79.紹介
「その前に、伝えたいことが」
「……あぁ」
イグルの言葉を止めたことから、緊張の糸が少し緩んだ気がした。
王族に連なる者の言葉は重い。だからこそ、仮宿のような誰にも聞かれない環境を用意したんだ。
だから、イグルが僕と二人だけと思っているのは噓になってしまう。それに外ならまだしも、この場所でならば紹介のタイミングさえあればと思っていた。
シェリィラもいつでも伝えていいと言ってくれている。
イグルは僕が椅子を動かした時不思議な顔をしていたのでもしかしたら気付いているのかもしれない。
けど、大切な相棒だから、この対等な関係で実は隣にいて願いを聞いていました、はあまりにも後出しすぎる。
こほんと息を整えながらそっと隣を手の平で示す。それと同時にシェリィラも存在を強くしたようだ。
「彼女は、星人の相棒であり星の妖精のスフィ、名をシェリィラと言います」
「……」
「シェリィラもそのお話、聞かせてもらいます」
シェリィラはぺこりとお辞儀をして柔らかく笑っていた。
イグルの反応は、どうやら驚きすぎて声もでない……といったところだろう。
「あ、あぁ……それはもちろん、……それにしても妖精……この目で見ることができるとは」
シェリィラはくすくすと笑いながら、そっと腕を伸ばしてイグルの髪を撫でていた。
「わっ、ふ、不敬だよっ!シェリィラ!」
「む……大丈夫だ……。撫でられるなんて久方ぶりなものだから、驚いたが……いいものだな。いや、ありがとうシェリィラ殿」
僕は内心、心臓がばくばくである。
一体どうしたのかと相棒に目を向けても、そこには自愛に満ちた瞳が覗いているだけだった。
シェリィラを動かすほど、イグルにはなにか抱えているものがあるのかもしれない……。
そっとイグルを見ても、本当に怒っていなかった。むしろくすぐったそうにしている。そこでようやく、この少年の、年相応な顔を見たことに僕は気付いた。
この仮宿を自由に使っていいと提案したのは、……彼があまりにも自然に笑っていなかったからなのかもしれない。
「あと、シェリィラはほとんど話さないので……」
「そうか……美しそうな声をしていそうなのにな」
「そうですね……」
シェリィラは僕とイグル二人からの言葉に照れているようだった。
僕自身も、シェリィラの声は聞いたことがない。考えていることは伝わるので、あまり考えないようにしていた。
きっと僕の知らない何かがあるんだろう。同じスフィ同士のディルとはどうやら妖精界で話しているようだった。少しディルが羨ましい。そこはもう割り切るしかないと理解もしている。
次に会った時には、アルドとディルにシェリィラの名前をちゃんと報告しないと……あの二人のおかげで相棒に名前を付けようときっかけが得られたんだから。本当は一番に報告したかったけれど彼らはフォーリスの故郷に転移したきりだ。
きっとちゃんと辿り着いて、感謝されて、今頃はまた旅をしているかもしれない。
お互いの星人としての使命を背負って。
僕は、僕で願いを助ける使命を全うしよう。
それこそが、星人としての生き方だから——
いつの間にか10万文字達成していました。
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