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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
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偽りの神 四

いい感じで、お話が進んできたと思います!


でも、ちゃんと意味が通じるかは不明・・・わけわかんなかったらご指摘ください。


庭に面したまっすぐな廊下を迷いなく歩く常盤は、鬼灯の言っていたことを頭の中で反芻していた。


生きる神と書いて“生神<キシン>”。

“神”自らが選んだ“神子”の“祈り”から力を糧にする“神”。

その変わりに村を守護し、“鬼”を倒す“力”を与える。

“力”とは、“鬼”である鬼灯。

鬼灯を使い、村周辺の“邪鬼”を倒す。


脳内でまとめた事に顔をしかめ、頭をガシガシと掻いた。


――分からねぇ。


“力”を与えると言いながら、使うのは“鬼”である鬼灯。

だが、村を守護する力は本物。

しかも、鬼灯に施してある呪印はかなり古いものだった。

それこそ、たかが人間が知るはずもないモノ。


――おそらくソレを村人に教えたのも“神”とやらだろう。


常盤が悩むのはソコだった。

村の守護はしっかりできている。なのに、何故“邪鬼”を倒す必要がある?

村を守れればそれで十分じゃないか?

名誉がほしいのか?“神”なのに?


――違う気がする。


考えれば考えるほど、頭が混乱する。


「だぁぁぁっ!!わっかんねぇっ!」


進む歩を止めて、思わず天を仰いで叫んだ。

やたらと広く奇麗な庭園に、常盤の声が響き渡り、木に止まっていた小鳥が飛び立った。


「だいたいっ!“祈り”を糧にするってなんだ!?“神”か!?って“神”か!!」


頭が混乱しすぎて、少しおかしくなってるのか、一人乗り突っ込みしていると、近くからあきれた声が聞こえた。


「常盤、うるさい~」


「んぁ?」


常盤の周囲には誰もいない、姿無き声に常盤はあたりを見渡した。

すると、ガサガサと葉を揺らしながら、廊下の柱に寄り添うように伸びた大木の、茂る葉の間から黒く長い紐のようなものがダランと垂れさがった。


「手毬・・・んな所で何してんんだ?」


大木のそばまで行き、上を見上げながら常盤は、太い枝に寝そべる少女に問いかけた。


「お昼寝だよ。常盤に邪魔された」


手毬と呼ばれた十二歳くらいの少女はむくれた顔を常盤に向ける。

黒い髪は肩まで伸び、前髪は邪魔なのか一つに結われ後ろに撫でつけられていた。

あらわになった黄色い瞳を寝むそうに瞬かせている。

頭に生える猫耳と垂れる尻尾が、不機嫌そうにピクリピクリと動いていた。


「悪い悪い」


くぁっと小さな口をあけた少女は、手を前に突き出して背をグッと伸ばした。


「でも、そんなところで寝てると落ちるぞ?」


「落ちないよー。アタシ、猫だよ?」


「そうだったな」


手毬がいる枝は、常盤の頭あたりの高さにある。

常盤が手を伸ばして手毬の頭を撫でると、手毬はゴロゴロと喉を鳴らす。

手毬は幼い頃に一族に捨てられた“化け猫”だ。

“化け猫”は、人間に化けて村に紛れて暮らしている。

手毬は、化けることが上手くできなかった。

どうしても消せない耳と尻尾。猫の象徴であるソレが、手毬を一族から追放させた。

行き場を無くした手毬を拾ったのが、常盤だったのだ。


「あんなに、叫んでどうしたの?」


頭を常盤の手に摺り寄せながら、窺うように常盤を見上げる。


「鬼灯のこと?」


手毬には、ときおり鬼灯の所に行ってもらっていた。だから、鬼灯のことも多少知っていた。


「・・・なぁ、<キシン>って知ってるか?」


