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さっそく次の日から勉強が始まった、
午前中9時から11時までの2時間と、
午後1時から3時までの2時間、1日4時間学ぶ。
日本で学校教育を受けてきた私としては、
全然足りてない気もするが、
父はこんなに勉強して大丈夫か心配していたので、
日本とこの国での考え方の違いを感じる。
まあ、科学なんて日本に比べるとそんなに発達
している訳ではない。
一応電気はあるが、紐を引いてつける、
昭和レトロな仕組みだし、
お風呂も川や井戸の水を汲み、
火で薪を燃やす五右衛門風呂。
車も見た事がなく、徒歩と馬、馬車が移動手段だ。
洗濯も手で洗っているみたいだし、
電気はあってもテレビはない。
電報や電話も見た事がないので、
これらもまだないか、
伯爵家領地が田舎過ぎて普及していないのだろう。
当然、飛行機もスマホもないと思われる。
娯楽といったら、ショッピング、
お茶会や時々やってくる大道芸、
都会なら演劇を見ると言った所。
「まずは何が知りたいですか?」
レイチェル先生が訊ねてくる。
「そうですね、この国の身分制度が知りたいです」
「それは重要ですね、
まず、この国の頂点は王族です、それはご存じですね?」
「はい」
私は素直に頷く。
「次に位置するのが、公爵です。
公爵は王族の親戚の方にあたります。
なので、公爵家のご令嬢に王族との結婚権はありません」
え?と思う。
2番目に権力を持つ公爵家が、王族との結婚ができない?
そんな事は初めて知ったし、かなりの衝撃を受けた。
「次が侯爵、その次がクリスティーナの家である
伯爵になります」
「はい」
「後は、騎士の中で武勲を上げた者に、
騎士爵を与えられる場合がありますが、
一代限りで、土地も与えられないので、
こんな身分もあるぐらいでかまいません」
私はあれ?と思って聞く。
「伯爵家より下の貴族はいないのですか?」
「ええ、昔は男爵などあったのですが、
お金で身分を買ったり、
貴族でありながら、ギャンブルに手を出して
問題を起こしたりといろいろあって、
今、この国で正式に貴族と認められているのは、
伯爵家までです」
「そうなのですね」
「なので、クリスティーナ様が気にされている、
王族との結婚ができる令嬢は、
侯爵家、伯爵家の令嬢、後は他国の王族だけです。
現王は国内での結びつきを強くしたいとお考えなので、
クリスティーナ様も王子と結婚できる可能性は、
十分にございます」
「王子と結婚の対象になっている令嬢って、
何人なのかしら?」
ライバルを気にしてる風を装って聞く。
もちろん、内心としては、
他に令嬢が沢山いれば、私が王子に選ばれる可能性は
低いだろうと狙っての事だ。
「この国の領地はいくつあるかご存じですか?」
レイチェル先生の質問に、自信満々に答える。
「15です!」
「残念、惜しいですね16です」
くわ~自信満々に答えたのが恥ずかしい!!!
クリスティーナの知識がそこまでポンコツとは!
日本なんて46都道府県あったのよ、
16ぐらい把握しなさい!
レイチェル先生の残念そうな顔に居た堪れない気持ちになる。
残念な令嬢ですみません・・・・
「侯爵家が6、伯爵家は10、
ちなみに公爵家は3つです。
それぞれが領地を持っています」
「はい」
「公爵家は王都の中心部、次に侯爵家が、
海岸や鉱山のある重要な土地、
そして、穏やかな土地が伯爵家となります」
レイチェル先生は穏やかな土地と気を使って
くれていますが、ずばり言うと田舎って事ですね!
「そして気にされている、王子との結婚対象となる
令嬢は5人です」
「5人だけですか?」
16も家があるのなら、もう少し多くてもいいと
思うのだけど・・・・
「年が近くても男性だったり、
病弱で対象からすでに外されていたりしますので」
私は少しヤバイ?と思いながら聞く。
「侯爵家の令嬢が1人、伯爵令嬢が4人が、
現在王妃候補として挙がっています」
「やはり侯爵令嬢が一番有力なのでしょうか?」
不安気な顔で聞くと、
安心させるような声が返ってくる。
「確かに侯爵令嬢が一番有力なのですが・・・」
そう言って私の耳元でひっそりと話す。
「癇癪持ちらしく、今のままでは王妃は務まらないと、
社交界では噂になっています。
侯爵夫妻はなんとか王妃にしようとしていますが、
正直手を焼いているようです」
何してんの!侯爵令嬢!!!!
一番いい所に生まれているんでしょう!
頑張って王子を落としてもらわないと。
「それに、私は今まで全ての王妃候補の令嬢に
お会いしましたが、クリスティーナ様が、
断然、一番の美人です」
ウインクして励ましてくれる。
今まで美少女万歳と思っていたけど、
王妃に押されるのは御免だわ。
美少女は維持したいし・・・・
そうね、あえて貴族女性に必要とされる、
裁縫を練習するけど下手な演技をして、
ポイントを下げておいたらいいかもしれないわね・・・
そんな事を考えながら、
「王妃なんて恐れ多いですわ、
私はあくまで王子とお話したいだけなんです」
そう言って微笑むと。
レイチェル先生はキュンとした顔をして。
「絶対、一流のレディにしてみせますわ!」
と呟いているのを耳で拾ってしまった。
いやいや、あくまで私の目的は事業ですからね、
早くお金儲けしたい!
その為にも、レイチェル先生からしっかり学ぶぞ!
微妙にズレた師弟は、こうして勉強に励むのだった。




