偽りの神 弐
少しず〜つ少しず〜つ。
亀の歩みで、話は進んでおります。
今回は結構、謎(?)が解けてきたかなぁ
分かりにくかったらスミマセンm(_ _;)m
鬼が横行する時代。
人々は鬼に怯え、隠れるように暮らしていた。
そんな彼らの救いは、"鬼喰い"と呼ばれる者達。
姿は見せず、ひっそりと鬼を退治し、平和をもたらす。
"鬼喰い"は"神の村"の遣いだと言う。
"神の村"。それは山の奥深く、隠れるようにしてあった。
"神の村"には"神"がいるらしい。
"神子"が"祈り"を捧げれば、"神"は鬼を退治する力をくれるそうな。
そんな噂が駆け巡り、村人は彼らを頼るようになった。
金を取ることもない、報酬のいらない退治屋。
その裏にどんな思惑があるかも知らずに……
鬼灯は刀を振って、滴る血を拭った。
地には鬼灯の二倍はある鬼が倒れている。ピクリとも動かない体は、ザラザラと灰になって崩れていく。
大きな体が徐々に小さくなって、最後に人の形になった。
伏した人は普通の男で、苦痛から解放されたように穏やかな表情をしていた。
「ご苦労さん。傷は大丈夫か?」
無表情に本来の姿に戻った鬼に注いでいた視線をあげ、声の主を見た。
「…常磐<トキワ>」
常盤と呼ばれた男は、見た目は二十代。鬼灯と同じように手にした得物についたの血を、既に血濡れて使い物にならない着物で拭っていた。緑色の髪はうなじの部分だけを長く伸ばされ一つに結われている。
常盤は倒れてる人間のそばにしゃがむと、目を閉じ手を合わせた。
「…傷は大丈夫か」
暫くの沈黙のあと、立ち上がった常盤は心配そうな深緑の瞳を鬼灯を向ける。
鬼灯は腕を持ち上げて、ボロボロの包帯を解いてみせた。
現れた傷は、完全とは言わなくともうっすらした桃色の線を残すだけとなっている。
「ほぼ治ったよ」
「そうか…悪かったな、もう少し早く来ていれば、怪我することもなかったのに」
「気にしないで」
「気にする。お前に怪我させたなんて藜<アカザ>たちに会わせる顔がねぇ」
「私が、未熟だっただけだよ」
悔しそうに顔を歪める常盤を慰め、それより。と話題を変えた。
「頼んでいた事は分かった?」
「ん?あぁ…病を患ってないのに、生気が無くなる…ってやつか?」
鬼灯は期待するような、懇願するような瞳を常盤に向ける。その目に常盤は思わず視線をそらす。
「…悪いな。分からなかった」
「…そう」
あからさまに気を落とす鬼灯に、「あのな」とどこか言いにくそうに言葉を続ける。
「知り合いの人間に聞いてみたら、『病でもないのに生気が無くなるなんて、普通ありえない』そうだ」
「…普通?って事は、あることはあるのね!?」
意気込み身を乗り出した鬼灯の目を常盤はそらし続ける。その様子に、沸き上がりかけた希望が消えていく。
原因が分かれば治ると思ったが、そうではないのか?
不安が首をもたげ、体内で暴れはじめる。
それでも、と鬼灯は目を閉じて愛しい人の顔を思いうかべた。
――原因さえ、分かれば…
覚悟を決めて目をあけて、常盤の言葉を促す。
「…教えて」
「…『病でないなら、何かに憑かれている』と、言いきったよ」
鬼灯は言葉を失った。
――何かに、憑かれてる(・・・・・)?
「そんなの、ありえない」
ありえない。そう言い切れる根拠があった。
神夜は"神子"だ。
"神子"とは、"神の村"の"神"に愛されている者の事。
"神"は、"神子"から祈りを貰う変わりに、村を守護して鬼を倒す力を授ける。
"力"とは"鬼灯"の事を指す。その事に関しては、鬼灯が一番良く知っている。
それは、嘘だ、と。
鬼灯は"神"が授けた"力"などではない。
鬼灯は赤児の時に攫われた、"鬼"の児だ。
攫われ、呪印を付けられ、従わされて鬼を退治している。
"神"が授けた"力"などはなく、鬼灯自身の"鬼の力"で、退治しているのだ。
それに関しては、"神"を否定できる。
だが、神夜の事は事実だ。
"神子"を愛してるからこそ、彼らの祈りを糧に村を守っている。
"神の村"は、戦もなく不作に悩まされる事もない。それは鬼灯自身の目で確認している。
周囲の村が飢饉に苦しむ中、"神の村"だけがいつもどおり豊作だったのだ。
それは間違いなく"神"の力。
"神"は確かに存在して、"神子"である神夜を愛している。
何かに憑かれる(・・・・)なんて、ありえないのだ。
「神夜には"神"がついているっ!"神"がそんなことを許すはずがないよ…」
「本当にか?」
何か決意したような瞳を鬼灯に向ける。あまりに強い視線に、鬼灯は怯んで思わず目をそらす。
「…お前も、薄々気づいてたんじゃないか?"神"は…」
「言わないでっ!」
鬼灯は思わず耳を塞いだ。聞いてしまえば、すべてが壊れてしまう気がする。
けれど無情にも、常盤は残酷な事を突き付ける。
「…"神"なんかじゃない」
頭の片隅で、そうではないかと思ってはいた。