「きしん?」


「いや、いいよ」


首をかしげる手毬の頭をクシャリと撫でた。

手毬は猫なだけあって“鬼の里”に限らず、いろんな所をウロウロしている。

だから、どこかで聞いた事がないかと思ったのだが、不思議そうにしている様子から知らないことが分かった。

少し落胆する常盤に対し、手毬はう~んと首を傾げ続けている。


「知らないなら別にいいんだよ」


そんな可愛らしい様子に、思わず苦笑する。

駄目もとで聞いた事だ。知らなくても別にいい。


「・・・きしん・・・キシン?」


「!?知っているのか!?」


「婆さまが、前に言ってた。『キシンは封印してある。封印が解かれる事はない』って」


「封印?・・・婆様が?」


「どしたの?」


少し不安そうに常盤を見上げる手毬に優しく微笑みかけ、安心させるように頭を撫でた。


「いや・・・昼寝の邪魔して悪かったな」


そんな常盤に安心したのか、手毬はニコリと微笑むと再び枝の上で態勢を整え、目を閉じる。

手毬の呼吸が穏やかな寝息に変わるまで、常盤は柔らかい黒髪を撫で続けた。

その瞳は、手毬に向けていた穏やかなものではなく、どこ剣呑な光を宿していた。






広い室内の中、一人の老婆が背筋を伸ばして座り、手元の巻物に目を落としていた。

蝋燭に灯された手元の光がゆらりと揺れて、音もなく現れた来訪者の入室を告げた。


「断りもせず女の部屋に入るとは・・・躾がなってないね。(ゆかり)は何をしてたんだい」


「母さんは、放任主義なんだ。おかげで、こんなに立派に育った」


おどけて答えながら、断りもなくドカリと座った。

老婆はフンと鼻を鳴らした。


「まったく、失礼な男だね・・・鬼灯の様子はどうだった」


「ハハッやっぱ心配なんじゃねぇか」


いつも憎まれ口を叩いてはいるが、この老婆もやはりあの子のことが大事なのだ。


「フン」


どこか照れたように、かたくなに巻物から視線をあげない老婆を、少し可愛く思いながらも、鬼灯のことを教えてった。


「元気にしてたよ。この前負った傷もほぼ治っていたしな」


「・・・フン。呪印なんざ、もう解けるだろうに。馬鹿な子だよ」


「そう言うなよ」


「で、他に用があるんだろう?何だい」


この男が、老婆に鬼灯の様子を話すためだけに、ココに来るなんてありえないのだ。

常盤はニヤリと笑った。


「話が早くて助かるね」


巻物から目を離さず常盤に問いかけると、深緑の瞳を細めてニヤリと笑った。


「じゃ、遠回りなのは無しだ。婆様、“キシン”って何だ」


途端、場の空気が変わった。それまで無関心だった老婆が勢いよく顔をあげ、驚愕に目を見開き常盤を見つめる。


「どこで、それを・・・」


「手毬がね。あの子は優秀な俺の子だよ」


手毬の名が出ると、老婆は小さく舌打ちをした。


「・・・あの子に言っときな。わしの部屋の近くをうろつくな。とね」


「あの子は猫だからね。猫は自由なのがいいのさ。で、“キシン”ってなんだ?」


「・・・」


「生きる神だなんて大層な名前を持ちながら、何故鬼灯を捕える?妖は生きる内に入らないってか?」


常盤の言葉に、老婆が不審げに眉をひそめた。


「生きる神?何を言ってるんだい。“キシン”と鬼灯がどう関係ある?」


「・・・は?生きる神と書いて、“キシン”だろう?」


老婆の顔が更に歪む。

その表情は不満をあらわにしていた。


「生きる神、だと。そんな綺麗なもんかいっ!」


常盤の胸に不安がジワリと広がった。


「アレは、鬼神!鬼の神を名乗る、不届き者だよっ!」


「鬼、の神?」


常盤の中にあった疑問が一つ解決した。

“鬼神”を名乗る不届き者。という事は、神ではなく“鬼”なのだろう。

