閑話シンデレラのようですね。何か?
━━━15年前……。アレイク王国。
オーラル・ハウチューデン准将のあまりに、大きな偉業を、人々は称えた。
それが……僅か数日で、騒然となった━━、
オーラル・ハウチューデン准将が、准将の職を辞したと言うではないか……。
正式に、国王から発表された内容に、民は、度肝を抜かれた……、
オーラル・ハウチューデン陛下の申し出により。中央大陸で唯一の国プロキシスと。我が国は同盟を結んだ……、
当初言ってる意味に気付く者は希で、目端の効く商人だけである。
それでも人々はみな……オーラル・ハウチューデンが、新たなる国を起こして、国王になることを、祝福した。
約一名を除いては……、ミレーヌ・バレンシア・アレイ皇女である……。
不機嫌な顔を崩さぬミレーヌ皇女に、匙を投げた、侍女ジーナは、
「仕方ないですわね」
周りは気付かないようだが、姫様は、仄かな思いを、オーラルに抱いてたのだから……、
しばらく一人にして、落ち着いた所でお腹が空くでしょうから、甘い物を用意しましょうかと手を叩いた、ミレーヌはジーナが退室すると。そそくさジーナの侍女服を取り出して、悪戯ぽく笑う。本当はミレーヌだって、オーラルのこと、諦めていたが、
自分を常に気にかけてくれていた忠臣に、直接会って、礼が言いたいと考えていた。ジーナの着替えをこっそり拝借して、ドキドキしながら、秘密の抜け道を通って、外に出たら……、
「レヴァ?」
驚いたことに、父の護衛してた、王族直属護衛の1人で、ミレーヌとも言葉をかわす程度の。顔見知りである。
「ミラに頼まれまして……、姫様がお忍びで、現れるからと……」
ミレーヌ姫が知る限り。王族直属護衛は2人しか見たことがない。ミラ・バウスタンは王妃の護衛に付いている。ほろ苦く笑うレヴァに。ムッと口をすがめた。ミラに見透かされてたとわかったからだ、
レヴァの父は、ピオレーテ家と言う。中流貴族である。代々近衛連隊の小隊長を務める家系で、レヴァが異例の出世をしたため。何かと苦労が堪えないと母が嘆いてる以外は、周りの評価は高いが、
ミレーヌはちょっと苦手意識があった、周りは女性が多く。歳が近く同性のミラは、何かとミレーヌの性格を把握して、先回りされ驚いてたが……、
不貞腐れ気味の姫様に、肩を竦めながら、
「姫様……」
「ミーレと呼んで下さい」
ジロリ睨まれ、仕方なく頷き。
「ひ……ミーレ、最近人気のお菓子を出す。店に行きませんか?」
人気→お菓子てワードにグウ~音が鳴る。思わずプッと噴き出すレヴァを、真っ赤になりながら、睨み付ける。
「ゴホン失礼。ブルーは今評判のカフェです。ミーレさえ良かったら……」線の細い。一見女性と見間違う、長い睫毛と絹のような肌。男性と知っててもちょっと赤くなる。ハンサムな女性と良く間違われる。レヴァはジーナにからかわれる姿を見ていた、成る程と感心した、
「仕方ないわね…」 同性に誘われたようで、違和感は無かった、城からあまり出ることが無いミレーヌにとって、民の生活を直接垣間見ることは、貴重な体験である。
中央公園では、中央大陸事件の後で……、今年の春を祝う祭りは中止となり。野外公演まで中止された、そうなると楽しみ甘味に向かう、予想外の人出に驚いてたが、理由は直ぐにわかった。ヴァレ・オーダイ将軍が、身重の義娘クエナ・ガイロンの身を気遣い。オロオロしてる姿が、妙に好感が持てたのだ、一騎当千……、英雄と呼ばれるオーダイは、准将の地位に着いた年に、妻を亡くしており、実子ヴァレ・カルバンを男手で苦心して育て、その息子が、嫁を貰い。娘が出来たと喜ぶ姿が、噂されていた、
「そんなに食べて大丈夫なのか?」
「ええ~すっごくお腹空いちゃうんです」
幸せそうに笑う顔は、慈愛に満ちていた。
「クエナちゃん!」 知り合いを見付けて、まっしぐらな姫に、顔に手を当てて天を仰ぐ。
「これは……」
立とうとしたクエナを、やんわり押し留め。柔らかく笑うミレーヌに、クエナは夫の親友をチラリ見てから、クスリ小さく笑い、
「ミーレ座ったら?」
「ありがとうですの♪」
友達親しい者にはミーレと呼ばせていた、人前で、相手に気を使わせないように。ミレーヌ姫なりの心遣いである。面食らった義父の隣を勧めた。
「レヴァ、ミーレにデラックスチョコケーキと、私にも野イチゴのロイヤルミルクティーをお願いね」
ぱちりウインクされて、仕方ないなと肩を竦めた、子をなしてからクエナは変わった、以前は肩肘張った、無理をしてるのが見ていて痛々しかったが、
