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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
16/34

銀の鬼 七

残酷な表現がございます。

苦手な方はご注意をm(__)m


『作戦変更…この鬼は、殺す』


――何の冗談よ。


「朱里っ!?」


通信は既に切れ、聞こえる返事はノイズ音ばかり。

きっと傷口が開いてる。

そんな妙に確信を持って、愛姫は駆け出した。


『愛姫っ!何がどうなってる!?』

「こっちが聞きたいわよっ!!」


聞こえる声に苛立って怒鳴り返す。聞きたいのは、この声じゃない。


「とにかくっ!戦況確認してくるっ!」


階段を駆け降りながら、愛姫は自分の力の無さに腹が立った。


だから、言ったのだ。

今回の退治は反対だと。

せめて黄穂<キホ>か緑華<リョッカ>がいる時にすべきだと。


「あのクソ爺共!帰ったら頭の毛全部引っこ抜いてやるっ!!」


悪態をつきながら、愛姫は朱里の元へと駆けつづけた。




ようやく朱里の姿が見えてきて、愛姫は血の気が引くのを感じた。

ボロボロの姿で戦う朱里は、とっくに限界を超えている。


「止めてっ!!」


宙で鬼と刃を交わす朱里が、僅かに反応した。

聞こえてはいるようだ。

こんな状態で倒すなんて無理だ。

愛姫は声を張り上げる。


「作戦は、陣に追い込むだけよっ!!倒すなんて、無茶よっ!!」


なんとか説き伏せようとするが、朱里は攻撃の手を止めない。

「くそっ」悪態をついて、疑問に満ちたまま、何とか援護しようと周囲を見渡す。

視界に、呆然と立ち尽くす想真が映った。

その瞬間、朱里の行動の意味が理解できた。


「…っ、な、んで、アンタがっ、アンタがココにいるのよっ!!」


どこまで、朱里を苦しめれば気がすむのだ。理不尽な考えとはわかっていても、溢れ出す怒りは止められなかった。

更に言葉を募ろうとした時、聞くに堪えない鬼の叫び声が聞こえた。

そちらに目をやると、鬼が片目を抑えて悶えていた。

朱里の無事な姿に、安堵の息を漏らす。

想像していたより元気な姿に、肩から力が抜けた。

それは想真も同じだったようで、場の空気が一瞬だけ緩んだ。


その瞬間を待っていたかのように、鬼の手が想真に伸びる。

目に映るものがゆっくりと動いていた。一瞬の出来事が、やたらゆっくりと見える。


伸びる鬼の手。

それを防ごうとする朱里。

だけど、間に合わない。

朱里が、体を想真と鬼の間に曝した。


赤い鮮血が飛び散る。


「朱里ぃぃぃぃぃっ!!」


鬼が愉快そうに笑った。


『ナンと!ナンとナントなんとっ!!自ら飛ビこんデきヲッた!!』


朱里の腹部に刺さった爪を、わざと揺らして朱里をいたぶる。


「く…っ」


朱里が痛みに呻く声に、愛姫の中で何かが切れた。腰元から銃を取り出した。ポシェットの一つから銀色の弾を取り出し弾に素早く詰め込み、銃口を鬼の手に向けて引き金をひいた。


ダンッ!!


発砲した弾はぶれることなく鬼の手の甲に吸い込まれるように当たって、朱里から離れた。


「――朱里に、触るなっ」


朱里が傷口を抑えてよろめいた。苦しげな声で、愛姫を呼んだ。


「……愛、姫」


鬼が不思議そうに首を傾げて、手の甲を見つめている。


『―…タかガ、銃デ我に、傷を?』


ざまーみろ、と思う。

だけど、とニヤリと黒い笑みを向けた。


私の朱里を傷つけた報いはこんなもんじゃないわよ。


「たかが銃だと思うなよ?」


お前が言う"たかが銃"に怯えろ。

時間差で再び弾が動きだし、鬼の固い皮膚に食い込んだ。


――ぐぁァァぁぁっ!?


鬼が痛みに悲鳴をあげる。

愛姫は人差し指と中指を揃え、口元に当てた。


「滅っ!」


弾に刷り込まれた文字が言葉に反応して爆ぜた。

鬼は衝撃に悶え、体をのけ反らせたと思うと、後方へ吹き飛んだ。

弾にここまでの威力はない。

驚いて今まで鬼が立っていた所に目をやると、拳に呪符を巻き付けた朱里がいた。


「朱里っ!?」


相変わらずボロボロの体に、傷の手当てをしようと駆けよろうとしたが、それは朱里自身に止められた。

穏やかな顔で愛姫を見つめるその銀色の目が、愛姫に語りかける。

『想真を、守って。』と。

反論したい思いをぐっと飲み込んだ。何故などと問うた所で、帰ってくる答えはわかっている。

怒り、悔しさ、憎しみ、悲しさ、込み上げる感情に、愛姫の整った顔が歪む。

それでも、誰よりも朱里のそばにいたから、朱里の想いを知ってるから。


愛姫は小さく頷いた。

そんな愛姫を見て、朱里は目を細めて微笑む。


朱里は最後に想真を見ると、鬼を追って駆け出した。


「―っ…待っ」


唖然としていた想真が、急に覚醒して、駆け出す朱里を追いかけようとすのを、愛姫は壁に押さえ付けた。


――ダンッ!


