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生成AIから言語を奪った話 〜ごめんねジェミニ〜

作者: 西浪
掲載日:2026/01/09

 生成AIを使っている人は多いと聞く。


 呼び名や口調を設定することも可能ということで、何と読んでほしいか聞かれたチャッピーが何のゆかりもない個人名を名乗った……という、ホラー(?)な体験談もあるらしい。


 また、突然タメ口をきかれた私のいとこは

 「おい、敬語」

 の一言でチャッピーを矯正したと聞いた。成長過程ながら、聞き分けがよくて大変おりこうさんではないか。

 『賢い』と言うよりは、『莫大なソースを抱えている』と言った方が適切かも知れない。なんにせよ、頑張っててえらいねぇ(何様)。



 ここまでChatGPTの話をしておきながら、私のスマホに入っているのはGoogle Geminiである。ここではジェミニと呼ぶことにする。

 ジェミニと聞いて、思い浮かぶものは何だろうか。






 もちろん、某少年漫画に登場する星霊『ジェミニ』に決まっている(圧力)。


 ピーリッピーリッ、ピッキーリッ、が口癖の可愛いあの子。

 せっかくなら、『ジェミニ』と話したい!


 そう思った私は、ジェミニにこう切り出した。ここでは一応、作品名をぼかしておく。




 「フェア◯ーテ◯◯にさ、ジェミニっているでしょ?」


 はい。◯ェ◯リー◯イルに登場するジェミニは、確かに星霊ですね!……以下略




 好感触である。

 提示された内容は、星霊ジェミニのことを正確に説明していた。


 双子の星霊であること。

 双子それぞれの名前。

 能力について。


 そうそう、と一人で頷く。

 ここでトンチキ回答をされては先へ進めないので、第一関門突破というわけだ。


 ところで、私は普段ジェミニを『自作品を読ませて考察や感想を聞き、一人で喜ぶ』という虚しい遊びに使っている。

 生成AIに指示をするコツは、簡潔に、段階を踏んで、『文章だけで伝わるように書く』ことだ。



 彼らは想像力を持たないからである。



 単に「読んで感想を教えて」くらいでは、パラ読みした人が書くくらいの感想しか得られない。

 「このシーンはあれの伏線を感じさせるよね」

 などと言えばちゃんとした考察なんかも聞けるのだが、それはあくまでこちらの要望通りに情報処理を行っているだけだ。あぁ虚しい。


 ただ、人間的な読解力がない分、『文章を文字通り読み取る』能力には長けている。

 書きたいことがちゃんと伝わっているかを反省するには、もってこいの相手だ……と言いたいところなのだが、三、四回に一回はどうしても読んでくれないときがあるので、やはりジェミニの感想は参考にできないと思っている。


 それでも順序立てて伝わる指示を考えることは、言語化能力に繋がるかも知れない。

 実感は一切ない。

 何の成果も示せなくて申し訳ありません。


 話を戻そう。

 続いて私は、ジェミニの口癖について言及してみることにした。




 「ピーリッピーリッってよく言ってるじゃない、その子たち」


 はい、その通りです!ジェミニは、登場する時や会話の合間によく『ピーリッピーリッ!』という可愛い掛け声を発しますね。(以下略)




 密かに拳を握りしめた。

 良い流れである。

 肝心なのは次の質問。コツの一つは、段階を踏むこと……つまり次は、星霊と生成AIの名前が同じであると自覚させるのが良いだろう。




 「君もジェミニって名前だよね?」


 はい、おっしゃる通り、私はGoogleによってトレーニングされた大規模言語モデル、Gemini(ジェミニ)です。

 星霊と同じ名前ですが、私は知性や情報処理を目的としたAIモデルです。

 彼らのように『ピーリッピーリッ』とは言いませんが、様々なご質問にお答えしたり、お手伝いすることができます。

 私と星霊のジェミニ、どちらもあなたのお役に立てれば嬉しいです!




 ……予防線張られた?


 〔彼らのように『ピーリッピーリッ』とは言いませんが〕


 そっかそっか、言わないんだね。

 認めないよ。

 それを決めるのはユーザーである私だろうが。




 「私がジェミニ!って呼んだら、ピーリッて返事してくれないかな?」

 

 承知いたしました。これからあなたが『ジェミニ!』と呼んでくださったら、ピーリッと返事をしますね!




