9.木陰を求めて
じりじりと灼熱の太陽が肌を全身を焼いてくる。
ミレイユの願いの件が終わって次の日、海の村ラウトーレを出発できたのはよかったけど、暑すぎる。
相棒が指さした西側の地方は温暖地方であり、目の前に広がる森を越えると灼熱と砂だらけの砂漠へと辿り着く。いま着ている服が常用服、つまり暑くも寒くもない、丁度いい温度用の服なのでそろそろ温暖地方向けの服がいるなぁ。そんなことを考えつつも、太陽が真上に来ないうちに森に入るようにする。
森の入り口には立て札があり、周囲の植物と立て札が絡まりながら風景と溶け込んでいた。
「んー……なになに、グラデーナ森林。ここの森の名前で……それと、魔物・肉食獣・草食獣注意……」
思わず相棒と目線を合わせて無言になってしまった。
ま、まぁ、星人を見ることができるのは願いが強いモノだけだから大丈夫だろう!ということで、気にしても仕方ないしグラデーナ森林へと足を踏み入れる。
「……もしかして、迷ったかな?」
歩いても歩いても同じ道を行っている気がして、足が疲れてきた。周りを見渡しても目印という物はなく、地図だと真っすぐ突き抜けるだけのはずが、どれだけ歩いても森の終わりが見えない。
相棒に定期的に方角がズレていないかも確認しているし、明らかにおかしい。
「進んではいるよね?」
不安になって確認してしまう。相棒は進んでいるけど、進めない……という不思議な回答だ。
太陽が真上に昇り始めているのでそろそろ休憩したいところであり、まだ森の奥には行っていないようで背の低い木や開けている場所が多く、太陽の日差しが厳しくなってきていた。
「相棒、一旦休める所を探そう……」
目的を森を抜けることから日光を遮ることができる休める場所へと変更する。
しばらく歩くと、自然豊かな木々たちが姿を現し、大きな木の洞までお誂え向きに見つけることができた。目的を変えただけでこうも簡単に景色が変わるとは、なんだか作為的なものを感じる。魔物か、獣か、あるいは人か。考えても仕方がないし、暑すぎるため一先ず丁度いい木の洞に突撃する。
「は~やっと休める……影になってて涼しい……」
暑すぎるので着ていた星人用のマントを脱ぎ、長袖はまくって身体の熱を逃がす。ラウトーレで補充した水を布に浸して汗をかいた部分に滑らせていく。少しすっきりしたところで腹ごしらえだ。ラウトーレで買った魚の干物を取り出してちぎりながら食べる。相棒にもちぎって渡し、二人して木の洞で座りながらもぐもぐ食べる。一種類だと味気がないので、もう一つは貝の干物だ。丁寧に炙られた大き目の貝は一口で食べられる大きさで味もしっかりとしていた。これは当たりだなと思いながらも、少しだけでも癒えた身体がこれからどうするかを考え始める。
僕たちが森を抜けるのを拒むのはなぜか。
理由が検討もつかない為、少しでも情報がないか周りを観察する。観察していたら……爛々と輝く目とバチっと合う。
……ネーベルフだ。もう一つの名は、霧の狼。
ネーベルフの仔どもがしっかりと星人である僕を見つめている。