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星人の旅路  作者: 華世
海の村ラウトーレ
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8.ワイスⅡ


「幻の!奇跡の!星人(ほしびと)さまに!会えたのよ!!!」

「は?」


ねーちゃんが言ってる星人って、あのおとぎ話の?星人は願いの強い人に姿を表し、その願いを叶えるといなくなるっていう……ねーちゃん、ついに疲れすぎて幻覚でも見たのかな。言葉だけでも労らねーと。


「ねーちゃん、いつもありがとう。本当に。お疲れ様」

「?ワイス……さては信じてないわね?」

キョトンとした顔からのすごい納得顔だ。まぁねーちゃんも実際会ってこの目で色々見ないと信じられないのは分かるけどさ〜とか言って頷いてる。


「ん~星人ってどんな人?」

人間なの?それこそ、足ある?って思っちまう。幽霊じゃないけど、それぐらいなんだか想像つかねー。


「どんな人、か~。んー……うん。不思議な人だった。背は私と同じくらいで、歳はワイスよりちょっとだけ年上かも。髪は深い青色で……夜空のような静けさの人」

うんうんと頷きながら、オレよりちょっと年上なだけ?星人ってこう筋肉ががっしりどっしりしたすべての願い叶えてやんぜ!ぐらいでけー人間だと思ってた。


「そしてね、すごくあったかい人」

「なにねーちゃん惚れたの?」

「……ワイス」

茶化しちゃダメだった。ねーちゃんの眼が本気で怒ってる。オレはソッと隣の窓を見る。

星人ねぇ……。


「だってオレ見てないから全然分かんねーし」

そのあとすぐ信じらんねーって言っちまった。そんな奇跡な存在俺だって見れるもんなら見てみたいし、なんなら握手とかしてほしい。なんかご利益ありそうだし。

「ねぇワイス。ねーちゃん嘘ついたことあった?」

「……ある。昨日晩飯抜いてた。」

もう食べて満腹!って言ってた。でも寝るときにお腹が鳴って水をたらふく飲んでたのも知ってる。オレは寝たふりしかできなかったけど。

「……………そ、そういうことじゃなくて……ごめん」

「いい。オレの為なの分かってるし。でも……オレはねーちゃんに腹いっぱい食ってほしい」

「うん」

昨日の晩飯については謝ってくれたし。許す。というかオレが無理させてるのが悪いけど、そこは半分ことか色々できると思う。ねーちゃんは圧倒的に俺に相談しないのが悪いから、たまに言わないとすぐオレばっかりの生活をしちまう。


気を取り直してとばかりにコホンと咳き込んでるねーちゃんをジトっと見てしまった。

「でね、ワイス、ねーちゃんお願いしてきたよ」

「……お願い?」

「うん。ワイスの病気が治りますように!って!」

やっぱり……人のことばっかだ。

「オレは……ねーちゃんが星人に会ったっていうなら、もっと自分のことでなにか願ってほしかったよ」

「ワイス!」

ガシって頭を掴まれて目を合わせられた。ねーちゃんは意外と力が強いからすげー驚いた。

「ねーちゃんの幸せはまずワイスが治ること。あとはそれから!治ったらたくさん願い事して叶えていこ?もちろん二人でよ」

泣きたくないのに、ねーちゃんの言葉は全部真っすぐオレまで届く。目や鼻からも水が出てくるしこんな情けない顔見せなくないのに、ねーちゃんはいつもするみたいにおでこにおでこを合わせてきた。

「ワイスの病気が、治りますように」

「……うん。オレも、治りますように」

ぐすぐすしながらいつもの日課を終える。でも、なんだかいつもより体調が良くなった気がする。

ねーちゃんが雑にオレの顔を拭ってくる。ちょっと痛いけどお互い照れ隠しなのも分かってる。


「これ、見てワイス」

「ん?」

泣いちまってちょっと視界が歪んでたけど、ねーちゃんの手にころんとした石が載ってるのが分かる。

「星人さまが私の願いを空に伝えてくれて、星からの贈り物でこの叶え石を貰ったの!」

何を言ってんのか分かんなかったけど、取り合えず石貰ったってことか。

「これを毎日触りながらお願いするの。今もお願いするときに触っててね、その時ちょっと熱くなった気がするの」

「熱く?大丈夫なのそれ……」

「うん。不思議と大丈夫な気がする。星が見える窓際に置いておくから毎日触ってお祈りしよ」

絶対良くなるすごい石だと思う。そう言いながらねーちゃんはお手製の小さいクッションを窓際に置いてその上に石を置いた。オレはその隣のベッドで寝るからちょっと気になる。ツンと触ってみたけどただの石って感じだ。


その後はねーちゃんと二人で少ない備蓄食料で晩飯を食べて寝た。


その日から毎日石を触りながら二人で願い事をする習慣になった。

オレの身体も心なしかよくなっている気がする。ねーちゃんは自分のことのように喜んでくれる。オレも嬉しい。



ある日の深夜、眠れなくて少し瞼を開けると、石……叶え石がオレの身体に向かって発光してて……驚きを通り越して、起きればいいのか寝ればいいのか分かんなくて結局夢だと思って寝た。

でも、その後も、たまに夜チラって見るとオレの方に光ってるから……夢じゃなかったんだなって。ねーちゃんにも話して一緒に夜待ち構えてみたりもしてけどそん時は光らなくて、オレが嘘言ったみたいでちょっと石に怒った。



でもどんどんオレの身体は良くなってきて、ねーちゃんと二人で泣いて喜んだ。

叶え石にも毎日感謝して、この石をくれた星人さまにもいつかありがとうと伝えたい。


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