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そんな順風すぎる日々を送っている時だった。
「貴女がクリスティーナ?」
いきなり名前を呼ばれ驚く、
だいたいの人は様を付けて呼ばれるので余計にだ。
「なんなのですの貴女!」
「無礼でしてよ」
一緒にいた女性が次々と非難の声を上げる。
それをふんと無視して女性は続ける。
「美人なだけで、中身のない馬鹿な貴女が、
メイドのおかげで上手く立ち回っているようだけど、
王妃になったら、そんな事では困るわ」
いきなり言われた事に驚く。
周りにいる人達は、ますますヒートアップするが、
それを扇子を横に出して抑える。
しんとその場が静まり返った。
「確かに、私の能力ではなく、
メイドの能力である事は認めるわ」
その言葉に女性はふふふんと勝ち誇った顔をし、
周りは衝撃を受けた顔をする。
「しかし、ほぼ初対面の方が、
いきなりする話としては、
いささか無礼ではないかしら?
王妃に相応しいかどうかは、
私ではなく周りが評価するものよ、
単なる環境に恵まれた王妃候補であっても、
いきなり敵対すのは、賢いとは言えないのではなくて?」
その女性は。
「どっちにしろ、王妃になるのは私に決まっているの!
出しゃばらないで頂戴!」
と言い残して、去って行ってしまった。
うん。
なんだったのかしら?
いきなり攻撃的で驚いたが、
王妃様やクリームの販売での貴婦人との
やり取りをこなしている私としては、
子供をあしらう程度の会話でしかない。
「お気になさらないでください、クリスティーナ様」
「クリスティーナ様があまりにも素敵で、
焦っているのだわ」
周りからのフォローに微笑んで。
「私は何も気にしていないわ、
彼女を責めるような事をしないでね、
彼女のような場合だと、正当な事を言っても、
悪者にされてしまうかもしれないわ」
「分かりました」
と周りの人が頷く。
その日、王子からランチに誘われた。
「今日、大変な事があったんだって?」
さすが王子、もう情報は手に入っているようだ。
「とある女性に、誤解があったようです」
私は言葉を濁す。
「エミリー嬢には、困っていてね」
あらあら、今日の事以外にも、
あの女の子は王子を困らせていたようだ。
「エミリー様とおっしゃるのね、
詳しく聞かせて頂いても?」
「ああ、元々孤児なのだが、
とにかく頭がよく・・・
昔、化粧水が向上した事があっただろう?」
「ハーブの化粧水ですか?」
「そうだ、それを開発したのがエミリー嬢だ、
その功績を認められ、教会の司祭長の養女になり、
この学園に来たのだが・・・・何と言うか・・・・・」
溜息をつく王子に、おおよその事を察してしまった。
「平民なのですわね?」
「ああ、平民で官僚科だ」
平民で官僚科だと、王妃になる事はありえないと
言ってもいい。
後ろ盾も教会の司祭長というだけでは弱すぎる。
なのに、どうして自分が王妃になると思い込める
のだろう?
疑問に思うが、答えが出る訳はない。
「化粧水を開発したのに、
クリスティーナ嬢がクリームを開発して、
存在が薄くなって、
クリスティーナ嬢を恨んでいるふしがある、
暴言はそれなりに処罰しておくが、
君も気をつけておいてくれ」
「まあ、処罰なされますの?」
「王妃候補に対する態度としては目に余る、
放置するのは彼女の為にもならない」
きっぱり言う王子に、そうですかと頷く。
それにしても、王宮で会った時は、
中身のないお人形さんのようだったのに、
今は感情がある、ちゃんとした人間に見える。
ほんの1年の変化。
それを嬉しく思って、側近にその話をすると。
「あのような態度を取られるのは、
クリスティーナ様の前だけです」
との事だった。
あれ?と思うが、王子に対して
特にできる事があるとも思えない、
むしろ、ある程度距離を取りたい私は、
側近の言葉を気にしない事にした。




