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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
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偽りの神 壱

やっと新しい章(?)に入りました!


前世編、すたぁとぉっ!!

閉ざされた扉のせいで、蝋燭からあがる煙が逃げ場をなくして漂い、独特な香りが小部屋に満ちていた。

締め切られた室内での明かりは数本の揺れる小さな火だけで、暗い部屋では正しい時刻がわからない。

僅か三畳程の狭い部屋。明かり取りの小さな窓が両側の壁に一つずつ、真正面には壁一面の扉がある。反対側の壁にあるのが質素な襖なのに対し、正面の観音開きの扉は豪勢で、龍や虎や獅子などが闘う姿が見事な木彫りで描かれている。だが、奇妙な事にその扉には取っ手がなかった。ピタリと閉ざされた扉は、こちらから開けることは出来ない。


そんな豪勢な扉の前に、神夜<カグヤ>は座っていた。

まるで扉を崇めるように、前に捧げものである食べ物と酒が置かれ、両側には蝋燭が灯されている。

神夜はそんな厳かな空間の中、瞳を閉じ手を合わせて胡座をかいて座っていた。

とじた瞼越しに、炎の光が見える。不意にほんのりと灯った光が風もないのに揺れて消え、神夜は目を開けた。


「神夜様」


スッと静かに襖が開かれた。髪を一つに結い上げた女性が、頭を垂れる。


「お時間で御座います」


「有難う」


神夜は穏やかに微笑んだ。妙齢の女は、その笑顔に頬を染め、慌てて俯いて視線をそらした。


「お、お疲れ様でした。」


女の労いの言葉に鷹揚に頷く。


「…身体を清めたい。清めの場の人払いを頼む」


「畏まりました」


女はペコリと頭をさげ、その場を去った。神夜は、暫く目の前の扉を見つめてから、ゆっくり立ち上がり明かり取りを開けてから部屋を後にした。誰もいなくなった室内は静寂に満ち、明かり取りから入った風が、煙を洗い流した。




普段使う清めの場は、苔むした岩に囲まれた小さな洞窟で、隙間から流れ落ちる水が人工的に作られた窪みに溜まっている。岩壁には悪いモノが入らぬようにと貼られた無数の札、入口には板を嵌め込んだだけの簡素な戸があるため、滅多に人が来る事はない。

この水浴び場は、神子のために作られたもので、もっぱら"祈り"を"神殿"で捧げたあとに使われていた。

だが、神夜はどうもこの閉ざされた空間が苦手だった。スッキリするどころか、何故か鬱々とした気持ちになる。

だから、何となく新鮮な空気を求めるように、洞窟の奥にある小さな穴を通って外に出た。

そうして見つけた泉。

滾々と湧き出る澄んだ泉の周囲を生い茂った緑が満たし、上を見上げればポッカリと空いた空間に広々とした空が広がっていた。


神夜が清めの場にいる時に人が入って来ることは無く、用があれば戸の外から呼ばれるだけなので、神夜が洞窟の外に出ている事は誰も知らない。

例え誰かに呼ばれても、声が洞窟内で反響するため泉までよく聞こえ、聞き漏らすこともない。


泉は神夜の"秘密の場所"だった。



いつものように洞窟から外に出た神夜は、目を閉じて穏やかに吹く風を感じ、目一杯空気を吸い込んだ。

澄んだ空気が身体に満ち、こびりついた淀んだ気が消える。



みゃーん



一度水に全身を浸し、風に濡れた体を晒していると、愛らしい鳴き声が聞こえた。

声のした方に目をやると、ガサガサと音を立てながら、黒い猫が現れた。


「来たな」


ニコリと微笑み、喉を鳴らして擦り寄って来る猫を慣れた手つきで抱き上げた。

ふと、ぶら〜んと揺れている猫の下半身に目がいき、思わず眉を潜めた。


「お前…太ったか?」


にゃん?


