を狙え』

竜を狩ることが、ファレイナ公国では試練として存在する。それと言うのもはぐれと呼ばれる竜が、希に霊峰グラミスと呼ばれる。切り立った剣のような山に、百年近い歴史を持つのファレイナ公国を幾度となく━━、襲ったからだ。そしてエドワルド公は歴史上、最もはぐれ竜を狩った経験を持っていた。国内では竜殺し公と呼ばれていた。



三体の怪物が、デーアの持っていた古書通りの存在なら……、竜の弱点も模倣している。訳の解らない、女神と道化よりは、倒せる可能性が高い。あの場でバローナはあくまでも後でとせいじ論じたが、内心は別の思惑があった。

世界連合に名を連ねた以上は、少しでも外交に用いたいと考えていた。気持ちを切り替えて、バローナは大剣を手に、走りだした。



エドワルド公貴下。槍の技で、遠距離からの攻撃、注意がそれたら、バローナ率いる数機が、大剣での近距離からの斬撃。両国の連携が徐々に。噛み合い始めた結果、当初劣勢だったバローナ達に好機が訪れる。



例え人智が及ばぬ巨大な竜とて、徐々に………。切り刻まれては、体力を削り取ることに成功して行く。竜の動きが、幾度となく。弱くなり。その度に鋭い攻撃を加え。徐々に竜の動きが、鈍くなってきたのを感じた。



━━黒竜の攻撃から。鋭さが消えた。

『今だ!』

そんな緩慢な尻尾の一撃をバローナ貴下3機が、大剣で受け止めて動きが止まる。バローナは飛び上がり。渾身の一撃を。尻尾の根元に叩き込んだ。

『グガァアアア!!!』切り落とすには至らないが、激痛に竜は膝を折った。

『総攻撃!』

バローナの号令で、エドワルド公貴下5機が、槍を構えながら猛然と迫る。

竜は、怒りに燃える眼差しをエドワルド公に向け、一瞬……バローナへの注意が削がれた。

『今!』

バローナは、再び大剣を構え。渾身の力で。尻尾の根元に叩き付けた!、『アギャアアアアアアアアアアアアアアアアア……』

プツリ……、

巨大な尻尾が、竜から切り離され、別の生き物のようにのたうち回り。

『グアァアアアア!、グアアアアアアア、グアアアアアアアー』

あまりの痛みに。体勢を崩した黒竜の頭が下に下がる。

『エドワルド流、神を貫くグングニル!!』

まさにエドワルド公に頭を下げたかのような状態。最大のチャンスを見逃さず0距離からの一撃は、空気さえ切り裂く轟音を響かせ。狙い違わず竜の眉間を貫き、竜の背を突き破り、血が吹き出した。

『おいおい凄まじいな…………』

呆れた口調のバローナに対して、マントを羽織る魔導兵は、器用に。肩を竦めてみせた。



━━━翌。夜半……。


各国の英雄と呼ばれる者達の到着で、俄にファレイナ公国の王座の間は、騒然と緊張を孕んでいた。

改めて彼等に。デーアが纏めた、一連の戦闘記録を話して見せているのが、ファレイナ公国内でも。先の御家騒動で、見事な采配を見せ。女王の信任厚いアレイク王国のオーラル准将。世界を席巻した。パレストア帝国の魔王……ピアンザ陛下、両英雄が並ぶ姿を。間近で見れるだけでもデーアは役得なのだ。一通り書簡に目を通された両英雄から。何か分からないことがあれば質問に答える毎になり、注目が集まる。デーアにも多少の緊張を強いられるのは仕方ない。

それに……オーラルは、デーアの学んだ、複数の因子を魔法に込める。新しい系統の魔法の創始者である。一度お会いしてるが、油断のならない人物との印象を持っている。方や魔王ピアンザは、色々と聞きたい事がありすぎて、別の意味で緊張を強いられていた。



時折オーラル准将が質問されてデーアが答えると。それに対してピアンザ陛下が核心を突き。オーラル准将が補足する短いやり取りだけで、デーアと配下が、苦心した分析を、瞬く間に理解して、更に深い部分まで、的確に分析されてしまい。流石と思う反面。これ程の才を前に。冷や汗が止まらない……。

魔導兵ゴーレムをそんな風に使うなんて、面白い考えだね」

素直な賛辞に。恐縮するデーア、魔王ピアンザは小さく笑み。

「まだ改良の余地はあるが、中央大陸を攻めるおり、期待している」

二人の英雄に肩を叩かれて。不覚にも泣きそうになった。

「はっ!、粉骨砕身、やらせて頂きます」

デーアは、誇らしく胸を張っていた。二人の圧倒的存在感にすっかり飲まれた様子である。思わずバローナは苦笑隠さず。笑みを称えた初老のエドワルド公、帰還した土竜騎士団長ボルト・ホウリー三名が、オーラル一行が到着したと聞いて、セドの街から駆けつけていた。

