77.対等な関係
「言いたいことは言った。では行こう」
「えぇ……」
呆気にとられながらも、繋がれた手はぐいぐいと仮宿へと引っ張られていた。
僕と手を繋いでいるから仮宿が見えるため、案外近い目的地までまっしぐらだ。
少し斜めに目を向けるとギャランがしっかり付いてきているので、いたたまれない。
せめてぶつからないように補助の力を少しだけギャランにかけた。目測だったがギャランの身体が少し光ったので上手くかけられたようだ。
僕たちが仮宿へ入りドアを閉めた瞬間に、ギャランの声が少しだけ大きくなり、やがて聞こえなくなった。
仮宿は外の空間から切り離された、不思議な空間だ。星人と星の妖精しか本来なら入ることができないが、今回はリノが自ら少年に接触したことによって、認知と許可を得ていた。
「これはなかなか……あのギャランの声が一瞬で聞こえなくなったし、中もとても快適だ」
「僕はちょっとあの護衛の人が不憫ですが……」
「いつもいつも横に張り付いているんだ、たまにはいいだろう。あいつも私の面倒ばかりで疲れているだろうし、息抜きも必要だ」
絶対息抜きできない……と思いつつ、今までの一方通行の会話ではなくてちゃんと言葉として会話が成立していることにやっと仮宿で安心できると実感できた。
少年は顔を隠していたフードをぱさりと肩に落としながら話し始めた。
「改めて、あなたが星人だろう?手紙を読んであそこに来たということだな」
「……はい。僕は星人のリノ。まさかあなたのような人から手紙が来ているとは思わず、驚きました」
「そういう割には全く驚いてなさそうだが?ははっほとんど私と変わらない歳かと思ったが、違うのか?」
「そうですね、ご想像にお任せします」
「気に入った。リノ、私とあなたはそもそも対等な立場だが、是非名を呼んでくれ」
二ッと笑った少年と軽快なやりとりを交わす。
少年とは身長もほとんど同じなので、見た目で言えば15歳ぐらいだろうか。
すらりとした立ち姿は僕には到底出すことができない重みがあった。
「私の名はイグルニア、……イグルと」
「……イグル……」
ぐっとお腹に力をいれながらも少年の名前を呟いた。
イグルが対等と言ったんだ。それに応えなければ星人ではない。
イグル……イグルニアは間違いなく、この炎都、ソルヤの王族に連なる者だろう。
それは火に炙ってある封筒によって分かっていた。火の能力に連なる王家の者でなければ使えない力が宿っていたからだ。
そして、王族でもなんでも、星人とは対等が世の中の常だ。まず、ほとんどの場合出会うことのない権力者だが、その権力者も願いに優劣はつかない。その人が自分の願いにどれほどの価値を見出しているかは人それぞれだからだ。
権力者に屈せず対等な関係に。それがよき理解者となることもある。
長もそう言っていた。為政者は時に孤独だ。その孤独を分かるのも孤独を常に味わう星人だけなのかもしれない……と。




