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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
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偽りの神 八

お久しぶりです。


あ〜んど。



メリークリスマス!!

神夜がのつんざくような悲鳴が鬼灯の鼓膜に響くも、無情にも血ぬれた爪は止まらず鬼灯の身体を切り裂く寸前まで迫っていた。


もう駄目だ。誰もがそう思った時、甲高い音が室内に響いた。


「――待たせたな。鬼灯、神夜」


「・・・と、きわ?」


軌跡を描いて襲いかかる爪を防いだのは、深緑の髪をなびかせた常盤だった。

その手に握られた刃が、ギリリと鬼の斬撃をとどめていた


「ふむ・・・お主、青の鬼の一族か?・・・相も変わらず憎らしいこと」


少女の口端がつりあがり弧を描くも、その赤い瞳が憎々しげに細められた


「・・・お前はっ・・・鬼炎<キエン>かっ!?」


場違いな少女の声に目を向けた常盤は、切り結ぶ鬼の後ろにたたずむ少女を見て、目を見開き声を荒げた。


「さよう。ひれ伏すがよい」


己を知る常盤に気をよくしたのか、鬼炎と呼ばれた少女がニコリと妖艶に微笑む。


ギィィンッ!!


金属のこすれる音を響かせ、常盤が鬼の爪を弾いた。

予想外に力負けした紅は、己よりはるかに小さい常盤に力負けした事が悔しいのか、グルルルと唸りながら、鬼炎のそばまで退いた。


「――申し訳ございませぬ」


「構わぬ。気に病むな、アレは強い」


「・・・鬼灯、大丈夫か?」


大きな身体を丸めて、鬼炎のそばに身を寄せてきた紅の背を、鬼炎は慰めるよに撫でた。

そんな二人から目を離さずに、警戒しながら常盤は背後にかばった鬼灯に声をかけた。安堵したのか僅かに肩の力を抜いた鬼灯が、唖然と常盤を見上げた


「・・・常盤ッ。神夜がっ!!」


常盤を見て張りつめていた糸が緩んだのか、泣きそうな声でそう訴えた後、壁際で蹲る神夜のそばに這うように近づいた。


「神夜っ」


「ほ、うず、き」


鬼灯の伸ばした手に、神夜も手を伸ばそうとするが力無い腕は、少し床を這っただけだった。かわりに近づいた鬼灯が、神夜の身体を強く抱きしめる。


「なんとも、感動的な光景ではないか。のう?紅、私も抱きしめておくれ」


クスクスと馬鹿にしたように笑いながら、鬼炎が傍らの紅に寄り添う。それに同意するよに、紅がニタリと醜い口をゆがめて笑った。


「――貴方が望むならば、いつでも」


「フフ。愛おしい奴じゃ」


「おいおい、“鬼”と“邪鬼”の睦愛なんぞ、見たくないぞ」


冗談混じりのあきれた声を出しながらも、警戒を解かない常盤に鬼炎は以外そうな顔をした。


「ほう・・・コレが“邪鬼”であることに嫌悪を示さぬのか?」


「どっからどうみても“邪鬼”だろう。それに、俺は常に冷静なんだよ」


「それは素晴らしい。見上げた根性じゃ」


「どうも。だが、驚いではいるんだぜ? 何だソレは?」


「私の最高傑作じゃ」


「・・・で、この村の周囲に頻繁に現れた“邪鬼”は失敗作ってわけか?」


翡翠の瞳を細め、地を這う声を出した常盤は明らかに怒っており、殺気を帯びた視線を平然と受け止め、納得したように微笑む。


「なるほどの。アレらを処分してくれていたのは、お主たちであったな。確かに、あれだけの数を鬼灯一人にさせるのは、無理があったか」


「・・・そのために、鬼灯を?」


常盤から発せられる怒気が増し、鬼炎側についていた男の身体から汗が噴き出る。そばにいるだけで汗が止まらないのに、その怒気を直接向けられている鬼炎と紅は相変わらず涼しい顔をしていた。


