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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
20/34

偽りの神 参

このお話はフィクションです。

今回のお話に『鬼』に関する記述がありますが、何かを参考にしたとかは一切ございません。

作者の妄想です!


なので、そういった事に詳しくて『なんじゃこりゃ』と思った方がいらしたら、スミマセンm(__)m


……え、気にしすぎ?

いやいや、人様にお見せしてるんだから気にしすぎなぐらいがいいんです。


……はい、御託を並べてますが、ただの小心者です。


閉ざされた部屋で、目を閉じ"祈り"を捧げる。


それが、"神子"として産まれた神夜の勤めだ。


特に疑問を抱くことなく、それをしてきた神夜だったが、いつからか漠然とした不安を覚えはじめていた。



気怠い体を、無駄に豪勢な布団に横たえる。

開け放った窓からは、美しい光を放つ月が、闇夜に浮かんでいるのが見える。


神夜は、今頃戦っているであろう鬼灯を思った。


――怪我をしていなければいいが…


味方がいるのだと、鬼灯は言っていた。

おなじ"鬼"で、己よりも強いとも。


――常盤、と言ったか。


神夜は、鬼灯以外の"鬼"にあったことがない。

会ってみたいなと思うが、彼ら(・・)が神夜と会おうと思ってくれるかどうか。


――なんと言っても、私が鬼灯を捕えてるようなものだからな。


神夜が"神"に"祈る"事で、"神"は"力"を行使するのだ。

神夜が"祈り"を止めれば、鬼灯は解放されるが、村に災いがおきる。


神夜が"祈り"を続ければ、鬼灯は捕われたままで、村は守られる。


どちらかを選ぶなど、神夜には出来なかった。

鬼灯が大事で、守りたくて、でも守れない。


「…っどうすればいいんだっ」


そんな矛盾した気持ちを持て余し、神夜は思わず呻いた。


最近、毎日と言っていいほど同じ事を思い、そうして悩み抜いた末にたどり着いた考えに、さらに頭を悩ませる。


――"神"とは、なんなのだ。


今まで、絶対の存在である"神"を疑う事などなかった。


鬼灯に会うまでは。



"鬼"の真実の姿を知り、それまで信じていたモノが、ガラリと変わってしまった。





"鬼"とは悪しき魔物である。

あまりに邪であるため地獄からも追放され、地上へとやってきた"鬼"。人を喰らい、時に惑わし己と同じ"鬼"に変え、この世を地獄へと変えようとしている。

"鬼"とは、退治すべき者である。


『なんですか、それは』


そう思いこんでいた神夜を、鬼灯はアッサリ一蹴してみせた。


まだあどけなさの残る少女は、無表情な顔をわずかに歪め、不思議そうに"鬼"とはなんたるかを語る神夜の言葉に首を傾げ、そう言ったのだ。


『…だから、"鬼"だ』


『はい。それは分かってます。分からないのは、"地獄から追い出された〜"という所からです。』


『…ほとんど最初ではないか……』


『だって、わかりません。"鬼"は地獄から出てきていないもの』


『…何故言い切れる?』


『私が、鬼だから』


『………え?』


『私が"鬼"だから、言いきれるんです。』


『……っな!?だがっそなたは、"鬼"を退治しているではないかっ……まさか、共食――』


『"鬼"ではありません』


『は?』


『アレは、"鬼"ではありません。』


あんなのと一緒にするな、とでも言いたげに、不快そうに顔をしかめる。


『?ちょっと待ってくれ、意味が分からないっ』


混乱してきた、と。頭を抱える。


彼女は"鬼"で、退治しているのも"鬼"で、でも"鬼"じゃなくて……整理しようとして、余計に混乱する。


『難しく考えないで…単純な話です。私は"鬼"、退治しているのは"鬼"ではない。それだけの話です』


なんでもないことのように言うが、ではアレはなんだと言うのだ。


『アレは"邪鬼<ジャキ>"…人間の成れの果て。』


『邪鬼?』


銀の髪をサラリと揺らして少女がコクリと頷く。


