偽りの神 参
このお話はフィクションです。
今回のお話に『鬼』に関する記述がありますが、何かを参考にしたとかは一切ございません。
作者の妄想です!
なので、そういった事に詳しくて『なんじゃこりゃ』と思った方がいらしたら、スミマセンm(__)m
……え、気にしすぎ?
いやいや、人様にお見せしてるんだから気にしすぎなぐらいがいいんです。
……はい、御託を並べてますが、ただの小心者です。
閉ざされた部屋で、目を閉じ"祈り"を捧げる。
それが、"神子"として産まれた神夜の勤めだ。
特に疑問を抱くことなく、それをしてきた神夜だったが、いつからか漠然とした不安を覚えはじめていた。
気怠い体を、無駄に豪勢な布団に横たえる。
開け放った窓からは、美しい光を放つ月が、闇夜に浮かんでいるのが見える。
神夜は、今頃戦っているであろう鬼灯を思った。
――怪我をしていなければいいが…
味方がいるのだと、鬼灯は言っていた。
おなじ"鬼"で、己よりも強いとも。
――常盤、と言ったか。
神夜は、鬼灯以外の"鬼"にあったことがない。
会ってみたいなと思うが、彼ら(・・)が神夜と会おうと思ってくれるかどうか。
――なんと言っても、私が鬼灯を捕えてるようなものだからな。
神夜が"神"に"祈る"事で、"神"は"力"を行使するのだ。
神夜が"祈り"を止めれば、鬼灯は解放されるが、村に災いがおきる。
神夜が"祈り"を続ければ、鬼灯は捕われたままで、村は守られる。
どちらかを選ぶなど、神夜には出来なかった。
鬼灯が大事で、守りたくて、でも守れない。
「…っどうすればいいんだっ」
そんな矛盾した気持ちを持て余し、神夜は思わず呻いた。
最近、毎日と言っていいほど同じ事を思い、そうして悩み抜いた末にたどり着いた考えに、さらに頭を悩ませる。
――"神"とは、なんなのだ。
今まで、絶対の存在である"神"を疑う事などなかった。
鬼灯に会うまでは。
"鬼"の真実の姿を知り、それまで信じていたモノが、ガラリと変わってしまった。
"鬼"とは悪しき魔物である。
あまりに邪であるため地獄からも追放され、地上へとやってきた"鬼"。人を喰らい、時に惑わし己と同じ"鬼"に変え、この世を地獄へと変えようとしている。
"鬼"とは、退治すべき者である。
『なんですか、それは』
そう思いこんでいた神夜を、鬼灯はアッサリ一蹴してみせた。
まだあどけなさの残る少女は、無表情な顔をわずかに歪め、不思議そうに"鬼"とはなんたるかを語る神夜の言葉に首を傾げ、そう言ったのだ。
『…だから、"鬼"だ』
『はい。それは分かってます。分からないのは、"地獄から追い出された〜"という所からです。』
『…ほとんど最初ではないか……』
『だって、わかりません。"鬼"は地獄から出てきていないもの』
『…何故言い切れる?』
『私が、鬼だから』
『………え?』
『私が"鬼"だから、言いきれるんです。』
『……っな!?だがっそなたは、"鬼"を退治しているではないかっ……まさか、共食――』
『"鬼"ではありません』
『は?』
『アレは、"鬼"ではありません。』
あんなのと一緒にするな、とでも言いたげに、不快そうに顔をしかめる。
『?ちょっと待ってくれ、意味が分からないっ』
混乱してきた、と。頭を抱える。
彼女は"鬼"で、退治しているのも"鬼"で、でも"鬼"じゃなくて……整理しようとして、余計に混乱する。
『難しく考えないで…単純な話です。私は"鬼"、退治しているのは"鬼"ではない。それだけの話です』
なんでもないことのように言うが、ではアレはなんだと言うのだ。
『アレは"邪鬼<ジャキ>"…人間の成れの果て。』
『邪鬼?』
銀の髪をサラリと揺らして少女がコクリと頷く。
『私達"鬼"は妖…天狗とか、猫又とか、河童なんかと一緒です。邪鬼は、元は人間だったモノ』
『…に、んげん?』