「まぁ、それだけではないがの」


「・・・そうか」


「ところで、そこを退いてくれないかの?私は、愛おしい神夜に用があるんじゃ」


「退くわきゃねぇだろ?」


「ふぅむ、やはりか」


困ったなと言うように、溜息混じりに肩をすくめる鬼炎だが、その顔は困った様子は欠片もなく、寧ろこの状況を楽しんでさえいるようだった。


「紅。アレを退いておくれ?」


「――力が足りませぬ」


悔しそうにそう返す紅。確かに、常盤と紅には確かに差があった。圧倒的に力のある紅が常盤に勝てない理由、それは経験の差と根本的な“血”の差。

純粋な“鬼”に、紛い者の“邪鬼” が勝てるわけがないのだ。

鬼灯に対して優勢を保っていられたのは、鬼灯がまだ“鬼”として幼かったのと気持ちが神夜の事で揺らいでいたから。

常盤とて動揺しているが、それを上回る精神力を持っているのだ。

それを理解している紅は、心底悔しそうに不満げに事実を述べた。


「フフフ、安心いたせ。」


何か策があるのか、鬼炎がにこやかにそう告げると、羽織っただけの襟元をめくり、白い首元をあらわにした。


「私の血を喰らえ」


「――!?・・・よろしいので?」


恐る恐る下手に訪ねてはいるものの、紅の血走った目は鬼炎のあらわになった肌にくぎづけられていた。


「付け焼刃かもしれぬがな・・・付け焼刃も、使い続ければいずれ本物になろうよ。さぁ」


促すように手を伸ばし、誘われた紅は、己より小さい主の白磁の肌に大きな牙を埋め込んだ。


――――ドクン。


明らかに、紅の気配が変化した。

紅に血を与える鬼炎は、恍惚とした表情で満足げな吐息を吐き、愛おしそうに紅の頭を撫でる。無心に血をむさぼる紅の巨大な身体が、脈動と共に引き締まっていく。

赤黒い肌から黒身が消えはじめ、筋肉で覆われていた身体が少しずつ人間のソレに近づいていく。角はそのまま、逆立ちもつれていた毛がヘタリと垂れ、少し縮れた髪となる。

ゴクリと最後の仕上げとばかりに音を立てて血を飲み込んだ紅は、身をのけぞらせ身体が作り替わる苦痛と快感を味わっていた。鬼炎はその様子を、少し息を乱しながらも満足げに眺めている。


「・・・どんだけ立派な、付け焼刃だよっ」


頬をひきつらせる常盤のこめかみを、嫌な汗がつと流れた。

鬼灯が守るように、神夜をギュっと強く抱きしめる。

その場の空気がどんどん禍々しく、剣呑なものになってゆく。


不意に、紅の身体の変形が終わった。


紅が満足げな溜息を吐く。

身長は普通の人よりかなり大きく、先ほどよりかなり人間には近付いたが、やはりどこかいびつな形をしている。

そして、なによりも変わったのが、“力”。

“邪鬼”である紅が、“鬼”の鬼炎から分け与えられた“力”が、紅を“邪鬼”とは違う存在へと変えていた。


「見違えたぞ、紅」


「――主様」


愛おしそうに紅を撫で、紅はそれに答えるように目を細めた。


「紅、私に“力”を――」


「――御意」


「っ!!逃げろぉぉぉぉっ!!鬼灯ぃぃぃっ!!」


常盤の怒号をきっかけに、それまでゆっくりと進んでいたすべてが、弾けたように動き出した。

瞬間的に床を蹴り飛びかかった紅と、それを遮るために常盤が振りかぶった刀が交わり、甲高い音をたてる。

鬼灯も支えるように抱いていた神夜を、素早く抱き上げて外へと駈け出した。

常盤を心配する気持ちもあったが、このまま鬼灯達がこの場にいる方が常盤の邪魔になる

守りながら戦う事の大変さを知っている鬼灯は、迷いなく駆けていく。

常盤が足止めしてくれているのだろう。紅が追いかけてくる気配はない。


「神夜、大丈夫だからっ・・・私が、守るから」


荒い息をしている神夜に嫌増す不安をぬぐうように、己に言い聞かせる。

抱き上げた神夜の身体は驚くほど軽かった。

“鬼”である鬼灯は、普通の人間より力があるので、神夜を担いで走るぐらいは軽くこなせるのだが、それにしても軽い神夜の身体に、視界がにじみそうになるのを堪え、鬼灯は必至に逃げた。




