25
王妃様には、婚約者を辞退したい旨を手紙に書いたが、
保留にしておくとの返事があった。
まだ婚約式をしていないので、
候補の1人でしかないという事で、婚約者候補から外されて、
フェリクス様には隣国で年の近い王女などが、
嫁いでくれたらと思ったが、そうはならなかった。
数日学園に行って、私とフェリクス様の様子がおかしいのは
伝わったが、襲撃があった事もすぐに広まり、
周りは優しく見守ってくれる空気になっていた。
その後、夏休みに入ったので、
フェリクス様とはまったく交流をしていない。
「これは出席しないとダメよね・・・」
赤の蜜蝋で封をされた招待状を見る。
「もちろんだよ」
社交シーズンに入っても、
令嬢との交流会、上位貴族のお茶会も全て欠席していた。
しかし、今手に持っているのは、
王宮からの招待状、しかも蜜蝋が赤なのは命令である事を指す。
「本当に俺でいいのか?」
困惑顔で聞いてきたのは、従兄のランティスだ、
この王宮の舞踏会のパートナーをお願いしていた。
「うん、お願い」
「フェリクス殿下の方がいいのでは・・・」
「ううん、いいの」
そう言って俯く私に、ため息をつくものの、
それ以上強引に何も言ってこなかった。
舞踏会の日、強引に連れ出された割には、
気合が入っているランティスと王宮へ向かう。
久しぶりに見る王宮は、どこか遠い世界に来たようだった。
こういった王宮の舞踏会の場合、
パートナーの髪や瞳のドレスを着るのが普通である。
しかし、私はあえてフェリクス様の色を外し、
流行色の濃い青の服を着ていた。
デザインも流行の最先端で、
少し違和感を感じられながらも、何とか押し通せるチョイスだ。
ランティスの手を借りて、舞踏会会場に入る。
久しぶりに会う貴族、令嬢達と挨拶を交わす。
食事も用意されていて、興味はあったが、
とてもそれらに手を伸ばす余裕がなく、
ひたすら挨拶を繰り返す。
そうして、しばらく経った頃、
楽団の音楽が変わり、ファンファーレが鳴り響く。
王族の登場だ。
静かに王族が登場する上段を見上げ、その姿を待つ。
まずは王、次に王妃、そしてフェリクス様が現れた。
私はフェリクス様の姿を見て、体が硬直する。
久しぶりに会えたからではない、
ずっと昔にみた、マリオネットのような存在になっていたからだ。
無表情である事が多いが、それでも人間味を感じた、
それが、今はまるでない。
全てを諦めたかのような、空っぽのフェリクス様がいた。
舞踏会会場の中心では、ファーストダンスで、
王と王妃だけが踊っている。
しかし、私の視線はフェリクス様から外すことはできなかった。
王と王妃のダンスが終わり、会場が拍手に沸く、
そして、そのまま誰とも交流する事もなく、
フェリクス様は会場を後にした。
これは異常だ。
王宮の舞踏会で、一定以上の年齢の王族が、
貴族と交流しないなどありえない。
どこか体調でも悪いのだろうか・・・
私の心臓は心配で張り裂けそうになった。
その後、無理やり笑顔を張り付かせ、
ランティスと一曲を踊る。
しかし、それで限界だった。
耐えきれず、王妃様の元へ行く。
「お久しぶりでございます王妃様、
いきなりで申し訳ないのですが、
フェリクス様は・・・」
いつもは余裕の笑顔を崩さない王妃様が困った顔をする。
しばらく考え込んでいるようだった。
そんな王妃に王が声をかける。
「フェリクスの元へ行ってもらえ」
「しかし・・・」
王妃は戸惑っているようだった。
私は思わず声を出す。
「王妃様、フェリクス様と話しをさせて頂けませんか?」
私の表情を見て、王妃様は決意をしたようだった。
「分かったわ」
そう言って、王宮のメイドを呼ぶ。
私をフェリクス様の元に連れていくよう、
言われたメイドも戸惑っていたが、
王妃の表情に、
「分かりました」
と案内してくれた。
何が起こっているの?
私は不安で胸をいっぱいにしながら、メイドの後ろについていった。