でも、それを認めてはいけないと思った。
認めてしまえば、鬼灯と神夜は、いったいナニを信じてきたのか…それを、知るのが怖かったのだ。
"神"は"神"なんかじゃない。
逃げてきた事実と、向き合う時が来たのだ。
黙りこんだ鬼灯に、常盤は言い聞かせるように言葉を続ける。
「…そう考えれば、つじつまが合うだろ…信じたくない気持ちは分かるが――」
「…キシン」
「――え?」
「…生きる神、と書いて"生神<キシン>"。それが"神"の名だよ」
俯いていた顔をあげ、まっすぐ常盤を見る灰色の瞳には迷いはなく、戦う決意に満ちていた。
それを見た常盤は、小さく安堵の息を漏らした。
「分かった、調べておく」
「…ありがとう、常盤」
気にするな、と片手をひらひらと振る常盤に、鬼灯は微笑む。
常盤は村に縛られた鬼とは違うのに、鬼灯の親と仲が良かったらしく、今は亡き両親に代わり何かと面倒を見てくれている。
それが申し訳なくて、有り難くて。
鬼灯にとって常盤は、自分が誇り高き"鬼"である事の証明だった。
本来"鬼"は、悪さをするような小物妖怪とは違い、"天狗"や"妖狐"に並ぶ、大妖怪だ。
それが、人間に使役されるなど、一族の恥以外の何者でもない。
そんな己に付き合って、他の"鬼"からなんと言われていることか…
そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「…常盤」
「ん?」
「煩わしくなったら、捨ててくれて構わないから…ぅわっ!?」
自由になってね。
なんて事を言おうと思ったら、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
「ちょっ、何すんのよっ!?」
「ガキが生意気な事言ってんじゃねぇよ」
仕上げとばかりに額にデコピンをされる。
「痛っ!…だって、呪印なんかつけられた私に、大婆様怒ってるんでしょ?」
大婆様とは、"鬼の村"の長だ。会ったことはないが、"鬼"ならば彼女の存在を知らずにはいられない。
"鬼"の中な"鬼"である彼女は、"鬼"より弱い人間を嫌う。
人間に使役される"鬼"など認めないだろう。
常盤は、そんなことかとため息をついた。
「赤ん坊の時なんて不可抗力だろぅがっ!呪印をつけられた事は怒ってないよ……まぁ、呪印を解く力があるのに、解かない事に関しては怒ってるけどな」
「……」
この呪印はかけた者か、かけられた本人にしか解けない呪い。
だから常盤達は見守ることしか出来なかったのだ。
今の鬼灯の力ならば、呪印を解くなど容易いだろう。
鬼灯自身、昔は「こんな呪い、さっさと解いてやる」と意気込んでいたが、今は躊躇う。
脳裏に浮かぶのは、神夜。
「…だけど、一人で逃げるつもりはないんだろ?」
常盤にはすべて話してある。
認めるのは癪だが、それだけ信頼しているのだ。
常盤も、鬼灯の考えを理解してくれている。
「…ごめん」
また俯いた鬼灯の頭を優しく撫でる。
「お前の思うようにやれ。"鬼の村"は、お前の味方だよ。」
鬼灯は言葉に詰まった。
気持ちは嬉しいが、鬼灯は常盤以外の"鬼"には、片手で数えるほどの人数としか会っていなかった。
会ったことのない者を、味方と思えるほど、平和な育ち方をしていない。
素直になれずにいると、それを察したのか、常盤が苦笑しながら言葉を続ける。
「…せめて、俺だけは信じろ。俺はお前の味方だよ」
「…うん」
記憶にない父親の姿を常盤に重ね、鬼灯は目を閉じる。
じわりと胸に広がった不安から目を背け、束の間の安堵感に身を委ねた。
作者「どーでもいい設定〜…と言いたい所ですが」
佐渡「…が?」
作者「どーでもいい設定の人達が、まだ本編に出てきてないので言えないのです」
佐渡「……アホらし。で?どーすんだよ」
作者「なので、どーでもいい話をしようかと。」
佐渡「…あっそ」
作者「今回のどーでもいい話〜『佐渡の名前』」
佐渡「あ"!?」
作者「『佐渡優』という名前には意味がありますっ」
佐渡「…嫌な予感しかしないんだが」
作者「佐渡先生は本来Sなんです!」
佐渡「……」
作者「だけど、彼女に対してはひじょ〜に、優しいんです!」
佐渡「……」
作者「サドだけど優しい!だから佐渡――」
佐渡「やめろぉぉぉぉぉっ!!」
作者「ちなみに、奥さんの名前の『島子』」
佐渡「まだあるのかっ!?」
作者「佐渡―…佐渡島―…ハッ!佐渡島子!…みたいな(笑)」
佐渡「笑えねぇぇぇっ!!」
作者「…そういえば、島子さん妊娠中だよね……子供の名前は『琉羽<ルウ>』とかどう?」
佐渡「………なんで『琉羽』なんだよ」
作者「『佐渡琉羽』→『サドル』☆」
佐渡「却下ぁぁぁぁっ!!」
作者「強めのサドで『佐渡強<キョウ>』とか☆(笑)」
佐渡「やめろぉぉぉっ!!やめてくれぇぇぇっ!!」




