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緋の鬼―アケノオニ―  作者: 唯菜美
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銀の鬼 壱

いきなりですが、シリアスに入りますっ!!

「…いってぇぇ」


太陽が傾き、夕暮れに赤く染まる町を、頭頂部をさすりながら想真は歩いていた。

昼前に食らわされた拳骨<ゲンコツ>は、時間が経つ程にジリジリと痛みを増している。


「あ、タンコブ…」


漸く前に出来たタンコブが治った所だったのに、と肩を落とす。

だが、自業自得である。

その事は本人もよく理解しているため、タンコブを作った佐渡への恨み言は口にしていない。

というより、タンコブよりも自分にとっての重要事項を達成した事の嬉しさが勝って、ほぼ忘れかけている。時折痛む頭頂部に、タンコブの存在を思い出すくらいで、すぐににやけて手元の小さな紙袋を愛おしそうに眺めていた。

淡いピンクに可愛らしい花を散らした模様の掌程の大きさの紙袋の中身は、更に小さな箱が綺麗にラッピングされて入っている。

喜んでくれるだろうか。

多少の不安と緊張で、本人を前にしてすらいないのにドキドキと高鳴る胸に、思わず苦笑した。

袋の中にコロリと存在するソレを眺めてから、少し思案して首を傾げた。


――やっぱり指輪が良かったかな。


最初は本気で指輪を贈るつもりだった想真は、別れ際に授けられた佐渡のアドバイスに従って予定を変更した。




頭を抱えて蹲<ウズクマ>り、痛みに悶絶する想真を尻目に、自分の荷物をまとめた佐渡は教室を出ようとした所で、ふと足を止めた。


「…お前、本気で指輪をプレゼントするつもりか?」


タバコを銜えたまま問い掛ける佐渡に、想真は「はい」と小さく答えた。

頭を動かす事すら出来ない程痛いらしい。心なしか声も涙声だ。


「止めとけ」


そんな想真に同情を一切せず、吐き捨てるように言うと、蹲っていた想真が痛みを忘れて顔をあげる。


「何故にっ!?」

「キモいから」

「キッ!?」


予想外にキッパリと言われ、流石の想真も二の句が継げない。


「お前、鬼月に好かれてる自信あるのか?」

「〜〜っ!!」


ある!っとは、口が裂けても言えずに、パクパクと魚のように口を開閉する。


「そんな相手に、婚約指輪とかキモい」

「きょ、教師がキモいキモい言うなぁぁっ!!」

「気色悪い」

「…やっぱキモいでいいです」


黒い陰を背負って項垂れる想真を見下ろし、佐渡は大きなため息を一つついた。


「…まぁ、贈り物ってのは悪くないんじゃねぇの。だが、指輪は止めとけ。指輪は。」

「じゃぁ、何を贈れば…」


佐渡の言葉に伺うように顔をあげる。

いろいろあるだろう。と投げやりに言いたい所だが、ソレに気づいていれば『指輪』などと、極端な結論には至らないのだ。

真っ直ぐなのか、馬鹿なのか。


「…ネックレスとかなら、いぃんじゃねぇの?」


ため息混じりの佐渡の言葉に、想真は瞳を輝かせた。



「…いや!コレで正解だ!」

自分に言い聞かせるように言いながらも、右手は拳を作りガッツポーズをしている。

想真の幸せな脳内では、プレゼントを受け取った朱里が可愛らしい笑顔で『ありがとう!大好きっ』などと、妄想以外にありえないセリフを吐いている。

まず、受け取ってもらえるかどうかが問題だという事には気づいていない。


不意に見上げた空を見て、想真は秀麗な眉をひそめた。毒々しい赤が天を染めていた。


「…嫌な空だな」


ポツリと呟き、思わず身震いする。




―――…オォォ……ォ……



どこからともなく聞こえてきた、風の唸りに似た声に周囲に視線を走らせた。

在るのはレンガ造りの洒落た時計台と、ソレを囲むように立ち並ぶ年季を感じさせる建物達。

沈む夕日に朱色に色づけられたソレらは、いつもと変わらぬ風景でありながらも、違和感を感じずにいられない。

フと一つの路地裏に目が止まった。

周囲が赤に染まる中、ソコは陰になっており、底無しの穴を連想させた。


――行っちゃ、ダメだ。


背筋を冷たい汗が一筋伝う。いつもなら近寄らずに立ち去るはずの感覚に、頭の中で警報がなる。

だが、想真の足は自然とそちらに向かっていた。

行かなければならない。と本能が告げる。

行きたくない、でも行かなければいけない。そんな相反する気持ちに駆られて、足を進める。



――…ゥオォォ…ォォ…



近づくにつれ、唸り声が大きくなる。もはや、風の音にすら聞こえないソレは獣の咆哮のようで、全身に鳥肌が立つ。

絶望、悲哀、苦痛、慟哭……あらゆる負の感情が詰め込まれた叫びに、吐き気が込み上げ、思わず片手で口を覆った。



――…ヴォォ…ォォ…ォッ!!…――

――ハアァァァァァッ!!


路地裏の入口で、闇を見つめ躊躇していると、咆哮の直後に、聞き慣れた声が聞こえた。


「―朱、里?」


気のせいだ。気のせいならいい。そんなけとを思いながら、想真は躊躇うことなく暗闇へと足を踏み入れ走り出した。

佐渡「……シリアス?」

作者「……後半から、シリアス入りますっ」

佐渡「事後報告ってアリなのか」

作者「…皆様の広い心に感謝しますっ!!」

佐渡「…こんな作者で、申し訳ない」


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