「ボルト先輩!」

日に焼け。地下で会った時とは大違いのボルトは、照れ笑い浮かべ。固く握手交わす。

「すまんなオーラル……、色々と心配掛けた」

対してオーラルは安堵の吐息をついて、懐から一通の手紙を手渡していた。

「これは?……」

訝しむボルトに、小さく笑いながら、

「息子さんから……」

「ボルト子供いたのか?」

ちょっと驚くミザイナ、バローナ共に、後輩二人の声に、照れ臭そうな笑みを浮かべる。

「ありがたい。流石に心配だったんだ」「デーア済まない、ギル・ジータ王国に連絡をお願い出来るかな?」

「構いませんが……どの様な?」

にっこり人好きする優しい笑みを。ボルトに向けて。

「先輩はギル・ジータにいる。奥方と話を」

「おっおい……」

慌てるボルトに、片眼を瞑り。

「ミレーヌ皇女の世話役として、奥方がご一緒してます。直接話は出来ませんが、顔を見ることは出来ます」

ちょっと戸惑っていたボルトだが、ボルトの妻は、アレク学園の教職にあったが、結婚と共に退職していた。昨年ボルトが土竜騎士団長就任を期に。皇女の先生として就任していた。付いてくる可能性は確かにあり得たが……、オーラルの心使いに、素直に頭を下げた。

「了解しました。ではボルト殿此方に………」

おいとまを告げ。二人が退席したの見届け。

「オーラル……」

エルの合図に一つ頷き、安堵した。

「オーラルやはりその可能性が高いか?」

ピアンザの鋭い眼差しに、苦笑しながら、同じことを考えてたと気付いた。二人の話に興味を持ったミザイナが、

「どういう話なんだ?」要領を得ないのか、仏頂面でジロリ不機嫌そうに睨む。

「ミザイナは気付かなかったかな?、道化ピエロと呼ばれる大道芸をを演じるのはだれか、芸人ばかりでは無いんだよ?」

意味がまるで分からないから、居並ぶファレイナ公国の重鎮の面々は戸惑った顔をしていた。その中にありエドワルド公爵だけは、ハッと顔を青ざめさせていた。

「まさか……」

エドワルド公の呟きに。注目が集まった。意見を求める。重鎮の面々。さらにオーラルを伺い。小さく頷いて、

「オーラル殿が言いたいのは、道化とは本来。役者が、演じる一面に過ぎないのじゃよ」

ミザイナは、ハッとした、先ほどのやり取り。

「まさか……、道化は既に我が国に入り込んでるのか?」

ざわり……。

事の重要性に。皆が気付いた。道化=役者ならば……、演じる者のこと。

「多分ね。オーダイ将軍とギラムが動いてるから、可能性は高いよ」

慌てる一同に。肩を竦めながら。

「道化の心配は無くなったので、女神について、調べましょう」なんて事言われて、戸惑ってしまう。



━━ファレイナ公国到着。


豪奢な馬車が港に用意されており。全員が乗り込んでも余裕のある大きな馬車で、早速首都に向け。出発して数時間後。窓際で風景を見ながら、揺られていた筈の、オーダイが……、

━━━いつの間にか消えていた……、

驚いたギラムは、オーラルを問うように睨む。

「将軍は、道化を見つけたようだね」

仕方なく。肩を竦めながら答えた。

「なっ………、まさか入り込んでるのか?」

「ああ……、その為の策は用意してあったが、必要無さそうだな」

あきれ果てたピアンザの物言いに。戸惑いは隠せない。

「あの御老体は、其ほどの?」オーダイの実力を、いまいち信用してないようだ、それも仕方ないが……、

「あの御老体は……、ナタク以上の実力者だ」

ピアンザの素直な賛辞に、顔を強ばらせていた。「まさか……」

信じられないと首を振る。

「気になるなら、付いてくといい。この通りの先にまだいる」

何でも無いことのように。ピアンザの目は、遥か先をゆったり歩む、オーダイの姿を見ていた。一瞬。迷いが浮かぶギラムに。

「構わない。俺とピアンザが、顔を出せば済む話だ」

ギラムの背を押した、

「……今は、その言葉に甘える」

複雑な顔をして、馬車から音もなく、飛び出した。わだかまりは消えた訳ではない。ピアンザと目が合った……自分たちとて、付き合い方を、模索してるのだから、苦笑を交わしていた。



━━━城下に近い。一つ手前の町に入った瞬間。オーダイは視線を感じて、自身の存在を消した。


驚く視線の相手の僅かに動揺を誘ったようだ。相手は何者か分からぬが、よっぽどの相手と見て興味を抱き、気配を探り……、ある考えに至る。恐らく道化であろう、どうやら広域に気配を広げ。気配を薄めさせる能力を持っていたようだが………、

気配を察知する。一流の猟師だったオーダイには、僅かな動揺から、何処に居るのか相手を見つけていた━━━、


━━成る程と、小さく笑みを浮かべ。チラリオーラルを見た、困った顔をしてたが、仕方なく頷くのを見て。思わず唇を綻ばせていた。即座に此方の考えを理解したらしい。今は面白そうな獲物の狩りを前に高揚していた。



