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指名

ーあらすじー

卑弥呼の仮説から、自身に縁のある神様と接触することになったケイジ。

数々のキーワードを残された接触は、むしろ謎は深まることになったのであった。

「待て!」


反射で勢いよく飛び起きると、鈍い音と共に額に衝撃が走る。


「むぎゃっ!」「に゛っ!!」


ぶつけた反動でそのまままた元の場所に戻ってしまう。

それと同時に、心地よい柔らかさを後頭部に感じる。


事態が全く把握できていない俺は、ズキズキする額を擦りながら改めて身を起こす。


先程の尾を踏まれた猫のような声の主の方を見ると、正座のまま後ろに倒れ込んでいた。


どうやら俺は卑弥呼の膝を借りてしまっていたらしい。


当の本人は身体を左右にバタバタしながら悶絶している。

とれたてのマグロみたいだった。


「痛いよぉ!」


ビチビチと跳ね続ける姿を見てると、威厳もクソもあったもんじゃない。


「不用心に覗き込んでる方が悪い。というか!いきなり実践するなよ!心の準備とかあるだろ!」


「考えたけどわかんなかったからぁ……。」


「『わかんなかったからぁ……』じゃねぇよ!アンタは慣れてるかもしれないけど、こっちは呪い(まじない)初心者だぞ!もう少し気を使ってくれ!」


しかし……。


まだ夢の可能性を捨てきったわけではない。

だけど、仮に夢じゃなかったとしたら。


一連の現象に説明をつける術を、俺は持っていない。


科学的に説明できる前提で、俺は不可思議な現象を信じていたが……ここまで色々と体験した以上、説明がつかない不可思議な現象の存在を認めざるを得ないと思えてきてしまった。


「またなにか考えてるね。」


起き上がってきた卑弥呼が額を擦りながら声をかけてくる。

多少は痛みが引いてきたようだ。


「会えたかな?『貴方』の神様に。」


「いや、姿形は分からなかった。声も……断片的にだけ。耳元でカチカチって何かの音が煩くて聞き取れなかった。」


辛うじて聞き取れた言葉を思い出す。


時……、人……、助け。


時といえば、ギリシャ神話のクロノスか、日本神話なら時量師神トキハカシノカミなんて神様もいたと思うが……。


聞こえた声は女のものだった。クロノスは男神だから違う。


時量師神は、特に性別は決まっていなかったはずだが、断定しようにもあれだけじゃ何も分からない。


そもそも広く知られた神話の性別を当てにしていいのか、日本の八百万の神の概念からいけばもっと別の神の可能性もあるのではという疑問も残る。


「卑弥呼。時量師神って分かるか?」


「時量師神……御嚢みふくろ様のことかなぁ。昼と夜の入れ替わりを見守るとっても素敵な男神様よ!」


時量師神は男神……だったのか。

となるといよいよ候補が思いつかん。


「俺が聞いた中で唯一の手がかりは、女性であることと、時に関係する神だってことくらいだ。」


「うーん、それならもしかして」


卑弥呼様ぁ!!


建屋の外から、割れんばかりの声で彼女を呼ぶ声がする。


「考えるのは後にしようか。大和を通じてでないと私とはお話できない決まりだから、聞いてきてもらってもいいかな?。」


彼女は少し寂しそうにため息をつくと、扉を指し示す。


「1つだけ言えるのは、見えなかった、聞こえなかったなら、多分、まだその時じゃないの。考え込まなくても、きっとすぐに分かる時が来るわ。」


「……その時が来たら、取り敢えずガツンと言いたいこと言ってやる。」


俺は振り向きもせずに握り拳を軽く上げて見せる。


彼女がそれを見て少しだけ笑うのが聞きながら建物を後にした。


「どうなされた。」


俺は精一杯威厳のあるように振る舞う。

扉の向こうで吹き出す声が聞こえた気がするが気のせいだろう。


「あぁ、大和様!隣村から使者が現れたのです!」


村人は余程慌てて駆けてきたのか滴る汗を気にも止めずに話を続ける。


「向こうは我々と合流し、侵略に手を貸せと何度もしつこく迫っているのです。以前から断り続けていたのですが、どうやら今度断ったら考えがあるとかで……。」


確か、弥生時代は縄文時代から一気に人口が減ったという説があったはずだ。

過激派な村がこうして暴れ始めれば必然的に、力で抑え込むしかなくなる。


そうなれば、どうしたって死傷者が出てしまう。


他人の物が欲しくなるのはいつどんな時代でも似たようなものだ。


「今回は判断に困ったから、卑弥呼様を頼ろうというわけだな?」

「その通りです。」


村人は汗を飛ばさんばかりの勢いで首肯する。

後ろにさっと身を引きながら口を開く。


「村の一大事とあれば、卑弥呼様も喜んで力を貸してくれるだろう。少し待っていなさい。」


俺は再び建屋の中に戻っていくと、卑弥呼に今聞いた話をそのまま伝える。


彼女は聞いた瞬間に眉間を抑えた。

どうやら頭痛の種らしい。


「もうほんっとにしつこいの、あいつら!欲にかられて身を滅ぼすからやめなさいってお告げまで出されてるのよ!多分、大和がちゃんと伝えてないんだわ!ヘコヘコしちゃって!だから舐められるのよ!」


ぷりぷりと顔を真っ赤にして怒り出す。

感情がコロコロ変わって見ていて飽きない。


「そうだ!貴方が交渉の場に立ちなさい!」


……は?


「大丈夫!貴方のあのお告げとっても立派だったわ!あれだけ堂々と振る舞えるんだもの、交渉だって得意なんじゃない?それに、どのみち今は貴方が『大和』なのよ?やらなきゃいけないってのには変わりないんだから!」


「いや、あれは、ちょっと憧れがあったからで……交渉となるとまた話が違うと思うんだが?」


なにやら話が嫌な方向に流れていってしまっている気がする。

安全圏から論理を正す掲示板のレスバとはワケが違う。


何より俺にはこの時代の正しい交渉の材料がない。


「大丈夫大丈夫!今から訪神で、どうすればいいか聞いてくるから!」


言うが早いか、木簡を一つ手に取ると目を瞑り、そのまま倒れ込んでしまった。


慌ててその身体を抱きとめて横に寝かせてやる。


「全く、慌ただしい人だなぁ……。」


俺のその呟きは誰の耳に入るでもなく虚空へと消えていった。

次回投稿 3/22 19時〜 (予約済)


ーーー

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