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フェリクス様と問題を起こした令嬢・子息を一時拘束する部屋へ向かう。
「クラウディア・グッチ嬢、
殺人未遂の罪となり、グッチ侯爵は籍を抜いた、これでもう平民だ。
しかし、今まで侯爵令嬢として生きてきて、
いきなり平民の生活はできないだろう。
そこで修道院に送らる、これからは修道女として生きる事になる」
「はい」
クラウディア様の表情は硬く、声も抑揚がない。
もう全てを諦めたようだった。
私は、階段から突き落としただけで、殺人未遂は重い罪のように思うが、
この世界は身分が大きく幅を利かせている。
伯爵令嬢で、王妃候補。
つまり、未来の王妃に対する罪となったのだ。
「クラウディア様、少しお話しましょう」
「変わった方ね、今更話なんて」
優しく語りかける私に、力の抜けた返事がある。
「お父様の侯爵からは、ずいぶん圧力をかけられていたと聞いていたわ」
「父にとって私は道具。
王妃になれなければ、なんの用もない存在だったのよ・・・」
「愛されていなかったと?」
ふっとクラウディア様が笑う。
「愛なんてある訳ないわ・・・
でも私はそれが欲しかった、誰よりも愛してくれる人が。
王妃になれば、フェリクス様なら愛してくれるかと、
幻想を抱いていたのよ」
フェリクス様は黙っている。
フェリクス様がクラウディア様を愛してない事、
また愛する事がない事を、
クラウディア様も改めて認識したからだろう。
「結局私は1人、この結末がお似合いよ・・・・」
「そうかしら?」
そう言う私に、クラウディア様は怪訝な顔をする。
そして、私は控えていたメイドに、
ある人を連れてきてもらうよう頼んだ。
しばらくして、その人物が現れる。
「ブルガリ公爵」
クラウディア様が呆然と言う。
現れたのは、王弟であり、公爵であるブルガリ公だった。
「誰よりも愛すると約束する、僕と結婚してくれないか」
いきなりのブルガリ公の言葉に、
クラウディア様は驚きを隠せないようだ。
「愛って・・・」
「ずっと君を愛していた、
ただ、王妃候補だったので、思いを伝えずにいたんだ、
今回、修道院に行くと聞いて、我慢できなかった」
「でも・・・私はもう平民で・・・・」
「私の父に、養女にしてもらう話はついているわ、
つまり、姉妹という事ね」
クラウディア様は黙っていて、
しばらくして、ぽつりと言った。
「そんな事が許されるの?」
「突き落とされた私がいいと言っているのだから、
誰も反対はしないわ」
その言葉に吹っ切れたようだ。
「本当にありがとう・・・
この恩は一生忘れないわ」
「私の家族は暖かい事は約束できるわ、
もう1人なんて言わせないから」
静かに涙を流すクラウディア様を、
私は暖かく見守っていた。