小さく頷き返して、路傍を歩く化のごとく。馬車から何事もなく降りていた。瞬動しゅんどうと呼ばれる。弓の特殊能力だ、見える範囲なら、空間を越えて移動出来る。

弓の力は主に4つ。

浮遊ふゆう瞬動しゅんどう

固定ロック無限むげんオーダイには、生まれつき。見える範囲意外の動きが感じられといた。それは幼き日より猟師として、森で生活するうちに身に付いたスキルである。


だから少年の頃には、森に入った瞬間。森で生活する。動物の気配で、何処に居るか、分かるようになっていた。



━━当初は、三体の怪物討伐など。また面倒な……、王に頼まれ仕方なく参加したのだが………、


これが中々面白そうなメンバーに、思わず膝を叩いて、国王に感謝すらしていた。

「魔王……。ヒザン殿の子息であったか、あの者はオーラル並みか、オーラルの部下二人。あれは面白そうな逸材。育て方に依るが、比肩しうる……、ん?」

僅かな気配の揺らぎを、背後に感じた思わず笑みを口許に広げ。

「緑眼の騎士。素質は群を抜いている。甘すぎるが……、魔王辺りの入れ知恵かの?」

足を止めて、しばし待っていると、長身の目立つ若者が現れた。

「遅かったの~?」指で、左の耳をホジホジ。フーっとゴミを払う、嫌そうな顔で、流れたゴミから身を交わす。色々聞きたそうな顔をしとるが、あえて自分から何か教えるつもりはない。あやつら二人は、もがき苦しみあがき続け切り開いた道だ。まだまだ目の前の青年を青いなと鼻で笑う。すると見るからにムッとするとギラムに。背を向けてゆったり歩き出した。

「ちょ……」

仕方なく。またはとりあえず付いてくる。そんな心構えかの?。やれやれ骨が折れるわい。内心嘆息した。



……時は竜が、落とさせた時に戻る……。



━━道化どうけは、竜から転がり落ちて、慌てて逃げる振りをしていた。


自身を大狼ベオルフを演じて、姿まで変化させ。人間の集落を目指した。


━━途中。女神の気配が、消えて眉をひそめたが、


歩みは順調で、小さな集落を間もなく見つけた。


早朝……たまたま家から出てきた若者を、襲い。殺してから姿を奪い演じた。若者は荷運びの仕事に付いてた事が、項をそうして、納屋にいた馬を殺して、自分の両足を切り離し。馬を演じさせて。納屋にあった古い馬車を駆って、ファレイナ公国を目指した。さらに体積を減らして、大柄な人間として、検問は苦もなく入り込み。道化は大きな町に溶け込んだ……、


主の願いは、国を瓦解させ。自分が知っていた世界と、あまりに変わりすぎていた人間の情報を得ること、道化は、街の人間から話を聞き、なるべく地位ある者と。入れ替わる必要があった。


ぼくとつとした若者を疑う人はいない。田舎から出てきた若者の様子に、好感を持って、色々と教えてくれた。それから間もなく━━竜が討伐されたと聞いて、流石に驚きを隠せなかった。

「明日。なんでも各国の有力者がファレイナ公国に、集まるようだよ」

道化は、その情報を得て、ほくそ笑み。有力者の1人に成り変わるべく。再び街に溶け込み。機会を伺うことにした……。



……若者に化けてた道化は、馬に化けさせた両足を人間に化けさせ。自分を追跡してきた。二人を襲わせた………、


━━最悪両足を失ってもいずれ。両足は元に戻り。自分は生き残る。強い生存本能を持っていたからだが……。隠れていた道化は、再び動揺していた。


━━僅か数瞬で、両足が消えた。

「馬鹿な……、そんなことあり得ない……」

忘れてた恐怖心が、ムクムク沸き上がる。あの気配が再び消えた。悲鳴を慌てて飲み込んだ。手汗をかいて、道化は、主からの命を捨て、ファレイナ公国から逃げるべく。空に飛び上がった刹那、


さくさくさく

「えっ………?」

自分の核を貫いた、銀の細い金属を、不思議な顔で見て、道化は絶命していた。

「ぬしはあれを、持ってきてくれんかの~?」

血の気を失い、力量の違いを目の当たりにして、ギラムはただ。首を縦に動かしていた。

「ラグラド程ではないが……」幻の魔法を得意としていたギラムは、一度オーラルに受けた怪我で、右眼の力を失っていたのだが……、

「こんな使い方もあったのか……」

まさかそのお陰で……、相手を殺す力を用いずとも。相手に幻術を見せ。このような手段が、可能になっていたとは……、まるで弟の力に似ている。

「神の目に、近いか……」

神の目は、物事の本質を見るだけで、魔法が放たれても無かった事に出来てしまう。能力の使い勝手は、ギラムの目の方が扱いやすいく。剣の腕も上だった。それ故ギラムは自分で戦うことを好む傾向にあった。

だが弱点も自分自身であったのだ。絶対的な必殺の目の力と、剣の腕に頼りきり、真っ向から戦い。敗北を記していたのだから……、

「まさかこんな簡単に、上手く行くとは……」

ギラムは、オーダイに言われた通りにしただけなのだ。頻りにりに首を振りながら、狐につままれた顔をしていた。

「人間向き不向きがある。お前さんの本質は真っ向なら戦うには不向きじゃった。不運なのはそれを可能にしてしまった中途半端な力量が、邪魔をしていたのじゃよ」

その通りなので、返す言葉もない。頭垂れたギラムの肩を叩きながら、

「あの二人は別格じゃて、自分で自分の本質を知ることが出来るものは、人は天才と呼ぶ。お前さんはそうではあるまい?」

その通りなので、悔しいが唇を噛みした。自分の中の葛藤と折り合いを付けて、指を鳴らして幻術を消していた。




━━途端。今まで見ていた街並み。遠く見えた城。街道も何もかもが、消えていた。辺りは急に明るくなって。太陽が登っていた。

「見事なものだ、お前さんは十分。あの二人とためを張れる。精進するがよい」

「ありがとうございます………」

生まれて初めて。ギラムは人に頭を下げた。自分の本質をあっさり見抜き。ラグラドの十八番である。幻術こそが本来自分の力であると正しく理解した瞬間。自分はラグラドを守る騎士となることと考えてた節が、確かにあった……、ラグラドに対して遠慮していたのだ。自分を省みないようにしていたと断言してよい。━━魔眼にまさか……、自分意外の使う範囲を固定することで、幻の空間を作り出せ、本物のように見せることが出来るとは……、