『人間の邪<ヨコシマ>な思いが溢れ、化け物となるのです。妖怪を悪いものと決めつけているけど、人間だってけして綺麗なんかじゃない』
『……』
神夜は言葉に詰まった。"鬼"である彼女を捕えているのは、人間だから。
『……何故、"邪鬼"を退治するのだ?放っておけばいいだろう…』
非情な事を言っているのは、分かっていた。
それでも、何か理不尽に思えて、聞かずにはいられなかった。
『…人間はアレを"鬼"と呼びます。だから、私達"鬼"は、アレを退治するんです。』
『…何故』
『人は、コワイから』
『…っ』
『人間からしてみれば、同じ"鬼"。憎しみを募らせ、総出で襲われれば、"鬼"といえ逃げられません。だから。』
だから、野放しにせずに退治するのか。
自分達を守るために。
妙に納得できてしまうのが悲しい。
『……でも。話せば分かってくれるのでは?』
同じ人間として、そこまで愚かであってほしくない。
そんな願いを込めて発した言葉に、鬼灯は悲しげに俯いた。
『…こんな話を知ってますか?ある小さな村で、灰色の目をした男の子が産まれた。彼は歴とした人間でした。でも、目の色は灰色。そんな彼を、村人はこう呼びました…"鬼"、と』
『……』
『彼は村人から蔑まれ、村の災いは全部彼のせいにされ、そして村を追い出された……人は、自分と違う者を恐れます。恐れは狂気になり、恐れの対象を消そうとするのです。』
『……っ』
どうにか、その言葉を否定しようとするが、何も知らない神夜が何を言っても、それはただの綺麗事。
中身の無い、空虚な言葉だ。
『でも、良い人間だっている…あなたのように』
ハッと顔を上げた神夜の目に映ったのは、優しく微笑む少女。
背後に見える月が、彼女を柔らかい光で包んでいて、"神子"である自分なんかより、よっぽど神々しかった。
『…そなたの目に、私はどう映っているのだ?』
彼女を知れば知るほど、己がちっぽけな存在に思える。
何が"神子"だ。
何を見ていた。
真実を知らずに、安穏とした生を得た己はなんだ。
醜いモノを"鬼"だと言うなら、人間こそが"鬼"ではないか?
己が、"鬼"ではないのか。
ぐちゃぐちゃになった感情から、こぼれ落ちた言葉は初めて会った時と同じ言葉。
だが、持つ意味は全く違った。
あの時は、好奇心という無邪気なだけの幼心からだったが、今はなんだ。
己は、優しくなんかない。綺麗なんかじゃない。
そんな子供じみた反論と意地、見捨てないで欲しいという縋るような気持ちから出た、懇願。
いつの間にか成長し、幼さが消え、大人と子供の境目にいる彼女が、そんな葛藤を見抜くように、しっかり神夜と視線を絡める。
『あなたは、あなたです』
ちゃんと伝わるように、漆黒の瞳を覗き込み、改めて告げる。
『あなたは、"鬼"でも"神子"でもない…神夜だ。』
『…っ』
灰色の瞳に映る神夜は、今にも泣き出しそうな情けない顔をしていた。
いつの間に、成長したのだろう。
己も、少年から青年へと変貌を遂げていた。
鬼灯がソッと手を伸ばし、神夜の頬に触れる。
『神夜…、―――。』
鬼灯の口が開き、言葉を紡いだ。
無音の言葉が神夜の胸に優しく響き、鬼灯を抱きしめた。
ギュッと抱いた肩は細く、柔らかい銀色の髪を撫でる。
『…鬼灯』
鬼灯の腕が背に回り、お互いを抱きしめあった。鬼灯が神夜に擦り寄り、耳に口元を寄せた。
『…お願い……』
『…鬼灯?』
懇願するような小さな声に、首を傾げる。
泣きだしそうな声に、どうしたのかと顔を見ようとするが、鬼灯は離れようとしない。
『…どうした?』
『…お願いっ』
あまりにも必死な様子に、大丈夫だ。と強く抱きしめようとするが、力が入らない事に気づいた。
『いゃ…っ』
どんどん体が重くなっていく。言うことの聞かない体に困惑してしまうが、それ以上に鬼灯が気になる。
抱きしめ返したいのに、安心させたいのに、どうしてっ!