“鬼”は妖。妖は、霊力の高い者を食らうと、強くなるという。

ならば、“祈り”とは名ばかり、“神子”の生気を食らっている。だから、“神子”である神夜は日に日に弱っている。



まだ、“鬼神”が“邪鬼”を倒す理由は分からないが、鬼灯の呪印もこれで説明がつく。

“鬼”なのであれば、古い呪印を知っていても不思議はない。


「婆様っ!!鬼神は封印してあると言っていたらしいなっ!?なんでだっ!」


時と場合によってはヤバいかもしれない。

焦る常盤を訝しげに見ながら答えた。


「あやつは、この世を“鬼”のモノにしようとしていた。人間から隠れて暮らすのではなく、人間を従え鬼の国を作ろうとしていたのだ。だから、わしらは封印した。あの封印が解かれることはー―」


「解かれてるっ!!!」


常盤は声を荒げた。

その声にビクリと肩を揺らした老婆だったが、常盤の言葉がゆっくりと頭に染みていき、途端に青ざめた。


「ど、ういう、ことだ」


「封印は解かれているっ!“鬼神”とは、鬼灯の村の者が崇めている神だっ!!“神子”という霊力の高い人間が、“鬼神”に力を食われているっ!!」


老婆が何か言葉を発しようとするが、驚きで口が渇き声を出すことができない。

常盤は勢いよく立ちあがると、入ってきた時とは打って変わって乱暴に障子を開けた。


「手毬っ!!」


「なに?」


すぐそばの木の上にいたのか、トンと廊下に降り立った手毬は、常盤のただならぬ様子にいつになく真面目な顔をしている。


「鬼灯の元へ!!」


コクリと無言で頷いた手毬は、グッと背を縮めた。すると、その身はドンドン小さくなっていき黒い毛に黄色い瞳を持つ猫に変わった。

しなやかな体をした猫は、トンと床を蹴って優雅に飛び上がり、手近な木に素早く登ると、志顎の確認とばかりに常盤を見下ろした。


「俺達もすぐ向かう!鬼灯と神夜を、あの村から連れ出すぞっ!!」


すっかり闇に包まれた世界は、妖の時間。

手毬は「にゃお」と一声鳴くと、そのまま夜の闇へと溶け込んだ。


作者「前回のあとがきについて、誠からお言葉を預かってます。」

愛姫「何よ」

作者「え~と、『うちの親よりまっしだって』とのこと」

愛姫「・・・それは、否定できないわね」

作者「ちなみに、誠のパパが今ハマってるのは戦国だそうです。」

愛姫「新撰組はっ!?」

作者「もうブームが過ぎたみたい。」

愛姫「・・・ブームで子供の名前をつけるなよ」

作者「ねぇ」

愛姫「ところで今回のどーでもいい話は」

作者「ん~・・・朱里の名前かなぁ」

想真「おっ!いいねっ!」

愛姫「なんでアンタが出てくるのよっ!?」

想真「朱里の話だから」

愛姫「かえれっ!」

作者「まーた、勝手に出てきたよ。ま、いいか」

愛姫「よくないっ!」

作者「え~、朱里の名前は何気に一番難産でした。朱里って決まるまでいろいろ候補があってね~」

愛姫「・・・無視しやがった」

想真「どんなどんな?」

作者「日向<ヒナタ>とか」

愛姫「一個じゃん!」

作者「ごめん、やっぱそんなに候補なかった」

想真「日向も可愛いじゃん」

作者「しっくりこなかったの。で最終的にアカリとは決まったんだけど、次は漢字で悩んだ。ちなみに、朱里の前は明莉<アカリ>だった。」

愛姫「明莉<メイリ>に見える」

作者「そう、メイリにしか見えなかったから朱里<アカリ>になりました。」

愛姫「朱里<シュリ>に見える」

作者「・・・まぁ、そこは、ね。」

想真「どんな名前でも、可愛いけどなぁ」

愛姫「あんたは黙ってな」

作者「読みにくくてごめんなさい。シュリじゃなくてアカリですので、読み間違えてる方・・・ご注意をm(_ _)m」


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