これもこの剣の力……『聖騎士の剣』とは、使い手の魔法を補助することを目的に造られた媒体であり、あらゆる磨耗に耐えうる剣である。さらに剣に宿る。狂喜の女神ルグワイトの力は……、幻影能力……。ギラムの魔眼の能力と相性が良かった。


強力な力を手にした感覚があった。

「時間的感覚が、ずれるのが問題です」

率直な意見に。オーダイも苦笑を滲ませていた。「まあ~たしかにの」

幻影空間を制御していると。同じ景色を見てたから、時間の感覚がずれてしまうのは確か、



━━町から郊外に出た瞬間から、道化に気付かれることなく。惑わせ連れて来たのは、他ならぬギラム自身だった。気を張って気が付かなかったが、全身からっごっそり。魔力を失っていた……、

「ラグラド……、俺は…」

高揚が胸中に広がった。死体を担いで、二人は、オーラル達のいる。首都に急いだ。




━━時は、少し戻り。王座の間から、オーラルが退席した時に戻る。

「ちょっと良いか……、オーラル」

バローナが、困った顔をして、何とも言えぬ。笑みを浮かべていた何かある……。エル、カールの二人に先に戻るよう伝え。「構わない……」

と答えると見るからに安堵した様子のバローナ、何となく予期せぬ事が起こった……、そう認識した。


バローナが案内したのは、エドワルド公爵が公務で使う屋敷で、バローナとデーアは、離れを借りてると聞いた。

屋敷に人の気配はなく。使用人まで居ないのは……、

「地下は物置と。牢屋がある」

何となく。話が見えてきた。


バローナの話によると、黒竜討伐後。間もなくのこと……、

『バローナ様。人が倒れております!』

戦場に人?、違和感があったが、女の子が、頭から血を流して、倒れてるのを見たら……ほっておく訳にはいかなくなった。そこで国境の街ローンの屋敷に運ばせた。

「目覚めた女の子は、自分を女神めがみと名乗った……」

「そうか……」

厄介な事になった、胸中で複雑な思いを抱えながら、バローナと供に地下に降りてくと。清廉な強い魔力を感じた、

━━まるで神殿に詣でたような。清らかな気持ちにされた。



一番奥の牢屋。鉄格子の代わりに、強力な結界が張られていた。

改めて牢屋の中を見れば、髪はブロンド、物憂げな顔立ちが、保護欲を抱かせる美しい少女である。彼女は落ち込んだように膝を抱えて、備え付けの固いベッドに座っていた。

「あっ………、バローナ様♪」

バローナの顔を認め。安堵を浮かべる女神に、バローナは気遣わしそうな眼差しを女神に向けて、見たことないような優しい笑みを浮かべていた。

「惚れたか……」

「なっ……」

真っ赤になって動揺しまくるバローナ、困ったようだけど、ちょっと嬉しそうな女神の様子に。

「これはまた厄介な……」

天を仰いだ。女神=メルディスは、人間だった記憶を残していた。

彼女は女神の力を発動してる間。あらゆる魔法。あらゆる武器の攻撃をカウンターする。絶対防御リフレクターを有する。光の女神の遺物を一部埋め込まれた被験者だった……、

「話は解った……、可能かは分からないが、エルに彼女を任せようと思う」

「エル?、お前が連れて来たあの子に」

目を見張るが、バローナの顔に陰が落ちる。

「驚き、不審に思う気持ちは判る。だがエルは、宮廷魔導師筆頭ケイタの義娘で、次の筆頭になる子だ。安心しろとは言わないが、信用は出来る」ハッと息を飲んで、驚きが顔に広がる。

「彼女を侮るなよ?、あの子は心が読める」

今度こそ青ざめる。よろり机に手を着いて、

「そっその……」

「……とても彼女は苦労した。お前の動揺は解る。しかし一国の民を背負った以上。割り切るんだ」

彼はエルの義父ケイタと因縁を抱えていた。オーラルが苦労をしなければならなかった原因も。バローナなのだから━━━。


ぐっと歯を食い縛り、そうだと力強く頷いた。




━━━翌日……。オーラルに呼ばれたエルは、不機嫌な顔を隠さず。離れを訪れた。



一通り話を聞き終えエルは、不機嫌そうな顔から、少しだけ興味深そうな眼差しをメルディスに向けて、じっと観察を始めた。何となく見つめられることに慣れてないからか、居心地悪そうにそわそわしていた。