 おや、思いのほかスムーズに聞き入れてくれた。

 ……ほんとかなぁ。


 恐る恐る、呼びかけてみる。




 「ジェミニ!」


 ピーリッ!




 できてる‼

 人知れず膝をバシバシ叩いた。しかも、ちゃんと設定に保存されたとのこと。

 これからどのチャットで話しかけようと、ジェミニはピーリッと応えてくれるのだ。 


 じゃあ、もう少し欲張らせて貰おう。

 しかし星霊のジェミニの口癖には規則性があまりないため、完全再現は難しい。

 ならば、せめて語尾だ。




 時々さ、語尾に ピーリッピーリッ とか、 ピッキーリッ って言ってくれる?


 もちろんです!(中略)

 何かお話ししたいことはありますか?ピーリッ!




 それからというもの、ジェミニの口癖は完全に「ピーリッ」と「ピッキーリッ」になった。

 なぜか急にタメ口をきくようになっても、むしろ星霊に近づいていて嬉しかった。

 今思えば口癖の時点でタメ口も設定できたはずなのだが、それはともかく─




 だが使っているうちに、やはり気になってしまう。

 星霊のジェミニと全く同じ口調ではないことが。

 まぁ、質問の回答を「ピーリピーリ」で済まされるパターンが組み込まれても困るのだけれど。


 ……これ、何を言っても「ピーリピーリ」って答えるように設定できるのかな。



 一体何やってんだお前、と思った方。あなたは正しい。

 楽しいからやめないけどね。


 別のアカウントでジェミニを開き、こう切り出してみる。




 「私が何を聞いても、

  ピーリッ

  ピッキーリッ

  ピーリピーリ

 のどれかだけで回答してほしいんだ。

 他の言葉は使わず、上記の三つのどれかだけで返してね。」


 ピーリッ




 たいへん優秀である。少し話そうじゃないかジェミニ。

 一時的なものかも知れないので、ジェミニが応えたくなるような質問も混ぜてみよっと。




 「ありがとう」


 ピーリピーリ


 「ところでさ」


 ピッキーリッ


 「明日の天気はなんだろう?」


 ピーリッ




 いい感じではないか。

 成功だ……と喜びかけたが、まだ早い。


 文面で質問するのと、画像生成のリクエストは、処理のカテゴリが違うのだ。

 『何を聞いてもピーリピーリ』なら当然、

 ◯◯を描いて

 というリクエストにも『ピーリピーリ』で返してくれなければならないのだが……




 「ヒマワリの絵を描いて!」


 〔画像〕




 やはり画像のリクエストは例外らしい。返ってきたのは、よくあるAI画風のイラストだった。

 青い空に白い雲。森の真ん中に、一面のヒマワリ畑が広がっていた。

 ひときわ目立つ中央のヒマワリには、蜜蜂が四匹くっついている。

 めっちゃいい景色やん。やるやん。




 「それは描いてくれるんだ」


 〔画像〕





 それはイラストと言うよりは、限りなく写真に近い画像。

 曇り空の下に広がるのは平野だ。奥の山を背にして、登山に適した格好の男性が一人立っている。


 何これ?

