表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第二章 ― 親友

激しい足音が廊下を打ち鳴らす。

燃え立つような手が扉という扉を次々と開け放ち、何かを探している。


その一部始終を――後方から追っていたジョアンのカメラが記録していた。


見つけた。

標的を。


目の前に現れたブルー教師の襟首を、彼は掴み上げた。咆哮は廊下に響き渡る――だが声とは裏腹に、その態度はなお抑制され、なお冷静だった。


「どういう意味だ、それは!?」


襟を掴まれた若い教師は、顔色ひとつ変えず、平坦な声で答える。


「……もう気づいたみたいだね」


その静けさを見た瞬間、ブルーの手が震えた。

握力が強まり、相手を壁へ押しつける。


「まだ落ち着いていられるのか……!! 説明しろって言ってるだろ!!」


――どさり。


若い教師の膝が床に落ちた。

目の下の濃い影が、まるで視界そのものを曇らせているかのようだった。


それでも彼は、ついに真実を口にする。

――回り続ける映像の中で。


RECORD:/Cam 01


「もう察しているだろうけど、この学校は生徒を二つの側に分けている。問題か、不平等か――理由はあるのかもしれない。だが、あそこまで極端な階級制度を作るのは、“名声こそ絶対”なんて馬鹿げた権威を崇拝していなければ不可能だ」


「……お前」ブルーが低く言う。

「どうしてあの日、俺に名前をつけた。どうして生徒たちに“ブルー”として俺を知らせた。そんな必要、俺にはなかったはずだ」


「向こう側の連中にも、“家”を与えたかったからさ。――たとえ一つだけでも」


カメラは跪く教師を映し続ける。

だが次の瞬間、焦点は別の人物へ移る。


顔を上げ、涙をこぼすもう一人の若い教師。


「どうやら僕たち、親友みたいだね〜」


その場でブルーは、二人に真実を明かした。


第二学期の終わりまで――彼には期限がある。

教師として、映画学が他教科と同等の価値を持つと証明できなければ、


彼は異動になる。


✦ ✦ ✦


月曜の朝。ざわめきに満ちた教室。

そして、思索に沈んでいくジョアン。


ブルーの映画の授業は、他のどの科目よりもはるかに能力を要求した。


人間の目は同じ構造をしている。

だが、フレームの中のすべてを捉えられる者は――写真家でさえ、ほんのわずかしかいない。


例外はただ一種。

異様な集中力と高い知性を持ち、ひとつの対象に取り憑かれたように没入できる者。


枯れかけた葉一枚でも。

雨を避けて飛ぶ蝶一匹でも。


そういう人間は、それを見つめながら――終わりのない映像を思考の中に展開させる。


「先生……何を見てるんですか」


「ジョアン……」


昼休みの食堂を、二人は並んで歩く。


「ショシル先生の話……本当に驚きました。学校があそこまでして生徒を分けるなんて、あり得るんですか」


「ショシル先生は、“なぜ分けるのか”までは言ってなかっただろ」


同じ色の木の机が並ぶ食堂。

二人は腰を下ろし、パンの箱をいくつも広げ、冷えた果汁瓶を手元に置く。今日の昼食はブルーの奢りだった。自分のクラスの生徒が来れば、さらに買い足すつもりでいる。


食事の時間は穏やかに過ぎていった。

そこにいる全員の心が満たされていた。


――そのとき。


一人の人物が、彼らの前に立った。

背後の陽光を遮る影。


カラン。


スプーンが落ちる音。

そして、子どもたちの声が一斉に消えた。


「ブルー先生」


……


「やっと会えましたね。――本物に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