「……オーラルのクセに。こんな朝から呼ぶから、何事かと思いましたが……、一応デーアから、写しを預かっています。私なりに分析してみます」

仕方なしと言った感じだが、顔が妙に赤い。昨日の会話読まれたな肩を竦めていた。

「ひとまず……。メルディスのことは、エルに任せるとして……」

問題は、7神官の1人マローダと呼ばれる元赤の民の事だ……。昨夜メルディスからとても信じられない話を聞いた……。「古代の民が……」

変異した赤の民だったこと……、オーラルの予測した通りに。魔導師の塔の地下には、地下施設があって、彼等が解き放なたれたこと……。その者こそが黒幕であるとわかった。

「私達は彼の命令に逆らえられないわ。彼が手にした不気味な武器に触れられただけで、意識を失い、彼の命令が入ってきた」

と言う━━。

メルディスは、命令のプランにあった通り、黒竜が襲われた時。飛び降りて、道化と別にファレイナ公国を目指す筈だった。


しかし誤算が生じたのは、メルディスには未だに人間の心を喪わなかったこと。女神となった後も。命令に抗い続けてた為に着地を失敗した。女神の力である。絶対防御を使う間もなく。頭から落ちた強いショックで、女神の力と命令がリセットされてしまい。今は人間の姿を仮初めに取り戻したとオーラルはそう見ている。


━━━事の次第は、ミザイナ女王、エドワルド公のみ知らせ。了承を得た。


━━昼過ぎ。オーダイ将軍、ギラムが、道化の死体を持って、帰還した。その為王宮は騒然と騒がしくなった。

「明日。軍国の首都を目指します」

会議は、道化の検分が終わるまで待たれ。昼食後。大まかな情報が集まり。報告会が別邸で行われた。

「頼んだ、オーラル」

ミザイナは表面では、神妙な顔を作るが、唇に笑みがあった、三体の怪物脅威が、取り払われたのもあるだろう。



世界会議に知らせた結果。三体の怪物と言う脅威が去ったとはいえ。黒幕の魔人が存在することが分かった以上……。本質的な脅威は取り除かれていないとの決定である。その為の調査をオーラルは命じられた。同行を頼んだのは南大陸を旅し慣れてる。土竜騎士数名と。ファレイナ公国から剣将ルルフ、エフィ両名が護衛名目で付いてきた。



━━エルは、女神メルディスの事があるので、デーアと共に、ファレイナ公国に残ってもらい。その為ミザイナが、オーラルと面識ある。二人の剣将の同行を申し出たのだ。「オーラルさん。おひさ~」

ピョコピョコ手を振る。お気楽剣将エフィ、

「ちょ、お前な~」

慌てる生真面目な剣将ルルフの二人とは、手合わせをした経験がある。あの時より数段腕を上げたようだ、感心してると。「お嬢さん達~可愛いね~。仕事終わったらお茶しない~」

ニヘラだらしなく相互を崩し、軽薄な顔をして馴れ馴れしく。二人の肩に手を置くと。嫌そうな顔を浮かべる二人が、手を上げるより早く、

ピキリ神速の速さで、ドス……、

「うっ……、お前…スタッフの先は」

冷たい眼差しで、睨むエルに、剣将二人が、青ざめた顔をして、プルプル震え抱き合ったちょっと……貫禄出たかも。などと考えてると、

「なかなかの腕前」妙な事に感心するピアンザ。そう言えば、そんな奴だったと、苦笑を洩らした。



━━翌朝……。用意された、ニ台の馬車で、オーラル一行は、国境の街ローン経由で、軍国の首都を目指すことになった。



━━軍国ローレン首都。━━廃墟の城。


破壊された王座に座して。中央大陸の異形の魔人マローダは、三体の怪物からリンクが切れた事に驚き苛立った。

『所詮は、人間を使った人造神に過ぎぬか……、使えぬな……』

金目を細め。禍々しい欲望を、表に宿す。

『まあ~いい。神の遺物を持つ。人間がいたのは、予想外だが実験には丁度よいわ………』

肉食獣のような、牙を剥き出して、ほくそ笑む。カツン……、杖を石畳に打ち付けた。

━━魔人の足元から、魔方陣が現れ。赤錆た鎖に。全身封じられた、双子が古ぼけた棺桶の中にいた……。

『なかなかの素質だったが……、所詮は人間よ………』

ニタリ嫌らしく笑い。虚ろな目の双子を。覗き込み。完全に意思の光が消えてるのを確認して、杖の柄の不気味な蛇のミイラ=バシリスク。

100年間ほど魔獣の毒液に漬け込んだ一品で。生物の意識を破壊して蝕む強力な呪いが込められており。バシリスクの牙にマローダの血を含ませることで。呪いを作り出すことが容易になっていた。闇の女神カーレルの強制の加護ギアスを併用することで。自我すら失ったマローダの操り人形が出来るのだ。



……呪いと言う毒をたらふく食らい、既に双子は、精神を汚染して、自我すら破壊していた。

『新たなる。破壊の神の誕生だ!!』

狂った盲信の咆哮。虚ろな目の双子を見つめ。恍惚と笑み。来たるべく戦いに思いを馳せた……。



━━暗雲が突如現れたのは、2日目の夜のこと……、


━━雨を避けるため、廃墟の集落で、一夜を過ごすことにしたオーラル達だが、雨音が妙に気に障り。直ぐに目を覚ました。身体を起こすと何故か壊れた壁から、鋭い眼差しで、雨を睨むピアンザに気が付いた。

