82.家族
「城では、僕と父上の不仲説などを信じる輩がたくさんいる。まぁ、実際間違いでもないが。今回の全く会えない、というとき以外でもそこまで会話もせず……父と子というよりかは、国王と第二王子として接してきた方が多いと思う」
仕事上の関係であればすらすら話せる……そんなおかしな関係だ、とイグルの言葉は特に深い感情もなく淡々と、日常を話しているようだった。
家族のありかたは場所や環境で変わるだろう。僕は、純粋にそんな家族、家庭もあるんだなと事実を受け入れることしかできない。だって、僕たち星人は家族というものを知らないから。
生まれた瞬間に、星人としての使命を背負い、教育される。誰から生まれたのかも、どのように生まれたのかも、それらを習うことはない。目覚めた瞬間から今の身体であり、歳をとることもない。僕よりももっと年下に見える星人や年上に見える星人もいるけれど、彼らの星人としての生は僕より長いのか短いのかは分からない。
この特性を知っている者はほとんどいない。もしかしたら、長だけは僕たちの本質を知っているのかもしれない。でも、どうしてか聞こうと思ったことはない。きっと他の星人もそうだろう。
そう考えると隣から、袖をくんっと引っ張られた。
隣を見ると、相棒が少し不満そうな顔をしていた。きっと、僕の考えていることが分かったんだろう。
じわりと、彼女を見て温かい気持ちになった。
「……どうした?」
「いえ、……イグルの話をきいて、僕たち星人は家族というものを知らない……だから、いま、家族と呼べるのは相棒のスフィ……僕にとってはシェリィラが、家族なんだな、と思って」
「星人という存在は謎に包まれているというが、少なくとも、僕の目には君たちが仲のいい家族のように見える。お互いを思いあう気持ちがあれば、本当の家族よりもよほどど家族らしく見えるだろう」
血の流れだけではなく、ありかたで決まる。そういう存在が僕たちらしいのかもしれない。
「でも、イグルも、願いでも分かりますが……嫌いなわけではないんでしょう?」
「!っもちろん。私は父上も兄上も愛している。もちろん家族として誇らしいぐらいだ。第三者の言葉に惑わされることはない」
「それが聞けて安心しました」
国王に休んでほしいという願いは、すぐにでも叶える助けをしたいと思っている自分をぐっと引き留める。
「イグルはきっと星人は願いを叶えてくれる存在、と思っているかもしれません」
「……いや、そこまで傲慢には思っていない。あくまでなにかきっかけになればと思って手紙を出したことは否めないが」
口では遠慮しているが、手紙を出すためにポストを見つけられた時点で、その気持ちは嘘だった。本当は心配で心配でたまらないのを必死でこらえているんだろう。
ただ、まだおかしな……いや不思議な点がある以上、無暗に儀式を行うこともできない。
「僕たち星人は、願いと星を繋ぐ存在です。そして、願いを叶えるための僕の能力では、イグルの選択が必要であり、星人は儀式を行う必要があります」
ただ、その前に伝えることがあった。
「儀式は、まだできません」




