72.名前で呼んでほしい
星人だと自己紹介してみたけど、反応がない……少女は目を見開き固まっていた。
「あの……ララナ……さん?であってますよね……?」
時が止まった空間に気まずさを覚えてつい声を掛けてしまった。手紙の差出人は封筒には書いていなかったが中の手紙には住まいの場所と名前が書いてあり、その上僕が見えているので間違いないはず……だ。
「星人……」
「はい……」
お互いが目を合わせながら緊張しているのが伝わる。ごくりとどちらともが唾を飲み込んでいるとシェリィラが横に姿を現した。話が進まないことと、きっと少女一人と僕一人だと気まずいと思ったんだろう。流石頼りになる相棒である。
急に存在を強くしたため、まるでシェリィラが突然現れた風に少女には見えており、限界まで目が見開いていた。次の瞬間には大粒な涙が溢れて頬を伝っていた。
「本物……」
「突然すみません。手紙を読んできっと部屋から出られないんだろうと……」
だから勝手に入りました。ごめんなさい。不法侵入は早々に謝るに限る。それが少女に会う手段だったとしても。
「届いていたんですね、手紙……。いえ……それでたぶん一番正解でした。わざわざご足労ありがとうございます。星人様」
「昨日この都市に着いたばかりで……手紙も昨日受け取りました。遅くなりました。」
「お読みいただき、ここまで来ていただき、感謝を……」
涙を拭いながら綺麗なカーテシーを行った。
お互いが立ちっぱなしだったので、空気を切り替えるためにもララナがソファを勧めてくれた。二人掛けだったため、相棒と一緒に座る。ララナはテーブルを挟んだ前に座った。
「改めまして、ララナです。その……最初は驚いてしまって申し訳ございません。こんなにもお若い方だと思っておらず……」
「あはは、いいんですよ。若く見えるだけなので」
「?わたくしよりお若いようにお見受けしますが……」
「星人には見た目と年齢が当てはまらないんです。僕より小さな見た目の星人も、中にはいますよ」
「まぁ……」
「そしてこっちが、星人の相棒であり星の妖精の……シェリィラです」
シェリィラは基本話すことはないけれど意志疎通ができることなど伝えておく。
そして自分が相棒の名前を付けたと考えると紹介するのが少し恥ずかしい。……隣の相棒はすごく嬉しそうだ……う……恥ずかしい。
「妖精……!姿を拝見できるなんて……!いえ、星人様も同じですね。お会いできた幸運に感謝を」
妖精が見えるのは余程相性がいいか妖精の気分次第なので、見られるのは星人同様に貴重だろう。
ララナの表情が明るくなったのを見て少しほっとした。折れそうなほど華奢でその身に抱えた不安を全身から感じていたからだ。
ふと隣からじっと見つめられているのに気づきシェリィラに目を合わせると、すごく輝かしい顔で見つめてくる。……こちらの恥ずかしい気持ちもお構いなしである。
「……あの、ララナさん」
「はい」
「よければ名前で呼んでいただけませんか?僕も、シェリィラも……」
「よろしいのですか?では、リノ様、シェリィラ様と……」
喜んでいる、主にシェリィラが。
「あの、わたくしも敬称など不要です。どうやらリノ様の方が年上のようですし、敬語も不要です」
「……分かった。僕たちのことも好きに」
「いえ、わたくしはこのままで……」
にこりとした圧を感じたので押し黙っておく。
「改めて、手紙のことで話を聞きに来たんだ」
そう話を切り出すと、ララナはすっと背筋を伸ばし瞳からはその内なる強さが見えた気がした。
「ララナの願いを」