「何か、気になることがあるのか?」

オーラルの問いに一つ頷き。迷いながら、

「六将のグラベル、グラムが、この地にいるはずなのだが……、連絡が取れない。あの双子は、天候を操る。補助魔法を得意としている……」

意味ありげなしゃべり方。如何にも。口下手なピアンザらしいが……、聞き逃せない内容である。

「……あの双子が……、バローナも気になること言ってたな……、自分の国を壊され。復讐しに。赤の民……、マローダを狙った可能性があるか……」

厳しい顔を崩さないピアンザの様子から。なるほどと唇を噛んでいた。

「もしや……最悪の事態を招いたか?」

自分で呟き。ハッと目を厳しく細め。魔法構築を開始。驚くピアンザに、

「既に双子が、敵の手に落ちてれば……」

僅かな情報から、ピアンザも理解の光を宿す。二人の魔力の高まりに、勘の鋭いオーダイ、きっちり装備を着こんだカールが集まった、

「オーラル~防御系か……、雨に紛れて~魔力が周囲を囲んでるな?」

お茶らけ。軽薄そうな顔を作るが、目は鋭く。ピアンザが意外そうな目をカールに向けていた。それに気付いたカールは、「俺っち回復系の訓練積んでたから~、僅かな魔力の違いが解るんだ~」

照れ臭そうに、肩を竦めた。

「確か……、オーラルの同僚に、エレーナ大司教の駄目子息がいたな」

ちょっと驚きを隠せず。ピアンザの呟きを、敏感に聞き取り。思わず苦笑した。

「魔王~てのは、そんな細かい事情まで知ってるのかい~」

「そんな所だ」

恐らくそうではあるまい。パルストア帝国、あれほどの大国である。

アレイク王国の黒衣に。似た組織はあるはずだ……。オーラルの表情の変化に。敏感に気付いてるピアンザは、その通りだと小さく頷いた。

「これって、多分~天候系かな~」

補助魔法の最高峰が、天候魔法である。

「風が、強くなってきたね~。オーラルあの雲~かなりヤバイな」

魔方陣を描き、広範囲の結界を構築。雨音が強まり。話し声に何事かと、ルルフ、エフィ二人の剣将が、眠そうに目をこすりながら、

「何事?、みんなで集まってどうしたの」

「何か、騒がしいよ~」寝ぼけたルルフが、エフィの服の裾を掴んでた。

「カール、いざとなったら二人と土竜騎士達を頼む。ギラムはオーダイ将軍と、ピアンザは俺と行動を」

「あっ、あの~」

困惑してるルルフには悪いが、彼女に説明する暇はない。

「来る……」

オーダイ将軍の声、答えたかのように、落雷が何度も。何度も。小屋に落ちて来た。

「結界」

風の属性に分類される雷は、まるで意思を持った竜の咆哮のように、耳打を打つ。つんざく雷鳴に怯え、耳を押さえるルルフ、エフィを立たせ。カールが隣室に避難した。

ピアンザは魔王の杖を手に、オーラルに目配せる。

オーラルは、結界を解いて、

「因子を放つ。地下掘削アースホール」小屋をまるごと、地下に落とした、

「キャアアアアア~」

「イヤァアアア」

なんて叫びが聞こえたが、気にする余裕はない、ピアンザの掲げた魔王の杖の鎖に繋がれた、三体の獣。猿の顔をした雷獣ヌエが解き放てば、自分たちに落ちる落雷が、四人を避けながら。近隣の家々を破壊して行く。

「幻影よ……」

ギラムは左目の力を解放。自分たちのシャドウが、現れ走り出した。落雷は、シャドウを追うように、移動を開始した。

「1人見付けたわい。ちと行くかの?」

ギラムの返事を待たず。飄々と走り出した。


ヌエの背に乗るピアンザは、鋭く遠くを見ていた。

「見付けた……」

ピアンザはヌエを駆って、走り出した。

「おいおい……置いてくなよ」

呆れたオーラルだが、仕方なく補助魔法を唱え。四肢を強化。風の結界を自身の周りに張って、背後に凄まじい爆発を起こしての大ジャンプ、ついで足元の下方に結界を集束して、一気に空気を爆発させた。

「グッ……」

━━凄まじい加速で、ピアンザに追い付く。流石に呆れた顔をするピアンザに、言い訳しるような口調で。

「ちょっとアレイクから、ラトワニアに行く用があってね……」

半日で駆け抜ける為に、編み出したとは言えなかった……。


タイミングを失敗すれば。足がぶっ飛び兼ねない際どい制御が必要になる魔法だからだ。ギリギリのタイミングで落雷を回避。オーラルは危険を顧みず。リスクを承知で、重複魔法を使う。

「オーラルらしいな……クス」

ピアンザは小さく笑い。懐かしそうに、目を細めた。



━━地下に落とされた、カール、ルルフ、エフィ含めた土竜騎士6名は、はぐれワームが、地下に作った。巣に紛れ込んでいた。

「なんで地下に!」

「頭を下げろ」

殺気を感じて慌てて、ルルフは頭を下げた。その僅かな上を、はぐれワームの開けた口が、通り過ぎた、安堵するエフィ、


━━その瞬間には。カールは、一度バックステップしてから、必殺の刺突の構えを取って、はぐれワームの側面……、バシュと凄まじい耳鳴りがして。土塊が降り注いできた。『キャアアアアア!』