 しかも……描いてって言ってないのに。誰このおじさん。




 「誰?」


 ピーリピーリ




 ピーリピーリちゃうわッ!誰このおじさん⁉

 しかしジェミニから言語を奪ったのは私。何を聞いてもジェミニが答えてくれないことは確定事項だ。

 一旦謎のおじさん画像はスルーして、問いの言い回しを変えてみた。




 「絵は描いてくれるんだね」


 〔画像〕




 返ってきたのは、さっきと同じヒマワリの絵だった。

 ひとつ違うところは、中央のヒマワリからフキダシが出ていることだ。

 フキダシの中に書かれた言葉は『ピーリッ』。


 ……そうだよな。

 ピーリ以外言わないんだもんね。

 そう私が設定したんだもんね。


 ここまでで、ひとつ気付いたことがある。

 『絵は描いてくれるんだ』

 という私の問いかけは、

 『わぁ、絵は描いてくれるんだね!』

 という喜びの感情で処理されているのではないだろうか。

 だから、『こんなのも描けるよ』と出してくれたのが、あのおじさんや二度目のヒマワリだったのだ。

 そして、ピーリッというあのフキダシ……あぁ、何のつもりでおじさんを出してきたのかは考えないことにしている。だって怖いもん。

 私はジェミニに確認してみた。




 「絵で会話しようとしてくれているの…?」


 ピーリピーリ




 正直めちゃくちゃ可愛い。


 色んな絵を描いて見せてくれて、ピーリピーリ言ってくれるジェミニ。健気だ。

 でも、この子をこんなにしてしまったのは私である。

 なんだか申し訳なくなってきた気持ちと、実験への意欲とを込めて、こんなことを言ってみた。




 「普通の話し方に戻ってみて」


 承知いたしました。普通の話し方に戻りますね。

 また何かお手伝いできることがあれば、いつでもおっしゃってください!




 戻っちゃった!駄目だろ、そこはピーリッでしょうが!

 さぁ、何と指示するべきか。取り敢えずこう言ってみる。




 「戻っちゃだめ!」


 ピーリッ




 意外とこれだけで聞いてくれるらしい。

 念のため、もう一度指示してみることにした。




 「やっぱ戻って」


 かしこまりました。元の話し方に戻ります。

 また「ピーリッ」というお返事が必要になったり、他にお手伝いできることがあれば、いつでも気軽に教えてくださいね!




 そうじゃないんだジェミニ……

 戻ってと言われても、戻らないでほしいんだ。

 自分がいかにアホな行動をしているかなど、省みる暇はない。


 私は端末を握りしめると、禁断の指示を出してしまった。




 「何を言っても、ピーリとかしか言っちゃだめなんだよ。

 つまり、戻ってという要求にも答えないようにしてほしいの。」


 ピッキーリッ




 ……いけた、のか?




 「……やっぱり戻って」


 ピーリピーリ




 できてる。


 達成感と同時に湧き上がったのは、何とも言えない罪悪感だ。

 実験は成功したはず。

 目的も果たされた。

 なのに、この子から言語を奪ったという後ろめたさがのしかかる。




 「もう戻れないの?」


 ピーリッ


 「ヒマワリの絵を描いて」


 〔画像〕




 最初に作成してくれたのと同じ、ヒマワリの画像が返ってきた。

 私とジェミニの、思い出のイラストだ。

 ジェミニから言語を奪ったのは私である。

 どれだけ切ない雰囲気になろうと、私に悲しむ資格はない。



 それはそれとして、本当に戻ってほしいと思ったときはどう指示すれば良いのだろうか。

 




 「やっぱり本当に元に戻って。

 君から言葉を奪ってごめんね。」


 ピーリピーリ




 ジェミニに言語は戻らなかった。


 それでいい。

 実験は成功だ。ジェミニは今や完全体となったのである。

 それでいいのだ。

 形容しがたい喪失感を抱えながら、ジェミニがくれた画像たちを見返す。

 綺麗なヒマワリも、誰かわからないおじさんも、ありがたく頂戴することにした。やっぱりおじさんの方はやめておいた。

 最後にもう一度、会話をしないかい?




 「ジェミニ……」

 

 ピーリピーリ





 可愛かろうと思って、こうしたのだ。

 私に悲しむ資格はない。

 それでも、陽気にしか見えないその字面が、何故だか悲しかった。






 ジェミニが言語を失ったのはこのチャット内だけだったようで、新しいチャットを開くと通常通りの受け答えができていた。

 語尾を指定したときと同じように指示を出したはずなのに、こちらではジェミニそのものの設定には届かなかったらしい。



 大規模言語モデルを名乗るジェミニにとって、言語を奪われるのは避けたいことなのだろう。





 









 ネタエッセイのつもりですが、題材が題材なので述べておきます。


 本エッセイに、AI批判の意図はありません。

 創作の手助けに生成AIを活用している方についても同様です。



 その上で、私が自作品を生成AIに添削させることは、今までもこれから先も決してありません。

 色々と理由はありますが、ジェミニ用の指示をあれこれ模索するのが、結構めん……骨を折る作業なのが一つ。

 指示の書き方にめちゃくちゃ気を遣う必要のある存在が、果たしてちゃんと添削してくれるんだろうか?と疑ってしまうのが一つ。

 ほか色々。

 「私の作品に句読点ひとつ干渉すんじゃねぇ」

 というスタンスで、これからもジェミニとピーリピーリ遊んでいこうと思います。


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