『私達"鬼"は妖…天狗とか、猫又とか、河童なんかと一緒です。邪鬼は、元は人間だったモノ』


『…に、んげん?』


『人間の邪<ヨコシマ>な思いが溢れ、化け物となるのです。妖怪を悪いものと決めつけているけど、人間だってけして綺麗なんかじゃない』


『……』


神夜は言葉に詰まった。"鬼"である彼女を捕えているのは、人間だから。


『……何故、"邪鬼"を退治するのだ?放っておけばいいだろう…』


非情な事を言っているのは、分かっていた。

それでも、何か理不尽に思えて、聞かずにはいられなかった。


『…人間はアレを"鬼"と呼びます。だから、私達"鬼"は、アレを退治するんです。』


『…何故』


『人は、コワイから』


『…っ』


『人間からしてみれば、同じ"鬼"。憎しみを募らせ、総出で襲われれば、"鬼"といえ逃げられません。だから。』


だから、野放しにせずに退治するのか。

自分達を守るために。

妙に納得できてしまうのが悲しい。


『……でも。話せば分かってくれるのでは?』


同じ人間として、そこまで愚かであってほしくない。

そんな願いを込めて発した言葉に、鬼灯は悲しげに俯いた。


『…こんな話を知ってますか?ある小さな村で、灰色の目をした男の子が産まれた。彼は歴とした人間でした。でも、目の色は灰色。そんな彼を、村人はこう呼びました…"鬼"、と』


『……』


『彼は村人から蔑まれ、村の災いは全部彼のせいにされ、そして村を追い出された……人は、自分と違う者を恐れます。恐れは狂気になり、恐れの対象を消そうとするのです。』


『……っ』


どうにか、その言葉を否定しようとするが、何も知らない神夜が何を言っても、それはただの綺麗事。

中身の無い、空虚な言葉だ。


『でも、良い人間だっている…あなたのように』


ハッと顔を上げた神夜の目に映ったのは、優しく微笑む少女。

背後に見える月が、彼女を柔らかい光で包んでいて、"神子"である自分なんかより、よっぽど神々しかった。


『…そなたの目に、私はどう映っているのだ?』


彼女を知れば知るほど、己がちっぽけな存在に思える。

何が"神子"だ。

何を見ていた。

真実を知らずに、安穏とした生を得た己はなんだ。


醜いモノを"鬼"だと言うなら、人間こそが"鬼"ではないか?

己が、"鬼"ではないのか。


ぐちゃぐちゃになった感情から、こぼれ落ちた言葉は初めて会った時と同じ言葉。

だが、持つ意味は全く違った。


あの時は、好奇心という無邪気なだけの幼心からだったが、今はなんだ。


己は、優しくなんかない。綺麗なんかじゃない。

そんな子供じみた反論と意地、見捨てないで欲しいという縋るような気持ちから出た、懇願。


いつの間にか成長し、幼さが消え、大人と子供の境目にいる彼女が、そんな葛藤を見抜くように、しっかり神夜と視線を絡める。



『あなたは、あなたです』


ちゃんと伝わるように、漆黒の瞳を覗き込み、改めて告げる。


『あなたは、"鬼"でも"神子"でもない…神夜だ。』


『…っ』


灰色の瞳に映る神夜は、今にも泣き出しそうな情けない顔をしていた。

いつの間に、成長したのだろう。

己も、少年から青年へと変貌を遂げていた。

鬼灯がソッと手を伸ばし、神夜の頬に触れる。


『神夜…、―――。』


鬼灯の口が開き、言葉を紡いだ。

無音の言葉が神夜の胸に優しく響き、鬼灯を抱きしめた。

ギュッと抱いた肩は細く、柔らかい銀色の髪を撫でる。


『…鬼灯』


鬼灯の腕が背に回り、お互いを抱きしめあった。鬼灯が神夜に擦り寄り、耳に口元を寄せた。


『…お願い……』


『…鬼灯?』


懇願するような小さな声に、首を傾げる。

泣きだしそうな声に、どうしたのかと顔を見ようとするが、鬼灯は離れようとしない。


『…どうした?』


『…お願いっ』


あまりにも必死な様子に、大丈夫だ。と強く抱きしめようとするが、力が入らない事に気づいた。


『いゃ…っ』


どんどん体が重くなっていく。言うことの聞かない体に困惑してしまうが、それ以上に鬼灯が気になる。


抱きしめ返したいのに、安心させたいのに、どうしてっ!