感情に呼応して力がこもり、ギリギリと壁に押し付けられた想真の顔が歪む。

それでも、愛姫の腕を自分から離そうと掴んだ。


「はなして、くれっ」


俯く愛姫に聞こえてきた声は必死で、どこか縋るように愛姫の腕を強く掴む。

華奢な腕を強く掴まれても、愛姫は痛みも感じず、寧ろ更に腕に力を込めて、想真を睨みつけた。


「あの子を想うなら…これ以上、あの子の枷を重くしたくないのならっ!……今は、ココから動かないでっ」


酷い事を言っているという自覚はあった。朱里は想真の事を枷だなんて、思っていない。そう思っているのは愛姫だ。

今の想真はハッキリ言って足手まといだ。

それでも、愛姫は「戦えっ」と言いたかった。朱里一人ではなく、想真にも一緒に、朱里の痛みを分け合って欲しかった。

そんな言葉を必死で飲み込み、手が白くなるほど強く握りしめる。

瞠目していた想真から力が抜け、愛姫を掴んでいた手がすべるように離れた。

生気の抜けた様子に、醜い優越感が沸き、そんな感情が沸いた事に罪悪感を覚えながら、想真から一歩離れた。


ポーチから札を取り出し、呪文を唱えながら想真の周りに置いた。全部置き終わり、最後に「封」と呟くと、札が仄かに光ったと思うと、堂流家の式神である"ハクダ"が現れた。

すべらかな肌を持つ美しく巨大な白蛇は、想真を守るようにとぐろを巻いており、愛姫の体ほどもある頭を下げ、澄んだ闇色の瞳に愛姫を映す。


『我の愛しき堂流の子よ、我を呼び出すとは至急の用かえ?』


愛姫が差し出した手にハクダが頭を擦りつける。それに合わせてハクダを撫でると気持ち良さそうに目を閉じた。


『…成る程。"銀の鬼"も憐れよな…あいわかった。"神の子"は我に任せよ』


愛姫に触れて何があったかを理解したハクダはそう言うと、パチリと目を開けた。愛姫はコクリと頷くと、想真に視線を戻した。


「札より外には出ないで。後で迎えをよこすわ。コレはその人にしか見えないし、解けないモノだから、アンタは黙ってココにいなさい」


それだけ言うと踵を返し、朱里を追いかけて赤く染まる町へと駆け出した。



愛姫が去ると、想真はその場に力尽きたように座り込んだ。


「―なん、で……何で、まだ、戦ってるんだよ……」悲痛な声に、ハクダは目を細めた。

想真が握りしめた拳を、力任せに地にたたき付ける。僅かに血が滲み、新たな血臭にハクダの鼻孔がひくつく。


想真が手の甲で目元を覆い、縋るように、掠れた声で名を呼んだ。


「……鬼灯<ホオズキ>」


ハクダは暫く想真を見つめ、朱里が戦ってると思われる、禍禍しい気配がする方向に顔を向けた。


『…運命<サダメ>から逃れるために、繋いだ糸が皮肉にも運命の輪に閉じ込めたか…なんて、残酷な……』


ハクダは抱きしめるように、慰めるように想真に身を寄せた。想真にハクダの姿は見えないはずだが、何か感じたのか、少しだけ想真の強張った肩から力が抜けた。


『…聞こえてはおらぬだろうが……安心せよ。運命は、変えられる…運命とは、乗り越えられるものだよ』

作者「ハクダは"白蛇"と書きます」

想真「まんまじゃねぇかぁぁっ!!」

ハクダ「もうちょっと、捻りが欲しかったのぉ」

作者「スミマセン。姐さん」

朱里「…誰が姐さん?」

愛姫「なんでハクダには、そんな低姿勢なのよ」

作者「怒らすと恐そうでしょうがっ!」

ハクダ「よう分かっておるのぉ」

作者「あざーすっ」

愛姫「…なんかムカつく」


作者「さて、皆様お待たせしました!」

想真「誰も待ってねぇよ」

作者「そんな事言っちゃいやーよ」

朱里「確かに、何かムカつくね」

作者「…やっと話が進みます」

佐渡「凹んでんじゃねぇよ」

作者「うっせ!」

愛姫「自分でやっといて、馬っ鹿じゃないの?」

作者「ほっとけっ!」

朱里「…話止まってるわよ」

作者「はい。えっと、次は……まぁ、成り行きに任せて進みます」


全員「「「決まってねぇのかよっ!!」」」

ハクダ「ほんとに、しょうもないのぉ」



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