二人の剣将が抱き合う間に。土竜騎士三人は、素早く結界を張って防御を固めた。


━━もうもうと上がる土煙に。視界0……、何が起こったか、さしもの剣将二人にも理解出来ない……。


視界がクリアとなり。二人が見たのは……、巣の壁に激突したはぐれワームの巨体。理解した二人が剣を抜こうとした瞬間。三人の土竜騎士は結界を解いて、

「流石ですな、はぐれワームの弱点を知ってられましたか?」

「ああ~オーラルから聞いてたからね~」

お気楽な返事が反ってきて、二人が訝しみ顔をみ会う。


……ようやく……、はぐれワームの現状を見て、息を飲んでいた。

頭部に大穴が開いていた……。「ヤレヤレ~難儀だね~、優秀な義弟を持つことになると」

軽薄に笑うが、オーラルから以前譲り受けた、魔力剣レイピア

「まあ~こいつは気に入ってるがね」

気流すら。切り裂く魔法が付与されているのがまたいい。補助魔法を得意とするカールならでは、魔法剣の長所、短所を見極め。我が力としていた。

「あんたが……あれを?」

二人はカールの見た目と力量のあまりなギャップに、唖然としたが、

「たっ、助かった……、一応例は言う、ありがとう」

短く礼を述べ、顔を上げた瞬間に見たカールの顔をまじまじ見て、いつものへらへら笑いが消え。鋭く目が細められ。精悍に引き締められていた。それどころか……、凄まじい存在感すら漂わせている。

「あんた本当に同一人物かよ?」

些か失礼なエフィの物言いだが、無理もないと同行してた、土竜騎士3名は、訳知り顔で首を振る。

「ルルフ、エフィ!、次来るぜ」

にやり不敵に笑いながら、レイピアを構えるカールに見つめられ。二人は顔を赤くしながら。

「はっ、はい」

「うっ、うん」

素直に頷いていた━━。


━━━幻影のシャドウを先に走らせ。追走するようギラム、弓を袈裟懸けにオーダイが、面倒そうな顔をして、立ち止まる。

「やれやれ……、殺す訳にはいかんかな……」

木に背を預けながら、苦しそうに、顔を歪める青年を見付けていた。

彼の身体から、膨大な魔力が、空に向かって放たれている。

「これはむちゃくちゃな……」

あれだけの魔力を放出し続ければ、命に関わる。一抹の不安と悲しみを覚えながら。ギラムは『聖騎士の剣』を手にして迷いが滲む。

「まて、お前さんじゃ~殺してしまう。どれどれここは一つわしが手本を見せてやろう」

それを制して、オーダイ青年を見ていた。

「なに……、あれを死なさず倒せるのか?」

「まあの~、わしなら可能だで」

目をすがめ愉しげに微笑していた。素早く弓の能力固定ロックで魂を見ていた、黒い淀みが魂を黒く変質させていた。「賭けになるかの~」

囁き、余分な部分だけに。狙いを定め。放った。矢が装填されてない筈の見えない矢は、



キン!、

澄んだ音を立てて、何かを破壊した。

━━絶え間なく。シャドウを攻撃してた落雷は、徐々に減って、やがて風雨のみとなっていた━━、



青年は顔を青ざめさせ。そして……安堵するように、膝を崩れさせていた。

「彼は?」

「生きている。魔王ならば、何とかするだろう」好好爺とオーダイは笑う、ギラムは信頼を込めて頷いていた。

「さて……、ワシらは、休める場所を見つけて、休むとするかの~」

オーダイに代わり、青年━━弟のグラムを肩に担いで、二人は森の中を歩いてく。



鋭い嗅覚を持つ。雷獣ヌエは、遥か遠くで、雲を作り出す。双子の片割れを見つけた。

意識を繋げていたピアンザは、ヌエに向かうよう命じた。追走するオーラルに。ミザイナ部隊で使っていた、ハンドサインで、見付けたこと伝えた、


━━双子の片割れがいたのは、魔導師の塔・跡の瓦礫。


辺り一面平坦な平野に位置する魔導師の塔だが、地形的に山岳地が右側にあるため。雨季になる霧が発生しやすく。雲に包まれてるような景色となっていた。また山岳の向こうは大海原が見渡せる絶景。天候を操るならばうってつけの地形である。



徐々に魔導師の塔に近付くにつれて、目のよいピアンザは、瓦礫の中心に立つ眼差しの青年を発見していた。青年はゆっくりとピアンザに向け手を掲げた



━━ピアンザは、咄嗟に魔王の杖を横に振るう、

キン。澄んだ金属音。再び杖を振るう。ゾクリ……、嫌な予感がして、ヌエにもっと高く飛ぶよう……命じた、 翻ったヌエを狙って、無数の雹が、真横から殴り付けるように、一陣の風に混じり通り抜けた。

「何だ……今のは」

ゾクリ………、

問答する間はない……、上下左右から、無尽蔵に風に運ばれたまるで弾丸のような雹が、流星群のように、ピアンザを襲う。


ピアンザは咄嗟に、ヌエから飛び降りて、ヌエを杖に戻す。自由落下に、風は対応しきれないとの判断である。杖に繋がれた獣、ウオルフを解き放つ。巨大なウオルフは、通常の狼の数倍。馬より一回り大きなウオルフは、落下するピアンザを、下から飛び上がり、背に受け止め、上空から落ちてくる攻撃、叩きつけるような雹を。ジグザグに駆けながら、回避してゆく。

