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星人の旅路  作者: 華世
炎都ソルヤ
73/89

73.怒りの矛先

「……お姉さんを助けたい、と書いてあったけど」

「……はい……」

「ララナは……魔法使いだよね?」

確信を持ってそう断言すると彼女は驚いた顔をしていた。気付かれないと思っていたようだ。僕は試されているのかなと思ったので言っただけだっんだけど、どうやら勘違いだったようだ。


「どうして……」

「えっと……手紙の封筒を、見て?」

「封筒を……あ!」

どうやら無意識に魔法を使っていたようだ。つまりその魔法はもう癖のようになっているんだろう。

彼女からもらった封筒は、封をした形跡がなかったのに開かなかった。つまり何かの力で封がされている状態だった。

「焦っていていつも通りにしてしまいました……」

「今の感じでそうかなって思ったよ」

二人して笑いながら、本題に入っていく。


「魔法使いだと思っていたから、お姉さんを助けることには難しい能力なのかまずは確認したくて」

「そう……そうですよね、魔法使いだったらって思いますよね。恥ずかしながら、わたくしの魔法は一般的な土水火風の属性魔法とは違い、守り……守護の魔法なんです。それもあまり能力が強いわけではなく」

魔法の属性は万物の自然に由来し土水火風のどれかが一般的だ。珍しいのは光と闇の魔法使い。さらに、そこに当てはまらない派生の属性や、何かに特化した特性魔法など、何が使えるかは適正次第だった。もちろん適性がないことも大いにある。

その中でもララナは珍しい分類の特性魔法、守護の魔法の使い手ということらしい。


「なるほど……助けたいという願いだったけど、お姉さんの状況と君の、今の状況を聞いてもいいかな?」

手紙には急いでいたのか、かいつまんだことしか書いていなかった。

今はララナが軟禁状態のようだし、改めて話を聞いたほうがいいだろう。


「はい。まず、ことの始まりはわたくしたち商家がこの地に引っ越したことが始まりでした」

砂漠地帯特有の小麦色の肌をしていないところを見るに移住者だと思っていたため、越してきたことに僕はさほど驚かなかった。

「父は隣国の一大商家の出でして、香辛料から甘味、織物を中心に手広く商いを行ってきました。その商売をこの炎都でも行おうと家族全員で越して来たのですが、どうやらこの炎都を中心に活動しているグロッチという組織に目をつけられたようで……そこからが悪夢の始まりでした。」


場所代や交易税、他にも様々な難癖とも言えるようなことがたくさんあったらしい。もちろん警備隊にも相談したようだが、警備隊も一枚岩ではないようでグロッチと繋がりがある一部に握りつぶされたそうだ。

この炎都では魔法の力が強いので僕は強烈に違和感を感じる。

この都市がこのような出来事を気付かないのだろうか。

そう考えながらも、ララナは話を続ける。

ララナの役割は守護の魔法で販売前の商品や、やり取りをするための手紙を守ること。それが彼女の家で大部分の仕事だという。


「わたくしの能力なんて一時的なもの……わたくしがいなくなれば使えない、その場限りのただのまやかしにすぎません」

その、まやかしと思っている能力はこと商人にとっては喉がら手が出るほど貴重なものだろう。

そして商家の彼女の家にとっても、彼女の価値は計り知れない。


「ただ、この能力をある日グロッチのメンバーに知られてしまい……あまりにも理不尽なのですけれど、わたくしを嫁にもらう代わりに商売を優遇してくれると言い出したのです」

ララナは膝の上で握った手が怒りによって震えていた。

「そして、わたくしの親はこと商売に関しては貪欲な人間でした」

諦めたように語る彼女の濁った瞳が、みるみると怒りへと変貌していった。

「わたくしの、……わたくしの代わりに両親は勝手に姉を私だと偽ってグロッチに差し出しました」


つまり……身代わりだ。


「……姉とわたくしは、実際に見たら驚くと思いますが……とても、とても似ているんです。まるで双子のように。わたくしは姉と似ていることが誇らしくて嬉しかった。ただ、……そう思っていたのは私だけかもしれません。姉は、どうやらわたくしに似るように厳命されているようだったのです。それを、それを知らずにのうのうと、嬉しいと生きてきたわたくしはどれだけ滑稽でしょうか。わたくしの能力に気づいた両親が、わたくしになにかあったとき、姉を身代わりにするように育てていたと分かった瞬間の絶望は……、言葉にできません。自分の愚かさと、そして姉への罪の意識で死にたくなりました」


彼女の怒りの矛先は、グロッチと両親と、そして自分自身だ。

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