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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
22/34

偽りの神 伍

お久しぶりです。


かなり日があいちゃいました

ごめんなさいm(__)m



「月が、赤い・・・」


見上げたよい闇の空に浮かぶ月は、血のように赤かった。


鬼灯に与えられているのは、生活に必要最低限のものが揃えられた小さな離れ。

村の裏にある小さな岩山を挟んだ場所にある、森の中。木々がぽっかりと開けた場所ににソレはあった。

閉じ込めるように並ぶ木々の間を、呪がかけられた縄が繋いでいた。縄には"封"と書かれた札が等間隔に吊されている。

村人は“鬼”である鬼灯を閉じ込めるにはこれで十分だと思っている。

だが、鬼灯はとっくの昔にこの結界を破っていた。それでも逃げ出さないのは、ただ単に守りたい者がいるから・・・神夜がいるからだ。

神夜の“病”さえ治れば、二人で逃げる腹積もりでいた。


―――でも、彼は捨てないのだろうな。


優しい神夜は、自分を慕っている村人を捨てられない。そして、鬼灯を使役し続けることに苦痛を感じ、己を責める。


―――優しい人。


鬼灯は手の中の紙をクシャリと握りしめた。


にゃん?


「・・・小毬。あんた、いつまでココにいるの?里に、早く帰りなよ」


腕の中の黒猫が、首をかしげて鬼灯を見上げる。


なーん


慰めるように頭を摺り寄せる猫に、強張った頬がわずかに緩む。

何度、この子に癒されただろう。


「ありがと」




―――数十分前。


太陽が沈み始め、小さな窓から差し込む赤い光が薄らぎ、

室内の闇の部分が濃くなっていく。

明りを灯さなければ、直に真っ暗になる。

そう分かってはいるのだが、なぜか体を動かす気が起きず、鬼灯は床に身を横たえていた。

その手には銀色に輝く鬼灯に愛刀“銀月”が、握られている。


はたから見れば、妙な光景だろう。

明りもつけずに、暗闇の中で横たわりながらも、灰色の目は爛々と輝いている。


――虫の知らせ、とはこの事を言うのかもしれない。

いやに騒ぐ胸の押え、鬼灯は暗くなる部屋をじっと見つめていた。


コトリ。


小さな音がやけに大きく聞こえた。

鬼灯は待っていたかのように、身を起こし音のした方を見る。

なーん


そこにいたのは闇に溶け込むようにして現れた黒猫。黒猫の首もとには赤い紐と一緒に白い紙が結わえられている。


「小毬」


しなやかな動きで近づいてくる猫の名を呼び、抱き上げる。


黒猫の小毬は、常盤に懐いてる化け猫の手毬の兄弟みたいなものだ。

手毬が鬼灯と常盤達の間の連絡係をするように、小毬は鬼灯と神夜を繋いでいてくれた。


いつもと同じように、首元に結われた手紙。

いつもならば、そこには何時会えるかなどを記してあるのだが、悪い事に鬼灯の嫌な予感は的中してしまう。


小さく折りたたまれた紙を広げ、中に書かれてた内容に眉をひそめた。


「・・・“祈り”?こんな夜更けに?」


手紙の内容は、急遽入った“祈り”のため今日は逢えないというものだった。

今日は逢えるはずだったのに、という寂しさよりも、今まで一度もなかった時刻の“祈り”の方が気になった。

“祈り”はだいたい太陽が昇る時刻に行われている。例外はたまに昼時にあるというぐらいで、夜になる時刻など考えられなかった。

何かあったのか?

