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馬車に乗って教会に向かう。
教会ではフェリクス様と会う予定だ。
そして何をするかと言うと・・・
婚約式の流れの確認と言われて倒れそうになった。
あれほど王妃にはならないと思っていた、
本心からクラウディア様を応援するつもりでいた。
しかし、階段突き落とし事件で、
もう学園の生徒全員が、私が王妃になると思っている。
当然王宮の人もそう考えていて、
王妃様には、「一度お母さまと呼んでみて欲しいわ」
などと言われて、冷や汗をかいている。
とどめが今日の婚約式の説明。
気が重くて仕方ない。
もうここは、政略結婚で、
愛がない結婚だと割り切るしかないかな・・・と思う。
伯爵家、王家の力関係からしても、
私の我がままで王太子妃を辞退はできない。
家族にも迷惑はかけれない。
となると、あきらめるしかないのだ。
そんな私の気分とは裏腹に、
天気は良く、着いた教会をこれほどかと照らしてくれている。
歴代の王の結婚式が執り行われてきた歴史を持つ、
この国最古、かつ最大の教会は、
荘厳と威厳を、これほどかと放っていた。
教会の関係者に連れられ、内部に入る。
すでにフェリクス様はいらしていて、
すぐに婚約式の流れの説明となった。
その後、部屋に案内され、休憩時間がとられる。
「婚約式は主だった貴族しか参加しない、
気楽にしてくれていいよ」
相変わらず、無表情に近いが、
目が柔らかいフェリクス様が言う。
「はい」
「疲れただろう?」
「いえ、説明を聞いただけなので、それ程では」
「クラウディアの事も、
ずいぶん裏で動いたと聞いた」
これは本当の事だ、
クラウディア様が父親の侯爵に、
家から追放されたと聞いた時から、
ずいぶんと裏で動いた。
まず、父親の侯爵から、私を傷つけるよう指示を出されていた事、
そして、階段から突き落とす計画を立てても、
他の人に罪がいかないように、自分で突き落とす事にした事。
そして、王妃候補の1人で、騎士科に進んでいた令嬢
(クラウディア派)に守らせる事で、
その令嬢が、評価が上がるように仕向けた事。
これらを調べ上げ、
父親、王、王妃、王弟を説得し、
学園内のクラウディア様への不満を抑え、
王弟との結婚へと持っていった。
「優しすぎたのではないか?」
フェリクス様の言葉に首を横に振る。
「侯爵との関係は、親子ではなく、主人と奴隷に近かったようです。
私を傷つけるように言われて、
本当は嫌だけど、逆らえなかった・・・」
フェリクス様は黙って聞いている。
「彼女は白です。
幸せになる資格を持っている方ですわ」
それまで無表情に近かったフェリクス様が、
ふわりと笑う。
「そんな君が好きだ」
いきなりの告白に戸惑う。
「政略結婚なのでは?」
「これは本心だよ、君を愛している、
そして、君も私を思ってくれている事は知っている」
そんな事を自信満々に言われて戸惑う。
恋愛はしたくなかった。
なので恋愛はない関係だと思い込みたかった。
なのに、それをどんどんフェリクス様が崩してくる。
フェリクス様の顔が近づき、私に口づけする。
それを受けながら、
全然嫌ではない自分を感じていた。
むしろ、嬉しいような・・・・
自分の気持ちに戸惑う。
好きだと言われた事は嬉しい、
しかし、2人の男の顔がちらつく、
過去の話だ、しかも前世の話・・・・
そう思っても、心はぎしぎしと苦しみの声を上げる。
幸せと、不安と、苦しみ。
様々な感情が混ざり合い、
自分の気持ちを整理できないでいた。
その後、フェリクス様と別れ、帰りの馬車に乗る。
その時、馬車が急に止まり、叫び声が聞こえる。
どうやらならず者が襲ってきたようだ。
緊張で体が硬くなりつつ、窓から様子を窺う。
大丈夫かしら?
護衛は2人ついている、
しかし襲ってきた男は15人ぐらいいて、体格もいい。
しかも、御者や私を守りながらの戦いだ。
どきどきしながら、見守っていると、
2人の護衛騎士は本職だけあって強く、
数などもろともしないように、男たちを蹴散らしていく。
騒ぎを聞きつけた、街の警備の者達も加勢し、
ほんの数分で片がついた。
ほっとすると同時に、
自分の気持ちの苦しみが、一気に爆発する。
苦しい!苦しい!苦しい!!!
思考がぐるぐると回る。
住んでいるアパートに着くと、
今日、暴漢に襲われた事、
王妃となると危険が増える事、
それに耐えられそうにないので、王太子妃は辞退したい。
そう王妃様に手紙を出した。




