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興味津々

ーあらすじー

ケイジは気がつくと大和という男になっていた。

夢だと思い込んでいる彼はこの状況を楽しもうとする。

大和の姉、卑弥呼と出会うも即座に彼ではないことを見抜かれてしまった。

俺は卑弥呼が口にする言葉を一字一句漏らさず記憶する。

彼女の言葉には、一つ一つに確かな重みを感じる。

同じ言葉が使う人次第でこうも重みを変えるのかと驚きを隠せなかった。


俺は建物の外に出るため木製の回転式の扉に手をかける。

開けた直後、風が外から吹き込んでくる。

それに乗って声が聞こえた気がした。

外に待機してる村人の声とは違う、もっと微かな、だけど、身近な声。


しかし幾ら聞き取ろうとしても、もう聞こえなかったので諦めて外に出て、お告げを告げることとする。


「卑弥呼様が神の言葉を賜った。これより皆にその言葉を告示する。聞き漏れぬことのないようよく耳をそばだてて聞くがいい。」


どこまでも遠くへ飛ばすかのように腹から声を出す。

1回やってみたかったんだよなぁ、こういう伝達役!


「近く、桶を返したような雨が降るだろう。己が田畑の状態には充分気を配るように。水が多ければ根が腐り、少なければ育たぬ故、水量の確認を怠らぬように。一部は貯水に欠陥があると見える。気をつけよ。」


村人の一部はそれを聞いて一目散に駆け出す。

お告げの構成は毎回決まっているのだろう、全てを聞くよりいつ降るか分からない雨の対処が最優先といったところか。


卑弥呼のお告げはまだ続く。


那爾なじ。」


名前を呼ばれて村人達を掻き分けて1人の男が前に出る。


「はい。巫女の言葉、頂戴いたします。」


恭しく膝をつきながら、俺の次の言葉を待つ。


「日の昇りし方角に近々オオカミの群れが現れる。暫くの間、そちらから外に出ぬよう見張りの者で共有しておきなさい。五度も日が巡ればその姿は霞と共に消えていくそうだ。」


「心得ました。直ぐに伝えて参りましょう。」


那爾は短くそう告げると、村の外縁へと駆け出していった。


「今日のお告げは以上だ。皆くれぐれも神託を忘れぬように。」


俺のその言葉を聞いて、村人たちは思い思いの方向へと散っていく。


我ながら随分とうまくやったものだ。

あぁ、幼き日の俺よ、友人と言える存在を失ってでも『神託ごっこ』をしていたのは無駄じゃなかったぞ……。


と、一人になって落ち着いたところで、冷静にお告げの内容を振り返る。


天気に関しては現代には気象予報の技術があるし、直感で天気が分かる人たちもいる。


現れてもいないオオカミの事を告げたのも、活動周期から逆算することが出来るなら土台無理と切り捨てられるものでもないだろう。


だが、1点気にかかっていた。


卑弥呼はこの家から一歩も外に出ていないはずだ。

『彼女の姿を見たものはいない』というのが定説だし、建屋の内部もそれを裏付けるように生活環境は一通り整っていた。


だが、それでは貯水の欠陥に気づいたことの説明がつかない。


過去の失敗事例から、同じ失敗をしないようリマインドする目的で事実かどうか確認せずに物を言っている?


いや、そんな事が続けば、後世にまで名が残るような人物として扱われるわけがない。


そもそも、オオカミの件にしたって、卑弥呼のような重要人物が村の外に出るはずがないのだから、活動周期を知る手段がない。


なにか裏があるに違いないな。


なんて俺が悶々と考えていると、コツっと頭に何かが当たるのを感じた。


土に落ちたものを拾いあげてみると、それは『木の実』だった。


振り返ると、扉の隙間から卑弥呼が顔を覗かせているのが見えた。


招き猫よろしく、手をこまねいている所をみると『俺』に興味が尽きないのだろう。


招かれるまま家の中へと入っていく。


「遅いよー!待ちくたびれちゃった!」


まだ体感10分も経ってないだろ、と思ったが口には出さなかった。

俺の不服そうな様子は全く意に介さず、彼女は言葉を続ける。


「で!貴方のいた未来っていうのはどんなところなの?」


目をキラキラさせてこちらを見つめてくる。

好奇心をシャワーのように浴びせられて非常にやりづらい。


「わかった!わかりました!話すので取り敢えず座ってください!」


興奮する卑弥呼を座らせ、自身も囲炉裏を挟んだ反対側に座る。


「俺の生きてる時代ではまず、建物から違います。石とか土とか金属とか混ぜ合わせたすっごい硬い外壁で集団で過ごす場所を作って堅牢な建物で人々は1日の大半を過ごしています。より軽い素材で作った建物を拠点として、行ったり来たりを繰り返す人が大半ですね。」


「今の私たちが住んでるような場所はなくなってしまっているの?」


少し悲しそうな表情を浮かべると、そう尋ねてくる。


「完全になくなったわけじゃありません。ここの人達の暮らしを忘れないようにって残された場所がいくつかありますよ。」


「そうなんだ!なんか、未来の人達が私達のこと忘れないでいてくれるの……嬉しいなぁ」


彼女はそういうと、本当に心から嬉しそうにニコリと笑った。


「食べ物については、今よりとびきり美味しいものがたくさん生まれてますね。塩や魚醤なんかは、この時代でも使われてますがシンプルな味付けですよね。現代では、結構濃い味付けがありふれています。飽食の時代なんて言われてますから。」


「まぁ!こんな所にずーっといるから、食べるくらいしか楽しみがなくて……。」


ふにゃっと照れるように笑う彼女のその一言に俺はハッとさせられる。

一人孤独に生きた、卑弥呼という女帝の素顔。


何処かで俺は、強く、気高い女性を想像していた。

皆を導くために、全ての判断を1人で任される。

その重圧はどれほどのものだろうか。


直後、俺の頭の中にザラザラとした引っかかりを感じたが、何かと考える前に霧散してしまった。


「はぁ……一度でいいから食べてみたいなぁ。」


彼女はそんな言葉を漏らして見たこともない料理に思いも馳せているようだった。


機会があれば作ってやりたいが、生憎、俺は料理はからっきしだ。

それに関しては特に言及せず、次の話をする事にした。

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