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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
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君の名を 伍

ストックが無くなってきた〜…見切り発車で書きはじめた小説なので、先が全く見えません(笑)

「先生、一つ聞いていいですか?」


机に向かい、シャーペンを動かす手を止めて、想真は佐渡を見あげる。


「勉強に関する事ならな」


佐渡は椅子に腰掛け、読む本から視線をあげずに答える。


「朱里は、よく休んでるみたいですけど、身体が弱いんですか?」

「…関係ねぇだろ」

「関係大アリですよっ!俺と朱里は運命の赤い糸で結ばれてるんですからっ!」


バンッと机を叩いて抗議し、自分の左手の小指を見せ付けるように突き出す。


「勉強と関係ねぇっつってんだ。お前の妄想内の関係なんて知るかっ」


吐き捨てるように言う佐渡に、想真は不満そうに顔を歪める。


「妄想じゃないしぃ〜」

「お前なぁ〜」


佐渡のこめかみに青筋が浮く。読んでた本を閉じると、想真を睨みつけた。


「誰のせいで、俺が休日出勤してると思ってんだ!!」

「俺だって好きで補修なんか受けてませんっ」


無駄に真面目な顔で答える想真の目の前に数枚の紙が突き付けられた。


「お、ま、え、が!真面目に小テストを受けてりゃぁ、補修なんてしなくてすんだんだ!」

「習ってなかったんだから、仕方がないじゃないですかっ」

「習ってないって部分はいいんだよっ!問題は、お前の頭だっ!!」

「失礼なっ!俺は馬鹿じゃないぞ」


その言葉に、佐渡は冷たい視線を返す。


「『Xを求めよ』って問題に、『俺が求めてるのはXじゃない!朱里だぁー!』何て書く奴は、馬鹿だよ」




先日行われた各教科の小テスト。以前の学校で習っていなかった部分は、空けといていいと言われた想真は、テストの後半部分の解答を書かなかった。

そこまでは良かったのだが、想真は空白部分を阿呆としか言えない言葉で埋めたのだ。

最初こそ笑っていた教師陣も、ソレが小テストをした全教科だったのを知ると、途端笑顔が引き攣った。

本人に、何故こんな解答をしたのかて聞くと「空白がもったいなかったから」と、無駄なところでエコ精神を発揮させていた。


「…なら、この空白には?何も書いてないけど…」

唖然としながらも、テスト用紙の上部にある空白を指差す。そこは、何度か消した跡がある空白。


「ソコは問題の解答を埋めるための空白。下は答えなくていい、って言われたから無駄な空白。ね?もったいないでしょう?」


首を傾げて無邪気に微笑む想真に、教師陣は頬を引き攣らせながらも誰一人として反論出来なかった。

だからといって毎回こんなテスト用紙を出されたらたまったものじゃない。

ならば、無駄な空白とやらが出なければいい!という結論に達し、週明けには再びある小テストに向けて白羽の矢が当たったのは担任である佐渡だった。

他教科担当の教師達に、想真に今習ってる所まで教える役目を与えられた佐渡は、最初こそ拒否したものの、全員に「お前が担任だろう」と言われれば、反撃も出来ない上に、元来面倒見の良い佐渡は受けざるを得なかった。