「やはりな……」

まるで自分の考えがない……、

「オーラル頼んだ……」

信頼を込めて呟いた。



━━イライラと不気味な骨の杖を、異形の魔人マローダは握る。

『ちょこまか小賢しい……』

暗い眼差しに、殺気を放つマローダは、ニタリ嫌らしく笑い、闇の魔法を唱え出した、闇のダークアローである。

『死ね!人間よ』

怨嗟の言葉と共に。魔法を放つ、

「因子を解き放つ。光球ライト」相反する属性、光の玉が無数に、闇の矢に当たり、相殺された。

『何だと?、ただの光球で防いだ』

呆気にとられたマローダは、殺気を感じて、咄嗟に杖を前に出していた。

『グッ……』

凄まじい衝撃に、マローダは泡を食った。魔人の目で、僅かに捕らえられる。剣速に顔を歪め。力任せに、打ち払う、

『おのれ……たかが人間が……』

空気が抜けるような、言葉が洩れた、古い言語だ、マローダは自分は特別だと、信じて疑わない、

『我こそ……、闇の女神の祝福を受けた、魔人にんげんよ』

怒りに目を尖らせる。

「遅い……」

すぐ左脇より声がして、ブワリ熱風を感じた……瞬間、全身に。凄まじい衝撃と、痛みに悲鳴を上げた。

プスプス肉の焼ける。悪臭が、鼻を突いた、顔をしかめながら、オーラルは、上体を起こした魔人マローダに向けて、渾身の一撃を見舞った、

『舐めるな人間!!』

骨の杖を掲げ、聖王の剣の一撃をまともに受けた、


ピシリ……、


異音を立ててマローダの杖は砕け、驚き目を見張る間もなく。首筋から心臓まで、袈裟懸けに斬られていた……、

『馬鹿な……ごふ』

血を吐き出したマローダに、容赦なく聖王の剣で、一刀両断した。

「杖を破壊すれば恐らく……」

南大陸最大の国ダナイ。城の天守閣と呼ばれる王座の間に魔人マローダは、人間の骨で作った玉座を置いていた。先ほどまでマローダが見ていた不気味な鏡の写した光景を見ていた。


━━突然、攻撃が止んで、棒立ちになったグラベル、

「オーラル!!」

歓喜を持って友に感謝を叫び、魔王の杖の真の力を解き放つ……、

「宝物庫を開け!大海魔クラーケン

白銀の触手が三体の使い魔の守る。神殿を模した、精緻なリレーフより。無数に飛び出して、グラベルを覆った。


『魔王の杖』とは、海神プラトーンが、神に匹敵する。魔獣クラーケンを封じる神殿である。魔獣クラーケンは、闇を喰らい封じる力を持っている。その力を一部とはいえ使うことで、無数の鮹の触手は。グラベルに巣くってた異物のみ引きずり出す。

「グッアアアアア!」

全身にズプリ入り込む触手は、凄まじい痛みを伴う。

「グッ……あっ、ああああ、あ゛ああああああああああああああああああああ!!」

つま先立ちになって、海老ぞりになるグラベルは断末魔の叫びを上げて白目を向いた。しかし触手はますますづぶり胸に沈み込み。最奥部にある魂に巻き付いた。

びくびくびくびく、痙攣し始め泡を吹いていた。


━━ズルズル……、黒い。魂にべっとり絡み付いた闇を徐々に引きずり出して行く。抵抗するマローダの影を、グラベルの魂から切り離したブツリ、

『グッアアアアア』

怒りの咆哮を上げた影は、そのまま魔王の杖に飲み込まれ……消え失せた。


ピアンザは一息吐いて。使い魔ウオルフを杖に戻すと、倒れ伏したグラベルの脈を確かめ。安堵の笑みを浮かべていた。

エピローグ



━━最後の映像が消えた瞬間。オーラルは魔法の鏡を、切り裂いて、砕いた……。

そのせいか判らぬが、徐々にダナイを被っていた闇の力を失い……、ダイナの王城から、おぞましい力が消え去ったのを感じた。



辺りには瓦礫だけが残された町並みを見下ろして。訝しい眼差しをある一点に向ける。

「何を作ったんだ……、あれだけの人間で……」厳しく顔をしかめた。オーラルの眼前に広がる光景……、



町の中央が、綺麗に窪地のように溶かされ。恐らく白い粒子の小山は……。人間の骨……、10万人はいたであろう、大国ダナイ市内は……、無人だったと、土竜騎士長ボルド・ホウリーから、聞かされていたが……、



……ドクン……、


魔人マローダは、神を自らの手で創りたかった……、自分こそ。創造神となるかことを信じて疑わなかった……、


ドクン。


ドクン……。


胎動は……、


南大陸の地下━━。


はぐれワームの巣くう。遥か地下にて、小さな繭が明滅する。

三体の怪物、疑似神にされた狂気の双子、魔人マローダをどうにか倒したオーラル達だが、世界の危機はまだ始まったばかりである。また同じ物語か、別の物語で背徳の魔王でした。

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