力が入らない手に、腹が立つ。鬼灯が神夜の体を、必死で抱き寄せる。
『ぃゃ、いゃぁぁぁぁぁっ!!』
「鬼灯っ!!?」
悲痛な鬼灯の悲鳴に、ガバリと起き上がった。
何が起きたか理解出来ず、唖然とする神夜。
いつの間にか寝てしまったらしい。
身体はじっとりと汗ばみ、荒い息に肩が揺れる。
「神夜様っ!いかがなさいましたっ!?」
障子の向こうに、慌てて駆け付ける侍女の姿が映る。
神夜の声を聞き付けたのだろう、心配そうな声の後、影が戸に手をかける。
それを遮るように、急いで返事を返した。
「大事ないっ…少し、夢見が悪かっただけだ…」
「…ですがっ」
「大丈夫だ…ありがとう」
なんとか落ち着いた声をだし、相手に下がってもらおうとする。
そんな神夜の様子を訝しく思いながらも、侍女は素直に引き下がる。
「……もうすぐ、朝餉の用意が出来ますので、またお声がけします…」
「あぁ…分かった」
「…失礼します」
影がペこりとお辞儀をしてから、静かに下がる。
神夜は震える手を抑えて、深呼吸を繰り返す。
やたらと現実味のある夢に、震えが中々止まらない。
「…今のは…夢?」
込み上げる吐き気に、口元を手で覆った。
汗で夜着が体に張り付いている。
アレは、ただの夢なんかじゃない。
神夜の本能が、そう告げていた。
――…私は、死ぬのか…
漠然とした不安が、形作られた。
先ほどとは違う種類の恐怖が押し寄せ、震えそうになる体を抑えるように、キツく抱きしめた。
「…っ!」
零れそうになる嗚咽を、必死で堪え目を閉じる。
こんな事を言えば、きっと鬼灯は怒るだろう。
だけど、訪れた恐怖は"死"に対してではない。
死ぬのは、怖くない。
怖いのは、鬼灯を一人にしてしまうこと。
未だ耳に残る、鬼灯の悲鳴。
魂を裂くような、慟哭。
――あんな、悲しそうな鬼灯を残して、私は逝ってしまうのか…っ
一人にしない。そう約束したのはいつだったか。
共にいよう。そう約束したのは、いつだったか。
「…っすまないっ…鬼灯っ」
いつかは分からないけれど、きっと己は死んでしまう。
鬼灯を一人残して。
神夜の瞳から溢れる雫が、しっとりと夜着を濡らしてゆく。
せめて、できるだけ、少しでも長く、一緒にいたい。
そんな神夜の願いも虚しく、無情にも時は過ぎる。
刻々と、"その時"が近づいていた。
作者「えー、前回は佐渡先生に辱め…じゃなかった、面白い話をさせてもらいました」
佐渡「…言い直す必要あったか?」
作者「今回のど〜でもいい話〜ワ〜(パチパチ)」
佐渡「…ついに頭がおかしくなったか」
作者「失礼なっ!前からおかしかったんだよ!」
佐渡「……もう、やだコイツ」
愛姫「…どこがサドなのよっ」
作者「あら久しぶり」
愛姫「全然サドっぽくないけど?」
作者「ね。名前通りになってもらわないと面白くないじゃん」
佐渡「誰もサドなんて言ってないが?お前が勝手に言ってただけだが!?」
愛姫「…先生、今回だけ代わってあげようか?」
佐渡「…頼む」
作者「あ、じゃあ愛姫の名前のお話しましょうか」
愛姫「やれるもんならやってみろ(ギロッ)」
作者「…っ…そ、そんな喧嘩腰にならなくても、変な設定は愛姫にはないよっ」
愛姫「それはコッチが判断する。話せ」
作者「……佐渡先生帰っちゃった?え、マジで?ちょ、呼び戻してくれない?」
愛姫「今日は私だっつってんのよ。ほら話せ」
作者「…はい。え〜と、愛姫はすごく可愛い名前にしたかったので、『堂流』にしました」
愛姫「うん、意味わかんない」
作者「『堂流』→『ドウル』→『ドール』」
愛姫「……」
作者「つまり、人形です」
愛姫「……可愛いか?」
作者「『愛姫』は、とりあえず『姫』って付けたかったのです」
愛姫「……だったら『姫』でいいじゃん」
作者「普通じゃつまらないと思ったのです」
愛姫「……」
作者「それに『愛姫』って呼びごたえ無い?ゴロも良くない?」
愛姫「呼びごたえって何よ」
作者「…読みごたえ。と同種類の言葉?」
愛姫「……」
作者「あと、愛姫にはお兄ちゃんがいます。名前は『騎士<ナイト>』」
愛姫「『姫』と『騎士』ってか?」
作者「よく分かったねぇ」
愛姫「分かるわよ」
作者「ちなみに、お母さんの名前は『翼<ツバサ>』。お父さんは『麗夜<レイヤ>』。お祖父ちゃんは『癒士<ユウシ>』」
愛姫「…母様だけ、まともな名前なのよね」
作者「それは嫁いできたから」
愛姫「知ってるわよ!母様が名前つけてたら、もっとまともな名前になったんじゃないかって言ってるの!」
作者「え……でも、兄妹の名前つけたの、翼サン…だけど…」
愛姫「!?」
作者「『麗夜サンもお義父様も、変わった名前だから、子供達も変わった名前にしようね!』…って」
愛姫「……っ」
作者「!?…今日はこれにてお開きっ!!でわ、さようならっ!」(ダッシュ)
愛姫「子供に変わった名前つけてんじゃねぇぇぇっ!!!」
兄・騎士談
「そういう親だよ」(ため息)