そして現在に至る。


「だって、目の前にいる彼女を見ていたら、まるでコンコンと湧き出る泉の様に、愛しい気持ちが溢れて、書かずにはいられなくなったんですよ」

「沸いてんのはてめぇの脳みそだよ。いいから、サッサとその公式を解きやがれ。終わったら次は化学だ」

「…俺、今日は用事があるんですが、コレは何時に終わりますか?」

「自業自得だ、バカタレ」

「うぇぇ〜」


唸り声と共に机に突っ伏した想真に、佐渡が問う。


「…用事って、何だ?」

「朱里に婚約指輪を贈ろうかと!」


突っ伏していた顔を勢いよく起こした想真が、瞳を爛々と輝かせて言う。


「……聞いた俺がバカだったよ」

「失礼なっ!超重要事項だっつの!早く俺のモノって示しとかないと、飢えた獣に食われるっ!」

「その筆頭が何言ってんだ」


佐渡が興味なさ気に視線を逸らすと、いつになく真面目な声が聞こえた。


「…先生には分かんないですよ」


思わず視線を相馬に戻すと、両手で拳を作り俯いていた。拳は僅かに奮えている。


「…ずっと、求めていた存在にやっと、逢えたんだ…妄想だと笑われたっていい…俺にとっては、紛れも無い事実なんだっ」


漆黒の髪が邪魔して、想真の表情は見えない。だが、その声には思いがこもっていた。

佐渡は思わず言葉を飲み込んだ。

何も、言えない。そう思ったのだ。沈黙が教室を支配する。

佐渡は暫く考えた後、ため息をついて頭をガシガシと掻いた。

自分でも甘いとは思うのだが、あの声を聞いて何もしない程冷徹な心を持っていない。


「わぁ〜ったよっ!ソレ終わったら今日はもう終わりだっ!」

「よっしゃぁぁっ!終わりましたぁぁっ!!」


その言葉を待ってましたとばかりに、俯いていた顔をあげ、満面の笑顔を佐渡に向ける想真からは、先程の真摯な雰囲気は微塵も感じられない。


「男に二言は無いですよね?」


無言な佐渡に、邪気まみれの無邪気な笑顔で微笑む。


「んじゃ、今日は俺町に出るんで!」


そう言いながら、荷物をテキパキと鞄に詰め込んでいく。

ブチン

と何かが切れた音がしたが、せわしなく動いていた想真は気づかなかった。


「先生、ご指導有難うございました!また、よろしくお願いします!では、失礼します!」


ペコリと綺麗なお辞儀をしてから、教室を出ていこうとする想真を、低い声が呼び止めた。


「……待て」

「へ?」


俯いている佐渡の表情は見えないが、気のせいか黒いオーラで包まれている気がする。

思わず想真の頬が引き攣った。


「せ、先生?」

「確かに、男に二言は、ねぇ」


珍しく戸惑い気味の想真に、一言一言強調して呟きながら、胸ポケットからタバコを取り出し、口に加えてライターで火をつける。

片手をポケットに突っ込み、怠そうにゆっくりと想真に近づいて来る。


「だから、今日は終わりに、してやる」


ふぅ〜っとため息と共に紫煙を吐き出す。煙はゆらりと漂い窓から吹き込む風に散らされた。


「だがな」


自由な手で、前髪を掻き上げる。あらわになった瞳は剣呑な光を宿し、口許は僅かにカーブを描いている。普段纏っている緩い空気は完全に姿を消し、本性が剥き出しになっている。

想真は固まったまま汗をたらし、ゴクリと唾を飲み込んだ。

徐々に迫る佐渡に、片頬が引き攣る。


「あんま、大人舐めてんじゃねぇぞ?」


それはそれは黒い笑顔を浮かべた佐渡は、固く拳を作った。



朱里「……禁煙中じゃなかったの?」

佐渡「あぁ〜最高記録更新中だったのにぃ〜」

愛姫「そもそも、禁煙中なのに何でポケットに入ってんのよ?」

佐渡「邪魔する奴がいるんだよっ!」

朱里「ちなみに、最高記録は?」

佐渡「……10日?」

愛姫「みじかっ!やる気あんのかっ!」

佐渡「うっせぇっ!イライラしたら吸っちゃうんだよっ」

想真「先生、ダメだなぁ〜」

佐渡「お前が言うなっ!!」??「優チャンだめだなぁ〜」ニヤニヤ

佐渡「優チャン言うなっ!つか、お前だろ!ポケットに入れたのっ」

??「さぁ〜?」ニヤニヤ



後書きにて新キャラ登場。

いつ出すかも決まってないのに、勝手に出て来やがった……あれ、デジャヴ?

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