持ち前の明るさと、おもいっきりの良さが、表にでるようになったのだ、
「ミーレ……隊長に会われるのですね?」
訳知り顔なクエナに、小さく恥ずかしそうに、ミレーヌは頷いた。
「今日でしたら、ミリアさんの店に伺うべきですね」
「ミリアさん?」
キョトンとした、
「はい、レヴァに場所を伝えときます。彼女なら、力になってくれますから」
そっと幼なじみである。姫の手を握る。
「ありがとう……クエナちゃん」
二人は、地下迷宮の旅を思い出していた、僅か一年前なのに、本当に色んな事があった、別れや出会い……、少しずつ人は成長して、歩いて行く……、あの旅でミレーヌは、学んだのだ、
「それにはまず。美味しい物食べましょうね♪」
10個目のケーキがクエナの前に置かれた。あまりの大きさに、ミレーヌは目を丸くした、
「どうぞ……」レヴァが、可愛らしいチョコレートケーキをミレーヌの前に置きながら、オーダイ将軍と見合う。クエナの食欲は凄まじいのだ、全然太らないから不思議だと、二人は首を振りあった、
「あっ。美味しいですの」
すっと野イチゴのティーをテーブルに置いて、
「ゆっくり召し上がれ」
不器用だか、実直そうに笑う店員。パテシェに小さく頭を下げた、彼こそ巷で噂の……。天才パテシェブルー・ファミイユと呼ばれる。不良軍人。
知る人は少ないが、彼は優秀な元近衛連隊隊員で、オーラルに押し付けられて、王族護衛の1人だが、よっぽど暇な時以外は、護衛任務をしないで、中央公園でカフェを開いている。要するに変わり者である。
お忍びで、レイダ王妃母も通いつめてるとは、娘のミレーヌ姫は知らない。
クエナに念を押され。レヴァは、西の職人通りにある。ミリアの店を訪ねた。可愛らしい小物が、小さなお店に、見やすくリスプレイされた、コジャレたお店に、ミレーヌは興味津々に見ていた、
すると優しそうな店主に呼ばれ。アレイク王国では、珍しい黒髪が印象的な女性が現れた、
「あら?レヴァが女の子連れなんて、珍しいわね」
「あっ……」
笑うと彼にとても似ていた、
「実は……、オーラルと話したいそうなんだ……」
訳ありなレヴァに。ちょっと驚いてた顔をしたが、朗らかに頷き。
「ちょっと待っててくれる?、直ぐに手配するから、奥のラウンジで休んでなさい」
「ミリア助かる」
安堵の吐息を吐いた。オーラルは今では、時の人だ、中央大陸で国王になるのだから、有力者からの謁見で、寝る間も、食事する間もないほど、忙しいと耳にしている。自分で会いに出たのだが、可能なのだろうか?、首を傾げていた。
程なくして、ミリアがオーラル准将を連れて戻った、呆気にとられてたミレーヌ姫に、魅力的に笑みを向けて、
「丁度店にいたのよ」
オーラルは数人の信頼できる人物に。どうしてもオーラルに会いたい時に、連絡が取れる場所を指定していた、
「疲れてるようだな……、オーラル」
シニカルな笑みを向けるレヴァに、肩を竦めながらも、欠伸を噛み殺す。
「ちょっと姉さんの職場で、仮眠とってた」
「あっ……」
二人が並ぶと、はっきり解る。姉弟だと、意味ありげなミリアの目が、頑張りなさいと言われてるようで、小さく頷いた。
「彼女が、お話あるそうよ」
ミリアに紹介された相手……、ミレーヌ姫に気付いて、眠気が霧散した。
ミリアとレヴァは気を利かせて、ラウンジから出た。
しばらくして……、
目は赤いが、スッキリした顔のミレーヌ姫と、オーラルが出て来て、ミリアがしばらくミレーヌ姫と話して、落ち着いたところで、
「ミリアさん……、また来ても良いですか?」はにかむ可愛らしいミレーヌを、優しく抱き締めて、
「構わないわ、そこのレヴァに連れて来て貰いなさい」
「おっおいミリア……」
困惑するレヴァをひと睨みされ、押し黙らせると、朗らかに笑みを向ける。
「ハイですの!」
弾けるようにミレーヌは、嬉しそうに笑った、
数ヶ月後……、
惜しまれながら、オーラルは、中央大陸に移り住み。母が北大陸に移り住むも。ミリアは変わらず。職人通りで店をやっていて、ミレーヌは密かに店に通うようになる。やがてミリアを姉のように慕う姿を見ていた職人達も。内緒にしてくれた事が項をそうして……、
誰にも気付かれず。侍女ジーナも仲間に引き入れて、数年の時間。レヴァは苦労を強いられた、
幼い無垢な心根のミレーヌ姫は……、常に側にいて、優しいレヴァに少しずつ……、本当にゆっくりと、惹かれていった……、やがて二人は恋に堕ちるが……、また別の話。