力が入らない手に、腹が立つ。鬼灯が神夜の体を、必死で抱き寄せる。


『ぃゃ、いゃぁぁぁぁぁっ!!』


「鬼灯っ!!?」


悲痛な鬼灯の悲鳴に、ガバリと起き上がった。


何が起きたか理解出来ず、唖然とする神夜。

いつの間にか寝てしまったらしい。

身体はじっとりと汗ばみ、荒い息に肩が揺れる。


「神夜様っ!いかがなさいましたっ!?」


障子の向こうに、慌てて駆け付ける侍女の姿が映る。

神夜の声を聞き付けたのだろう、心配そうな声の後、影が戸に手をかける。

それを遮るように、急いで返事を返した。


「大事ないっ…少し、夢見が悪かっただけだ…」


「…ですがっ」


「大丈夫だ…ありがとう」


なんとか落ち着いた声をだし、相手に下がってもらおうとする。

そんな神夜の様子を訝しく思いながらも、侍女は素直に引き下がる。


「……もうすぐ、朝餉の用意が出来ますので、またお声がけします…」


「あぁ…分かった」


「…失礼します」


影がペこりとお辞儀をしてから、静かに下がる。


神夜は震える手を抑えて、深呼吸を繰り返す。

やたらと現実味のある夢に、震えが中々止まらない。


「…今のは…夢?」



込み上げる吐き気に、口元を手で覆った。

汗で夜着が体に張り付いている。

アレは、ただの夢なんかじゃない。

神夜の本能が、そう告げていた。


――…私は、死ぬのか…


漠然とした不安が、形作られた。

先ほどとは違う種類の恐怖が押し寄せ、震えそうになる体を抑えるように、キツく抱きしめた。


「…っ!」


零れそうになる嗚咽を、必死で堪え目を閉じる。



こんな事を言えば、きっと鬼灯は怒るだろう。

だけど、訪れた恐怖は"死"に対してではない。

死ぬのは、怖くない。

怖いのは、鬼灯を一人にしてしまうこと。


未だ耳に残る、鬼灯の悲鳴。

魂を裂くような、慟哭。


――あんな、悲しそうな鬼灯を残して、私は逝ってしまうのか…っ


一人にしない。そう約束したのはいつだったか。

共にいよう。そう約束したのは、いつだったか。


「…っすまないっ…鬼灯っ」


いつかは分からないけれど、きっと己は死んでしまう。

鬼灯を一人残して。


神夜の瞳から溢れる雫が、しっとりと夜着を濡らしてゆく。


せめて、できるだけ、少しでも長く、一緒にいたい。

そんな神夜の願いも虚しく、無情にも時は過ぎる。




刻々と、"その時"が近づいていた。

作者「えー、前回は佐渡先生に辱め…じゃなかった、面白い話をさせてもらいました」

佐渡「…言い直す必要あったか?」

作者「今回のど〜でもいい話〜ワ〜(パチパチ)」

佐渡「…ついに頭がおかしくなったか」

作者「失礼なっ!前からおかしかったんだよ!」

佐渡「……もう、やだコイツ」

愛姫「…どこがサドなのよっ」

作者「あら久しぶり」

愛姫「全然サドっぽくないけど?」

作者「ね。名前通りになってもらわないと面白くないじゃん」

佐渡「誰もサドなんて言ってないが?お前が勝手に言ってただけだが!?」

愛姫「…先生、今回だけ代わってあげようか?」

佐渡「…頼む」

作者「あ、じゃあ愛姫の名前のお話しましょうか」

愛姫「やれるもんならやってみろ(ギロッ)」

作者「…っ…そ、そんな喧嘩腰にならなくても、変な設定は愛姫にはないよっ」

愛姫「それはコッチが判断する。話せ」

作者「……佐渡先生帰っちゃった?え、マジで?ちょ、呼び戻してくれない?」

愛姫「今日は私だっつってんのよ。ほら話せ」

作者「…はい。え〜と、愛姫はすごく可愛い名前にしたかったので、『堂流』にしました」

愛姫「うん、意味わかんない」

作者「『堂流』→『ドウル』→『ドール』」

愛姫「……」

作者「つまり、人形です」

愛姫「……可愛いか?」

作者「『愛姫』は、とりあえず『姫』って付けたかったのです」

愛姫「……だったら『姫』でいいじゃん」

作者「普通じゃつまらないと思ったのです」

愛姫「……」

作者「それに『愛姫』って呼びごたえ無い?ゴロも良くない?」

愛姫「呼びごたえって何よ」

作者「…読みごたえ。と同種類の言葉?」

愛姫「……」

作者「あと、愛姫にはお兄ちゃんがいます。名前は『騎士<ナイト>』」

愛姫「『姫』と『騎士』ってか?」

作者「よく分かったねぇ」

愛姫「分かるわよ」

作者「ちなみに、お母さんの名前は『翼<ツバサ>』。お父さんは『麗夜<レイヤ>』。お祖父ちゃんは『癒士<ユウシ>』」

愛姫「…母様だけ、まともな名前なのよね」

作者「それは嫁いできたから」

愛姫「知ってるわよ!母様が名前つけてたら、もっとまともな名前になったんじゃないかって言ってるの!」

作者「え……でも、兄妹(ふたり)の名前つけたの、翼サン…だけど…」

愛姫「!?」

作者「『麗夜サンもお義父様も、変わった名前だから、子供達も変わった名前にしようね!』…って」

愛姫「……っ」

作者「!?…今日はこれにてお開きっ!!でわ、さようならっ!」(ダッシュ)


愛姫「子供に変わった名前つけてんじゃねぇぇぇっ!!!」



兄・騎士談

「そういう親だよ」(ため息)



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