「え?」と言うように、猫が顔を傾げた。確かに、猫のお腹はポッコリ膨らんでいる。


「あまり太ると、素早く動けなくなるぞ?」


「…太ったのではなく、子供がいるのですよ」


聞いてるのかというように、ブラブラと揺らしていると、ガサリと繁った木々を掻き分けて少女が現れた。

長い銀色の髪を揺らし、灰色の瞳を神夜に注ぎ、どこか呆れたように言った。振り向いた神夜が「そうなのか?」と首を傾げた。


「…気づいてなかったんですか?」


少女は神夜の隣まで来ると、しゃがんで猫の頭を撫でた。猫は気持ちよさそうに目を閉じ、喉を鳴らした。


「…猫はどうやって産まれるんだ?やっぱり卵か?」


「……」


有り得ないことだが、神夜の顔は真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えない。

少女も神夜が真剣だと言うのは分かっているのだが、毎度毎度驚かずにはいられない。


「…何故、卵と思ったのです」


「鳥も魚も虫も、卵だった」


遠目から見れば、いったいどんな重要な話をしているのか、と言いたくなるほど神夜は真剣だった。

幼児でも知っていそうなことを真顔で聞いてくる神夜に、少女は小さくため息をついた。


「違いますよ。ほら、触ってみて」


そう言って、神夜の手を猫の膨れた腹に導いた。軟らかく暖かい腹に手を当てていると、グニグニと動いて思わず手を放した。


「…動いた」


「そうです。卵は動かないでしょ?猫は親と同じ姿で産まれてくるんですよ。」


穏やかに微笑みながら、猫の腹に手を置いてる少女の方を見て、神夜は息を呑んだ。


「…鬼灯<ホオズキ>!傷がっ」


「っ大丈夫です」


鬼灯と呼ばれた少女が、慌てて包帯の巻かれた腕を背に隠そうとしたが、神夜が腕を掴んで遮った。


「…たいした傷ではありません。


もうほとんど治ってます」


「……」


薄汚れた包帯からは少し血が滲み、指先は血色が悪い。


「…治しては駄目か」


「駄目です」


「だがっ」


「力は使わないで下さい!」

「……」


神夜が悔しそうに唇を噛む


「…お願いです」


鬼灯の懇願する声に、神夜は小さく「…分かった」と呟いた。それでも鬼灯の腕を放さず、包帯の上から優しく撫でる。


「…汚れますよ」


「構わぬ」


沈黙が訪れる。

聞こえるのは、木々が風に揺れる音と、鳥たちの鳴き声だけだった。鬼灯は恥ずかしそうに頬を染め、己より少し広い肩に頭を預けた。

神夜も、鬼灯の腕を摩りながら、寄り掛かった鬼灯の頭に頭を乗せた。


空が宵闇に侵され、煌めく星とぼんやり浮かんだ月が見える。


「…あと、少し…待って下さい。必ず、貴方を救ってみせるから…」


「…無理は、しないでくれ…私も、そなたを救いたいのだ…」


神夜は、己より細い肩を抱きしめた。

年々己の方が大きくなるのに、大きくなるのに反して弱っていく体。病を患ったわけでもないのに、無くなっていく生気。

鬼灯は違和感と、嫌な予感を覚えていた。


このままでは、彼を失ってしまう。


縋るように、引き止めるように、強く神夜の衣を握りしめる。


――早く、早く…原因を探らなければ。


ギュッ目を閉じ、神夜の肩に顔を埋める。

そんな鬼灯の不安を感じ取り、安心させるように神夜は抱きしめた。


「大丈夫だ…私たちには"神様"がいる。」


「…うん」


互いにしっかりと抱きしめ合い。つかの間の逢瀬を噛み締める。



"神子"である汚れなき神夜と、"鬼"としてその手を血に染める鬼灯。

本来ならば、出会うこともない二人は、まるで運命に導かれるように、誰も知らない泉で出逢い、そして惹かれあった。


いけないとは分かっていても、神夜も、鬼灯も、この手を放すことなど出来なかった。



作者「拙い文ですみませんっ!」

佐渡「いきなりどうした」

作者「いや…ちゃんと伝わってるかなぁ…って」

佐渡「さぁな」

作者「!ちょっ、そこは『大丈夫だよ!』って言えよ!」

佐渡「キャラじゃねぇよ」

作者「ですよね!ちくしょー!」

佐渡「つか、なんで俺が後書きの話し相手になってんだよ?」

作者「…考えてみ?愛姫や想真や朱里で話が進むとでも?」

佐渡「……新章に入ったな」

作者「はい、なんとか。」

佐渡「じゃ、後書きには神夜か鬼灯だせば?」

作者「それは嫌、なんか嫌」

佐渡「なんでだよ…じゃどうすんだよ」

作者「だべろうぜっ☆」

佐渡「……帰っていいか?」

作者「ごめん。まぁ、これからも後書きは適当にやるよ。」

佐渡「…俺がいた意味は?」

作者「まぁまぁ。基本司会(?)は佐渡センセーって事で。あとは〜…どーでもいい設定とか書きます」

佐渡「いやいや、いろんな奴呼べよ!」

作者「…まぁ、気が向いたら、ね…つか、勝手に出てきそうな気がするし…」

佐渡「…確かに」


誠「呼んだ?」


作・佐「「呼んでねぇよっ!」」

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