行く手を遮るために現れる者たちを、避けながら走っていた鬼灯はいつの間にか、村からかなり離れた深い森の中にいることに気付いた。


追手はない。

さすがの鬼灯も息が荒くなり、肩を大きく揺らしていた。

足も少し震えている。


「鬼灯・・・下ろして、くれ」


神夜の声に、鬼灯は周囲を警戒しながらも、ゆっくりと神夜を地面に横たえた。


「神夜・・・」


相変わらず青い顔をしている神夜からは、生気がどんどん抜けて行っているようで、泣きたくなるのを抑えて、鬼灯は微笑んだ。


「大丈夫・・・“鬼”の村に行けば、良い薬があるものっ・・・だからっ」


「鬼灯」


震える声で必死に言葉を紡いでいた鬼灯を、神夜が遮った。

うつむいて表情を隠していた鬼灯は、神夜の声にビクリと体を震わせた。


「もう・・・いい、よ」


「そんな事言わないでっ!!」


堪え切らなかった涙が、鬼灯の目から溢れてとめどなく流れる。

その涙を優しく拭う神夜の顔は穏やかで、柔らかく微笑んでさえいた。


「お願い、だからっ・・・生きて」


「・・・すまない・・・ほお、ずき・・・愛して、いる」


「神夜・・・私も、だから、お願いっ・・・一緒に生きてっ」


「・・・す、まない」


「あ・・・謝らないでっ・・・お願いっ」


「・・・ほ、おずき、ほおずき・・・鬼灯」


神夜は苦しげに息を吐きながらも、鬼灯の名前を繰り返す。


「・・・神夜」


「す、まない・・・そなた、をまた・・・一人に・・・して、しまう」


掠れた息で神夜が言うと、鬼灯がそれを否定するように首を左右にふる。


「鬼灯」


鬼灯が涙で濡れた瞳を神夜に向けた。神夜が穏やかにほほ笑む。


「今度は、私が・・・みつける・・・だから」


神夜が己の小指を鬼灯のそれに絡める。

神夜が声にならない声で小さく呪文をつぶやくと、絡めた指が淡く光り、赤い糸が二人を結んだ。

それは見た目だけではなく、魂のつながり。



神夜が己の命の期限を感じ、考えた術“(あけ)の糸”。

現世では結ばれてはいても、一緒になれないと理解していたから、考え出したこの術は、来世に無事に出逢えるというだけの術。

残された僅かに残った力で行った術は、神夜の力すべてを奪い取る。


「来世で・・・逢おう」


そこで、神夜の意識は闇に落ちた。







これが、想真の記憶にある前世のすべてだった。

その後に何があったのか、神夜は知らない。

語られない歴史の中、その後鬼灯がどうなったのか、想真は知る由がなかったのだ。


ただ、鬼灯の幸せを祈って死んだ神夜には、鬼灯が後々幸せに暮らしていてくれることを祈るしかできなかった。

神夜という足かせがなくなったのだ、きっと常盤が鬼灯のその後を守ってくれただろう・・・。


推測でしかないが、想真にはそう思うしかなかった。

来世こそは、何のしがらみも無く、二人が結ばれることを信じて、その短い人生を終えた神夜。



術は見事に効力を発揮し、鬼灯と神夜は出逢った。



幸せになるために生まれ変わった想真と朱里。


だが、因果はどこまでも二人についてまわる・・・。


まるで、幸せになることを許さぬとでも言うように―――。


作者「皆様、メリークリスマス!」

佐渡「ギリギリな」

作者「駆け込みセーフって事で」

愛姫「クリスマスに投稿したってことは何かするの?」

作者「え、しないけど?」

愛姫「・・・じゃ、なんで今日投稿したのよ」

作者「・・・気分?」

愛姫「目離遺苦死滅!!」

作者「こわいこわいっ!」

佐渡「どこの暴走族だ」

作者「では、クリスマスとは全く関係ないですが、予告通り鬼灯と神夜の名前の由来のお話をば・・・」

佐渡「クリスマスだからさっさと家に帰りたいんだが?」

作者「そこはクリスマスって事で、サービスしなさいよ」

佐渡「・・・」

作者「まず鬼灯ですが、彼女にはとにかく"鬼"をつけたかった。実は、鬼灯以外にも同じような子供がいて、その子達にま"鬼"がついた名前がある・・・って設定だったんですよね〜」

