78.好奇心旺盛な人
立ちっぱなしだったことに気づき、ソファを勧める。
僕は近くにあった椅子を手に、ソファの前のテーブルを挟んだ前まで移動させる。そしてもう一脚の椅子も同様に、僕の椅子の隣に動かした。
相棒が隣の椅子にそっと腰掛ける。どうやらまだ姿を見せるつもりはないようだ。
「まず、家に招き入れてくれたこと、感謝する」
「……あの護衛の人が……イグル、が手紙を出していることを知っているか分からなかったので、こういうかたちをとりました」
「気遣い痛み入る。私は自らの願いを誰にも言っていない。知られてはいけないとも思っている」
「…………護衛の彼は信頼できる者では?」
「信頼できることと、話せることはまた別だ」
「そうですか……」
かなり忠誠に篤そうな人だったけれど、確かに話の規模が違いすぎるのか……。
「……この家には、基本は星人とそれに連なる者しか見ることも入ることもできません。今回は他の星人もこの都市にいないようなので僕が使わせていただいています」
僕はこの仮宿の説明をしながら、彼、イグルの立場はなかなか難しいと思った。
護衛がいないと外に出ることもできず、深夜、星人を待つために時間の都合をつけて……一体何日待ったのかは恐ろしくて聞けない。
「それで、僕がこの都市にいる間にはなりますが、よかったらイグルも自由にこの家に入っていただいて大丈夫です」
「……私だけではこの家は見えないんだろう?常にリノに開けてもらうのは気が引ける」
そうイグルが笑ながら肩をすくめて言うので、真っ先に否定が出なかったことを勝手に解釈する。
きっと息が抜ける場所があまりないのは当たっているようだ。
「はい、だから……、また手を出してもらっていいですか?」
甲を僕の前にと説明して、イグルの手の甲と自分の手の甲を押し当てる。
「なにか……あたたかいな……」
「僕の力を少しだけ渡しています。これで、見えるようになるはずです」
「……そんなにだったか?」
「僕が勝手にしたことです。息抜きは大切ですよ」
苦笑しながらイグルは短い髪をぐしゃぐしゃにしていた。どうやら気が抜けたところを見られるのは苦手なようだ。それは誰しもそうかもしれないと思う。
「まだまだだな。精進しよう」
ふはっとお互い笑いながら、話すことができた。それだけでも今日この仮宿に招いた意味があった。
イグルは自分の手の甲を見ながら、試したいけど今外に出たらギャランに捕まって戻れなくなりそうだな……と呟いているのでなかなかに好奇心旺盛のようだ。
「せっかくだ、たまに使わせていただこう」
「抜け出すのはよくないと思うので、護衛の人には言ってくださいね」
「……リノとはまだ少ししか会話していないが、私のことを良く分かっているようだ」
じと……っとイグルの事を見てしまったのは仕方がないだろう。この人、黙ってこっそり抜け出す気満々だ……。釘を刺しておいてよかったと思おう。
「そんな護衛も外で待っていることだ。本題に入っても?」
イグルが出す空気がひりついたものに変わる。
ここからは肝心の願いの話だ。




