7.ワイスⅠ
ベッドから出られない毎日は退屈だ。
3年ぐらい前までは普通に生活できてた。走ったり、狩りに行ったり、漁に出たり……遊んだり。でもある日突然身体に異変が起きた。ちょっと関節の調子が悪いな、とか、頭痛があったり、熱が出たり。それがどんどん頻発してオレの身体はゆっくりと動かなくなっていった。
とーちゃんとかーちゃんが早くに死んでから、大人も友だちも子どもたちも、オレとねーちゃんを家族だって言ってくれるぐらい大好きな村だ。
でもこんな身体になり始めて、病気か分かんなくて、村の薬師のばーちゃんにも原因が分かんねーって言われて、もうオレはねーちゃんや村の人に迷惑掛けなかったらなんでもいっかって諦めた。
大切にしてもらえた。それだけでもう満足した。
でも、今日は体調がいいなと思ったら外に出たくなっちまう。外に出たら出たで、ちょっとしたら身体の震えが止まらなくなったり高熱が出たり、そんな繰り返し。こんな身体……本当に嫌いだ。
ねーちゃんがオレの代わりに毎日漁に行き始めた。前までは村の女たちと一緒に手仕事の染物や宝飾品の加工とかをしてたはずなのに。
オレには一言も相談せずに。
そんなに頼りないか?……頼りないよな。だってまともに動けないんだから。全部全部オレの為なの分かってるから、せめて、なんでも相談してほしい。
だってねーちゃんがオレの本当の家族でオレのたった一人のねーちゃんだから。嫌なことも辛いことも、こんな生活もう嫌だって正直に言ってほしい。本当ならもう結婚していい時期だって知ってる。オレの病気が治るまではそういうことは考えられないってドア越しに断ってるのも聞いたことある。
ねーちゃんの未来を奪っといて、なんで生きてるんだろう。
でも、自分で死ぬのもこ怖いし、ねーちゃんが絶対悲しむし、どうしたらいいのかほんと分かんねぇ。
悔しくて、情けなくて、でもねーちゃんの笑った顔が見たくて。
少しでも、ほんのちょっっっとでも、ねーちゃんが言うようにいつか治ったら、いいなぁ。
「ワイスワイスワイスーーーっっ!!!」
「うわっねーちゃん元気すぎっ!抱き着くな!子供じゃねーんだからっ!」
「ねーちゃんは元気だし、ワイスは私の弟だから問題ない!」
「いや問題あるだろ……」
今日は帰りが遅くて心配してたけど、こんなに元気なねーちゃん久しぶりに見た。ちょっと嬉しい。
「聞いて!ワイス!!」
「なに?でけー魚釣れた?」
「違うわよ!すっごい人に会ったのよ!!」
すごい人って、この村にいる人は見慣れてるから違うだろ。有名な街商人とか?ちょっとお偉い人とかか?ねーちゃんの熱気がすごすぎてちょっと下がりたい。無理だけど。
なんか焦らしながらニコニコしてる。なんでもいっか。ねーちゃんが楽しそうだし。
「幻の!奇跡の!星人さまに!会えたのよ!!!」
「は?」