愛姫「それがえらく変化したわね」

作者「私もビックリしとります(笑)で、そんな中で鬼灯は"鬼"と呼ばれたくなくて、漢字だけは"鬼"がついてる"鬼灯"になりましたとさ。それに"鬼灯"って漢字良くない?"鬼"の"(ともしび)"。なんかピッタリだと思ったんだよねぇ」

佐渡「・・・じゃぁ、花言葉とかは関係」

作者「無い!」

愛姫「ちなみに、花言葉って何?」

作者「・・・何だっけ?」

佐渡「・・・『偽り』だろ」

作者「そうそう!あながち的外れでもないでしょ?」

愛姫「そうか?」

作者「そこで否定しちゃダメじゃない?」

愛姫「自信無いんじゃない」

佐渡「お〜い。さっさと帰りたいっつってんだろ。次『神夜』の名前やれ」

作者「はいよ。神夜はねぇ〜・・・何だっけ」

愛姫「う"おぃっ」

佐渡「帰っていいか?」

作者「待って待って!えぇ〜っと、そう!"神"!名前に"神"をつけたかった!」

愛姫「・・・"神子"だけに?」

作者「はい」

佐渡「俺、帰るぞ」

作者「ダメだってばっ!!愛姫と二人にしないでっ!!」

佐渡「自業自得って言葉知ってるか?」

作者「知ってるから二人にすんなっつってんの!」

愛姫「先生帰っていいよ」

佐渡「・・・」

作者「ほらっ!何か指ポキポキ鳴らしてるしっ!」

佐渡「・・・はぁぁぁぁぁっ・・・"神夜"の名前、ホントにそれだけなのか?」

愛姫「庇うことないのに」

作者「たぶんね。すんなり決まり過ぎて覚えてないんですよ、たぶん。"神夜"は多分、最初から"神夜"だった」

愛姫「たぶん多いなっ」

作者「ごめんなさい」

佐渡「・・・毎回謝ってるよな、お前」

愛姫「謝ってない後書き無いんじゃない?」

作者「そんなことはないよっ!」

愛姫「じゃぁ、確認してみる?」

作者「二人の名前は、朱里と想真にも引き継がれてますっ!」

愛姫「逃げたな」

佐渡「九割は謝ってるからなぁ」

作者「お気づきの方もいると思いますが、"鬼月"は"鬼灯"を無理矢理いじったもので、"神楽"は"神夜"と一文字違い!」

愛姫「微妙過ぎて気づいてないに一票」

佐渡「読者が少ない上に、そこまで読み込んでないから気づいてないに一票」

作者「リアルっ!せっかくのクリスマス、もうちょっと和やかに過ごそうよぉ〜」

佐渡「やかましい、早く帰らせろっ」

愛姫「・・・先生、何でそんなに帰りたいの?いくらクリスマスだからって、浮かれるようなキャラじゃないじゃない」

佐渡「あのなぁ、他の奴らはクリスマスをカップルで過ごしてるのにっな・ん・でっ既婚者の俺がココにいるんだよっ!キャラじゃなくても文句もいいたくなるわっ!!」

愛姫「他の奴ら?カップルなんていたっけ?」

佐渡「何言ってんだよ。クリスマスなんて話題に一番食いつきそうな想真が来てねぇじゃねぇか」

愛姫「・・・っ!?ちょっ、もしかしなくてもその相手って!」

佐渡「他にいねぇだろ」

愛姫「どういうことだテメェッ!!っていないっ!逃げやがった作者(アイツ)!!先生っどこ行ったか知らない!?」

佐渡「さぁ?誠に聞けば分かるんじゃね?メッチャ楽しそうに後つけてたし」

愛姫「ナイスっ誠!・・・あ、もしもし!誠!?アンタ朱里達の後つけてんでしょ!?今どこ!?」

誠『あ、姫?メッチャおもろいよ!今ねぇホテルの前〜♪』

愛姫「っ!!!全力で止めろぉぉぉっ!!」

佐渡「じゃぁ、俺帰るわ。程々にしとけよ」

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