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愛を信じられない令嬢は、王太子殿下に心を溶かされる  作者: あいら


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王妃様の部屋は豪華さを抑えられ、

華やかでありながらもほっとする空間だ。


そのセンスの良さに感心しながらも、

ソファに腰かける。


テーブルの上にはいくつものお菓子が並べられ、

紅茶が淹れられた。


「クリスティーナ嬢とは一度ゆっくりお話し

 してみたかったの」


その優し気な声を聴いたが、

私の腕はぎくりと止まる。


王妃が右手で扇を持ち、口元へ持って行ったからだ。


出会ってすぐの時、このポーズを取るのは牽制の合図!


私は笑顔のままで扇を開き、

お腹の辺りへ持って行く。


これは、”貴女の方が上です””逆らうつもりはありません”

という合図だ。


お互い笑顔で見つめ合う。


緊張した空気が流れる中、

ふっと空気を変えたのは王妃だった、

手を下にさげ、気だるそうに扇を上下に振る。


これは、”気楽にしてちょうだい”

という、かなり親しい者に出す合図だ。


どうやら王妃様の最初のテストは合格だったらしい。


「クリームを開発したのはクリスティーナ嬢だと

 聞いているわ」


「嫌ですわ、開発したのは教会から来てくれた

 技術者達ですわ、本当に優秀ですのよ」


「謙遜を、元のアイディアがなければ、

 技術者が呼ばれる事もなかったわ」


どうやら王妃様は全て調べ済みらしい。


「クリームの売り上げの2割はクリスティーナ嬢の

 収入となるよう取り計らうわ、

 決して損はさせないから安心して頂戴」


原料費、製造者の人件費、流通にかかるお金、

販売元の利益、それらを考慮すると、

かなりの好条件だと分かる。


国の利益を考えつつも、個人の利益もきちんと守る、

権利を奪ったり、搾取したりしない所に、

この王妃の余裕が見える。


「クリーム、使ってみてもいいしら?

 帝妃がすごくいいと聞いていて、とても気になっていたのよ」


「どうぞ、お使い下さい」


そう言うと、献上品として、

特別な器に入れたクリームが運ばれてきた。


王妃はそのクリームを取って、手にそっと塗る。


「まあ、すべすべ、これは素晴らしいわ!」


「ありがとうござます」


「私も愛用させて頂く事にするわ」


帝妃だけでなく、王妃様もお使いとなると、

これ以上の宣伝はない、私は心から微笑んだ。


それからは、領地での生活など、

たわいのない話をした、

最初の牽制が嘘のように、親しみやすく、

こちらの気持ちを汲んだ、すごく気遣いのある返答に、

王妃様に対する尊敬の念が、一気にあがった。


王妃様って素敵!

女の鏡!


そんな事を思っている時、


「今、鐘がいくつ鳴ったかしら?」


と聞かれて、私は微笑んで答える。


「9つです」


これは単に時間を聞いているのではない、

とある小説の一説に、

門が閉まる鐘が9つ鳴るまで男女がいて、

別れがたいという暗喩なのだ。


その答えに満足したように、王妃は嬉しそうに微笑んだ。


どうやら、王妃様とのお茶会は合格のようね、

私は最後まで気を抜く事なく、

しかし、十分にお茶会を楽しんだのだった。

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