否。何かあったのだろう。

嫌な予感ばかりが胸を塞ぐ。

鬼灯はじっとしていることなど出来ず、"銀月"を握りしめたまま外に出た。


一陣の風が、鬼灯の銀髪を揺らす。

舞い上がった風に促されるように上を見る。


見上げた空には黒い空に、禍々しい赤。



そうして冒頭へと戻る。


胸騒ぎは増すばかり。

そんな中、リンと澄んだ音が響いた。


今は、聞きたくない音だった。


「鬼灯」


声とともに、目の前に舞い降りたのは、小柄な影。

いつもならば、この影の訪問は、常盤達との連絡であり、己が"鬼"であることを確認できる数少ない方法だった。

だが、今は…今だけは、来てほしくなかった


何故、今くるのか。

何故、こんなに一度に不安を掻き立てるような事が起こるのか。

鬼灯は、あふれそうになる胸の中の葛藤を抑え、手毬を見た。


「手毬・・・何があっ」


「“キシン”の正体が、分かった」


鬼灯の言葉を遮って告げられた言葉に、二の句が継げなかった。

いつもと違い、真面目な顔をした手毬の様子に、重大な事が起こっている…それだけは、頭の片隅で理解できた。


「・・・なに、をっ」


何を言い出すのか、正体?そういえば、以前に常盤と話していた。

“キシン”は“神”ではない、と。

では、なんのか。

何なのか。



知りたかった答え。

でも、知りたくなかった答え。


耳をふさぎたくなるような衝動を抑える鬼灯に、無情な言葉が告げられた、


「“キシン”は・・・“鬼”」


頭が理解する前に、体が動いていた。

鬼灯とて、“鬼”だ。“神”が“鬼”だというのならば、神夜の命を蝕んでいたモノも自然と分かる。

病などでは、ない。


“神”が・・・“鬼”が、神夜を喰らっていた。


「鬼灯!?常盤が来る!!一人で行っちゃだめだよっ!!鬼灯っ!!!」


既に駈け出した鬼灯の耳に、手毬の叫び声が聞こえた。


常盤が来るのならば、神夜を連れ出すだけでいい。

後は、きっと常盤が上手くやってくれる。

この村を捨てればいいのだ。

神夜だけをつれてくればいい。

騒ぎを起こす必要はない。


頭の片隅でそんな事を思いながらも、鬼灯は身の内で暴れる怒りを抑えることなどできなかった。


「信じて、いたのにっ」


目からあふれた涙で、視界がにじむ。


「神夜はっ!信じて、いたのにっ!!」


裏切るのか。

あれだけ綺麗な心の人を裏切り、死へと追いやるのか。


「許さないっ!!」


いつも穏やかな灰色の瞳が、闇夜に浮かぶ赤い月に呼応するようにジワジワと赤く染まり始める。


生い茂る木々をかき分け、いつもの泉へと足を進める。

村へと行くには、本来ならば岩山を迂回していかなければならない。

小さい岩山ではあるが、鬼灯の足でも半時はかかるだろう。

しかも、迂回してたどり着くのは村の入口だ。神夜のいる神殿からは一番遠い上に、たどり着くまでに必ず邪魔が入るだろう。


だが、鬼灯の向かう泉は、間逆の位置にある。


それは、鬼灯と神夜しかしらない秘密。

村の奥にある神殿。

神夜の清めの場は、鬼灯と村を挟む小さな岩山の中にあった。

その“清めの場”の奥にある小さな穴。

そこを抜ければ、鬼灯の小屋の裏手にある泉へと来ることできる。

村人は、まさか鬼灯と神夜が交流を持っているなどとは思うはずがない。

本来ならば、一番遠くに位置する二人は、誰よりも近い位置にいたのだ。


実際に行った事はないが、神夜から聞いていたとおりに泉の奥へ進むと、岩肌の壁にぶつかった。

それに沿うように視線を下へ移すと、草が生い茂る地面の一部が、こすれて土がむき出しになっている。


「はあぁぁぁぁぁっ!!」



鬼灯は勢いのまま、そこを思いきり蹴り崩した。

ガラリと崩れた岩が崩れ落ち、鬼灯も吸い込まれるようにその穴へと姿を消した。




―――――ぴちゃん。


湿気で所々苔むした洞窟に降り立った鬼灯。

崩れた岩壁のせいで立ち込める土埃が暗い洞窟の中を、更に見にくくさせる。

鬼灯は荒い息を整えながら、土埃がおさまるのを待つ。開けた穴から吹き込んだ風が土埃を流し、鮮明になった周囲を見渡した鬼灯は目を見開いた。


壁に張られた札。


神夜は、この場にいると気分が悪くなると言っていた。

それもそのはず。この札は清める意味をもつものではない。

これは、相手の意思を奪う札。魅惑の呪を形にしたものだ。


愕然とする鬼灯は、怒りで震える体で鞘から抜いた刀を振るい札を切り裂いた。


進めば進むほど明らかになる、神夜への仕打ち。

抜き身の刀を下げて、鬼灯は洞窟を飛び出す。


訪れたことのない場所。


鬼灯の小屋がある場所とは違い、ココは明りに満ちていた。

神殿の奥の方に位置するのだろう。

光が満ちる程に、闇も濃くなる。


鬼灯の鋭い聴覚がいくつもの音を捕えた。


声。足音。物音。


鬼灯は感覚を研ぎ澄まし、神夜の居場所を探った。

無駄にでかい建物の中心あたりに、清らかな存在があった。



――神夜。


いつも鬼灯を包んでくれるやさしい光。

まばゆいその光につられるように現れた影は、濃く深い。


光を目指して走り出した鬼灯を見つけた誰かが悲鳴を上げる。


「お、鬼だぁぁっ!!」


それを皮切りにざわめきだす神殿内。鬼灯はそれらを無視して神夜に向かって一直線に走る。

だが、目の前に現れた全身黒づくめの者たちに足をとめた。


――来たか。


現れた一団は、この神殿を守る守護者たちだ。

