67.壁一面の
いつからか分からないけど、毎日星人を待つということは無謀だ。
今回はたまたま……いや、星の導きなんだろう。
ただもう少年がこの場所でずっと星人を待ち続けなくてもいい。そう安心させたかった。
そして願いの詳細は明日聞けばいい。願いなんてものは、他人に聞かれていいかどうかは本人しか分からないからだ。
少年は僕をじっと見つめてきた。
僕もまた、少年を見つめ返した。
同じぐらいの背丈に、姿を隠すようなマントの下は民族衣装のような鮮やかな刺繍が見え隠れしており、その細かさは少年の身分を表すかのようだった。その服装と小麦色の肌、少年の短い錫色の髪がよく似合っており、どことなく近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
少年はすこしだけ口の端を上げ、護衛に気づかれないよう笑って僕を横目に視線をずらした。
「行くぞ」
「……はい」
護衛の青年が、もし誰彼構わずに剣を振るような人だったら実は危なかったと思う。
そうならないように、少年が場の主導権を握った状態だったのにはありがたい限りだった。
二人がいなくなるまで、僕は音を立てずにその後ろ姿を見守っていた。僕が辿り着いた通りの階段を上って行ったので、やはりあの仕掛けが開けるということは、きっとそういうことである。
「ふぅ、流石にちょっと緊張した」
手汗をぬぐいながら、額の汗も拭く。相棒は階段のところから彼らの存在に気づいたようで姿を見せないようにしていたので、今は心配そうに僕を除いている。
「うん、また明日……会えるから」
きっと本来は出歩くことも許されないだろうけれど、毎日星人を待っていたなら抜け道があるはず。
果たしてどんな願いを彼は持っているのか。僕で果たして叶えられるのか、それとも僕に対しての試練なのか。
「大丈夫」
大丈夫だ。明日になれば分かる。
それよりも、護衛の青年が他に人を呼ばないとも限らないので少し経ったら早めに仮宿に戻ろう。
ふと、先ほどまで少年がいた場所の奥を覗くとやはりそこには六番と七番の水管があった。上の階とは違い、こちらの水管の方が、……なんというか古い。そして規模も桁違いに大きかった。上の階の一番から五番までがこの六番と七番すべてに集約されるぐらいの大きさで、尚且つ壁一面に魔法の組み合わせが書かれていた。
推測するに、この六番と七番がこの国の水管の要なんだろう。
表向きには一番から五番までが一般公表されているという具合だろうか。
壁一面の魔法の組み合わせに少し目を走らせる。かなり緻密な計算がされているようで、理路整然。端的に必要なことのみが書かれており、これを書いた人がかなりの効率を求める人物なのが分かる。そしてなんだかその組み合わせには不思議と何か感じるものがあった。
最近どこかで見た?そう思いながらも、星明かりが陰ってきたため、急いでその場を離れ仮宿への帰路へと足を進めた。