守護者とは名ばかりの、ただの雇われの忍だが。

忍としては奇異な存在の彼らは、ただの忍とは違い妖を専門に扱う一団である。

もう長い間この村にすみつき、事情も知らずに神殿と村を守っている。


「・・・戻れ、鬼灯」


鬼灯を囲む黒ずくめの一人が、一歩前に出て端的に要件を述べる。

口元まで布で覆われているので、その声はくぐもって聞こえた。

鬼灯はソレを鼻で笑った。


――何故。どこに。


「断る」


ザワリと黒が揺れた。

今まで逆らう事のなかった鬼灯が、反旗を翻した。と警戒を強める。

鬼灯に言わせてみれば、今までおとなしくしていたのは神夜がいたからだ。


「従え、鬼灯」


先ほど声をかけた黒づくめが語気を強めて言う。

その手は印を結び、鬼灯を術で縛ろうとしていた。


「やれるものなら、やってみろ」


鬼灯の攻撃的な言葉に、黒づくめの目が険しくなる。

印を結んだ手を口元に持っていき「縛!」と、呟いた。


「・・・っ!!」


首元に施された印が、熱くなり鬼灯は思わず眉をしかめ、印を抑えた。


「もう一度言う。戻れ、鬼灯」


「・・・っ断る!!」


「!?」


印が煙を上げて消えてゆく。鬼灯を囲う輪が揺れて、崩れた。


「お前らが、守る者は何だっ!?神夜かっ!!神かっ!?」


鬼灯の言葉に、術を発動させた男が眉をひそめる。


「・・・両方だ」


何を言っていると言わんばかりの言葉に、鬼灯が声をあげて笑う。

鬼灯の笑い声に、黒づくめが後ずさる。


「両方だと?ふざけるなっ!!」


両方守るなど不可能だ。

神夜を守るならば、神を滅ぼさねばならない。

神を守るならば、神夜を見捨てなければならない。


「両方守るなど・・・不可能だっ」


「・・・お前、何を知っている?」


男が、今まで見たことのない鬼灯の様子に眉をひそめた。


「・・・どけ。私が守りたいのは、神夜だけだ。守る者が定まっていないお前らに、私を止める権利など、ないっ!」


「・・・」


押し黙った黒づくめたちの間を抜け、鬼灯は再び走り出した。






「・・・長」


走り去る鬼灯の背を見送り、不安げな様子で黒づくめが自分たちの長を見る。

長と呼ばれた男は部下たちを見返し、黙って考えこんだ後何かを決意して顔をあげた。


「行くぞ」


どこに。と問うものはいなかった。

自分たちを率いる者に従うのが、彼らの主義だ。

疑問など持つはずもない。

絶対の信頼を置く長が決めた事に反論する者などいるはずもなかった。

黒づくめの男たちは、静かに闇へと溶け込んで消えた。




作者「お、お久しぶりです」

佐渡「…一週間以上はあけないで投稿するって?」

作者「ブレブレ人間でごめんなさい!」

佐渡「…次からは?」

作者「一週間以内って言いたいけど言えないっ!自分の性格をしってるからっ!(泣)」

想真「そんな事より、今回の後書きは俺の名前についてだろ?早くっ!」

佐渡・作者「そんな事ってなんだぁぁ!!」

想真「こんなブレブレ人間の小説なんて、読んでる人いないだろうから、『そんな事』」

佐渡「なるほど」

作者「納得しちゃだめ!僅かにいる読者に謝って!」

佐渡「こんな人間の小説読まない方がいいですよ」

作者「やめろぉぉっ!!」


想真「いやいや、俺の名前の由来は皆さん知りたいでしょ!さぁ!」

作者「…最初の自己紹介で『真の想いを君に捧げたいな☆』って言わせたかったから。」

想真「おいっ!それだけ&そんな理由!?」

作者「今となっちゃ、言ってる意味がわかんないね。思いついた時はコレだ!って思ったんだけどなぁ〜」

想真「雑っ!俺の扱いが雑いよ!!もっと大事にしてあげて!!」

佐渡「…コイツって『神夜』の生まれ変わりなんだよな?キャラ違くね?」

作者「ね。誰だお前は」

想真「元『神夜』だよっ!つか、お前がこんなキャラにしたんだろ!」

作者「…先に書いたのが『想真』だったからなぁ〜…『神夜』はあの状況でこんな奴にはならないだろ」

想真「無計画!?」

作者「行き当たりばったりで書いてます。だって黒づくめの忍なんて、本気で急に沸いてきたからね。手毬も急にだからね。常盤すらも予定してなかったからね」

想真「無計画にも程があるっ!!」

佐渡「…おい、終わりは見えてんだろうな?過去編がずいぶん長いが…」

作者「とぉ〜……くの方に見えるのが、ゴールだと思われます。過去編は予想以上に長くなったね。後二つくらいで終われるかなぁ」

佐渡「…ダメだコイツ」

作者「想真の性格が変わったのは、育ち方が原因じゃない?『神夜』も、元は明るい性格ですよ(たぶん)時と場所が変われば、ずっと笑って暮らしてたんじゃないかなぁ」

佐渡「…確かに、だいたい笑ってるな」

作者「あ、そっか。時と場所が変わってこんな奴になっちゃったか…まぁ、想真にも色々あったからね。ネジ取れたのはその反動だよ」

想真「ネジ取れてないから!」

佐渡「それは、今後の話に出てくるのか?」

想真「スルー!?せめて突っ込んで!!」

作者「一応その予定。でも予定は未定です!!」

佐渡「…逃げたな」

作者「はい!(・`ω´・)キリッ」

佐渡「最低だよコイツ」

想真「なんか、俺の扱いがヒドイッ!?」

作者「今さらじゃない?」

佐渡「今さらだな」

想真「今さらかぁ〜…って納得できるかぁぁっ!!」



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